日本では、2016年11月4日に発効された「パリ協定」を踏まえて、2030年・2050年を見据えた中長期的なエネルギー政策を打ち出しており、企業はもちろん一般家庭にも積極的な省エネ対策が求められています。
そこで、本記事では、
- 省エネの概要
- 省エネに対する政府の取り組み
- 家庭でのエネルギー消費状況
- 家庭での省エネ対策
などについて分かりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、省エネとは
「省エネ」とは、「省エネルギー」の略で、有限のエネルギーを効率的に使うことを指します。
私たちの生活は、電気やガス、水道など様々なエネルギーを利用して成り立っています。
運輸や衣料品なども生産や流通の過程において多くのエネルギーを消費しています。
このように、現在の便利な生活にはエネルギーが欠かせません。
そして、これら電気やガスなどのエネルギーは、主に石油や石炭などの限りある化石燃料を燃やして生み出されています。
省エネとは、そんな限りあるエネルギー資源が枯渇してしまわないよう、エネルギーを無駄なく効率的に使用していこうということなのです。
(1)省エネの必要性
日本で省エネが必要とされている大きな理由に
- エネルギーの安定的な供給の確保
- 地球温暖化の防止
という2点があげられます。
現在、エネルギー生産の主力とされている化石燃料は、いつか尽きてしまうと言われている「限りある資源」です。
日本は化石燃料の多くを輸入に依存しているので、国内へのエネルギー供給が国際情勢の影響を受けやすいと言えます。
そんな日本にとって、エネルギーの安定的な供給が見込める「省エネ対策」は重要な取り組みなのです。
また、地球温暖化の主な原因は、CO2などの温室効果ガスにあると言われています。
18世紀の産業革命以降、石油などの化石燃料の使用が増えたことで、大気中のCO2濃度が増加してきました。
CO2などの温室効果ガスが大量に排出されると、地球から熱の放出が少なくなるため、気温が上昇します。
このまま地球温暖化が進むと、生態系が崩れてしまう可能性も否めません。地域の気候特性の変化や農作物などへの悪影響も考えられ、これまで通りの生活ができなくなる可能性も指摘されています。
参考:二酸化炭素濃度の経年変化 気象庁
地球温暖化とは?原因・影響・日本と世界の対応を簡単解説
2、省エネに対する政府の取り組み
2011年3月の東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、政府は2014年4月に、2030年に向けた「第4次エネルギー基本計画」を策定しました。
2018年7月には、2030・2050年を見据えた新しいエネルギー政策である「第5次エネルギー基本計画」をまとめました。
(1)エネルギー基本計画とは
エネルギー基本計画とは、2002年6月に制定された「エネルギー政策基本法」に基づき、国が定めるエネルギー政策の基本方針のことです。
エネルギー基本計画には、
- 環境への適合(Environment)
- 安定供給(Energy Security)
- 経済効率性の向上(Economic Efficiency)
- 安全性(Safety)
という「3E+S」の4つの原則を満たす政策を実現するため、中長期的な基本方針が示されています。
エネルギー基本計画は、おおよそ3年ごとに検討され、閣議決定が行われることが定められています。
(2)第5次エネルギー基本計画について
第4次エネルギー基本計画の策定から4年、「第5次エネルギー基本計画」が2018年7月に閣議決定されました。
この基本計画の背景には、
- 2030年までに世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べて2℃未満にする目標
- 変化するエネルギー情勢への対応などが掲げられた「パリ協定」
が大きく関係しています。
そこで第5次エネルギー基本方針では、さらに3E+Sを発展させるために、以下の目標を掲げています。
- 安全性の革新
- エネルギー自給率のアップ
- エネルギー選択の多様性の確保
- 脱炭素化への挑戦
- コストの抑制および日本産業競争力の強化
また、エネルギーミックス社会(様々な発電方法を組み合わせ、供給電気をまかなう社会)を実現するため、
- 2030年には「温室効果ガス26%削減」
- 2050年には「温室効果ガス80%削減」
という目標も掲げています。
参考:新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?
