2024年12月23日、立憲民主党が主導し、日本維新の会、国民民主党と共同で通称「学校給食無償化法案」(正式名称:学校給食法の一部を改正する法律案)が衆議院に提出されました。
この法案は、すべての公立小中学校の生徒を対象に、学校給食の無償化を実現することを目的とし、教育と福祉の観点から注目を集めています。以下では、法案提出の経緯、背景、具体的な内容、そして課題について詳しく説明します。
1.「学校給食無償化法案」とは?目的と概要
学校給食無償化法案は、立憲民主党が主導し、日本維新の会、国民民主党がこれに賛同する形で共同提出されました。2023年にも立憲民主党と維新の会は、学校給食無償化法案を共同提出していますが、今回は国民民主党も加わり、3党での提出となりました。
法案提出の目的として、立憲民主党は「現在、保護者が負担する年間の平均給食費は公立小学校で約5万2000円、公立中学校で約5万9000円となり、昨今の物価高の影響も受け負担は増加しています。一部自治体では無償化が進んでいるものの、地域による格差が残されています。立憲民主党は、全ての子どもが安心して安全な給食を食べられるよう、国による一律の支援によって日本全国の給食を無償化することを目指しています」と述べています。
引用:立憲民主党HP
2.「学校給食無償化法案」提出の背景にある社会的課題と期待している効果
法案が提出された背景には、以下のような社会的課題が存在します。
- 少子化問題
日本の出生率は2024年現在、過去最低水準を更新しています。子育て世帯は経済的負担が大きく、教育費や生活費の増加が出生率低下の一因であると考えられています。学校給食費の負担軽減は、この課題への直接的な対策として位置づけられています。 - 子どもの貧困問題
日本では子どもの貧困率が依然として高く、約7人に1人が貧困状態にあると言われています。この中には、学校給食費を滞納する家庭があり、自治体による給食費補助が限界に達している状況も報告されています。無償化により、子どもが平等に給食を受けられる環境が整うと期待されています。 - 教育の平等性と福祉の向上
家庭の経済状況によらず、すべての子どもが栄養バランスの取れた食事を享受できるようにすることは、教育の平等性を高める重要な施策とされています。また、無償化によって親の負担が軽減されることで、子どもの教育環境も間接的に向上するとされています。
3. 「学校給食無償化法案」の具体的内容
法案の主な内容は以下の通りです。
- 無償化の対象
公立小中学校のすべての生徒を対象に、学校給食を無償化します。国立と私立の小中学校の生徒については、文部科学省による実態の把握が十分でないことを理由に、今回は検討事項としています。将来的には実施することも見据えて取り込んでいくとしています。 - 開始時期
無償化の開始時期は2025年4月1日と盛り込まれています。なお、財源の確保に関しては、無償化に必要な予算を年間約4900億円と試算しています。
4.「学校給食無償化法案」現在(2025年1月)の動向と反応
「学校給食無償化法案」は、2025年1月から始まる通常国会での法案成立を目指しています。
立憲民主党の筆頭提出者である城井崇衆院議員は、「子育て家庭を中心に大変関心の高い事項であり、昨今の物価高も相まって苦しいという家庭が多い状況にある。義務教育自体は無償だが、給食費は専門家によっては『隠れ教育費だ』という見方もあった。今回は公立小中学校での保護者負担に着目して、法改正の提案をした。各党の協力も得ながら成立を目指していきたい」としています。
引用:立憲民主党HP
こうした「学校給食無償化法案」に対して、石破茂首相は「『給食未実施校』や、実施校でも喫食しない児童・生徒には恩恵が及ばないといった公平性に加え、低所得世帯ですでに無償化されていることに伴う支援対象の妥当性、国と地方の役割分担や政策効果、法制面など考えられる課題を整理していく」としています。
なお、「学校給食無償化法案」に対しては、以下のような課題を指摘する声があります。
- 財政負担の増大
無償化には4,900億円の追加予算が必要とされ、財源の確保が課題となっています。特に、財政赤字が深刻化する中での新たな支出に対する懸念が指摘されています。 - 公平性の問題
全国で約7分の1とされる生活困窮世帯は基本的に生活保護などの制度で無償化されており、格差是正に大きな効果がないのではないかという意見があります。また、一律無償化は高所得層にも恩恵を与えるため、結果的に社会的公平性に欠けるとの批判もあります。 - 給食の質・量低下のリスク
財政負担の増加により、後に食材の費用や調理費用の削減が行われることを危惧する声もあります。安価な食材の使用が増加するなど、給食の質や量の低下を懸念する意見があります。
5. まとめ
学校給食無償化法案は、少子化対策や教育の平等性の向上を目指した画期的な取り組みです。しかし、財政負担や公平性をめぐる課題が依然として議論の焦点となっています。法案の成立には、超党派での合意形成と財源確保の具体策も鍵となります。また、自治体との連携や実施体制の整備も重要な課題です。
実現には、政策の持続可能性や社会的合意の形成が不可欠であり、今後の国会審議に注目が集まっています。