NPOとは、「Non-Profit Organization」または「Not-for-Profit Organization」の略称です。
市民が中心となって社会貢献活動を行う、市民活動団体を指します。
その名の通り、活動においては「非営利」ですが、実は「収益を目的に事業を行うこと」が認められています。
このように、NPOの存在自体は知っていても、実情をよく知らない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は
- NPOという組織の概要
- 目的
- ボランティアやNGOとの違い
- 行政の下請化という課題
などの項目でNPOについてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、NPOとは
NPOとは社会貢献活動を行う、市民活動団体のことです。
必ずしもNPO法人だけを指す言葉ではなく、広義では、
- 社会福祉法人
- 社団法人
- 財団法人
- 生活協同組合(生協)
- 労働組合
などもNPOに含まれます。
以下では、具体的な内容をご紹介します。
(1)NPOの非営利とは
名称自体が「非営利組織」という意味なので、「収益化してはいけないのでは?」と思われるかもしれません。
実際は、活動においては非営利ですが、収益を目的に事業を行うことは認められています。
利益を出すこと自体は問題ないのです。
ただし事業で得た収益は、様々な社会課題の解決のために使われることになります。
(2)具体的な活動内容について
社会貢献活動といっても、具体的にどのような内容なのでしょうか。
NPOの具体的な活動は、
- 福祉
- 教育・文化
- まちづくり
- 環境
- 国際協力
参考:内閣府NPO HP
などの重要な社会問題の解決に向けて行われています。
政府や一般企業とは異なる立場からアプローチすることで、「社会の多様化するニーズに応えられるのでは」と期待されているのです。
(3)ボランティアとの違いについて
NPOと似たような活動をしている団体に、ボランティアがあります。
どちらも社会貢献のための活動を行っていますが、いくつか異なる点があります。
まず、金銭面では、一般的にボランティアは「自発的な意志に基づいて他人や社会に貢献する行為」を指し、「無報酬」が前提となっています。
NPOはあくまで「非営利」であり収益化自体は可能である点を考えると、そこに大きな違いがあります。
また、ボランティアはあくまで「個人の自発性」に基づいて活動が行われますが、NPOは「団体」としての活動という違いもあります。
このように、活動目的は似ていますが、実態にはいくつか違いがあるのです。
2、NPO法人とは
NPOの中には「NPO法人」と呼ばれる法人格の団体があります。
NPO法人は、1998年に施行した「特定非営利活動促進法」に基いて法人格を取得した(法人と認められた)団体のことです。
法人格を取得するメリットは、法人名で取引や契約を行えることです。
例えば活動拠点として土地やマンションを借りる際に、NPOの団体名で契約が可能となるので、団体自体の社会信頼性が高まると言えるでしょう。
実態について、以下で詳しくご説明します。
(1)特定非営利活動
「特定非営利活動促進法」では「特定非営利活動」を行う団体のみが、NPO法人と認められました。
「特定非営利活動」とは、以下の20種類の分野に該当する活動です。
1、保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2、社会教育の推進を図る活動
3、まちづくりの推進を図る活動
4、観光の振興を図る活動
5、農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6、学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7、環境の保全を図る活動
8、災害救援活動
9、地域安全活動
10、人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11、国際協力の活動
12、男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13、子どもの健全育成を図る活動
14、情報化社会の発展を図る活動
15、科学技術の振興を図る活動
16、経済活動の活性化を図る活動
17、職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18、消費者の保護を図る活動
19、前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20、前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
引用:内閣府NPO HP
