デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「Digital Transformation」の略称で、情報技術が浸透することによって人々の生活が今までよりも便利になるという社会の変化を指します。
例えば自動車の自動運転技術により、従来よりも快適で安全な移動を実現できる可能性があります。
しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)のメリットや具体例が分からないという方もいるかもしれません。
そこで本記事では、以下についてわかりやすく簡単に解説します。
- デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
- デジタルトランスフォーメーション(DX)によって起こる変化
- デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の背景
- 今後の課題
本記事がお役に立てば幸いです。
1、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
画像出典:デジタルトランスフォーメーション 総務省
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、情報技術(IT)により生活の様々な負担が解消され、従来よりも快適になるという社会の変化を指します。
ちなみにITの略称は「Information Technology」ですが、似た意味の単語にICT(情報通信技術)という単語があり、「Information and Communication Technology」の略称です。
細かな違いとしては、ITは「パソコンやインターネットなどの情報技術」を指し、ICTはそれらを使って「情報を共有するサービス全体」を表します。
また、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の、「Digital」は情報通信技術、「Transformation」は変化を意味する単語です。英語圏では接頭辞の「Trans」を「X」と書く慣習があるため、「DX」と呼ばれています。
このデジタルトランスフォーメーションは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
日本では経済産業省主導の下、デジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されています。
2、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって起こる変化
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、私たちの生活にどのような変化を与えるのでしょうか。
すでに実現されている、または実現が近いデジタルトランスフォーメーション(DX)の例をご紹介します。
(1)行政手続きの簡略化
デジタルトランスフォーメーション(DX)により、行政手続きの時間と手間を大幅に削減することが期待されています。
従来では以下の理由から、役所での行政手続きに対して苦手意識を持っていた方も少なくないかもしれません。
- 混んでいる
- 手続きに時間がかかる
- 仕事や育児により受付時間内に役所に行くことができない
しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進めば以下2つの制度が実現すると言われています。
- ワンスオンリー
- ワンストップ
それぞれ見ていきましょう。
① ワンスオンリー
ワンスオンリーでは、個人情報を連携させることで、すべての書類に毎回同じ個人情報を記入する必要がなくなります。
以下の書類の提出も不要になる可能性があります。
- 住民票の写し
- 戸籍謄抄本等
② ワンストップ
ワンストップでは、複数の行政手続きを一括で終わらせることができます。
例えばマイナンバーカードを使ったマイナポータルでは、インターネット上で行政とのやり取りを確認し、以下の手続きをオンラインで完結できるようになる可能性があります。
- 税金
- 社会保障
- 妊娠から育児までの各種サービスの申請や届け出
これにより、仕事や子育てで忙しく、なかなか役所に行く時間のない人でも行政手続きを簡単に行えるようになります。
(2)政策のデジタルマーケティング
デジタルトランスフォーメーション(DX)により、企業や個人に合わせた政策を個別に知らせることで政策の浸透力を高めることが可能です。
政策とは国民のために行うものですが
- 認知度が低い
- 利用者が少ない
などにより、政策の効果が十分に機能しないといった事態の解消につながることが期待できます。
例えば2020年のコロナ禍においてはさまざまな給付金が政府により支給されましたが、自分が申請できる給付金はどれなのかと悩んだ人もいるかもしれません。
しかし政策のデジタルマーケティングが進めば、個人に最適な政策をプッシュ型で通知できるようになります。
これにより政策を利用する人が増え、個々のニーズを把握し、より良い政策に繋げることもできると言われているのです。
参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
(3)働き方改革(テレワークなど)
身近なデジタルトランスフォーメーション(DX)の例といえば、テレワークなどの働き方改革が挙げられます。
2020年のコロナ禍をきっかけに、以下のことを初めて経験した方も多いのではないでしょうか。
- オンライン会議
- リモートワーク
働き方改革は従来の労働環境を改善するための改革でもあります。
具体的には以下のような改革が進められています。
- 長時間労働の削減
- 残業の撤廃
- 多様な労働形態
- 女性や高齢者の再雇用
以上のような施策を達成するために、デジタルトランスフォーメーション(DX)は大きな柱になると言えます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が十分に進むことで、単純な業務はAIが担い、労働者は新しいサービスの開発や専門性の高い業務に集中することが期待されています。
また、これまで以上に通信技術が発達することにより遠隔で働ける労働者の割合も増加するかもしれません。
さらに、育児や介護で忙しい労働者にとって自宅での仕事が可能になることは負担の減少につながることでしょう。
総務省が発表している下記のデータを確認すると、テレワークを導入した企業の方が導入していない企業よりも直近3年間の売上高と利益が上回っています。
画像出典:働き方改革とICT利活用 総務省
また、以下のデータからはテレワークが労働者にとって精神的な負担の軽減などのメリットに繋がっていることがわかります。
画像出典:働き方改革とICT利活用 総務省
働き方改革法案とは?新しい働き方と法制度について解説
3、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の背景
DXが政策として推進される背景には「2025年の崖」という将来想定される課題があります。
この「2025年の崖」について見ていきましょう。
(1) デジタルトランスフォーメーション(DX)と2025年の崖
2025年の崖とは、2025年までにデジタルトランスフォーメーション(DX)が実現できなければ、2025年以降最大で年間12兆円の経済損失が生じると予想されている問題です。
我が国のデジタルトランスフォーメーション(DX)が実現できなければ、以下のような問題が発生します。
- 変化していく市場に対応できない
- セキュリティ面での事故やトラブルが発生する
- 技術者不足からシステムの維持管理費が高額になる
- 最先端の技術を開発できない
- 技術と経済のどちらにおいても世界に後れをとる
膨大なデータを利用し、それらのデータを活用できる人材を確保できるかどうかが、重要なポイントであると言えます。
続いて「2025年の崖」への政府の対策を見てみましょう。
(2)2025年の崖への対策
政府は以下を2025年の崖対策として進める方針を発表しています。
- 「DX推進システムガイドライン」の制定
- 企業へシステム刷新(支障をきたすものを除いて新しくすること)を経営の最優先課題とすることの呼びかけ
- 既存システムの維持業務から、最先端のデジタル技術分野への人材と資金の移行
参考:D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ 経済産業省
4、今後の課題
デジタルトランスフォーメーション(DX)の今後の課題には以下が挙げられます。
- ITの維持管理にかかる費用の高騰
- IT関連への投資が少額であること
ITの維持管理費用が高騰した理由は、短期的にシステムの改修を繰り返したことが原因であると言われています。
このような状況に陥っている企業は約40%にのぼり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する上で経済的な足かせとなっているようです。
画像出典:デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討~ ITシステムに関する課題を中心に ~ 経済産業省
これらの企業では、IT関連費用の80%を維持と管理に使っているため、新しいサービスの開発に20%しか使うことができていません。
上図の「ラン・ザ・ビジネス」とは、既存システムの維持と運用にしか予算を割けないことを指します。
また、日本はアメリカと比べ「攻めのIT投資(新サービスの開発への投資)」が少ないことも資金繰りが滞っている原因と言われています。
画像出典:デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討~ ITシステムに関する課題を中心に ~ 経済産業省
まとめ
今回はデジタルトランスフォーメーション(DX)について解説しました。
DXが推進されることは人々にも行政にもメリットがありますが、課題も存在しています。これからの社会を見通していくためにも、DXの基本は押さえておきたいですね。
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