
2025年4月から大阪・夢洲で開催されている、2025年日本国際博覧会(「大阪・関西万博」)。20年ぶりに日本で開催される万国博覧会(以下、万博)とあって、注目が集まっています。
しかし、万博が何のために開かれているのか、なぜ日本で20年ぶりに開催されるのか、よくわからない方が多いのではないでしょうか。
この記事では、万博の定義や、万博と日本との関係、2025年日本国際博覧会(「大阪・関西万博」)について解説します。
万博とは?ー条約に基づく国際的なイベント
私たちがふだん「万博」と呼んでいる「国際博覧会」は、「国際博覧会条約」という国際条約に基づいて、博覧会事務局(BIE)に登録又は認定された催しのことです。
「国際博覧会条約」は1928年11月22日にパリで署名され、その後4回の改正を経て現在に至ります。「国際博覧会条約」において、私たちが万博と呼ぶイベントは以下のように位置付けられています。
国際博覧会条約 第一条
1.博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう。
2.博覧会は、二以上の国が参加するものを、国際博覧会とする。
万博の歴史ー開催の背景とは?
万博の歴史はとても古く、当初の開催は1800年代に遡ります。
開催時期 開催地 特筆事項
1851 ロンドン 国際博覧会のはじまり
1853 ニューヨーク 米国初の国際博覧会
1855 パリ 初めて「万国博覧会」という名称を使用
1862 ロンドン 日本の遣欧使節団が視察
1867 パリ 日本初出品「幕府」「薩摩」「鍋島」が参加
1873 ウィーン 日本政府としての初めての公式参加
参考:外務省, 2005年日本国際博覧会,<https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/kako.html> (2025年4月17日閲覧)
1851年、ロンドンで開かれた「第1回ロンドン万国博覧会」で国際博覧会の歴史が幕を開けます。この万博は通称「大博覧会The Great Exhibition」とも呼ばれ、34か国が参加しました。ロンドン万国博覧会では、出品者の半数以上が大英帝国であり、欧米各国が植民地政策を進めるなか、自国の権勢を示す目的もありました。
参考:国立国会図書館, 1851年第1回ロンドン万博,<https://www.ndl.go.jp/exposition/s1/1851.html> (2025年4月17日閲覧)
日本が初めて国際博覧会に出展したのは、1867年のパリ万博からでしたが、当時は国際博覧会が一種の流行となっており、毎年どころか1年のうちに2~3カ所で博覧会が開催された年もありました。
第一次大世界大戦後には、現代の万博のように「テーマ」を持った万博が始まります。また、1928年には「国際博覧会条約」が署名され、「国際博覧会」はこの条約を基準に秩序をもって開催されることになりました。
参考:外務省, 2005年日本国際博覧会,<https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/banpaku.html>, (2025年4月17日閲覧)
日本と万博の関係ー第二次世界大戦後に日本も条約に加盟
ここでは、日本と万博の歴史を見てみましょう。
1912年、日本(当時は「大日本帝国」)は、「国際博覧会条約」に調印しましたが、第一次世界大戦が勃発し、批准に至りませんでした。また、1928年にパリで開かれた国際会議で「国際博覧会条約」が採択され、日本を含む31か国が調印しましたが、日本は批准せず非加盟国となりました。
その後、第二次世界大戦の勃発により、国際博覧会の開催は18年間ありませんでした。第二次世界大戦終結後、国際博覧会が再開されたのは、1958年のブリュッセル万博です。
日本は1964年、1970年万国博覧会誘致に向けて「国際博覧会条約」を批准し、1965年2月8日に条約に加盟しました。
参考:外務省,日本万国博覧会の実現, <https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/banpaku/page6.html> (2025年4月17日閲覧)
日本で初めて開催された万博ー1970年大阪万博
日本で初めて開催された万博は1970年の大阪万博です。
1964年、かつて商工官僚として1940年万博計画を主導した国会議員が、万博開催を提案しました。これに呼応するように、大阪からは万博誘致の要望書が政府に提出されました。それらの動きを受け、政府も万博開催の検討を始め、同年8月には「1970年の万博開催を積極的に推進する」ことが閣議決定されました。
