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大気汚染とは?問題点や対策について簡単解説!

投稿日2020.5.25
最終更新日2020.05.25

「大気汚染」と聞いて、何を想像しますか。新興国の問題と思うでしょうか。それとも、昔の日本の社会問題と思うでしょうか。実は大気汚染は、今も日本の問題として残っています。日本の空気は、まだ理想の状態には届いていません。
この記事では

  • 大気汚染の基礎知識
  • 今日的な課題
  • 解決策

をご紹介します。本記事がお役に立てば幸いです。

1、大気汚染とは

大気汚染
大気汚染は公害の1つです。経済活動の悪影響によって、空気が人の健康に害を与えるまでになってしまった状態のことです。

(1)汚染の定義

次の2つが生じたとき、空気の汚れが社会問題となり、大気汚染と呼ばれるようになります。

  • 経済活動が生み出す有害な気体や排出ガスが大気に混ざる
  • それにより人々の健康が害される

ポイントは、この2つがほぼ同時に起きなければ大気汚染は問題にならない、ということです。

工業や産業では、どうしても有害な気体や排出ガスが生まれてしまいますが、それだけでは社会問題になりません。例えば、企業の研究室のなかで有毒ガスが発生しても、それを適切に処理して外に出さなければ、大気汚染問題になりません。

また、工業や産業は現代人の生活に必要な営みなので、多少の有害気体や排出ガスを大気に放出しても、それはやむを得ないことです。

また、空気が汚れている事実と、人々の健康が害されている事実があっても、両者の間にタイムラグが生じると大気汚染問題として取り扱われません。大気は漂っているので、大気の汚れと健康被害の因果関係を特定できないからです。

(2)大気汚染問題の難しさは「見えない」こと

人はよく「空気がおいしい」とか「空気が汚れている」と言いますが、それは、森林の香りや自動車の排気ガスの臭いをかいだときの印象に過ぎないことが多いようです。実際は、人の感覚で大気の汚染状況を感知することは容易ではありません。

その他の公害では、水質汚染は目に見え、騒音は聞こえるので、誰でも悪化していることがわかります。

ところが大気汚染は、健康被害などのダメージを社会に与えているのに、その状態が目に見えず、聞こえません。感知しにくいので、状況を悪化させてしまうことがあります。

2、現代の大気汚染は何が問題になっているのか

大気汚染を「見えにくく」しているのは、透明だからというだけではありません。

総務省によると、全国の公害苦情受付件数は、大気汚染より騒音のほうが多くなっています。また、さまざまな政策や対策が効果をあげ、日本の空気は確実に改善されてきています。

人々の意識のなかから大気汚染という問題が忘れられようとしているのです。
では、改善しているのであれば何が問題なのでしょうか。ここでは改善に至るまでの過程やいまだに残る課題感をご紹介します。

(1)改善している現状

日本の大気汚染問題がどのように改善してきているのか紹介します(*1)。

かつての大気汚染問題では、窒素酸化物(NOX)と浮遊粒子状物質(SPM)が課題になっていましたが、「自動車NOX・SPM法」が1992年に公布され、さらに2007年に同法が改正されたことで規制が強化され、NOXもSPMも減少しています。

また、環境省の公害苦情調査によると、大気汚染に関する苦情件数は2004年度の24,741件から2014年の15,879件へと8,862件(36%)も減っています。

(2)理想の状態に届いてない現状

改善はしていても、大気汚染問題が完全に解決したわけではありません。

例えば、微小粒子状物質(PM2.5)は、なかなか目標値まで減少していません。PM2.5は主に、中国大陸から飛来するものと、日本国内の都市部で発生するものの2種類があります。

そして、光化学オキシダント(OX)の排出削減は、まったく目標を達成できていません。

環境省がチェックしている6種類の大気汚染物質のうち、目標を達成しているのは1種類だけです。

3、大気を汚染する物質の特徴と現状、健康被害


環境省は、6種類の「大気汚染物質」と21種類の「有害大気汚染物質等」をモニタリング(監視)しています。ここでは大気汚染物質の特徴と現状、そして、それらがもたらす健康被害について解説します。

