近年、ChatGPTに代表される生成AI技術の発展が著しいものがあります。人口減少が加速する我が国において、生成AIはさまざまな分野での利活用が期待される一方、その品質やセキュリティ、倫理面についてはリスクも指摘されています。
公明党「生成系AI利活用検討委員会」では、2023年10月に「人間中心の信頼できる新たなAIビジョン」を提言し、AIの安全性や信頼性の向上を図るための対策や法整備などを政府に求めました。
今回のインタビューでは、公明党の生成AI政策について、「生成系AI利活用検討委員会」の委員長を務める河西宏一議員(以下、河西議員)に、公明党の生成AI政策や、河西議員自身の政治への思いなどを聞きました。
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)
河西 宏一議員
1979年生まれ(44歳)。衆議院議員(1期)。
パナソニック、公明党職員を経て、2021年衆議院議員総選挙にて初当選。
身長187.5cm。座右の銘は「真剣勝負」。
(1)公明党職員から政治の道へ
ー河西議員は、2021年の衆議院総選挙で立候補されています。なぜ政治家を志したのでしょうか?
実は公明党の議員は、自薦ではなく、他薦で立候補に至ります。私は政治家になる前は公明党の職員をしており、選挙実務を担当していました。そういったこともあり、「次の衆議院選挙に立候補しないか」と声がかかった時には、そこまで強い驚きはありませんでした。私は身長が187cmとかなり背が高い方で、山口代表から「政治家に向いているんじゃないか」と仰っていただいたこともありました。
ー推薦を受けてから立候補を決断するまでに迷いはなかったのでしょうか
立候補を決断するまで半年ほど猶予があったと思います。私は、一人一人の課題に耳を傾け、政治の光が当たっていないところに光を当てる公明党の政治姿勢は、日本の政治に必要だと考え、立候補を決断しました。
公明党のキャッチコピーで、党のイメージに最も合っているものは「小さな声を、聴く力。」ではないかと思います。例えば、公明党が長年注力してきた難病指定の対象拡大は、象徴的な政策です。当事者はとても大変な思いをしているにもかかわらず、社会の中で少数派であるため、なかなか政治がフォローできていない分野でした。その政治のあり方を変える為に、公明党は力を尽くしてきたと思います。
ー選挙に向けてどのような準備をされましたか
現場の声が何より重要だと考え、1年余り公明党の地方議員さんとともに、都内の市区町村を回りました。都内をトータルで4周ほどしたと思います。当時はコロナ禍で、政治や社会のあり方が大きく変わっていった時期で、何よりコロナ対策が最重要課題でした。私の先輩が、高木美智代さん(元・厚労副大臣、党新型コロナ対策本部事務局長)だったこともあり、現場の声を現職議員に届けながらの充実した政治活動で、とてもありがたい経験をさせていただきました。
ー出馬する際、政策課題としてどのようなことを感じましたか
若者の投票率の低さに象徴されるように、政治と若者の距離が非常に遠いことが課題だと感じています。
私は日本の若者が政治に参加しづらい背景には、いわゆる若者団体が安定して活動できるような助成制度がないことが挙げられると考えています。選挙権年齢が18歳に引き下げられた時、さまざまな若者団体ができ、若者の政治参加の機運が盛り上がりましたが、多くの団体が持続的に活動することができませんでした。スウェーデンでは、ユースカウンシル(若者協議会)の活動が非常に活発で、7割位の若者が何らかの活動に参加しています。助成費用も日本から見れば、まさに異次元で、スウェーデンは人口わずか1000万人余りにもかかわらず、2019年度実績で約25億円を105のユースカウンシルなど若者団体に拠出しています。日本では、2023年度の補正予算で、若者団体に関する調査研究費として1000万円を計上したのみで、この分野における取り組みはまだまだ発展途上。今後の拡充へ、全力で取り組みます。
(2)何よりも「人間中心」であるべきー公明党のデジタル政策
ー公明党は2023年に「人間中心の信頼できる新たなAIビジョン」を策定していますが、内容について教えてください。
「人間中心の信頼できる新たなAIビジョン」の策定に当たっては、政府の有識者会議であるAI戦略会議のメンバーなどから意見を伺いました。
AI技術が急速に進化する中で、便利になる反面、著作権の侵害やフェイクニュースの拡散などのリスクも懸念されていて、政府としてどのように対応するべきか、必要に応じて立法措置を講ずるべきではないか、といった内容を盛り込みました。
ー「人間中心の」という言葉がありますが、「人間中心」という言葉はどういう意味なのでしょうか?