3、家庭でのエネルギー消費状況
日本国内でのエネルギー消費は、第1次石油ショックがあった1973年と比べて、全体的に増加しています。
近年の家庭エネルギーの消費量は、省エネ技術の普及も伴いピーク時と比べると少し低い傾向にあります、1973~2018年までの間では、約2倍も増加しています。
この家庭エネルギー消費における増加の背景は、ライフスタイルの変化や世帯数の増加などが考えられています。
特に「電気」の使用量が著しく高まり、家電やオール電化住宅の普及などが大きく影響しているようです。
具体的に家庭内でエネルギー消費量が大きいものとしては
- 電気冷蔵庫
- 照明器具
- テレビ
- エアコン
があげられます。
これら4つの電化製品は、家庭における電気使用量の全体の約4割を占めています。
4、家庭での省エネ対策
省エネで大切なのは、「いかに効率的に電力を使用するか」という点です。
日頃の生活の中で無駄を洗い出し、減らすことで、電気代の節約にもつながるかもしれません。
ここからは、家庭でのエネルギー消費の大きい
- 冷蔵庫
- 照明器具
- テレビ
- エアコン
について、家庭でも実践できる効果的な省エネ対策についてご紹介します。
(1)家庭での省エネ|冷蔵庫
冷蔵庫には詰め込みすぎず、全体の7割以上入れないようにするのがベストです。
詰め込み過ぎることで
- 冷気の吹き出し口を塞ぎ、冷却力が低下する
- 食品を探す時間が増え、ドアを開いている時間も長くなる
といったことが起きてしまうのです。
資源エネルギー庁によると、冷蔵庫内の詰め込みすぎを解決することで、
- 年間43.84kWhの省エネ
- 年間約1,180円の節約
につながると言われています。
また、ドアを開けている時間を10秒短くすることで、
- 年間6.10kWhの省エネ
- 年間約160円分の節約
になるそうです。
そのほか、季節に合わせて設定温度を調節することも省エネにつながります。
資源エネルギー庁によれば、設定温度を適切に設定することで
- 年間61.72kWhの省エネ
- 年間約1,670円分の節約
になるようです。
(2)家庭での省エネ|照明器具
照明器具はこまめにオフすることを心がけましょう。
資源エネルギー庁によれば、54Wの白熱電球1灯を1時間短縮した場合、
- 年間19.71kWhの省エネ
- 約530円分の節約
12Wの蛍光ランプ1灯なら、
- 年間で4.38kWhの省エネ
- 約120円分の節約
になります。
また、白熱電球を使用している場合は、消費電力の少ない
- 電球型蛍光灯
- LED 電球
に交換するだけでも省エネにつながります。
電球型蛍光ランプは寿命が約6,000~10,000時間で、白熱電球の約1/4の省エネです。
寿命が約40,000時間の電球型LEDに変えれば、電球形蛍光ランプの約3/4の省エネになります。
(3)家庭での省エネ|テレビ
家庭内でのテレビの消費電力量は大きく、テレビを見ていないときは、こまめに消すようにしましょう。
このとき、テレビ本体の主電源までオフにすることで、待機時の消費電力も抑えることができます。
もし旅行などで長時間テレビをつけない時は、コンセントからプラグを抜くことで、大幅に待機時消費電力を節減できます。
たとえば、1日1時間テレビ(32型)を見る時間を短くするだけで
- 年間16.79kWhの省エネ
- 約450円分の節約
になります。
また、画面の明るさを部屋に合わせて調整するだけでも省エネにつながります。
資源エネルギー庁によると、テレビの画面の明るさを中間にした場合、
- 年間で27.10kWhの省エネ
- 約730円分の節約
になるようです。
(4)家庭での省エネ|エアコン
エアコンのフィルターにホコリがたまると冷暖房効率が下がり、無駄な電力を消費してしまいます。
そのため月に1度は、フィルターの清掃を心がけましょう。
フィルターの清掃によって、冷房時は約4%、暖房時では約6%の消費電力の節約になります。
ホコリのたまったフィルターを使用しているエアコンと清掃しているエアコンと比較すると、
- 年間31.95kWhの省エネ
- 約860円分の節約
になります。
また同時に
- 厚手のカーテン
- 扇風機
- サーキュレーター
などを利用して、風向きを調整したりすることも省エネにつながります。
まとめ
今回は、省エネについて解説しました。
地球規模で温暖化対策やエネルギー対策が求められているなか、私たち1人1人の生活においても省エネ対策は欠かせません。
これからも変わらず豊かな地球環境で暮らしていくために、私たちが日常的にできる省エネ対策について考えてみましょう。