政治ドットコムニュース拉致問題とは?北朝鮮による拉致問題について簡単解説

拉致問題とは?北朝鮮による拉致問題について簡単解説

投稿日2020.7.27
最終更新日2020.08.03

現在政府は「北朝鮮による日本人拉致問題」解決のために様々な取り組みを行なっています。
日本は平和主義を掲げているので、他国を名指しで非難することはそう多くはありません。

しかし拉致問題については、その実行者を主に「北朝鮮」として、まだ帰還できていない日本人の返還を求め続けています。
そこで本記事では、この拉致問題について詳しく解説します。

本記事がお役に立てば幸いです。

1、拉致問題とは


拉致問題とは、1970年代から1980年代にかけて、北朝鮮によって多くの日本人が連れ去られた(拉致された)事件のことです。

日本政府は1991年から、この問題の解決に本格的に乗り出しましたが、北朝鮮は当初、問題の存在を否定し続けました。
拉致問題の全体像をつかむためには

  • 「特定失踪者」
  • 「特定失踪者問題調査会」
  • 「日本以外の被害国」

の3つ項目について知っておく必要があります。

(1)特定失踪者とは、拉致被害者の人数とは

「特定失踪者」とは、民間団体の特定失踪者問題調査会が独自の調査によって、北朝鮮に拉致された可能性があると認定した失踪者のことです。同会は約470人の失踪者リストがあるとしています。

また、特定失踪者とは別に、警察庁は「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」として、875人を認定しています。

そのうち457人については、家族の同意を得て、警察庁の公式サイトに顔写真や当時の住所、職業などの個人情報を掲載しています。

そして日本政府は、「特定失踪者」でも「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」でもない「拉致被害者」として17人を認定しています。

拉致被害者の正確な総数は特定できていませんが、日本には今、次の3つの数字が存在することになります。

  • 「特定失踪者」約470人、特定失踪者問題調査会が認定
  • 「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」875人、警察庁が認定
  • 「拉致被害者」17人、日本政府が認定

(2)特定失踪者問題調査会

特定失踪者問題調査会(本部・東京都文京区)は、北朝鮮による拉致の疑いのある失踪事件を調査し、被害者救出を目指している民間団体です。

2003年に発足し、拓殖大学海外事情研究所教授の荒木和博氏が会長を務めています(2020年5月31日時点)。

同会は国内で情報収集をする一方で、脱北者と接触して情報を集めています。
さらに北朝鮮に向けたラジオ放送「しおかぜ」を運営し、拉致被害者を必ず救出するという意思を伝えています。

(3)日本以外の被害国

また、日本以外の国も北朝鮮による拉致被害を受けています
少なくとも次の11カ国で日本と同様の事件が発生しています。

  • 韓国
  • シンガポール
  • タイ
  • ルーマニア
  • レバノン
  • 中国(マカオ)
  • マレーシア
  • フランス
  • イタリア
  • オランダ
  • ヨルダン

2、北朝鮮が日本人を拉致した理由

北朝鮮はなぜ日本人を拉致したのでしょうか。

1つの要因として、工作員の日本語教育係として日本人を拉致したのではないか、という推測が挙げられます。

北朝鮮は1970~80年代ごろ、韓国を社会主義国に変えて南北統一を図ろうとしていました。
そして工作員を韓国に送り込もうとしましたが、北朝鮮から韓国への人員の供給が思うように進みませんでした。

そこで、工作員に日本人のふりをさせて、韓国に送り込もうと考えたのです。

その結果北朝鮮は、自国の工作員に日本語や日本の習慣を教える教育係にあてるという目的で日本人を拉致した、と考えられています。

3、拉致問題の歴史と日本政府の対応

拉致問題の歴史の一部と、これまでの日本政府の対応について確認しておきます。

(1)1970〜80年代

拉致事件は1970~80年代に発生しました。

当時13歳だった横田めぐみさんが拉致されたのは、1977年11月とされています。
場所は新潟市でした。

そして次の方々が拉致されたと認定されています。( )内は当時の年齢と失踪場所です。

  • 1977年9月19日、久米裕さん(52歳・石川県)
  • 1977年10月21日、松本京子さん(29歳・鳥取県)
  • 1978年6月頃、田中実さん(28歳・兵庫県)
  • 1978年6月頃、田口八重子さん(22歳・不明)
  • 1978年7月7日、地村保志さん(23歳・福井県)、地村富貴惠さん(旧姓:濱本)(23歳・福井県)【2002年10月帰国】
  • 1978年7月31日、蓮池薫さん(20歳・新潟県)、蓮池祐木子さん(旧姓:奥土)(22歳・新潟県)【2002年10月帰国】
  • 1978年8月12日、市川修一さん(23歳・鹿児島県)、増元るみ子さん(24歳・鹿児島県)
  • 1978年8月12日、曽我ひとみさん(19歳・新潟県)、曽我ミヨシさん(46歳・新潟県)【ひとみさんは2002年10月帰国、ミヨシさんは安否未確認】
  • 1980年5月頃、石岡亨さん(22歳・欧州)、松木薫さん(26歳・欧州)
  • 1980年6月中旬、原敕晁さん(43歳・宮崎県)
  • 1983年7月頃、有本恵子さん(23歳・欧州)

