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スプロール現象とは?問題点・コンパクトシティ構想・事例を簡単解説

投稿日2021.7.1
最終更新日2024.02.29

スプロール現象とは、都市郊外で無計画に市街地開発が広がっていく現象です。

人々の生活だけでなく、防災や行政にも大きな影響を与えることから、重要な社会問題として捉えられています。

今回の記事では、以下についてわかりやすく解説します。

  • スプロール現象とは
  • スプロール現象がもたらす影響
  • スプロール現象への対応策|コンパクトシティについて
  • スプロール現象に対する政府の取り組み

本記事がお役に立てば幸いです。

1、スプロール現象とは

スプロール現象とは
「スプロール(sprawl)」とは、直訳すると無計画に広がる・ぶざまに広がるという意味です。

「スプロール現象」とは、都市から郊外への計画的なつながりなどを意識しないまま、無秩序に市街地開発が進む現象のことです。 「スプロール化」とも呼ばれます。

スプロール現象が進むと、以下のような事象が起こります。

  • 本来地方が持っていた機能を十分に発揮できない
  • 居住環境の整備が追いつかない
  • 周囲の市街地と連担しない

重要な社会問題の1つであり、実効性のある対応策が早急に求められています。

(1)スプロール現象が起こる原因

スプロール現象が起こる原因には、

  • 都市の地価の上昇
  • 大型店舗の郊外化
  • 自動車の増加

などが関係しているといわれています。

高度経済成長期以降の

  • 急激な人口の増加
  • モータリゼーションの本格化

により、人々の居住が中心市街地から、郊外へと急速に進みました。

こうした都市構造の変化によって、スプロール現象が発生し始めたと言われています。そして、スプロール現象は、居住だけでなく商業機能の郊外化とともに進行していきました。


画像出典:店舗建設の動向について∼大型店舗の動向を中心に〜|国土交通省

上記のグラスから、ショッピングセンターの開設数は、中心地域や周辺地域への開設と比べ、郊外地域への出店が伸びていることがわかるでしょう。

スプロール現象が進むにつれて、公共施設は郊外に移転したため、中心市街地の都市機能の空洞化が、さらに進行することとなったのです。

さらに、マイカーでの移動が増えたことで、生活環境と仕事場が離れていても、生活が可能になったことも大きく関係していると考えられています。

参考:店舗建設の動向について∼大型店舗の動向を中心に〜|国土交通省

2、スプロール現象がもたらす影響

居住環境が整わないまま、宅地化が進むスプロール現象の発生は、広範囲にわたって都市機能を低下させかねません。

具体的な影響として、以下が挙げられます。

  • 防災への影響
  • 生活への影響
  • 行政への影響

(1)防災への影響

近年では、

  • 山などの傾斜地における宅地化
  • 湾岸部の埋め立て

が進行することも多くなっています。

このような埋め立てや造成宅地によって、地震時の

  • 土砂崩れ
  • 液状化現象
  • 排水施設の不備による、周辺への水害

といった被害の発生が懸念されているのです。

例えば、新潟県中越地震時には、長岡市など谷を埋め立てた市街地で、地滑り現象が発生しました。また、阪神大震災時には、神戸ポートアイランド・六甲アイランドで、大規模な液状化現象が発生しました。

