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ALPS処理水とは?2023年の貯蔵率や安全性について簡単に解説

投稿日2023.8.30
最終更新日2023.08.30

ALPS処理水(アルプスしょりすい)とは、原子力発電所で発生した放射性物質を含む汚染水を浄化処理し、除去できないトリチウム以外の放射性物質を、海洋放出の規制基準値を下回る状態にした水のことです。

福島第一原発の敷地内に現在も貯蔵され続け、貯蔵しているタンクは既に1,000を超えている現状です。今後、廃炉作業を進めるためには、ALPS処理水を処分して新しい施設を建設する場所を作る必要があります。

ALPS処理水の処理方法は候補がいくつか出ましたが、現時点では海水に流すという選択がとられています。しかし、ALPS処理水を海水に流しても環境や生体、そして人々の暮らしに影響が出ないのか?と疑問に思う人もいます。

そこで、本記事では下記について詳しく解説し、ALPS処理水について正しい情報をお伝えします。

  • ALPS処理水について
  • ALPS処理水を海に放出する理由
  • ALPS処理水の海洋放出後の影響

1、ALPS処理水について

ALPS処理水

ALPS(advanced liquid processing system)処理水は、東京電力福島第一原子力発電所で発生した放射性物質を含む汚染水を浄化処理し、除去できないトリチウム以外の放射性物質を、海洋放出の規制基準値を下回る状態にした水のことです。

原子力発電所では、原子炉の内部に残っている燃料デブリ(溶け落ちた燃料)を継続的に冷却する必要があり、水をかけて冷却を続けています。その際に使用した水が、汚染水となります。それに加え、雨水や地下水が原子炉の内へ侵入したものも汚染水となり、正しい処理を施され、タンクへ貯蔵されている状態です。

参考:経済産業省(2021)「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」より(2023年8月29日最終閲覧)

(1)ALPS処理水とトリチウムの関係性

ALPS処理水に関する説明で、「トリチウム以外の放射性物質を取り除いた」という文言から、トリチウムが残っているという点について不安を抱く方もいると思います。

トリチウム(三重水素)は放射性物質の1つですが、自然界にも広く存在しています。自然界には約100~130京ベクレルが存在していると言われており、川や海、雨水や水道水などにもあり、人間の体内にも約10ベクレル程のトリチウムが存在しているといわれるほど、人間の暮らしの近くに存在する物質です。

また、トリチウムから発生される放射線は紙1枚でも防ぐことのできる放射線で、体内に入っても蓄積されることはなく、水と一緒に排出されます。

参考:経済産業省ウェブサイト「ALPS処理水の処分(METI/経済産業省)」より(2023年8月29日最終閲覧)

(2)ALPS処理水の安全性

ALPS処理水を海洋に放出するのは、本当に安全なのかと疑問に思う方は多くいます。ALPS処理水は、日本のみならず世界各国の安全基準を満たした上で海洋に放出されます。

日本では、原発事故前の放出管理目標値を年間22兆ベクレルとしていました。この年間22兆ベクレルを上限にALPS処理水は放出を行っています。

また、ALPS処理水は海水で薄めてから放出されます。海水に放出される際のトリチウム濃度は1Lあたり1,500ベクレル未満です。この1Lあたり1,500ベクレル未満という数字は、日本の安全基準の40分の1であり、WHOの定める飲料ガイドラインの7分の1という小さい数字です。

そのため、日本政府はALPS処理水の海洋放出によって人体や環境への影響は非常に少ないと判断しています。

参考:政府広報オンライン「ALPS処理水の海洋放出の安全性」より(2023年8月29日最終閲覧)

(3)ALPS処理水の保管状況

ALPS処理水の保管状況

画像出典:東京電力「処理水ポータルサイト」より(2023年8月29日最終閲覧)

ALPS処理水は福島第一原発の敷地内のタンクに貯蔵されています。

2023年8月現在、福島第一原発の敷地内には1000基以上のタンクがありますが、全タンク容量の98%が使用中です。そのうち、ALPS処理水は3割、処理途上水が7割を占めており、処理途上水は、放射性物質が基準値内を下回るまで浄化処理が進められ、ALPS処理水へと変化していきます。

参考:東京電力「処理水ポータルサイト」より(2023年8月29日最終閲覧) 

2、ALPS処理水を海に放出する理由

ALPS処理水

ALPS処理水を海に放出する理由について、詳しく解説を行います。

(1)福島第一原発の廃炉作業を行うため

福島第一原発の廃炉は、福島県の復興に必要不可欠です。今後廃炉作業を本格化させるためには、貯水タンクを減らし、その場所に新たな施設を建設する必要があります。

参考:経済産業省,  「復興と廃炉」に向けて進む、処理水の安全・安心な処分~ALPS処理水の海洋放出と風評影響への対応

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(2)海洋放出が最も妥当な処分方法であるため

ALPS処置水の処分方法は、2013年から専門家や有識者が議論を重ね、2020年に報告書として取りまとめました。報告書では、5つの処分方法を検討した結果、「技術的には、実績のある水蒸気放出及び海洋放出が現実的な選択肢である」と結論付けました。

この報告書をベースに、地元自治体や関係団体との意見交換を行い、最終的に海洋放出が最も妥当な処分方法だと判断されました。

参考:
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書

資源エネルギー庁 「復興と廃炉にむけて進む、処理水の安全・安心な処分~ALPS処理水の海洋放出と風評影響への対応」

東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針

(3)IAEAによる安全性の評価

ALPS処理水の海洋放出について、2023年7月にIAEAはALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けました。

参考:
経済産業省 「IAEAが東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書を公表しました」

IAEA, Comprehensive Report on the Safety Review of the ALPS Treated Water at TEPCO’s Fukushima Daiichi nuclear Power Station

IAEAは正式には国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)といい、原子力分野での協力を進める世界の中心的な機関です。核兵器の拡散を防ぎ、原子力技術を安全・安心して利用できるようにすることを目的としています。

参考:国際連合広報センター

このような国際的な評価も踏まえ、2023年8月24日以降、ALPS処理水の一部は海水で薄めた上で海洋に放出されています。

3、ALPS処理水の海洋放出後の影響

ALPS処理水の海洋放出後の影響については、東京電力がモニタリングを行い、結果を公表しています。2023年8月30日現在、海水(港湾外)、魚類、海藻のモニタリングにおいて、有意な変化は認められていません。

ALPS処理水のモニタリング結果は、東京電力の処理水ポータルサイトで誰でも閲覧することができます。

また、IAEAは、独立した立場からALPS処理水と環境中の放射性物質について継続的なモニタリングと定期的なレビューを実施しています。

参考:IAEA 福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の放出

PoliPoliで公開されている環境関連の取り組み

誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策について、以下のように公開されています。

あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。

PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者

議員名 田嶋 要
政党 衆議院議員・立憲民主党
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies

 

(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • 分散型エネルギー社会を実現するための基本法をはじめとした環境整備を行い、エネルギーの地産地消や原発依存からの脱却、エネルギー転換の過程で起こる雇用の公正な移行を実現します!

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

まとめ

今回は、ALPS処理水について詳しく解説をしました。

東日本大震災から12年の月日が経っていますが、未だに向き合わなければならない課題が多く存在します。日本の大切な課題であるため、国民の一人ひとりがALPS処理水についてや課題を知っておく必要があります。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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