2035年問題とは、2025年から2035年にかけて団塊世代(一般的に1947年〜1949年生まれの人々)の高齢化が進み、ほかの世代を含めた人口の約3分の1を高齢者が占めることで、医療や経済に影響を与えると想定されている社会問題です。
本記事では
- 2035年問題とは
- 2035年問題の具体的な悪影響
- 2035年問題への政府の対策
について徹底解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、2035年問題とは
2035年問題とは、団塊世代が後期高齢者に突入し、ほかの世代を含めた総人口の約3分の1が高齢者になることで起こるとされている社会問題です。
後期高齢者とは75歳以上の高齢者です。
加齢による疾病などで自立した生活が難しくなる年齢でもあると言われています。
まずは
- 2035年問題のキーワードとなる「団塊世代」
- 2035年問題の前身である「2025年問題」
について見ていきましょう。
(1)団塊世代
団塊世代とは、1947年から1949年生まれの世代を指します。
例えば1947年生まれの場合
- 2020年で73歳
- 2035年で88歳
になります。
なぜ、団塊世代が2035年問題で大きな影響を与えるのでしょうか?
その理由は、団塊世代が占める人口比率にあります。
以下の総務省統計局が発表している人口比率のグラフを見てみましょう。
画像出典:「人口ピラミッド」から日本の未来が見えてくる!? ~高齢化と「団塊世代」、少子化と「団塊ジュニア」~ 総務省統計局
上のグラフにおける、1947年〜49年の第1次ベビーブームと表記されている部分が団塊世代の人口比率になります。
第2次ベビーブームよりも人口比率が高く、全世代の中で最も人口比率が高いことがわかります。
つまり日本の人口の中で最も多い世代が一気に高齢者となることで、医療保障などの負担が急激に高まると考えられているのです。
(2)2025年問題
2035年問題の前身とされるのが「2025年問題」です。
前述の通り、団塊世代は総人口の多くを占めます。
それらの団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、さまざまな社会問題が発生することを予測したものが2025年問題です。
2025年には団塊世代が75歳以上に突入し始め、5人に1人が75歳となる超高齢化社会を迎えると言われています。
今まで働き手として活躍してきた団塊世代が社会保障(年金や医療・介護保険など)の受け取り手となる一方、それらの保障を支える働き手は少子化の影響で不足してしまうのです。
下記は1960年代の人口ピラミッドです。
ピラミッド上層の老年人口(65歳以上の人口)をピラミッド下層の生産年齢人口(15歳以上65歳未満の労働力となる人口)が支えていることがわかります。
画像出典:医療と介護を取り巻く現状と課題等(参考資料) 厚生労働省
続いて、2030年のピラミッドを見てみましょう。
生産年齢人口の割合が減少し、逆三角形のピラミッドに近づいていることがわかります。
画像出典:医療と介護を取り巻く現状と課題等(参考資料) 厚生労働省
このように従来までの人口ピラミッドが崩れることにより
- 社会保障費の急増
- 医療、介護体制の不足
などの社会問題が懸念されています。
参考:高齢化の状況 内閣府
2、2035年問題によって具体的にどのような悪影響があるか
2035年問題によって私たちの生活には、実際どのような影響があるのでしょうか?