開催5年前より正式の外交ルートによる申請ができたため、1965年に日本は「国際博覧会条約」を批准し、博覧会国際事務局(BIE)に1970年の万博開催申請書を提出、受理されました。
1970年の「日本万国博覧会」(大阪万博)は、「人類の進歩と調和」をテーマとして掲げ、76か国が参加し、入場者総数は過去最高の6,400万人以上を記録しました。
参考:外務省, 日本万国博覧会の実現,<https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/banpaku/page6.html> (2025年4月17日閲覧)
1970年の大阪万博の開催地は、万博終了後、「万博記念公園」となり、テーマ館の一部として建造された「太陽の塔」も現存しています。
日本における万博の開催実績
1970年の大阪万博を皮切りに、日本では1975年、1985年、1990年、2005年に万博が開催されました。また、2025年4月から10月まで、大阪の夢洲にて大阪・関西万博が開催されています。
1 日本万国博覧会(「大阪万博」)
(1)会期:1970年3月15日~9月13日(183日間)
(2)場所:大阪千里丘陵
(3)テーマ:人類の進歩と調和
(4)参加国:77か国(日本を含む) 4国際機関
(5)総入場者数:6,422万人
2 沖縄国際海洋博覧会
(1)会期:1975年7月20日~1976年1月18日(183日間)
(2)場所:沖縄
(3)テーマ:海-その望ましい未来
(4)参加国:36か国(日本を含む) 3国際機関
(5)総入場者数:349万人
3 国際科学技術博覧会
(1)会期:1985年3月17日~9月16日(184日間)
(2)場所:筑波研究学園都市
(3)テーマ:人間・住居・環境と科学技術
(4)参加国:48か国(日本を含む) 37国際機関
(5)総入場者数:2,033万人
4 国際花と緑の博覧会
(1)会期:1990年4月1日~9月30日(183日間)
(2)場所:大阪鶴見緑地
(3)テーマ:花と緑と生活の係わりを捉え 21世紀へ向けて潤いのある社会の創造を目指す
(4)参加国:83か国(日本を含む) 37国際機関、18園芸関係等の国際団体
(5)総入場者数:2,312万人
5 2005年日本国際博覧会(「愛・地球博」)
(1)会期:2005年3月25日~9月25日(185日間)
(2)場所:愛知県瀬戸市南東部、豊田市、長久手町
(3)テーマ:自然の叡智
(4)参加国:121か国(日本を含む) 4国際機関(国連は国連本部を含む33の国連関係機関を含む)
(5)総入場者数:2,205万人
6 2025年日本国際博覧会(「大阪・関西万博」)
(1)会期:2025年4月13日~2025年10月13日(184日間)
(2)場所:大阪府大阪市夢洲地区
(3)テーマ:いのち輝く未来社会のデザイン
(4)参加国:121か国(日本を含む) 4国際機関(国連は国連本部を含む33の国連関係機関を含む)
(5)想定入場者数: 約2,800万人
参考:外務省, 2005年日本国際博覧会日本における万国博覧会,<https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/nihon.html>(2025年4月17日閲覧)
外務省, 国際博覧会(大阪・関西万博),<https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/banpaku/index.html> (2025年4月17日閲覧)
2025年大阪・関西万博とは?ー日本の成長を持続させる起爆剤となるか
2025年4月13日から10月13日まで、大阪・夢洲で大阪万博が開催されています。テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
2025年大阪・関西万博が目指すものとして、
・持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献
・日本の国家戦略Society5.0の実現
の2つを掲げています。
また、今回の万博は、万博の求心力と発信力を活用し、2020年東京オリンピック・パラリンピック後の大阪・関西、そして日本の成長を持続させる起爆剤にすることも目的に掲げられています。
