
2025年は、東京都議会議員選挙と参議院選挙が同じ年に行われる12年に1度の年です。都議選は6月22日、参院選は7月ごろを見込んでいます。昨年の衆院選では、派閥の裏金事件で国民からの批判を受け、自民党が大敗しました。
今回の選挙でも与党の苦戦が見込まれるなか、注目されるのが野党の勢いです。そもそも、野党とはどのような存在なのでしょうか。与党との違い、次の選挙で政権交代を現実なものにするのか、現状とともに詳しく解説します。
そもそも野党とは
野党とは、国の政治において政権(政府)を担当していない政党のことです。選挙で議席を持っていても、首相や大臣を出していない政党が野党です。政権を担当する与党とは違い、内閣を組織せず、与党が政策を実行し国を運営する一方、野党は与党の監視や政策への対案提示を行います。
野党の主な役割としては、政府与党を監視し、 無理な政策や不正がないかを国会などで追及したり、与党とは異なる視点から政策立案し、政府の政策に代わる案を出して議論を深めたりします。国民の意見反映においては、少数派や批判的な意見を代弁し、多様な声を政治に届けます。さらに、次の政権を目指す存在でもあります。 選挙で勝つことで与党になり政権交代の可能性もあります。
2025年4月時点で、日本は自由民主党と、共に連立政権を組む公明党が与党に当てはまります。対して、野党は立憲民主党や国民民主党、日本維新の会や共産党などがあります。
野党の現状、少数与党の下での予算決議
現在、衆議院はすでに以下のように自民党が少数与党となっており、国会での予算成立などに野党との調整が必至の状況です。
(画像出典:NHK)
①野党が譲歩し、少数与党の予算案が成立
2025年度予算案は24度末の31日、衆院本会議で成立しました。一般会計の歳出(支出)総額は過去最大の115兆1978億円。衆院で少数与党の石破政権は、野党の協力を得るために2回の修正に応じる異例の対応を取ることで、24年度内の成立を図りました。参院で予算案を修正し、衆院の同意を得て成立するのは現憲法下で初めてのことです。
修正は、与党と維新が合意した高校授業料無償化や、税金や社会保険の負担が生じる「年収103万円の壁」などに伴い行われました。
②高額療養費制度が争点に
さらに、最大の争点になったのが高額療養費制度の負担上限引き上げです。政府の上限引き上げの方針に関して、立憲民主党の野田佳彦代表は「命に関わる問題」と争点に掲げ、強く反発しました。石破首相は当初、予定通り8月に負担上限額の引き上げを実施する姿勢でしたが、がんや難病の患者団体からの意見を聴き、最終的に引き上げを見送ることを表明しました。
野田代表は記者会見で、「総力戦で実現のため奮闘してきた。『熟議の国会』の一つの成果になる」と強調し野党の存在感を示すこととなり、同時に、少数与党としての予算の成立に向けた野党との調整は、採決のハードルが上がったことを表すこととなりました。
参考:毎日新聞
都議選、参院選で見えてくる政局の行方。政権交代の可能性は
今回の予算成立の一連の流れでは、自民党内で野党の主張を次々とのんだことについて、執行部から譲り過ぎだとの不満がくすぶっています。今後、野党と交わした政策実現に向けて財源の確保を示すことが求められるだけでなく、2025年夏の参院選に向けて野党は対立姿勢を強めるのは必至で、野党に譲歩を重ねる手法で乗り切るのは難しいとの見方もあります。
①都議選で自民党第一党が危ういとの見方も
また、都議会自民党の裏金事件では、政治倫理条例検討委員会が裏金づくりがあった当時の幹事長の小宮安里議員の参考人招致を行いました。
小宮氏は会派が開いた政治資金パーティーの収入のノルマを超過した分などを各議員が政治資金収支報告書に記載しなかった理由について、「いつから、誰の指示であったか確認できなかったが、やり方の問題点を認識せず、継続してきた責任は今の私たちにある」と述べており、都民に説明責任を果たせるのかが、選挙の行方を左右しそうです。
参考:NHK
②参院選は物価高対策で勝負
都議選の後に行われる参院選では、物価高対策政策が争点の一つとなりそうです。自民党は3万円~5万円の現金給付案を見送った一方で、国民民主党は「若者減税法案」を衆議院に提出。この法案は30歳未満の若者の所得減税をするもので、「30歳区切り」には批判の声もあります。立憲民主党は時限的に「食料品消費税ゼロ」の案を出すなど、野党が減税案を打ち出す中、政府・自民党が補正予算案を出さずにどこまで国民の心をつかめる経済対策を打ち出せるかがカギとなりそうです。
まとめ
石破茂首相は3月に行った自民党の全国幹事長会議で、今夏の選挙について「極めて厳しい選挙だが、何としても勝ち抜いていきたい」と述べ、結束を呼びかけました。衆議院で少数与党となるなか、参議院でも敗北となれば、政権交代は現実味を帯びてくるかもしれません。
自民党に逆風が吹く中、野党は候補を一本化することができるかが焦点となります。現時点では、山口県選挙区や岐阜県選挙区では野党共闘の動きがあるものの、候補者の擁立が見通せていません。山形県選挙区では、2019年の参院選で共産党が擁立を取り下げ、立憲民主党県連、国民民主党県連、連合山形などとともに無所属・現職議員を支援して野党共闘が実現し、当時の自民党現職を破りましたが、今回は共産党が新たな候補者を擁立することを発表するなど、足並みが揃わない状況です。
2025年選挙の夏で、野党がどこまで存在感を見せるのか、注視する必要がありそうです。
参考:山形放送
