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政治ドットコム選挙引っ越しをすると選挙権はどうなる?3か月ルールと投票できないケースについて解説

引っ越しをすると選挙権はどうなる?3か月ルールと投票できないケースについて解説

投稿日2022.12.13
最終更新日2022.12.13

国会議員や知事などを選ぶ権利のことを選挙権といい、18歳以上のすべての日本国民にこの権利が与えられます。

選挙権は、自分が住む地域をよくするために行使することができますが、引っ越しから3カ月未満の人は、以前の住所の地域で投票を行うことになります。

また、選挙の種類によっては、3カ月未満の間は投票できなくなることがあります。
本記事では

  • 選挙権の基礎知識
  • 引っ越しと選挙権
  • 各種選挙(国会議員、知事、市区町村長、地方議員の選挙)との関係

についてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、選挙権とは

選挙 投票
選挙権の基礎知識を見ていきましょう。

(1)普通選挙が行われるようになったのは戦後

選挙権が与えられる年齢が18歳以上になったのは、2016年からです。
それ以前は20歳以上が条件となっていました。

参考:総務省

今日では、

  • 男女両方に選挙権を与えられること
  • 収入に関係なく選挙権を与えられる

現在これは当たり前のことになっていますが、以前はそうではありませんでした。
戦前は、一定額以上の納税をした男性だけに選挙権が与えられていた時期もありました。

戦後になってようやく、男女差別も収入差別もない「普通選挙」が行われるようになったのです。

(2)同じ住所に3カ月以上住まないと選挙人名簿に登録されない

選挙権は18歳に到達すれば獲得できますが、それを行使するには、市区町村の選挙管理委員会が作成する選挙人名簿に登録されなければなりません。

なぜならば日本の選挙は、すべて地域を区切って行われるからです。
選挙人名簿は、

  • 3月1日
  • 4月1日
  • 9月1日
  • 12月1日

の年4回、更新されます。

参考:総務省

また、選挙が行われるときも選挙人名簿が更新されます。
そして、同じ住所に3カ月以上住んでいないと、選挙人名簿に登録されません。

引っ越してから3カ月未満しか住んでいないときに選挙が行われると、原則、以前の住所の地域で選挙権を行使することになります。

そのため、引っ越したからと言って、選挙権がなくなる訳ことはありません。

(3)3カ月以上のルールは不正防止のため

3カ月以上住まないと新住所の選挙人名簿に登録されないのは、不正を防止するためです。

例えば、悪意のある組織が、ある市の市長選に候補者を立てて、全国の組織員をその市に移住させたら、簡単に当選させることができてしまいます。

それでは、その市の市政が混乱してしまうので、「しっかり3カ月以上住んだ人たち」だけで選挙を行うわけです。

ただ「引っ越し3カ月ルール」は、国政選挙と地方選挙で少し異なるので解説します。

2、国政選挙の場合

衆議院議員と参議院議員の国会議員を選ぶ選挙のことを国政選挙といいます。

国政選挙は、引っ越し先の新住所で選挙人名簿に登録されるまで、旧住所で投票することになります。

旧住所とすでに縁遠くなったりすると、「旧住所の地域の代表者を積極的に選ぶ気持ちになれない」と思うかもしれませんが、3カ月以上経過するまでは、新住所の地域の代表者を選ぶことはできません。

新住所で、旧住所の地域の投票をするとき、不在者投票を利用すると、わざわざ旧住所に行かずに投票することができます。

不在者投票は新住所、滞在先、指定病院等の施設などからの投票できる仕組みと、旧住所の選挙管理委員会(自分の名前が掲載されている選挙人名簿を管理している選挙管理委員会)に投票用紙などの必要書類を請求し、郵便で投票できる仕組みがあります。

参考:総務省

3、地方選挙の場合

投票 

  • 知事
  • 都道府県議会議員
  • 市区町村長
  • 市区町村議会議員

を選ぶ選挙のことを、地方選挙といいます。

参考:総務省

3カ月ルールは、「知事と都道府県議会議員を選ぶ選挙」と「市区町村長と市区町村議会議員を選ぶ選挙」で異なります。

国政選挙の場合と混同してしまうかもしれませんので、ご注意下さい。

(1)知事と都道府県議会議員を選ぶ選挙

知事と都道府県議会議員の選挙は、引っ越し先が同じ都道府県内であれば投票をすることができます。

新住所に移ってから3カ月未満の場合は、旧住所にて投票します。
しかし、これまでと異なる都道府県に引っ越した場合は、元の都道府県の知事選も都道府県議会議員選も投票することができません。

例えば、他の都道府県に引っ越してすぐに、元の都道府県の知事選と、新住所の都道府県の知事選が同時に行われた場合、どちらにも投票できません。

なぜならば、元の都道府県の知事選と都道府県議会議員選は「県外に引っ越した時点で投票できなくなる」というルールと新住所(県外に越した場合)の都道府県の知事選と都道府県議会議員選は「3カ月以上経たないと選挙人名簿に登録されず、投票できない」というルールのため、投票できないのです。

