バリアフリーとは、社会に存在する『障壁(バリア)』をなくすことを指します。
例えば、車椅子利用者のためにスロープを設置するなどの施策が挙げられます。
本記事では以下について詳しく解説します。
- バリアフリーとは
- 心のバリアフリーとは
- 具体的なバリアフリーの事例
- バリアフリーに関するシンボルやサイン
- バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
本記事がお役に立てば幸いです。
1、バリアフリーとは
バリアフリーとは、より多くの人が快適な生活を送れるように、社会から様々な障壁(バリア)を取り除くことです。
ここでは以下について確認しましょう。
- バリアの定義
- 4つのバリア
(1)バリアの定義
バリアフリーの『バリア(barrier)』とは、進行を妨げる障害物、障壁という意味です。
世の中は多様な個性を持つ人々が存在していますが、社会にあるシステムの多くは、多数派の人々に合わせて設定される傾向にあります。
そのため全体から見れば少数派である、障がいのある方や高齢者などは、生活する上で不便さを感じてしまうケースも少なくありません(日本の総人口の内、障がい者の占める割合はおよそ7.4%)。
そうした社会生活に参加する上で感じる不便さなどが、社会のバリアであると考えられています。
参考:厚生労働省 障がい者の数
参考:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
(2)4つのバリア
バリアフリーという言葉における『バリア』には、以下4種類があります。
- 物理的バリア
- 文化情報面におけるバリア
- 意識の面におけるバリア
- 制度的バリア
それぞれ確認していきましょう。
①物理的バリア
物理的バリアとは、段差や階段などの物質的な障壁です。
高齢者にとって、高い段差は転倒の原因になります。
こうした物理的バリアを取り除くには、以下のような取り組みが効果的であると考えられます。
- 床の段差をなくし、スロープにする
- 階段に昇降機を付ける
②文化情報面におけるバリア
文化情報面におけるバリアとは、情報の受け取り手が限られてしまう障壁です。
例えば車内の音声アナウンスは、聴覚の不自由な人に対しては、十分な情報を伝えられません。
また、託児がないイベントの催し物も文化情報面のバリアであるという意見もあります。
こうした文化情報面におけるバリアを取り除くためには、以下のような取り組みが必要になります。
- 車内でのテロップ表示
- イベントでの託児所の設置
③意識の面におけるバリア
意識の面におけるバリアとは、それぞれの理解不足から起こる障壁です。
意識の面におけるバリアの例として、以下が挙げられます。
- 障がい者を奇異的な目で見る(差別)
- 高齢者や障害者を哀れむ(偏見)
- 点字ブロックの上に荷物を置く(無関心)
④制度的バリア
制度的バリアとは、社会的な制度によって、特定の人が社会参加の機会を奪われてしまう障壁を指します。
例えば就職活動において、障がいを理由に面接を受けられないといった状況は、働く機会を奪うことになります。
制度的バリアの例として、以下が挙げられます。
- 幼児を連れて入店できない
- 盲導犬を連れて入店できない
参考:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
参考:バリアフリーって何? 宇都宮市
2、心のバリアフリーとは
心のバリアフリーとは、それぞれが社会のバリア(障壁)を認識し、互いを助け合う取り組みです。
2017年に定められた『ユニバーサルデザイン2020行動計画』では、心のバリアフリーを実現するため、3つのポイントを掲げています。
- 障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であると理解する
- 障害のある人(及びその家族)へ差別をしないように徹底する(不当な差別、合理的配慮の不提供を含む)
- 自分とは異なる他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みに共感する力を培う
また、北海道札幌市では「札幌市心のバリアフリー推進マーク」を作成し、心のバリアフリーの普及活動を行っています。
画像引用元:心のバリアフリー推進マークについて 札幌市
3、具体的なバリアフリーの事例
具体的なバリアフリーの事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
実際の事例をいくつか見ていきましょう。
(1)スロープのある通路
スロープのある通路は、車いす利用者や足の不自由な人の障壁を解消します。
スロープとは、以下のような傾斜の付いた通路のことです。
画像引用元:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
一般的に建物と道路の段差には階段が設置されますが、スロープを設置することで、段差のない緩やかな傾斜にすることができます。
(2)多目的トイレ(多機能トイレ・バリアフリートイレ)
多目的トイレは、以下の障壁を解消することを主な目的としたトイレです。
- 車いすユーザー
- オストメイト(人工肛門、人工膀胱を利用している人)
- 乳幼児を連れた方
多目的トイレには以下の機能があります。
- 車いす用の広いスペース
- 人工肛門、人工ぼうこう保有者用の流し台
- 乳幼児用のおむつ交換台
画像引用元:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
(3)図記号の案内サイン
図記号の案内サインとは、文字が読めなくても内容がわかる標識です。
案内用図記号(ピクトグラム)とも呼ばれます。
以下はその例です。
画像引用元:標準案内用図記号ガイドライン(その1) 国土交通省
画像引用元:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
案内用図記号(ピクトグラム)によって
- 視覚に障がいを抱えている人
- 視力の低下した高齢者
- 日本語が読めない外国人
であっても、標識を見れば内容を理解できるので、情報伝達ツールとして非常に優秀です。
(4)点字ブロック
点字ブロックとは、視覚障がい者を安全に誘導するために設置された通路パネルです。
点字ブロックには以下の種類があります。
- 進行方向を示す誘導ブロック(線上ブロック)
- 危険箇所を伝える警告ブロック(点状ブロック)