現状は、環境省などの一般環境大気測定局(以下、一般局、全国1,464カ所)と自動車排出ガス測定局(以下、自排局、全国409カ所)での測定値の、2017年度の「環境基準達成率」で見ていきます。

環境基準達成率は数字が大きいほどよい状態といえ、100%になると大気汚染が解決したことになります。

(1)PM2.5の特徴と現状と健康被害

PM2.5は、大気に浮遊する2.5μm(1μmは1mmの1,000分の1)以下の小さな粒子のことです。成分は、

  • 炭素
  • 硝酸塩
  • 硫酸塩
  • アンモニウム塩
  • ケイ素

などです。

PM2.5を人が吸いこむと、喘息や気管支炎など、呼吸器の病気を引き起こします。また、肺がんのリスクを高めることもあります。

PM2.5の2017年度の環境基準達成率は、一般局89.9%、自排局86.2%でした。前年度の2016年度は、一般局88.7%、自排局88.3%でしたので、自排局で悪化していることがわかります。

(2)OXの特徴と現状と健康被害

OXは、強い酸化力を持つ物質です。自動車の排気ガスや工場の煙に含まれている窒素化合物(NOX)や炭化水素(HC)が、太陽光に含まれる紫外線に触れて化学反応を引き起こすことでつくられます。

OXを人が吸いこむと、目の痛み、吐き気、頭痛などを引き起こします。

OXによる大気汚染の現状は悲惨で、環境基準達成率は一般局も自排局も0%でした。つまり、まったく達成できていません。

(3)二酸化窒素(NO)の特徴と現状と健康被害

二酸化窒素(NO)は、物質が高温で燃えるときに発生する一酸化酸素が酸化してつくられる物質です。NOを吸い込むと、心臓や血管の病気、呼吸器系の病気のリスクを高めます。

NOの環境基準達成率は、一般局で100%、自排局で99.7%と、かなり抑制できています。

(4)SPMの特徴と現状と健康被害

SPMは、10μm以下の大気中の浮遊粒子状物質のことです。PM2.5より少し大きな物質、というイメージです。SPMの成分は、塩化物イオン、カリウムイオン、硝酸イオン、ナトリウムイオンなどです。

SPMを吸い込むと、喘息などの呼吸器系病気やアレルギーを引き起こす可能性があります。SPMの環境基準達成率は一般局99.8%、自排局100%です。

(5)二酸化硫黄(SO)の特徴と現状と健康被害

二酸化硫黄(SO)は、硫黄を含む燃料が燃やされたときに発生する物質です。喘息のリスクを高めます。SOの環境基準達成率は一般局99.8%、自排局100%でした。

(6)一酸化炭素(CO)の特徴と現状と健康被害

一酸化炭素(CO)は燃料の不完全燃焼で発生する物質です。COは血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬機能を低下させます。一酸化炭素中毒に陥ると、最悪、死亡します。

COの環境基準達成率は一般局、自排局ともに100%でした。しっかり封じ込めができているようです。

4、大気汚染対策

ここまで今日に残る課題を紹介してきました。ここでは大気汚染に対する行政の現在の取り組みを取り上げます。

(1)大気汚染防止法

大気汚染問題を縮小できたのは、大気汚染防止法が制定されたことが大きいでしょう。この法律は、国民の健康の保護と生活環境の保全を目的にして、大気汚染につながる経済活動や行為を規制します。

環境基本法という別の法律で環境基準を設定し、この大気汚染防止法で、その環境基準をクリアするために規制をかける、という構図になっています。

大気汚染防止法は、大気汚染物質の種類ごと、排出する施設の種類ごと、施設の規模ごとに規制の強さを変えています。違反すると刑事罰を科せられるので、この法律は非常に強い法律です。

(2)環境省の対策

大気汚染問題を担当するのは環境省です。同省のさまざまな大気汚染対策のうち、

  • 「大気汚染状況・常時監視」
  • 「揮発性有機化合物(VOC)対策」
  • 「有害大気汚染物質対策」

の3つを紹介します。

①大気汚染状況・常時監視

大気汚染状況・常時監視は、大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」や花粉観測システム「はなこさん」などを駆使して、ありとあらゆる有害物質を監視、測定、分析していく事業です。

