政治ドットコムニュース水質汚濁とは?問題点や改善策について簡単解説!

水質汚濁とは?問題点や改善策について簡単解説!

投稿日2020.5.26
最終更新日2020.05.26

人が生きるためには、水が欠かせません。そのため「水質汚濁」問題は、命に関わる重大事といえます。
水は、自然には汚れません。また、人間以外の動物が、水質汚濁問題になるほど水を汚すこともまれです。水質汚濁の主な原因は、人間の経済活動です。

人は、豊かな生活を送るために経済活動をするのに、水が汚れて生活しにくくなることがあります。皮肉な現象です。
水質汚濁問題は、昭和の時代に大きな社会問題になりましたが、平成でも決着しませんでした。

だからこそ、令和になった今でも生活者1人ひとりが、水に関心を持ち続けなければならないでしょう。
そこで今回は水質汚濁についてご紹介します。本記事がお役に立てば幸いです。

1、水質汚濁問題とは


水質汚濁とは河川や海などの水が人々の活動によって汚染される問題です。それは回り回って国民の健康に悪影響を及ぼしたりします。

(1)水質汚濁とは、どこの水が汚れているのか

水質汚濁で問題になる水とは、

  • 河川の水
  • 湖沼の水
  • 海の水
  • 地下の水

です。

人は河川や湖沼や地下水から飲み水をつくります。そのまま飲むこともあります。そして海や川で漁業をしたり、遊んだりします。

当然汚れた水を飲めば体調を崩しますし、汚れた水で成長した魚を食べれば病気になりますし、汚れた水で遊ぶことも危険です。

だから水質汚濁問題は、命に直結するわけです。

(2)人のどのような活動が水質汚濁につながるのか

水質汚濁を引き起こすのは

  • 生活排水
  • 工場排水
  • 農業排水
  • 牧畜排水

などです。

「排水」と「廃水」は同じ読み方をしますが、意味は異なります。「工場が廃水を排水した」といえば、これは「廃棄が必要な汚れた水を工場の外に出した」という意味です。

廃棄が必要な汚れた水のことを廃水といいます。水を外に出すことを排水といいます。

  • 生活排水では、トイレや洗い物で使った廃水
  • 工場排水では、化学薬品や金属などの有害物質
  • 農業排水では、農薬
  • 牧畜排水では、家畜の排泄物

これらが問題の要因になっています。

生き物の営みを続けるほど、そして、技術や科学が進歩するほど、水が汚れていくことがわかります。
ただし、技術や科学などの人の知恵は、水質汚濁問題を解消することにも使えます。また、法律により、水質汚濁を行う人や団体を罰することもできます。

この点については、後段の「4、水質汚濁対策」であらためて解説します。

2、水質汚濁はこれほど深刻

水質汚濁は、ときに深刻な被害をもたらします。

(1)今、水俣病を考える

国内最大級の水質汚濁問題は、1950~60年代に熊本県水俣湾で起きた「水俣病」です。

化学工業メーカーの日本窒素肥料株式会社(現、チッソ株式会社)が海や河川にメチル水銀化合物を排出し、それを魚介類が吸収し、それを食べた水俣市の住民が、のちに「水俣病」と名づけられる病気を引き起こしました。

メチル水銀は、人の体内で毒になります。環境省によると、水俣病では次のような症状が起きます。

  • わけもなく転ぶ、まっすぐ歩けない、衣服の着脱ができないといった運動失調

  • 手で物を触ったときに形や大きさがわからない、熱いものや冷たいものに触っても感じない、しびれ、などの感覚障害

  • 筋肉がけいれんを起こす運動障害

  • 言葉が不明瞭になる構音障害

  • 視線の先の周辺が見えにくくなる視野狭窄

  • 音が識別できなくなる聴覚障害

 

環境省はさらに、こうした症状は脳が委縮して起きると説明しています。
水俣市立水俣病資料館によると、水俣病の「認定患者」数は2282人にのぼり、そのうち1,930人が死亡しています。

ただ、水俣病が確認されるより前に亡くなった人もいるので、実際の死亡者の数は「わかっていない」状況です。また、認定患者ではないものの、メチル水銀の被害を受けて「救済対象者」に認められた人は実に67,545人に達します。

(2)日本でも9.1%の人は汚水処理施設を使えていない

令和の日本でも、水質汚濁問題は完全に解決されたわけではありません。

環境省、農林水産省、国土交通省の3省の合同調査によると、全国の汚水処理人口普及率は90.9%でした。汚水処理人口普及率は、汚水処理施設を利用できる地域の人口を、行政人口で割った数です。

つまり、水質汚濁をもたらす汚水を、汚水処理施設を経由せず自然界に流している人が9.1%いるということです。環境省は「いまだに約1200万人が、汚水処理施設を利用できない状況」にある、と指摘しています。

この「9.1%」というデータは、2017年度末のものです。したがって、令和2年の2020年でも、それほど変わらない人数が、汚水処理施設を利用できていないと推測することができます。

3、水質汚濁の原因


水質汚濁の原因について、さらに深掘りして考えていきます。

(1)原因は「自然環境への配慮が後回しにされた」ため

水質汚濁の原因について環境省は「自然環境への配慮が後回しにされた」ことを挙げています。

環境省は水俣病が起きた理由として、次の6点を挙げています。

  • 原因となったチッソ株式会社は戦後の高度経済成長の日本を支えた
  • チッソは、独自技術で生産設備を更新し、製品の増産に努めた
  • チッソの成長と歩調を合わせるように水俣の町は急速に発展した
  • チッソは地域の経済や行政に強い力を持つようになった
  • チッソは地域社会の支持を受け、安い労働力、豊富な用水、自前の発電力そして天草の石灰岩や石炭など手近にある原材料を活用し、また廃棄物や廃水の処理についても優遇されていたので、チッソは増産を重ねることができた
  • 一方で労働環境や自然環境への配慮は後回しにされた