- 介護
- 医療
- 年金
- 経済
の4つの分野で解説していきます。
(1)介護職員の人員不足
前述のとおり、2025年に団塊世代が75歳に突入し、その後2035年には人口の約3分の1が高齢者になるとされています。
そこで急増するのは、介護サービスの需要です。
経済産業省が発表しているデータによると、介護を必要とする要介護(要支援)認定者の将来推計は、2025年で約815万人、2030年で約900万人になると予想されています。
下記のグラフを見ると右肩上がりで要介護者が増加していることがわかります。
画像出典:将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会 経済産業省
一方、介護職員の数は不足しており、このペースで高齢者が増加すると考えた場合68万人の介護職員が足りなくなるという予測が立てられています。
画像出典:将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会 経済産業省
(2)医療体制における課題
厚生労働省が発表したデータによると、2000年度の社会保障関係費は約168億円で、一般歳出における全体の約35%です。
2016年度には約320億円まで増加し、一般歳出における全体の約55%を占めています。
下記の「一般歳出に占める項目別の指数推移」でもわかるように、社会保障関係費は増加の一途を辿り、その原因の1つには我が国の高齢化があるとされています。
また、高齢化によって医療の需要が高まるとともに、
- 医師、看護師不足
- 病床不足
- 病院不足
などの可能性も考えていかなければなりません。
(3)年金制度の崩壊リスク
我が国の年金は、現役世代が納めた保険料を高齢者の年金に充てる賦課方式(ふかほうしき)で成り立っています。
2035年問題とともに、年金を受給する人が急激に増加すると考えられています。
しかし、少子化も同時に進んでいるため、保険料を納める人よりも年金をもらう人の方が多くなるので、賦課方式のバランスが崩れてしまうということが指摘されています。
今後、年金制度を維持していくためには
- 支給年齢を上げる
- 保険料を上げる
- 年金の水準を落とす
- 税収を増やす
などの対策が必要といわれています。
(4)経済の問題
少子高齢化の影響で我が国の生産年齢人口の比率(労働力)は減少傾向にあります。
そのため、2035年問題で深刻になる問題の1つには労働力の不足が挙げられます。
総務省が発表している人口の推移グラフを見ると、生産年齢人口を示すピンクの部分と子どもの人口を示すブルーの部分が縮小し、高齢者を示すイエローの部分が拡大していることがわかります。
画像出典:我が国の人口の推移 総務省
また、下記のグラフは、今後の経済成長に欠かせないIT分野の就業者数を表したデータです。
画像出典:2030年までのIoT・AIの就業者数へのインパクト 総務省
IT分野の就業者数は2016年以降右肩下がりの予測が立てられており、我が国の経済を維持するためには
- AI等による労働力の節約
- 人材育成
- 高齢者や育児により離職した女性の再雇用
などにより対処していく必要があると言われています。
3、2035年問題への政府の対策
2035年問題を解決するために政府は
- 介護士の離職防止
- 保険医療2035
- 1億総活躍社会の実現
などのさまざまな対策を打ち出しています。
それぞれ解説していきましょう。
(1)介護士の離職防止
前述の通り、介護職員の数は不足しており、将来約68万人の介護職員が足りなくなるという予測が立てられています。
現在も約70%の介護事業者が人材不足であると回答し、深刻な問題となっています。
また、介護職員不足に拍車をかけているのは、介護士の離職率の高さです。
厚生労働省の調べによると、離職者の約73%が勤務後3年未満に離職を決めています。
政府は介護士の離職を防止し、人材不足を解決するために
- マッチング支援や再就職準備金の貸付による離職者の再就職促進
- 就学資金等の貸付や中高年層などによる新規の介護士等の増員
- 待遇改善やメンター制度等による精神的負担の軽減
などの対策を行っています。
参考:介護職員の人手不足問題 明治安田総合研究所
「介護離職ゼロ」の実現に向けた介護人材確保対策について 厚生労働省
(2)保険医療2035
政府はこれまで経験したことのない少子高齢化を乗り越えるために、「保険医療2035」という提言を発表しました。
保険医療2035とは、2035年までに予測される各分野の需要増加に対応できるように保険医療のパラダイムシフト(変革)を目的とするプロジェクトです。
- 公平、公正
- 自律に基づく連帯
- 日本と世界の繁栄と共生
の3つの理念を掲げ、世界最高水準の健康と医療を実現する持続可能な保険医療システムの構築が目指されています。
(3)1億総活躍社会の実現
少子高齢化問題を解決するために打ち出された政策が、「1億総活躍社会の実現」です。
この政策は2015年9月に安倍内閣が掲げた目標で、1億総活躍という名前の通り、国民全員が活躍できる場をつくることが目的です。
この1億総活躍社会の実現を支えるのは
- 希望を生み出す強い経済(戦後最大の名目GDP600兆円の実現)
- 夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8の実現)
- 安心につながる社会保障(介護離職ゼロの実現)
といった「新・三本の矢」です。
子育て支援を行うことで少子化に歯止めをかけ、女性や高齢者など潜在的な労働者を再雇用することで労働力不足を解消します。
また、貴重な労働力が親族の介護などの理由で離職することがないように、介護人材の確保と働き方改革などの政策も盛り込まれています。
まとめ
今回は2035年問題について解説しました。
2035年問題を解決に導く鍵は、個々の能力の活用かもしれません。従来の社会制度では十分に能力を発揮することの難しかった女性や高齢者などが活躍できるような環境整備が必要となっていくでしょう。
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