2016年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれた「保育園落ちた」という匿名ブログを覚えていますか?
待機児童問題の深刻さを表した保護者の悲痛なブログが有名になりましたね。
「待機児童」とは保育園に入りたいのに入れない子どものことで、2022年の待機児童数は2,944人です。
今回は、以下についてわかりやすく説明したいと思います。
- 待機児童問題とは
- 日本の待機児童の現状
- 待機児童問題の原因
- 待機児童問題の解決策
本記事がお役に立てば幸いです。
1、待機児童問題とは
待機児童とは『保育園に入りたいのに入れずに待機している子ども』のことです。
実際に日本ではどのような状況が起きているのでしょうか?
(1)待機児童の例
わかりやすい例で見てみましょう。
一般企業で働いていたAさんの家庭は出産前、配偶者のBさんと共働きで生計を立てていました。
妊娠を機に産休を取って子どもを産みました。
その後、予定していた復職の時期に合わせて保育園に子どもを預けようとしますが、保育園から「今は満員なので入れません、他を探してください」と断られてしまいました。
そのため
- 仕事にも復帰できず
- 稼ぐ予定だった給料も見込めず
- 育児費用はかさむばかり
Aさんは育児疲労と生活苦で困り果ててしまいます。
これが日本の待機児童の現状で、Aさんへの負担が重なり、
- 虐待
- 育児放棄
の問題にも繋がっています。
(2)厚生労働省が定めている待機児童の定義
厚生労働省が定めている待機児童の定義を見てみましょう。
【保育所の利用を待機している待機児童の定義】
保育が必要な認定(2号又は3号)を受けていて、特定の教育・保育施設 (認定こども園の幼稚園機能部分及び幼稚園は除く) 又は特定地域型保育事業に利用申請をしているものの、利用できていない子どものこと。
この1号~3号とは子ども年齢とそれぞれの家庭事情を指し、地域の保育園を利用したい場合には「認定」を受ける必要があります。
以下の画像をご覧下さい。
- 保育を必要とする事由は就労、妊娠、保護者や同居人の病気などが挙げられます。
- 厚生労働省の待機児童の定義では幼稚園は含まれていません。
幼稚園と保育園の違いは預けられる年齢と時間にあります。
幼稚園には3歳~5歳をお昼過ぎまで預けることができるのに対して、保育園は0歳~5歳を夕方まで預けることができます。
最近では、上記の厚生労働省の定義に当てはまらない「隠れ待機児童」の存在も問題になってきています。
2022年4月時点では、隠れ待機児童は7万人を超えているとされています。
隠れ待機児童には
- 保育園に入れずやむを得ず育休を延長した親の子ども
- 特定の保育所を希望している子ども
- 特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業を現在利用している子ども
などが含まれ、
「送迎の時間に限界があるため兄弟そろって同じ園に入れたい」、「家から通える保育園にしたい」など特定の保育所を希望する理由にはそれぞれの家庭事情があります。
また、1つ1つの園ごとに受けられるサービスも異なるためこれは非常に難しい問題です。
参考:朝日新聞
2、日本の待機児童の現状
特に待機児童が多い都道府県はどこなのでしょうか?内閣府が発表したデータを見てみましょう。
引用:厚生労働省
2022年4月付 全国待機児童数ランキング
1位 沖縄県 439人 待機児童率 0.71倍
2位 兵庫県 311人 待機児童率 0.26倍
3位 東京都 300人 待機児童率 0.09倍
待機児童数が多い都道府県は、沖縄県が1位です。また、待機児童率でも沖縄県が1位となっています。
沖縄の待機児童率が高い原因には米軍統治など歴史的背景によって保育所の体制に遅れがあることなどが理由に挙げられています。
3、待機児童問題の原因
日本に待機児童が増えてしまった原因には主に3つの社会背景があります。
それぞれの原因をくわしく見ていきましょう。
(1)保育園や保育士の不足
少子化とはいえ、日本では子どもの数に対して保育士が圧倒的に不足しています。
厚生労働省によると、保育士資格を持つ半数の人が保育所に就職せず、就職してもその半数が5年未満で離職しています。
たとえば、幼稚園は幼稚園教諭が子どもの世話をしますが、保育園に比べて預かる時間も短いため、自分のライフスタイルに合わせて就業することができる傾向にあります。
一方、保育園は夕方過ぎまで子どもを預かるため、就業時間も長く、子どもの数も満杯のため見守る人数と責任も多くなります。
また、幼稚園教諭よりも保育士の方が給料も安く、責任の重い労働に対して低い平均賃金などが人手不足の1つの原因として挙げられています。
深刻な保育士不足は、保育園を運営できないこと、子どもをこれ以上受け入れられないことといった保育所不足にも繋がっています。
しかし資格を取りやすくして保育士を増やすわけにもいきません。
子供の命を預かる重要な仕事だからです。
そのため、保育士に対しての支援や資格取得者に対して保育士になりたくなるようなアプローチの必要性が高まって来ています。
(2)女性の社会進出と制度
引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構 専業主婦世帯と共働き世帯
2000年代以降、専業主婦世帯は減り、共働きの家庭が増えています。
「働いている間は子どもを預けたい」「働かないと子どもを育てられない」といった母親の増加が保育所に応募が集中する理由の1つとして挙げられます。
現在は産休・育休制度が整備され、2021年の育児休業取得率は85.1%と比較的高い数字を記録したものの、第1子出産後も仕事を継続できた人は約半分の53.8%となっています。
出産を機に離職をする人が半数を占め、「育休を取ってみたものの、復職は難しかった」という女性の悲痛な声が数字から伺えます。
参考:厚生労働省