「企業の成長」「地域経済の発展」「企業による行政への強い力」「廃水処理への優遇」「自然環境への配慮の後回し」これらが複雑に絡み合い、悲惨な水質汚濁を引き起こしたわけです。

(2)行政の力が必要

環境省の指摘からも、水質汚濁と行政の仕事は密接に関係していることがわかります。

行政は、企業の行動を規制できます。つまり、行政が企業に対して毅然とした態度を取ることで、水質汚濁問題を解決または軽減することができます。

また、汚水処理施設の建設は、行政と政治の仕事になります。

先ほど見たとおり、汚水処理人口普及率の調査には、環境省、農林水産省、国土交通省の3省が関わっています。3つの国の機関が、水質に特別な関心を払っていることがわかります。

日本政府や地方自治体は今、深刻な財政難にあえいでいて、簡単には汚水処理施設を増設することはできませんが、一歩一歩進めていけると良いかもしれません。

(3)気候の変動

気候の変動も、水質汚濁を招くことがあります。温暖化によって水温が十分に下がらないと、湖沼でアオコガ異常発生したり、水の酸素濃度が低下したりします。

これらも汚濁の1つの要因です。

4、水質汚濁対策

水質汚濁対策には

  • 「法律の力」
  • 「下水道整備」
  • 「水質浄化の技術」
  • 「地下水の保全」
  • 「民間レベルの対策」

があります。1つずつみていきましょう。

(1)法律の力

行政と政治が水質汚濁問題を解決できるのは、法律や条例などをつくることができるからです。法律や条例は、企業活動や市民活動を規制する力を持ちます。企業活動や人々の生活が水質汚濁を招くので、法律や条例がその対策になります。

水質汚濁防止法は、1)工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制する、2)生活排水対策の実施を推進する、3)公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止を図ることを目的とした法律です。

この法律に違反すると、懲役や罰金が科されます。

条例は、地方自治体が定める「法律のようなもの」です。例えば東京都には、水に関する条例を39本もあります(*7、2020年5月現在)。

さらに「水銀に関する水俣条約」を締結する国が、2017年に日本を含む50カ国に達し、発効が決まりました。この条約には水銀を使った製品の製造を一部規制する内容が含まれています。

水質への監視は「世界の目」も光っています。

(2)下水道整備

人々が出す汚れから水を守るには、下水道整備が欠かせません。
国土交通省によると、2017年の下水処理人口普及率は79%です。21%の人が、下水のないところで「用を足す」などの行為をしているわけです。

地方に旅行や出張に出かけて、「ぼっとん便所」を使った経験がある人は「意外に多い」のではないでしょうか。その、意外な多さこそ「下水道を使っていない人21%」という数字の重さです。

国土交通省も「21%」という数字を重く受け止めていて「人口5万人未満の市町村等では、未だ汚水処理人口普及率が低いため、下水道施設等の汚水処理施設の未普及解消を推進する必要がある」と述べています。

(3)水質浄化の技術

日本には、水質を浄化する技術があります。例えば水処理機は、工場などの排水に含まれるヒ素、鉛、水銀、ダイオキシンを処理します。

また、浴場施設が排水再利用システムを導入すれば、利用客が使った排水を浄化して、再び同じ浴場施設で再利用することができます。排水を浴場施設の外に出さないので、水質を汚しません。

さらに、特殊な膜や微生物を使って排水を処理する技術もあります。

(4)地下水の保全

地下水の水が汚濁すると「見えない」だけに被害が拡大しやすくなってしまいます。

そこで環境省は「地下水保全ガイドライン」を作成して、1)地下水をめぐる動向を整理して、2)地下水保全に向けた技術的、法的、制度的課題を明らかにして、3)地下水の適切な保全管理の方策を取りまとめることにしました(*12)。

地方自治体は、これに沿って「地下水マネジメント」をしていくことになります。

(5)民間レベルの対策

水質汚濁問題解決への取り組みは、民間レベルの対応が欠かせません。すべての国民が「キレイな水」と「汚れた水」を常に意識することで、水を汚す行動を減らすことができます。

また、民間企業は、排水処理技術を開発したり、排水を少なくする取り組みをしたりと、水質汚濁問題解決に大いに寄与できます。

5、最近の水質汚濁事件についてみてみる

2012年という、比較的最近に起きた水質汚濁事件についてみてみましょう。

I県で、井戸水を飲んだ住民が神経症状を起こしたり、子供の精神遅滞を発症したりする出来事が起きました。2003年にその井戸水から水質基準の450倍のヒ素が検出されたことから、住民たちが、国とI県を相手取り、「水質汚濁防止法で定められた常時監視義務(第15条)と公表義務(第17条)を怠った」として損害賠償を求めました。

住民は裁判所ではなく、公害等調査委員会に訴えました。同委員会は総務省(国)の機関で、水質汚濁問題を、裁判所に代わって解決してくれます。

公害等調査委員会は、住民たちの主張を一部認めて、I県に損害賠償するよう裁定しました。裁定とは、裁判所による判決と同じものです。

まとめ

水は簡単に汚されてしまいます。しかも水は、汚されても「文句」を言わないので、人はどんどん汚してしまいます。それにより、人の命が失われた悲惨な過去もあります。

そのため水質汚濁対策が欠かせません。法律、監視、技術、意識の総力で、水を守っていかなければなりません。