現状がわからないと具体的な対応を取ることができないので、大気汚染状況・常時監視は、大気汚染対策のスタート地点といえます。

②揮発性有機化合物(VOC)対策

VOC対策は、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど、自動車や工場などから排出されるVOCの量を規制する事業です。例えばVOCを排出する施設を設置する場合、事業者は都道府県知事に届け出なければなりません。また、規制だけでなく、事業者に自主的な取り組みをも求めます。

③有害大気汚染物質対策

有害大気汚染物質対策は、低濃度のためすぐには大事に至らないものの、長期間浴びることによって健康被害が生じる物質(有害大気汚染物質)について、排出規制をする取り組みです。

有害大気汚染物質は234種類ありますが、なかでも次の23種類は「優先取組物質」に指定されています。

アクリロニトリル、アセトアルデヒド、塩化ビニルモノマー、塩化メチル、クロム及びその化合物、六価クロム化合物、クロロホルム、酸化エチレン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、水銀及びその化合物、ダイオキシン類、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トルエン、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、ベリリウム及びその化合物、ベンゼン、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒド、マンガン及びその化合物

(3)民間レベルでの対策

大気を汚すのは、主に企業などの経済活動です。特に工業などの第2次産業は過去に、深刻な公害を引き起こしてきました。ただ、工業が生んだ製品であっても、使うのは生活者です。生活者でも自動車を運転すれば大気を汚します。

そういった意味では、大気汚染対策は、企業や生活者といった民間レベルでも取り組むことが求められています。

企業は、大気汚染物質を発生させない工法を開発しなければなりません。しかも、価格が高くなってしまうと生活者や他の企業に使ってもらえないので、できるだけコストをかけず、製品やサービスをつくっていかなければなりません。

企業にとって大きな課題ですが、それを達成しないと、環境問題への関心が高い消費者から支持されなくなってしまいます。

生活者や消費者は、よりクリーンな製品・サービスを選んだり、省エネに努めたりする必要があります。そして何より、空気を汚さない生き方を模索し続けなければなりません。

5、東京大気汚染訴訟(1996年)について

大気汚染問題は、訴訟に進んでしまうこともあります。

東京大気汚染訴訟は、都内に住む気管支喘息などの公害被害患者たちが1996年に、大気汚染の原因をつくった国、都、首都高、トヨタ、日産などを相手取り、損害賠償と大気汚染物質の排出抑制を求めた訴訟です。

東京大気汚染訴訟の特徴は、自動車という「移動発生源」を問題にしたことでした。

それまでの大気汚染公害訴訟では、工場や工業団地などの「固定発生源」が訴えられていました。固定発生源は、「そこ」にとどまって大気汚染物質を排出し続けているので、健康被害との因果関係の特定が容易です。

しかし、移動発生源である自動車は、動きながら大気汚染物質を排出しています。そのため、誰の自動車の排出によって健康被害を受けたのか特定できません。

そこで原告は、道路をつくった国と都と首都高と、自動車をつくった自動車メーカーを訴えたのです。道路と自動車をつくったから、大気汚染による気管支喘息が発症したという理屈です。

一審判決は、国と都と首都高を敗訴にしましたが、自動車メーカーには責任がないとしました。その後、高裁で和解が成立しました。内容は次のとおりです。

  • 自動車メーカーは、原告(健康被害を受けた人)に解決金を支払う
  • 国、都、首都高、自動車メーカーは、気管支喘息患者の治療費を補助する
  • 幹線道路の大気汚染対策を講じる
  • PM2.5対策を検討する

公害問題に詳しい専門家のなかには、東京大気汚染訴訟によって大気汚染問題がさらに改善されたと評価する人もいます。

まとめ

大気汚染問題は、空気という見えない存在を相手にしなければなりません。また、空気は絶えず移動しているので、汚れているという事実が明白であっても、どこで誰が汚したのか、わかりません。

大気汚染対策は、見えない敵との闘いであるといえます。