「首都直下地震の被害想定」では、東京湾岸地域で、上記の災害により、約3万棟もの建物の全壊が懸念されています。

参考:首都直下地震の被害想定|内閣防災情報

(2)生活への影響

スプロール現象が進むにつれて、通勤距離が伸び、郊外生活では車が不可欠になる可能性があります。

車の利用数が増加することで、

  • 交通渋滞
  • 交通事故
  • 消防活動への支障
  • 大気汚染
  • 騒音

などの社会問題が発生してしまうのです。

車社会の進行は、公共交通機関の利用者の減少を招き、路線や運行本数の削減・縮小にもつながります。

(3)行政への影響

無計画に宅地開発だけが進んでいくと、

  • 道路
  • 学校
  • 病院
  • 上下水道
  • 福祉・介護サービス

などのインフラ整備が間に合わない、という可能性も出てきます。

インフラ整備が後追い的になると、

  • 公共施設の建設
  • 公共サービスの維持・更新

などにかかるコスト負担が増加し、地方自治体の財政状況を大きく圧迫するおそれがあるのです。

また、虫食い状に住民が増えてしまうと、自治体への税収入も分散してしまい、整備の割に税収が回収できないという状況にもつながります。

3、スプロール現象への対応策|コンパクトシティについて

スプロール現象
スプロール現象への対応のために考えられたのが、「コンパクトシティ」です。 

コンパクトシティとは、「コンパクト(小さくまとまる)」という言葉から、郊外に広がった産業や生活機能を、できるだけまとめた街を目指す都市政策を意味します。

つまり、特定の地域に人を集めることで、社会インフラを効率的に利用し、整備などの費用を抑えようというのです。

コンパクトシティ構想は、スプロール現象を防ぐことだけでなく、

  • 高齢者に合わせた街作り
  • 経済的な合理化
  • 公共交通機関の利用拡大

などの狙いもあり、街づくりや町おこしについても期待されています。

参考:コンパクトシティの形成に向けて|国土交通省

(1)コンパクトシティ構想のメリット

メリットには

  • インフラ整備などにかかる費用を節約できる
  • 高齢者も暮らしやすくなる
  • 災害時の被害を抑えられる

などが挙げられます。

スプロール現象が深刻化している日本で、インフラ整備にかかるコストに悩む自治体は増加傾向にあります。

コンパクトシティ誘導政策によって、地域への人口が増えれば、

  • 交通機関
  • 通信施設
  • ガス電気
  • 上下水道

といった、インフラの利用者も増え、コストの節約につながるのです。

また、

  • スーパー
  • 病院
  • 市役所

などの公共施設も充実し、高齢者も安心して暮らせる街づくりも可能になります。

さらに、安全な地域でまとまって生活してもらうことで、災害時の救出も迅速に対応できるようになるのです。 

(2)コンパクトシティ構想のデメリット

デメリットとして以下が挙げられます。

  • 食料自給率の低下
  • 農業・林業の減少
  • 渋滞問題の発生
  • 騒音問題や近隣トラブルの増加

中心市街地に人を集中させることで、農業の荒廃が進み、食料自給率の低下を引き起こす可能性があります。

食料自給率の低下

農林水産省の調べによると、食料自給率が下がっていることが分かります。

食料自給率

引用:日本の食料自給率|農林水産省 

1965年度の日本の食料自給率は以下の通りでした。

  • カロリーベース:73%
  • 生産額ベース:86%

2021年の食料自給率は以下となっており、減少していることがわかります。

  • カロリーベース:38%
  • 生産額ベース:63%

農業・林業の減少

農業や林業など第1次産業を担う人と、都市部に住む人の生活スタイルは異なります。

こうした状況の中で、コンパクトシティ誘導政策を進めることで、以下のような問題が懸念されているのです。 

  • 郊外に住む農家などへのケア不足
  • 農業離れの加速

4、スプロール現象に対する政府の取り組み

スプロール現象を解決するために、政府はさまざまな対策を講じています。

最後に、主な取り組みである以下についてみていきましょう。

  • 地方都市リノベーション事業
  • コンパクト・プラス・ネットワーク
  • グランドデザイン2050

(1)地方都市リノベーション事業

国土交通省がコンパクトシティ誘導政策として実施しているのが、「地方都市リノベーション事業」です。

地域の機能を中心部に集約させることを目的に

  • 既存の建物を用いた活用事業
  • 図書館やコミュニティセンターの合併
  • 社会資本整備総合交付金の交付

といった計画を進めています。

参考:地方都市リノベーション事業|国土交通省

(2)コンパクト・プラス・ネットワーク

コンパクト・プラス・ネットワークとは、公共機関や徒歩圏内に、住宅や商業施設など生活サービス施設をまとめて立地した、高齢者も安心して暮らせる街づくりの考え方です。

  • 住宅や施設へのアクセス確保など生活利便性の向上
  • 地域内での消費向上による地域経済の活性化
  • インフラサービスの効率化など行政コストの削減
  • 地球環境への負荷の低減

などの効果が期待されています。 

人口減少や高齢化、拡散した市街地や空き家の増加など、市が抱える課題は数多く存在しています。

こうした課題に対応するため、「コンパクトシティ」に、公共交通ネットワークの再構築をプラスした「ネットワーク型コンパクトシティ」が提案されているのです。

参考:コンパクト・プラス・ネットワークのねらい|経済産業省

(3)グランドデザイン2050

グランドデザイン2050とは、

  • 急速に進む人口減少
  • 災害のリスク
  • 国土状況変化

の問題点や危機感を共有しつつ、2050年を見据えた、国土の理念や考え方を示すものです。

具体的には、

  • 都道府県を超えて周辺都市が連携する「高次地方都市連合」の構築
  • 山間部などに診療所や商店などを集約した拠点の構築
  • 周辺地域における交通と情報通信によるネットワークの構築

などの戦略を掲げています。

参考:国土のグランドデザイン2050|国土交通省

PoliPoliで公開されている環境関連の取り組み

誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策について、以下のように公開されています。

あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。

PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者

議員名 田嶋 要
政党 衆議院議員・立憲民主党
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies

 

(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • 分散型エネルギー社会を実現するための基本法をはじめとした環境整備を行い、エネルギーの地産地消や原発依存からの脱却、エネルギー転換の過程で起こる雇用の公正な移行を実現します!

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

まとめ

今回はスプロール現象の原因や対策について、コンパクトシティとあわせて解説しました。

郊外地域に虫食いのように宅地が点在する「スプロール現象」に加え、社会インフラの老朽化や超高齢化社会による社会保障の増大など、従来行政サービスの維持が困難な状況になりつつあります。

街づくりに対する思考転換を必要とする時代が到来していることを、あらためて意識する必要があるでしょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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