上記の分野において、不特定多数の利益に寄与することを活動目的としています。
(2)NPO法人の給与
給与についてはどうなっているのでしょうか。
結論として、NPO法人で働く職員に対して給与は支払われます。
ただし、非営利を目的としているため「収益の分配」という位置付けではなく、「団体の事業経費」という扱いです。
余剰収益が出た場合も、「収益の分配」として扱わずに事業投資へ使われます。
具体的な給与額は、団体ごとに異なります。
事業規模が大きかったり、組織として事業収入が大きかったりする場合は、非営利の団体と言えど、高額な給与となる可能性もあるでしょう。
(3)認定NPO法人について
NPO法人のうち、所轄庁に認定を受けた法人は「認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)」となります。
具体的には、法人格を取得してから、2事業年度の実績判定期間で一定の基準を満たした場合のみ、認定を受けられます。
NPO法人も認定NPO法人も、設立要件自体は同じです。
大きな違いは、
- 認定NPO法人自身に対する税の優遇措置(みなし寄附金制度)
- 寄附者に対する税制上の優遇措置(寄附金控除)
参考:内閣府NPO HP
など、税制上の様々な優遇措置を受けられる点です。
結果として、認定NPO法人の方が、より活動資金を集めやすくなると言えるでしょう。
(4)NPO法人の具体例
NPO法人の具体例を紹介します。湘南のまちづくり団体であるNPO法人湘南スタイルは地域活性化を目的としたNPO法人です。
その具体的な取り組みとして
- 農業コンサルティング
- 地域プロジェクト(イベント)
- 企業へのアプローチ(湘南の魅力を伝える)
- 広報活動
などが挙げられます。
以上のような活動を通し、地域の人々にメリットのある仕組み作りに励んでいます。
3、NGOとの違い
ところで、NPOとよく似た言葉に「NGO」があります。
その違いは何なのでしょうか。
まず、言葉自体の意味で言うと、
- NPO:「Non-Profit Organization(非営利組織)」
- NGO:「Non-Governmental Organization(非政府組織)」
という違いがあります。
大まかな区別としては、活動内容の違いで以下のとおり使い分けられる傾向があります。
- NPO:国内の地域社会で社会活動を行う民間団体(福祉活動など)
- NGO:国際的な社会活動を行う民間団体(開発協力など)
ただし、どちらも政府とは異なる民間の立場で社会貢献活動を行うという点では同じです。
名称の違いだけで、実質的にはほとんど同質の組織と言えるでしょう。
4、行政の下請化|NPOの課題
NPOは、政府とは異なる立場で社会貢献活動を主体的に行うことを目的としています。
一方で、その目的を外れ「単に行政の仕事を下請けしている」という課題も出てきています。
具体的には、
- 行政が権限を持ったまま、NPOに業務を委託
- 業務を委託される側のNPOは、委託条件に不都合を感じても断れない
という「下請化」が進んでいると言われています。
以下でその問題点を詳しく見ていきましょう。
(1)資金源を依存してしまう可能性がある
NPO本来の性質を考えれば、寄付や会費など民間資金で活動資金を賄うべきかもしれません。
しかし、民間の資金力には限界があり、かつ団体が行う主な事業だけでは多くの資金を得られていないケースも存在するでしょう。
職員の給与を含め活動資金が集まらなければ、団体の存続自体が危ぶまれてしまいます。
そのためNPO団体は行政からの委託を積極的に受ける傾向にあるという意見もあります。
画像出典:平成29年度特定非営利活動法人に関する実態調査報告書
上記の通り事業収益の中で、業務委託費が占める割合が多い傾向にあります。
参考:内閣府NPO HP
(2)委託事業に力を割いてしまう
NPOには、行政のサービスが行き届かないところをカバーする目的もあります。
そのため行政との協働自体は自然なことですが、あまりにも委託事業の割合が大きくなれば問題と言えるかもしれません。
主の事業の割合を縮小してまで、団体存続のために委託事業に力を入れてしまえば、本来の存在意義を失ってしまいます。
そうなると、団体が掲げていた活動内容や趣旨に賛同していた人々からの支持もなくなっていきます。
結果的に
- 会費
- 寄付
- ボランティア
などの必要な要素が満たされなくなっていく可能性があります。
まとめ
今回は「NPO」についてご紹介しました。
NPOの概要や活動目的、具体的な活動内容をご理解いただけたのではないでしょうか。
社会貢献活動という素晴らしい目的がある一方で「行政の下請化」に代表される課題があるとも言われています。
ボランティアやNGOとも違うNPO団体だからこそ実現できることに目を向けて、課題解決を目指しNPO活動を進める必要があるのかもしれません。
本記事が少しでも、あなたのお役に立てば幸いです。