
トランプ政権の関税措置や物価高、コメ価格の高騰など国民生活が冷え込むなか、今年の夏には参議院議員選挙を控え、与野党からは「減税」を求める声が上がっています。それらの内容とともに、国民民主党が4月10日に法案提出した「若者減税法案」について、実現へ向けた課題も含めて詳しく解説します。
参院選を見据え与野党から「減税」or「給付」案
はじめに、与党の動向から見てみましょう。
① 公明からは「現金支給」を求める声も
公明党の斉藤鉄夫代表は4月10日、米国の関税措置や物価高への対応策として、減税を柱とする経済対策を早急に取りまとめるように、政府へ提言しました。
斎藤代表は減税を「家計や企業の負担を直接軽減できる最も効果的な対策」と述べています。さらに、減税が実現するまでの「つなぎ」として、現金給付を検討すべきという考えも明らかにしました。
②自民からは選挙ありきや財源への不安の声が
こうした提言に対し、公明党と連立を組む自民党の幹部からは「参院選に向けた焦りだろう」「減税と給付のハイブリッドなんて、お金がいくらあっても足りない」といった声が上がりました。
一方で、政府・自民党内で調整が進められているのが、国民に一律3万円から5万円を目安として現金を給付する案です。これには自民党関係者の間で「減税封じ」という見方があり、一度減税した税率は元に戻すことが難しいため、一度きりで済む給付のほうがいいという考えがあったようです。
この案は、単純計算で6兆円以上の財源が必要となる見込みで、補正予算案を編成しなければならず、成立させるには野党の協力を得ることが不可欠でしたが目途は立ちませんでした。近く策定する経済対策には、2025年度予算の予備費などを活用した電気やガス、ガソリンへの補助金などを盛り込む方針と報じられています。
引用:毎日新聞
与 党 案 |
|||
自民党
(一部) |
見送り | 公明党 | 減税を柱とした経済対策
つなぎとして現金給付 |
国民に一律現金給付
3万円~5万円 |
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野 党 案 |
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立憲民主党
(一部) |
食料品8%を
時限的にゼロに |
国民民主党 | 若者減税法案
30歳未満の所得を税減 |
続いて、野党の動向を見てみましょう。
③野党からは「消費税ゼロ」や「若者減税法案」 が浮上
立憲民主党では有志の議員らが4月10日、物価高対策として食料品にかかっている8%の消費税を時限的にゼロにすることを目指し、議論を行いました。今後、党の執行部に対し、参議院選挙の公約に盛り込むよう求める予定です。
ただ、党内からは「食料品の消費税ゼロ」について、減税に見合う効果が出るか懐疑的な見方や「給付の方が早い」との声など意見が割れています。
参考・引用:TBS
国民民主党が提出した若者減税法案とは
その中で国民民主党は4月10日、若者(30歳未満)の就労所得に係る所得税の負担軽減などを行い、働く若者をサポートする「若者減税法案」を衆議院に提出しました。内容は30歳未満の労働者の給与の平均額を算出し、所得控除をその金額まで引き上げることを政府に求めるもの。具体的な引き上げ金額は示されていません。
①多様な生き方の若者を支援
法案は、少子化や人口減少などの課題に直面する、日本経済や社会の活力を維持していくことを目的としているといい、国民民主党の玉木雄一郎代表は「若者といっても様々な形、生き方、働き方があり、大学などに行かずに頑張って働いている方々の所得税を減免することによってしっかり応援したい」などと述べています。
今後は、年末の税制改正に向けた政府・与党との協議などで実現を求める方針ですが、法案成立は見通せるとはいいがたく、参院選に向けて若者からの支持拡大を狙うとみられます。
②国民民主の法案は氷河期世代へのイジメ?
国民民主党は幅広い現役世代への支援を掲げてきたため、対象を30歳未満で区切る点に一部で批判が集まりました。これには、給付型奨学金など大学や大学院で学ぶ人向けの支援策などと同様に、同世代で働く人たちに向けた支援の必要性を強調。玉木氏は、博士課程を修了する時期に相当する20代後半までは「税の支援の恩恵を及ぼしてもいい」と説明し、世代間の支援の不均衡の解消や、広く現役世代をサポートする観点から「党が目指す若者、現役世代を応援する政策に合致している」と理解を求めました。
参考・引用:毎日新聞
そもそも氷河期世代とは
就職氷河期とは、1990年代半ばから2000年代半ばまでの、不況と経済成長の鈍化による影響によって、新卒学生が深刻な就職難に直面した時期を指し、この時期に高校や大学を卒業し、就職に苦労した当時の若者が「就職氷河期世代」、または「氷河期世代」と呼ばれています。氷河期世代について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
まとめ
減税の対象を「30歳未満」としたことについて、国民からは「氷河期世代だけ徹底的にイジメられている」といった不満がネット上で溢れました。減税が必要なのは、30歳未満の若い世代ではなく、賃金の上がらない40~50代の就職氷河期世代だといった声や、氷河期世代の給料削って新卒の初任給30万円を捻出する企業がある上に、さらに減税することに疑問を抱く声があるようです。
玉木氏は会見で、「年齢は恣意性の入らない区切りであり、違和感はない。40代から55歳ぐらいまでの就職氷河期世代にも新たな政策を提案していく。幅広い人たちの生活を応援したい」と述べていますが、法案成立に国民の同意を得られるかどうかはわかりません。
「現金給付」については自民党が見送る調整に入ったことにより、参院選の争点は「減税」や「消費減税」になると見込まれます。これについては、給付と違い継続的に財源を確保する必要があるため、経済効果も含めて議論が必要となりそうです。
参考:集英社オンライン