(2)市区町村長と市区町村議会議員を選ぶ選挙

引っ越し先が、元の住所と同じ市区町村の場合は、市区町村長の選挙でも市区町村議会議員の選挙でも投票することができます。

しかし、元の住所と異なる市区町村に引っ越してしまうと、その時点で、元の住所の市区町村長と市区町村議会議員の選挙に投票することはできません。

新住所で市区町村長選と市区町村議会議員選に投票できるのは、3カ月以上経ってからです。

4、選挙権や引っ越しにまつわる細かいルール

選挙権と引っ越しに関わる重要事項の解説は以上のとおりですが、その他にも細かいルールがあるので紹介します。

(1)ハガキ(投票所入場券)は転送してもらえるときと転送できないときがある

選挙が公示・告示されると(選挙の期日が公に告知されると)、選挙が行われることを知らせるハガキが有権者の自宅に届きます。

このハガキを「投票所入場券(または、投票所入場整理券)」といい、

  • 有権者の氏名
  • 住所
  • 名簿番号
  • 受付番号
  • 選挙の名称
  • 投票日時
  • 投票所住所

などが書かれてあります。

このハガキは選挙人名簿に登録されている住所に届くので、引っ越して間もない場合は、旧住所に届いてしまいます。

郵便局に転送の手続きをしておけば、このハガキも新住所に転送されます。

ただし、選挙管理委員会が投票所入場券を「県外転送不要」にしている場合は、異なる都道府県に引っ越した人のところには届きません。

都道府県外に引っ越した時点で、元の都道府県では知事選や都道府県議会議員選に投票できないので、わざわざ県外には転送しないのです。

投票所入場券はなくても投票自体は可能です。

(2)選挙人名簿の「ベースのデータ」は住民票

選挙人名簿は、市区町村がつくっている住民基本台帳を参考に作成します。
そして住民基本台帳は、住民票がつくられたときに記載されます。

そのため、選挙人名簿の「ベースのデータ」は住民票となります。
引っ越しをするとき、元の住所の市区町村で転出届を出し、引っ越し先の市区町村で転入届を出します。

この2つの作業が終わると、新住所の市区町村で住民票ができます。
そして、住民票ができた日から3カ月以上が経過した時点で、選挙人名簿に名前が記載されます。

そのため引っ越しをしたら住民票を移しておくことが重要です。
個人的な事情があり住民票を移せない場合は不在者投票制度を利用すると良いかもしれません。

(3)海外に住む日本人は在外選挙人名簿に登録すると国政選挙で投票できる

海外に住む日本人の選挙権を紹介します。
海外に住むことになる人は、市区町村で「海外転出届」を提出します。

海外に行くので、引っ越し先の市区町村で転入届を出すことはできません。
それで海外転出届を出すと、国内の住所がなくなり、住民票がなくなります。

住民票がなくなると住民基本台帳から名前が消えるので、選挙人名簿にも名前が記載されません。
このままでは選挙権を行使できないので、海外に住む人は、在外選挙人名簿に登録することになります。

在外選挙人名簿に登録されるには、まず、海外に住む対象者が、海外にある「在外公館」(日本大使館などのこと)で申請をします。

在外公館は、対象者が海外に3カ月以上居住していることを確認したら、外務省に申請書を送ります。

外務省は、対象者の本籍地などを確認したうえで、対象者を在外選挙人名簿に登録します。
在外選挙人名簿に登録されると「在外選挙人証」が対象者に交付されます。

この在外選挙人証があれば、日本の国政選挙で投票することができます。
在外選挙人名簿の登録地は、次のようになります。

  • 1994年5月1日以降に日本を出国した人:最終住所地
  • 1994年4月30日以前に日本を出国し、その後日本に居住していない人:本籍地
  • 海外で生まれて日本に一度も居住したことがない人:本籍地

参考:外務省

海外に住んでいる人は、「在外公館での投票」と「郵便投票を選択すること」ができます。
ちなみに海外に住んでいる人が投票できるのは国政選挙だけです。

地方選挙は、地元の選挙人名簿に登録されていないので(どの都道府県にもどの市区町村にも住んでいないので)、投票することができません。

海外から日本に戻ってきたら、新住所の市区町村で「転入届」を提出します。
その時点で国内の住民票が復活し、3カ月が経過した後、市区町村の選挙人名簿に登録されます。

引っ越しと選挙に関するQ&A

Q1.同じ住所に3カ月以上住んでいないと選挙権はどうなる?

引っ越してから3カ月未満しか住んでいないときに選挙が行われると、原則、以前の住所の地域で選挙権を行使することになります。

Q2.引っ越ししたら選挙権は無くなる?

引っ越したからと言って、選挙権がなくなることはありません。

Q3.選挙人名簿は何を参考に作成される?

選挙人名簿は、市区町村がつくっている住民基本台帳を参考に作成します。

そして住民基本台帳は、住民票がつくられたときに記載されます。

まとめ

引っ越しをしても選挙権はなくなりません。
選挙権は18歳の日本国民全員に与えられる権利だからです。

しかし、選挙権があっても「投票できない場合」があります。

都道府県が変わる引っ越しをして、3カ月が経過しないと、元の都道府県の地方選挙でも、新住所の都道府県の地方選挙でも投票できません。

国政選挙は、国内引っ越しなら必ず投票できますが、それでも引っ越してから3カ月未満は、旧住所での選挙に参加することになります。

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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