収賄(しゅうわい)とは、賄賂(わいろ)を受け取ることです。賄賂とは、不正な目的で贈る金品等を指します。賄賂を受け取る、または贈ると罪に問われることが法律で定められています。
本記事では、以下についてわかりやすく解説します。
- 収賄とは
- 収賄罪とは
- 贈賄罪(ぞうわいざい)について
- 収賄罪に関連する事件
- 収賄・贈賄の防止対策
本記事がお役に立てば幸いです。
1、収賄とは
収賄とは、賄賂を受け取る行為です。賄賂は、着物の袖の下に隠して渡していたことに由来し、別名『袖の下』とも呼ばれます。
賄賂は不正な目的で贈る金品等を指し、以下の提供も賄賂に含まれることがあります。
- 名誉や地位
- 性的な関係
- 飲食
賄賂を受け取るとどのような罪に問われるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
2、収賄罪とは
収賄罪とは、賄賂を受け取ることで罪に問われる犯罪です。
収賄罪に関連する法律は『刑法』と『会社法』で定められています。。
(1)収賄を罰する刑法
収賄を罰する刑法には、以下があります。
- 刑法第197条
- 刑法第247条
①公務員の収賄に関する刑法第197条
公務員の収賄罪は『刑法第197条』に定められています。実際に条文を見てみましょう。
(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
条文引用元:刑法 e-GOV
条文によると、公務員が賄賂に関する行為(受け渡し・要求・約束)をした場合は、5年以下の懲役になります。
また「請託」とは、何らかの依頼を受け、その対価として賄賂を受け取ることです。
請託の場合は「受託収賄罪」と罪が重くなり、7年以下の懲役に処されます。
②一般的な会社員の収賄に関する刑法第247条
一般的な社員の収賄については『刑法第247条』で罰せられます。条文を見てみましょう。
(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
条文引用元:刑法 e-GOV
条文によると、
- 自分や第三者の利益を図る
- 損害を加える
目的で業務に背き、財産上の損害を与えた場合は、
- 5年以下の懲役、又は
- 50万円以下の罰金
に処されます。
収賄は「自分や第三者の利益を図る目的で業務に背く」ことにあたります。
(2)収賄を罰する会社法
収賄を罰する刑法には、以下があります。
- 会社法第967条
- 会社法第960条
①会社役員の収賄に関する会社法第967条
会社の役員による収賄に関しては『会社法第967条』で罰せられます。条文を見てみましょう。
(取締役等の贈収賄罪)
第九百六十七条 次に掲げる者が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
一 第九百六十条第一項各号又は第二項各号に掲げる者
二 第九百六十一条に規定する者
三 会計監査人又は第三百四十六条第四項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者
条文引用元:会社法 e-GOV
『会社法第967条』では主に、
- 取締役
- 執行役
- 会計監査人
など会社の経理に大きく関わる役員による収賄行為について定められ、収賄をした場合は、
- 5年以下の懲役
- 500万円以下の罰金
のどちらかに処されます。
②会社役員の収賄に関する会社法960条
会社役員の収賄罪には『会社法第960条』の『背任罪』が適用されることもあります。
こちらも条文を見てみましょう。
(取締役等の特別背任罪)
第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
条文引用元:会社法 e-GOV
条文によると、
- 自分や第三者の利益を図る
- 株式会社に損害を加える
目的で業務に背き、その株式会社に対して財産上の損害を与えた場合は、
- 10年以下の懲役
- 1000万円以下の罰金
- その両方
のどれかに処されます。
3、贈賄罪について
贈賄罪(ぞうわいざい)とは、賄賂を贈ることで罪に問われる犯罪です。
贈賄罪は『刑法第198条』で定められています。条文を見てみましょう。
(贈賄)
第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
条文引用元:刑法 e-GOV
条文によると、賄賂を
- 送る
- 申し込む
- 約束する
といった行為をした人は、
- 3年以下の懲役
- 250万円以下の罰金
のどちらかに処されることが分かります。
収賄罪との違いは、公務員や会社員ではなくても処罰の対象になる点です。
4、収賄罪に関連する実際の事件
実際に収賄罪に関連する以下の事件について紹介します。
- ロッキード事件
- リクルート事件
- 鈴木宗男事件
- IR汚職事件
収賄の「経緯・社会的な影響」について詳しく見ていきましょう。
(1)ロッキード事件
ロッキード事件とは、1976年に起きた、アメリカの航空機製造企業「ロッキード社」による収賄の事件です。ロッキード社は航空機を売り込むために、各国の政府関係者に賄賂を渡していました。
日本では
- 当時の首相、三木武夫氏に5億円
- 全日空に30億円
の賄賂が渡されており、企業の幹部・政府高官にかぎらず、国の首相まで巻き込んだ事件です。
当時、収賄による首相の逮捕は、社会的にも大きな混乱を呼びました。
(2)リクルート事件
リクルート事件とは、1985~86年に起きた、リクルート社による株式の収賄に関する事件です。当時のリクルート社会長は、自社の地位を高めるため、リクルート子会社の未公開株を政治家や企業、マスコミ関係者に譲渡しました。
この譲渡により、株式の公開直後に合計66億7000万円が譲渡者に渡るように仕組まれました。
リクルート事件の特徴としては
- ロッキード事件同様、大物政治家が関係していたこと
- 『未公開株』で贈賄が行われたこと
などです。
リクルート事件を受けて、当時の竹下登内閣は総辞職に追い込まれました。
(3)鈴木宗男事件
鈴木宗男事件とは、当時衆議院議員であった鈴木宗男氏をめぐる一連の事件です。
一連の事件の中には
- ムネオハウス事件
- 国後島ディーゼル発電施設事件
- やまりん事件
- 島田建設事件
- イスラエル学会事件
- 政治資金規正法違反事件
- モザンビーク共和国洪水災害国際緊急援助隊派遣介入事件
など多数の事件が含まれています。
2010年9月に最高裁判所により、鈴木宗男氏に対して実刑判決が下されました。鈴木宗男事件は、一議員の影響力の強さや活動の幅広さを物語った事件といえるでしょう。
(4)IR汚職事件
IR汚職事件とは2017年に起きた、IR参入を目指していた中国企業からの賄賂を、当時の内閣府IR担当副大臣が受け取っていたことに関する事件です。
IRとは、 Integrated Resortの略で、観光の振興を目的としたカジノを含む複合商業施設のことを指します。IR汚職事件の特徴は、国が進めている政策(事業)を狙った事件であるということです。
規模の大きい事業だからこそ、そこに関する収賄は、国全体に影響を与えかねない、大きな問題行為であると言えるでしょう。
5、収賄・贈賄の防止対策
収賄・贈賄の防止対策として以下が挙げられます。
- 役員や従業員に対して規則の策定・公表、監査をする
- 特定の役員や部署に権限が集中することを避け、バランスの取れた組織体制にする
- 外部との関係性の透明化を図るため、ギフトを公開したり、取引先の評価基準の設定をしたりする
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まとめ
今回は収賄について解説しました。
賄賂は、実際に送るだけでなく、その約束を交わした時点で罰則の対象にあたります。
贈収賄がはびこらないよう、国民や消費者が目を光らせることも必要かもしれません。