AIは人間の思考を、一部自動化する技術ともいえ、社会をこれまで以上に豊かにする可能性を持っています。ただ、その利用により人間の内面にどのような影響を与えるのかは、未知数です。
特に、心身の発達段階にあるこどもがAIを利用する際には、十分な注意が必要です。日本のこどもは自己決定する機会に乏しく、自己肯定感が低いことが指摘されています。生成AIをこどもが活用する中で、リアルのコミュニケーションよりも、何でもすぐに答えてくれるAIとのコミュニケーションの方が「楽だ」と感じるようになるかもしれません。人間同士の絆が希薄になってしまえば、社会全体のレジリエンスが失われることになります。したがって、とくに教育分野で生成AIを活用する際には、その利用に関するリテラシー教育が重要になってくるでしょう。
また、生成AIを活用したフェイクニュースによって、人々の判断が操作される危険性も否めません。アメリカ大統領選をはじめ、今年は「選挙とAIの年になる」との見方もあります。生成AIのあり方が「人間中心」であるためには、Originator Profile(注:発信者情報を明らかにしてコンテンツを流通させる技術のこと)など、発信者情報の透明化が併せて進められるべきです。
ー公明党「生成系AI利活用検討委員会」は今後どのような活動を行うのでしょうか?
今年1月、政府内で「AI事業者ガイドライン」の案が取りまとめられました。関連して、各省庁でも生成AIに関する対応策が春に向けて検討されていると聴いています。早ければ、6月の骨太の方針で具体的な方針が出てくる可能性もあります。これらの内容に対して、公明党の「生成系AI利活用検討委員会」でも検討し、政府に何かしらの形で働きかけていきたいと思います。
(3)若者が希望の持てる国へー河西議員が取り組みたいこと
ー生成AIに限らず、河西議員が今後取り組みたいことについて教えてください
1つ目は、先ほど申し上げた若者の政治参加に対する取り組みです。私は、若者の政治参加を進めるには、まず若者が、自分達の意見が尊重され、反映される成功体験を積むことが必要だと考えています。そのため、公明党としても、先般制定されたこども基本法では「こどもや若者が意見を表明し、社会に参画する機会を確保する」という文言に非常にこだわりました。
2つ目は、「静かなる有事」である少子高齢化対策です。私には二人のこどもがいますが、こどもたちが大きくなった時の日本について考えると危機感が募ります。今、若い方々に将来への不安、もっと言えば国の将来への絶望が広がっていて、希望を持つこと自体に違和感がある、との声も耳にします。結婚やこどもを持つことをためらう方も多く、日本を、希望を持てる国に変えていかなければなりません。
ー最後に、読者へのメッセージをお願いします
昨今の政治資金をめぐる問題は、立法府への信頼を根底から揺るがす問題であり、与党だからこそ、極めて深刻に捉えています。過去のリクルート事件は、官民の癒着によって引き起こされましたが、今回は政治サイドだけで不透明な資金作りが行われており、これまでとは一線を画す事件だと思います。我が党は、いわゆる連座制に匹敵するような制度を政治資金規正法に導入することや、与野党問わず不透明な資金の温床となってきた「政策活動費」の使途公開の義務付けなどを盛り込んだ政治改革ビジョンを訴えています。そして何より、政治への信頼を取り戻そうとする以前に、まずは、国会議員自身が国民に対する畏敬の念を取り戻すべきです。その上で、政治資金規正法の改正に取り組み、何としても、この国の政治を前に進めていきたいと思います。