2023年6月16日、政府は『骨太の方針2023』を閣議決定しました。正式名称は、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」です。
骨太の方針は、総理大臣をトップとする経済財政諮問会議で決定されています。国が取り組む重要な政策課題や、その政策課題に対する方向性が示されており、年末の予算案の議論に向けての基礎となる重要な方針です。言い換えると、骨太の方針は、国が何を重要視していて、何にどのように予算をつけるのか、という大まかな方向性が示される文書です。
骨太の方針には、さまざまな政策に関する方針が書かれています。今回のニュースレターでは、『骨太の方針2023』より「こども・子育て」分野の政策に関する記述をピックアップして解説します。
『骨太の方針2023』におけるこども・子育て分野の記述
『骨太の方針2023』ではこども・子育て分野について、主に17〜19ページの、「第2章 新しい資本主義の加速、3.少子化対策・こども政策の抜本強化、加速化プランの推進 / こども大綱の取りまとめ」の項目で記載があります。
こども・子育て分野については、「こども未来戦略会議」の「こども未来戦略方針」と、こども家庭庁で策定を進めている「こども大綱」に沿って、8つにカテゴリー分けをされて、言及があります。
上記内容から、注目の項目を3つ取り上げ、論点や今後の課題について見てみます。
(1)「児童手当」拡充、「出産・子育て応援交付金」創設等の経済的支援
<これまでの課題>
- 若者の所得とこどもを持つことに対する負担感、親の所得による子供への支援の有無による不公平感がある。
- 正常分娩は、医療行為を伴わない医療機関が自由に料金を設定できる診療。少子化・高齢出産等のリスクから、出産費用が年々上昇している。
<これまでの取り組み>
- 2012年、「児童手当法」により中学校卒業までの児童に最大15000円が養育している方に給付される制度がスタート。なお、扶養親族の人数に応じて所得制限が設けられている。
- 出産費用の上昇に伴い、健康保険制度として「出産育児一時金」も随時引き上げ。2023年4月、42万円から現行の50万円が支給されることとなった。
- 「こども未来戦略方針」にて、「児童手当」の所得制限を撤廃、支給期間について高校生年代まで延長、第3子以降3万円、が盛り込まれた。
<これからの課題>
- 「児童手当」所得制限の撤廃に対して、「こども未来戦略会議」内でも議論が尽くされていなかったという意見がある。また費用の負担について国民の理解が未だ得られていない。
- 基本的には、児童手当の3分の1を地方財源で賄っており、国の決定によって、地方にとっても大きな費用負担となる。
(参考)
・内閣府子ども・子育て本部「児童手当」
・厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」
・こども家庭庁「出産・子育て応援交付金」
(2)こども家庭庁が「こどもまんなか社会」の司令塔に
<これまでの課題>
- 2008年をピークに総人口は減少を始めており、2022年の出生数が過去最小で80万人を下回る
- 現代社会ならではの虐待やいじめ、ひとり親家庭、貧困、ヤングケアラーなどの個別の課題に対して、各府省庁がそれぞれに対応を行っており、縦割り行政の弊害で支援が行き届かない。
<これまでの取り組み>
- 2023年3月、当時の「こども家庭庁設立準備室」で「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」が策定される。
- 2023年4月、国の子ども政策の司令塔となる新たな行政機関として、「こども家庭庁」が発足。今後5年間の指針となる「こども大綱」を年内を目処に策定する。
<これからの課題>
- 幼児教育・保育施設を包括する「幼保一元化」の構想が、結果としては内閣府の認定こども園と厚生労働省の保育園のみ移管となり、文部科学省管轄の幼稚園は留まり、引き続き省庁間での調整が必要に
- 移管することとなった事務についても、地域に存在する多様な施設、同時に支援対象が多岐に渡っており、質の高い支援や調整ができるか
(参考)
・こども家庭庁
・内閣官房「こども政策の新たな推進体制に関する基本⽅針のポイント」
・こども家庭庁設立準備室「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」
(3)安定的な財源の確保
<これまでの課題>
- 支援金制度など、年金や医療・介護と異なり、子ども・子育て政策は独自の安定財源を持っていなかった。
- 担当省庁が交差する問題に対して、積極的な予算編成が行われなかった。
<これまでの取り組み>
- 2023年4月、内閣府の外局としての「こども家庭庁」が、安定的な予算を確保するための行政機関となる。
- 「こども家庭庁」の下に、子ども関連予算を一元管理する特別会計「こども金庫」を創設し、政策の全体像と費用負担の見える化を進めることが、「こども未来戦略方針」に明示される。
<これからの課題>
- 「「加速化プラン」を支える安定的な財源の確保」について、一連の政策実施により、こども家庭庁予算(2022 年度は4.8 兆円)は約5割増加すると見込まれているが、その財源はまだ検討中である。
- 社会保障制度による歳出改革等のみで、「実質的に追加負担を生じさせない」が達成できるのか。また社会保障制度の機能低下を招かないか。
(参考)
・こども家庭庁「予算・決算」
・こども未来戦略会議「こども未来戦略方針」
・こども家庭庁「こども大網の推進」
『PoliPoli』に掲載されている、こども・子育てに関する政策
誰でも気軽に政策に関する意見を投稿できるプラットフォーム『PoliPoli』には、こども・子育てに関する政策が投稿されています。
ぜひ政策提言やコメントをしてみて下さい。
上記政策の閲覧・コメントはこちら→
①「こども・若者が輝く未来の実現のために」
②「出産費用等の負担を軽減したい!」
参考URL:株式会社PoliPoli|note ニュースレター|骨太の方針2023【こども・子育て】