画像引用元:点字ブロックについて 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合
視覚に障がいを持つ人は、以下の区別が難しいことがあります。
- 歩道と道路
- ホームと線路
点字ブロックは、足裏から通路の情報を伝え、多様な人々の安全を実現しています。
(5)転落防止用のホームに設置されたドア
転落防止用のホームに設置されたドアは、視覚障がい者の転落防止に役立ちます。
国土交通省の調べによると、2019年(令和1年)の視覚障がい者のホーム転落事故は61件でした。
年々減少傾向にあるものの、視覚障がい者の転落事故は社会的な課題といえるでしょう。
グラフ引用元:駅ホームからの転落に関する状況 国土交通省
また転落防止用のホームドアは、高齢者や体調不良による不慮の転落事故防止にも役立ちます。
(6)バリアフリーマップ
バリアフリーマップとは、付近のバリアフリー施設を確認できる地図です。
地図を見ることで、バリアフリーが施されいる場所がわかるので、障害者や高齢者、子ども連れでも安心して外出できます。
東京都新宿区では、パソコンとスマートフォンに対応した『新宿らくらくバリアフリーマップ』を提供しています。
新宿らくらくバリアフリーマップは視覚障害者向けの音声機能も搭載しています。
参考:みんなでつくるバリアフリーマップ作成マニュアル 国土交通省
4、バリアフリーに関するシンボルやサイン
ここではバリアフリーに関するシンボルやサインをご紹介します。
(1)障がい者のための国際シンボルマーク
画像引用元:障害者に関係するマークの一例 内閣府
障がい者のための国際シンボルマークとは、障害を持つ人が利用できる施設であることを表すマークです。
以上のようなマークを見かけた場合は、障がいを抱える方の利用に配慮する必要があります。
(2)ほじょ犬マーク
画像引用元:体に障害のある人の目や耳や手足となって働く「身体障害者補助犬」への理解を深めましょう 政府広報オンライン
ほじょ犬マークとは、身体障がい者などを補助する補助犬の同伴を啓発するためのマークです。
(3)耳マーク、手話マークなど
画像引用元:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
聴覚障害を持つ人の助けとなるマークには、様々なものがあります。
『耳マーク』とは、耳が不自由であることを表すマークで、障害を周りに伝える目的があります。
手話マークと筆談マークは、手話と筆談にて対応が可能であることを表すマークです。
ヒアリングループマークは、補聴器等に内蔵されているヒアリングループ(磁気誘導ループ)が利用できる施設を表すマークです。
(4)オストメイト用設備|オストメイトを示すマーク
画像引用元:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 政府広報オンライン
オストメイトとは、人工肛門や人工膀胱を利用している人を指します。
オストメイトを示すマークは、オストメイトの方に対応したトイレであることを表すマークです。
オストメイトの方は、ストーマと呼ばれる人工肛門や人工膀胱の装具を洗浄する必要があるため、トイレにシャワーや洗浄台が必要になります。
(5)ベビーカーマーク
画像引用元:ベビーカーマークについてのお知らせ 国土交通省
ベビーカーマークとは、ベビーカーでも安心して利用できる施設を表すマークです。
よりベビーカーを利用しやすい環境を作ることを目的に作成されています。
(6)ハート・プラスマーク
画像引用元:障害に関するシンボルマーク 東京都福祉保健局
ハート・プラスマークとは、心臓疾患などの内臓疾患を抱える人を表すマークです。
体の内部の疾患を示し、周りの人に理解や配慮を呼びかけるために作成されています。
(7)ヘルプマーク
画像引用元:ヘルプマーク 東京都福祉保健局
ヘルプマークは、外見ではわからない疾患を表すマークです。
- 難病
- パニック障害
などさまざまな事情を持つ人が対象です。
ヘルプマークは手助けや配慮が必要であることを表しています。
5、バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとユニバーサルデザインはよく混同されますが、その違いは対象者の違いにあります。バリアフリーの対象者は、「高齢者や特定の事情を抱える人」です。
一方、ユニバーサルデザインの対象者は、『すべての人』になります。ユニバーサルデザインは、障がいを抱えていた建築家ロナルド・ルメスが発案したもので、障がい者を特別視するのではなく、すべての人にとって快適な環境をつくりたいという願いから生み出されました。
ユニバーサルデザインについて詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
ユニバーサルデザインとは?具体例・バリアフリーとの違いを簡単解説
PoliPoliで公開されているバリアフリー関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、盲ろう教育の推進政策について、以下のように公開されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|盲ろう教育の推進
(1)盲ろう教育の推進の政策提案者
議員名 | 宮路 拓馬 |
政党 | 衆議院議員・自由民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/MwGUl8twsAXpQiKLhSVs/policies |
(2)盲ろう教育の推進の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 日本初の盲ろう学校を創設する
- 盲ろう者が「普通に」社会で学び、生活できる環境を整える
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- 盲ろう教育の研究者・専門家を養成する
- 盲ろう当事者を研究者として採用する
- 盲ろう教育関連のテクノロジー開発を支援する
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
今回はバリアフリーについて解説しました。
バリアフリーに協力的な社会の実現を目指し、公共交通事業者等にバリアフリーの整備を義務づけるなど、バリアフリー新法の改正が進んでいます。
無自覚でバリアを生まないためにも、本記事がお役に立てれば幸いです。