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オンブズマン制度とは?行政に対する苦情の申し立て方法を解説

投稿日2021.4.5
最終更新日2021.04.08

オンブズマン制度とは、行政に対する市民の苦情を受け付ける制度です。
今回の記事では

  • オンブズマン制度の概要
  • 日本におけるオンブズマン制度
  • 苦情の申し立て方法
  • オンブズマンによる勧告制度

について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、オンブズマン制度とは

オンブズマン制度
オンブズマン制度とは、行政に対する国民の苦情を受け付け、オンブズマン(代理人)による中立の立場からその要因を解明、是正勧告することで、問題を素早く解決する制度です。

  • オンブズマン制度の歴史
  • オンブズマン制度の組織

について解説していきましょう。

(1)オンブズマン制度の歴史

オンブズマン制度は、1809年にスウェーデンで初めて設置されました。
「オンブズマン」という言葉は、代弁者・代理人という意味を持つ、スウェーデン語「ombudsman」に由来します。

日本では1961年に「行政相談制度」としてオンブズマン制度が導入されました。

(2)オンブズマン制度に関係する組織

オンブズマン制度に関係する

  • 国際オンブズマン協会(IOI)
  • アジア・オンブズマン協会(AOA)

の2つの組織についてご紹介します。

①国際オンブズマン協会(IOI)

オンブズマン制度画像引用元:国際オンブズマン協会(IOI) 総務省

国際オンブズマン協会は、1978年にオンブズマン制度の普及と発展を目的に設立された国際的な組織です。

2019年の時点で106カ国が参加しており、日本は1994年に加盟しています。

参考:国際オンブズマン協会(IOI) 総務省

②アジア・オンブズマン協会(AOA)

オンブズマン制度画像引用元:アジア・オンブズマン協会(AOA) 総務省

アジア・オンブズマン協会(AOA)とは、1996年にオンブズマン制度の促進を目的に設立された組織です。

アジア・オンブズマン協会には、

  • 中国
  • 韓国
  • フィリピン

など、アジアの国々が参加しています。
2020年の時点で22カ国が参加し、日本は1996年から理事として活動しています。

参考: アジア・オンブズマン協会(AOA) 総務省

2、日本におけるオンブズマン制度

日本のオンブズマン制度には、

  • 政府内に設置されているもの
  • 地方自治体に設置されているもの

の2種類があります。
それぞれ解説していきましょう。

(1)政府内に設置されているもの|総務省行政評価局

政府内に設置されているオンブズマン制度は、総務省にある行政評価局の「行政相談」です。
以下の3つの機能を通じて、政策や各省庁の業務を評価しています。

  • 政策評価の推進
  • 行政評価局調査
  • 行政相談

オンブズマン制度画像引用元:行政評価局の紹介 総務省

行政相談では、全国50カ所に総務省行政相談センター「きくみみ」が設置され、

  • 面接
  • 電話
  • インターネット

などで国民からの苦情を受け付けています。

オンブズマン制度画像引用元:総務省行政評価局パンフレット 総務省

(2)地方自治体に設置されているもの

オンブズマン制度には、地方自治体が独自に設置しているものもあります。

総務省の資料によると、2015年の時点で34の地方公共団体が「全国行政苦情救済・オンブズマン制度連絡会」に参加しています。

参考:地方公共団体における公的オンブズマン制度の実態把握のための調査研究 報告書 総務省

3、オンブズマン制度を利用した苦情の申し立て方法

オンブズマン制度を設置している

  • 藤沢市
  • 札幌市

を例にとり、苦情の申し立て方法をご紹介します。

(1)藤沢市における苦情申し立て方法

藤沢市で苦情を申し立てる場合は、「苦情申立書」を提出します。
申立書の提出は、持参または郵送、電子申請も可能です。

苦情申立書には

  • 苦情申立ての趣旨(市や市の職員に対する要望)
  • 苦情申立ての理由(苦情の経緯)
  • 苦情申立ての原因となった事実のあった年月日

などを記入します。

ただし、藤沢市では以下の事項については、苦情が申し立てられません。

  • 判決、裁決等で確定しているもの
  • 裁判所等で係争中のもの
  • 議会に関するもの
  • オンブズマン(代理人)に関するもの
  • 職員の勤務内容に関係するもの

参考:藤沢市オンブズマン制度 藤沢市
参考:苦情申立書記入要領 藤沢市

(2)札幌市における苦情申し立て方法

札幌市で苦情を申し立てる場合も、藤沢市と同様に「苦情申立書」を提出します。

申立書の提出は

  • オンブズマン室への持参
  • 郵送
  • FAX
  • ホームページ

などから申請できます。
苦情申立書には

  • 申し立てる苦情の内容及び理由
  • 苦情の申し立ての原因となった事実のあった日

などを記入します。

札幌市では申立書提出時に、オンブズマンと面談することもできます。
札幌市で苦情が申し立てられない事項は以下の通りです。

  • 判決、裁決等により確定しているもの
  • 判決、裁決等を求めて係争中のもの
  • 監査委員が監査を実施しているもの
  • 議会に関するもの
  • オンブズマンに関するもの
  • 札幌市子どもの権利救済委員に救済を申し立てたもの
  • 札幌市子どもの権利救済委員に関するもの

参考:苦情申立ての方法 札幌市 

参考:苦情申立書記載例 札幌市

4、オンブズマンによる勧告制度

オンブズマンによる勧告制度とは、苦情申立書の内容を調査し、市の業務を是正する必要がある場合に、オンブズマンによって行われる勧告です。

札幌市の例を挙げてみましょう。
札幌市では「札幌市オンブズマン条例」に基づき、オンブズマン制度を設置しています。

同条例ではオンブズマンによる勧告制度を以下のように定めています。

1.オンブズマンは、苦情等の調査の結果、必要があると認めるときは、関係する市の機関に対し、当該苦情等に係る市の業務について是正等の措置を講じるよう勧告することができる。(条例第22条第1項)

2.オンブズマンは、申立てに係る苦情について勧告したときは、苦情申立人に対し、その旨を速やかに通知しなければならない。(第22条第3項)

3.勧告を受けた市の機関は、これを尊重しなければならない。(第23条)

4.オンブズマンは、勧告をしたときは、当該勧告を受けた市の機関に対し、その是正等の措置の状況について報告を求めるものとする。(第24条第1項)

5. 報告を求められた市の機関は、報告を求められた日の翌日から60日以内に、オンブズマンに対し、是正の措置の状況について報告するものとする。(第24条第2項)

6.オンブズマンは、前項による報告があったときは、苦情申立人に対し、その旨を速やかに通知しなければならない。(第24条第3項)

7.オンブズマンは、勧告をしたとき、又は是正の措置の状況について報告があったときは、その内容を公表するものとする。(第25条第1項)

条文引用元:勧告制度の概要 札幌市

上記の条文の通り、札幌市ではオンブズマンによる勧告が行われると、市は勧告を尊重し、是正状況をオブスマンに報告する必要があります。

これにより、苦情の対象となった業務の改善につながると考えられています。
また、オンブズマンは申立人に内容を通知する必要があります。

まとめ

本記事ではオンブズマン制度について解説しました。
行政に対する苦情は言いづらさもあるかもしれません。

そこで第三者機関を利用するオンブズマン制度が役立ちます。
直接役所に行かなくても、郵送やインターネットで申立書を提出できるので、人目を気にする必要もありません。

より良い行政と市民の関係を築いていくために、オンブズマン制度を活用していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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