誘致のきっかけとなったのは、2014年、大阪府議会の最大会派である「大阪維新の会・みんなの党都構想推進大阪府議会議員団」が提出した、2025年の国際博覧会誘致案です。当時の安倍晋三首相も「経済活性化の起爆剤」と呼応し、2017年に大阪誘致を閣議了解しました。2025年の国際博覧会開催地として、日本のほかフランス(のちに立候補取り下げ)、ロシア、アゼルバイジャンが立候補しましたが、決選投票の末、2018年に大阪での開催が決まりました。
参考:2025大阪・関西万博公式HP, 開催目的, <https://www.expo2025.or.jp/overview/purpose/>, (2025年4月17日閲覧)
公益社団法人 関西経済連合会HP, EXPO2025大阪・関西万博誘致活動の軌跡, <https://www.kankeiren.or.jp/project/bampaku_kiseki.pdf>, (2025年4月17日閲覧)
過去の万博の収支をみてみると、1970年の大阪万博は「月の石」や「人間洗濯機」などが話題になり、入場者数は6400万人を超えて、およそ190億円の黒字となりました。2005年の愛・地球博は、当初の入場者数が伸び悩んだものの、最終的には2200万人を超え、およそ120億円の黒字となりました。
では、2025年大阪・関西万博の収支はどうなるのでしょうか。運営費は1160億円、会場建設費は最大2350億円を見込んでいますが、日本国際博覧会協会は、大阪・関西万博の前売り券の総販売枚数が約970万枚と目標の7割程度に止まったことを発表しました。
仮に赤字となった場合どのように補てんするかもまだ決まっていませんが、過去には公費で補てんした国もあります。
参考:NHK, そもそも“万博”って何?過去の万博 収支は?【動画リンクあり】,<https://www.nhk.jp/p/ohayou/ts/QLP4RZ8ZY3/blog/bl/pwrdojn7MR/bp/pgO39LjrMg/>, (2025年4月17日閲覧)
日本経済新聞, 大阪万博前売りチケット、販売目標の7割どまり 970万枚, <https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1474Z0U5A410C2000000/>, (2025年4月17日閲覧)
2025年大阪・関西万博のみどころ
2025年大阪・関西万博では、参加国や企業、自治体などが出展するパビリオンが84館あります。そのなかで注目されているパビリオンをいくつか紹介します。
・日本館「火星の石」
大阪・関西万博で初めて一般公開される「火星の石」。これは2000年に日本の観測隊が南極で発見した隕石で、数万年前に火星から飛来したものとされています。
・アメリカパビリオン「月の石」
1970年の大阪万博で展示されたものとは異なる「月の石」が展示されています。
・PASONA NATUREVERSE 「iPS心臓」
iPS細胞から作られた「ミニ心臓」。直径約3cmの小さなサイズで、人間の心臓に似た形となっています。実際の心臓の構造や機能は再現していないものの、鼓動する様子を観察することができます。
・モビリティエクスペリエンス「空飛ぶクルマ」
ドローンなどの技術を応用し人や物を乗せる「空飛ぶクルマ」は、万博の期間中、ANAホールディングス、「SkyDrive」、それに丸紅の3つの陣営が、来場者を乗せずに飛ぶデモ飛行を行います。クルマのように人々の生活に欠かせない存在となることを目指して「空飛ぶクルマ」と呼ばれています。
2025年大阪・関西万博のキャラクター「ミャクミャク」とは
2025年大阪・関西万博の公式キャラクターは「ミャクミャク」です。細胞と水がひとつになったことで生まれた生物で、赤い部分は「細胞」、青い部分は「清い水」となっています。なりたい自分を探して、姿を変えることができます。
「大阪・関西万博公式キャラクター二次創作ガイドライン」に従う場合、ミャクミャクは二次創作が可能となっています。
参考:2025大阪・関西万博公式HP, 公式キャラクターについて, <https://www.expo2025.or.jp/overview/character/>, (2025年4月17日閲覧)
まとめ
本記事では、万博の歴史的背景から日本との関わり、そして現在開催中の大阪・関西万博の概要、目的などについて紹介しました。
現在開催中の2025年大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、「空飛ぶクルマ」やAIを活用した最新技術などが展示されています。未来社会を体験できる貴重な機会ですので、ぜひ足を運んでみてください。
画像提供:2025年日本国際博覧会協会
