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政治ドットコムニュースレター特集|骨太の方針2023【デジタル】

特集|骨太の方針2023【デジタル】

投稿日2023.9.14
最終更新日2023.12.25

2023年6月16日、政府は『骨太の方針2023』を閣議決定しました。正式名称は、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」です。

骨太の方針は、総理大臣をトップとする経済財政諮問会議で決定されています。国が取り組む重要な政策課題や、その政策課題に対する方向性が示されており、年末の予算案の議論に向けての基礎となる重要な方針です。言い換えると、骨太の方針は、国が何を重要視していて、何にどのように予算をつけるのか、という大まかな方向性が示される文書です。

骨太の方針には、さまざまな政策に関する方針が書かれています。今回のニュースレターでは、『骨太の方針2023』より「デジタル」分野の政策に関する記述をピックアップして解説します。

『骨太の方針2023』におけるデジタル分野の記述

『骨太の方針2023』ではデジタル分野について、主に10〜11ページの、「第2章 新しい資本主義の加速、投資の拡大と経済社会改革の実行、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速」の項目で記載があります。

デジタル分野については、11の政策について言及があります。

骨太の方針2023【デジタル】
上記内容から、注目の項目を3つ取り上げ、論点や今後の課題について見てみます。

(1)ガバメントクラウドの導入による自治体基幹業務システムの統一・標準化

<これまでの課題>
行政サービスの多くを地方公共団体が提供しており、これまでこの基幹業務システムは、個別に開発しカスタマイズをしていました。結果として、次の課題がありました。

  • 維持管理や制度改正時の改修等において個別対応が必要で負担が大きいこと。
  • 情報システムの差異の調整が負担となり、クラウド利用が円滑に進まないこと。
  • 住民サービスを向上させる最適な取組を迅速に全国へ普及させることが難しいこと。

<これまでの取り組み>

  • 「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)第5条に基づき、取り組みをスタート。
  • ガバメントクラウドの導入に向けて、クラウド事業者を決定。
  • 先行事例として8件の自治体にて検証と評価。

<これからの課題>

  • 2025年度中という期限までに、全ての地方公共団体が情報システムの移行することができるか。
  • デジタル庁が各自治体の取り組み状況を把握できるか。
  • 標準システムを利用した業務を始めるにあたり、人材や技術、財政面のサポートができるか。

(参考)
・デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」
・「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)

(2)デジタル人材の確保・育成、デジタル技術の活用について

<これまでの課題>

  • 2020年12月閣議決定の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」に基づき、「自治体DX推進計画」が策定。
  • ガバメントクラウドの導入や行政サービスのデジタル化、デジタル技術や AI 等の活用による業務効率化が求められるものの、組織体制・人材がいないという実情がある。

<これまでの取り組み>

  • 全庁的、横断的な推進体制とする必要があるため、DXを推進するためのCIO(情報化統括責任者)、また外部デジタル人材の積極活用を促しているCIO補佐官の設置を決定。
  • 自治体職員の内部育成のため、システムの内製化・スキルアップ・サービスデザイン思考の取得などに取り組み。
  • 都道府県ごとのデジタル人材のシェアリング・ネットワーク化。

<これからの課題>

  • 都道府県に比べ、市区町村での外部人材を活用したCIO補佐官の適任者が見つからない進捗の中、そもそも募集にあたって外部デジタル人材に求める役割やスキルを整理・明確にすることができない根本的な課題がある。
  • 6割以上の全国の市区町村から、情報化担当職員の確保・育成が課題であるという回答が寄せられている。

(参考)
・総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第 2.0 版】」
・総務省「自治体DX推進のための デジタル人材の確保の取組」

(3)生成AIの最適な利用や、計算資源・データの整備・拡充などAI開発力の強化を図る。

<これまでの課題>
2022年11月、アメリカのOpenAIが「ChatGPT」を公開、瞬く間に利用が広がり、文章のみならず、画像や音声においての生成AIの発展も連日続いています。
この生成AIを対して、日本政府では以下の課題と姿勢を示しています。

  • 生成 AI の登場は、幅広く生活の質を向上させる「歴史の画期」となる可能性になる。
  • 開発・提供・利用を促進するためにも、生成 AI の懸念やリスクへの適切な対応を行うべきである。

<これまでの取り組み>

  • 2023年5月、AIに関する政策の方向性を議論する「AI戦略会議」で「AIに関する暫定的な論点整理」がまとめられる。
  • G7サミットにおいて、国際的なルール作りの「広島AIプロセス」が合意、展開。
  • 関係省庁が連携する「AI戦略チーム」を基幹として、文科部科学省の「学校現場の生成AI活用ガイドライン」などをはじめとして検討が始まる。

<これからの課題>

  • AIには国境はなく、国際的な流通が容易であり世界中に影響を及ぼし得る。そのためリスクへの対応は、国際協⼒・国際協調が必要とされる。
  • 生成AIの登場により課題や懸念が拡大しており、既存の「AI 利活⽤ガイドライン」に関して、必要な改訂などを検討する必要がある。

(参考)
・内閣府「AI戦略会議」
・AI に関する暫定的な論点整理 
・G7広島サミット  ※「広島AIプロセス」についてはPart.38
・内閣府「AI戦略チーム」
・総務省「AI利活用ガイドライン」
 
参考URL:株式会社PoliPoli|note ニュースレター|骨太の方針2023【デジタル】

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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