出典 外務省

横田さんを含むこの17人は、日本政府が認定している拉致被害者です。

(2)2002年9月の日朝首脳会談

拉致問題が大きく動いたのは、2002年9月に行われた日朝首脳会談です。

故・金正日・国防委員長(当時)は、訪朝した小泉純一郎首相(当時)に対し、日本人を拉致したことを認めたうえで謝罪しました。

そして、拉致した日本人は12人で、そのうち4人は生存していて、8人は死亡したと伝えました。

日本政府は、北朝鮮に拉致被害者は13人いると伝えていましたが、北朝鮮は、そのうちの1人については北朝鮮に入っていないと主張しました。

故・金正日・国防委員長は、

  • 関係者の処罰
  • 再発防止
  • 家族の面会
  • 拉致被害者の帰国

を約束しました。

(3)2002年10月、被害者5人が帰国

2002年10月、拉致被害者の

  • 地村保志さん
  • 地村富貴惠さん
  • 蓮池薫さん
  • 蓮池祐木子さん
  • 曽我ひとみさん

の5人の帰国が実現しました。

(4)2004年5月の日朝首脳会談

小泉総理は2004年5月、再び訪朝し、故・金正日・国防委員長と2度目の日朝首脳会談を行いました。
ここでは次のことが決まりました。

  • すでに日本への帰国を果たしていた地村さんと蓮池さんには、北朝鮮に計5人の家族がいたが、その5人も日本に帰国させる
  • 安否不明の拉致被害者について、真相究明のための調査を白紙の状態から再開する

地村さんと蓮池さんの家族計5人は、小泉総理とともに帰国しました。
曽我さんの3人の家族も北朝鮮にいましたが、その方々も7月18日に日本に戻りました。

4、北朝鮮の主張

日本政府が認定している拉致被害者は17人で、そのうち5人は上記の通り帰国を果たしました。
つまり残り12人の日本人は北朝鮮に残ったままです。

この12人の日本人は、なぜ日本に帰ってこられないのでしょうか。
その理由について北朝鮮は次のように説明しています。

  • 12人のうち8人は死亡し、4人は北朝鮮に入っていない
  • 死亡した8人については必要な情報は提供した。8人のうち2人分の遺骨は日本に返還した

しかし、日本政府は、北朝鮮が示した「死亡したという根拠」が不自然であるため、その主張を受け入れていません。
日本政府は「拉致被害者は生きている」という前提で、北朝鮮に説明を求め続けています。

5、日本の現在の取り組み

日本政府は現在、拉致問題は解決していない、という立場を取っています。
そして「解決」とするには、次の3点を実現する必要があります。

  • すべての拉致被害者の安全を確保して帰国を実現する
  • 北朝鮮が拉致に関する真相を明らかにする
  • 北朝鮮が拉致を実行した者を日本に引き渡す

この3項目を実現するための日本の取り組みを紹介します。

(1)北朝鮮への経済制裁など

北朝鮮への制裁措置は、経済制裁など21項目に及びます。

以下はその例です。

  • 北朝鮮当局職員の原則入国禁止
  • 北朝鮮籍船舶の乗員などの上陸の原則禁止
  • 北朝鮮籍船舶の入港禁止
  • 日本の国家公務員の北朝鮮渡航の原則見合わせ

(2)国際社会への働きかけ

日本政府は、日本だけでは拉致問題は解決できないと考えています。
そこで日本政府は国際社会に向けて、拉致問題は、国の主権と国民の生命・安全に対する重大な侵害であると訴えています。

その一環として日本政府はEUと共同で、国連総会と国連人権理事会に「北朝鮮の人権状況に関する決議」を提出しています。
またG7サミットでも拉致問題を提起しています。

啓発活動も行われています。
アメリカ・ワシントンDCで日本政府主催のシンポジウムを開いたり、横田めぐみさんの拉致事件を題材にしたアニメ「めぐみ」を、外国語に吹き替えて世界に配布するなどの試みも行われています。

(3)「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の取り組み

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(本部・東京都文京区、以下、救う会)は、拉致被害者の家族を支援する日本各地のグループが一体となった組織です。

救う会は国民に対し、問題解決及び組織の持続のために次のことを求めています。

  • 拉致問題への理解を深めること
  • 署名活動への参加
  • 集会や街頭署名活動への参加
  • ブルーリボンバッジの着用
  • 支援金

まとめ

日本政府は、北朝鮮による拉致問題は、日本の主権と日本人の生命・安全を侵害する行為であると考えています。
そして拉致問題は解決していないので、北朝鮮による日本への侵害は継続しているわけです。
私達も他人事にせずに拉致問題への関心は持ち続けるべきでしょう。