(3)核家族化
核家族化とは、
- 夫婦と未婚の子ども
- 夫婦のみ
- ひとり親世帯
の世帯を指し、従来のおばあちゃん・おじいちゃん・息子・嫁・子どものような大家族とは反対の少人数の家族のことで、2005年の総務省の調査によると、1世帯当たり人数は2.55人と過去最低を記録しています。
核家族化によって子どもの世話を見れる人(家族)が減少し、最近は母親だけの育児(ワンオペ育児)が問題となっています。
育児以外の家事も母親に集中傾向にあり、
- 「保育所がなければ子どもを見るのは自分しかいない」
- 「保育所に預けられなければ自分が働けない」
- 「保育所がなければ家事もままならない」
といった過酷な核家族の姿があるようです。
4、待機児童問題の解決策
国だけではなく企業・自治体も協力して待機児童の問題に取り組んでいます。
実際の取り組みを企業、国、自治体の順番で紹介したいと思います。
(1)朝日新聞社の待機児童問題「見える化」プロジェクト
朝日新聞社の待機児童問題「見える化」プロジェクトでは、すべての市区町村が毎年4月に公表し厚生労働省が9月にまとめた待機児童データをグラフで視覚化し、148市区町村の待機状況を一目で分かるようにしています。
また、このグラフでは隠れ待機児童数や待機児童になってしまった理由の内訳も見ることができます。
「なぜ、自分の自治体で待機児童が多いのか」その理由を事前に知ることで、保護者も対策が立てやすく、待機児童の少ない自治体への引っ越しや移動を促すことにより、都市部における待機児童の集中も防ぐことができます。
(2)政府の「子育て安心プラン」
国が行う「子育て安心プラン」は、2018年から2019年までに待機児童問題の解決に必要な予算を確保する計画で、遅くても2020年までの3年間で全国の待機児童を解消すること、並行して2018年から2022年までの5年間で女性就業率を80%にすることを目指しました。
この「子育て安心プラン」には、
- 保育の受け皿の拡大(保育所の増設など)
- 保育人材の確保
- 保護者への寄り添う支援
- 保育の質の確保、
- 持続可能な保育制度の確立
- 保育と連携した働き方改革
などの6つの支援が盛り込まれています。
また、国は「新子育て安心プラン」を2021年から2024年にかけて実施すると公表しています。
4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備するとし、以下のような方針を示しています。
- 地域の特性に応じた支援
- 魅力向上を通じた保育士の確保
- 地域のあらゆる子育て資源の活用
参考:厚生労働省
(3)港区の待機児童をゼロにした取り組み
2019年4月、港区はなんと待機児童ゼロを達成しました。
『待機児童ゼロなんて東京の都心でありえるの?』と思う人も多いかもしれませんが、実際に港区は複数の取り組みによって待機児童ゼロを実現しました。
港区が実施した取り組みは以下の通りです。
①空きクラスを活用した1歳児定員拡大事業
開設3年以内の3~5歳児クラスの定員を設けていない保育施設(9 施設)の空きクラスを有効活用して1 歳児の定員を60名分確保しました。
②保育コンシェルジュなどによるマッチング
2つ目は保育コンシェルジュの設置です。
保育コンシェルジュとは保護者と保育施設の入園マッチングを行う担当者のことで、保育所で勤務実績が2年以上ある保育士が担当します。
居宅訪問型保育事業をはじめ、利用可能な保育施設の案内、保育施設の空き情報をホームページや郵送で知らせてくれるほか、妊娠期から子育て期までの保育に関する相談も可能です。
これにより子育てと保育所探しで手一杯なお母さんの負担を軽減します。
※居宅訪問型保育事業:自宅で保育士やベビーシッターが保育を行ってくれるサービスのこと。
PoliPoliで公開されている子供関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、すべてのこどもが幸せになれる社会を作る政策について、以下のように公開されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|すべてのこどもが幸せになれる社会を作る!
(1)すべてのこどもが幸せになれる社会を作る政策の政策提案者
議員名 | 牧原 秀樹 |
政党 | 衆議院議員・自由民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/3Or29mOLgoahAWUnTTg9/policies |
(2)すべてのこどもが幸せになれる社会を作る政策の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- こどもたちが愛されて健やかに育ち、のびのびと活動・幸せに輝ける社会作り
- こどもを産み育てることが幸せだと思える社会環境づくり
- 「こども基本法」を制定、こどもの権利が守られる社会作り。
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- こども政策に関するデータ収集分析能力を向上
- こどもや子育て世代が抱える様々な課題に早急に対応
- こども政策を実現するために十分な予算を確保
- こども庁を創設
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
待機児童の解消には保育所の増設・保育士の増員が不可欠ですが、港区のようにすでにある保育所の空きスペースを活用したり、保育所と保護者のマッチングを推進することで待機児童を減らすこともできます。
少子高齢化が進む中、未来の日本を担う子どもたちの支援はとても大切ですよね。
すぐには増設・増員できない保育所や保育士の問題を徐々に解決しながら、居宅訪問型保育事業や保育コンシェルジュなど保育の多様化を実現すれば、日本全国待機児童ゼロの未来はきっと近づくはずです。