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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー国防は「国を守り抜く」という国民の意思。自由民主党・鬼木誠議員インタビュー

国防は「国を守り抜く」という国民の意思。自由民主党・鬼木誠議員インタビュー

投稿日2025.4.17
最終更新日2025.04.16

ウクライナでの戦闘が3年を超え、イスラエルとハマスによる紛争も長期化の兆しを見せるなど、未だ手が届きそうにない「平和」の二文字。国内に目を向けると、令和7年度の防衛予算は約8兆7000億円に上り、11年連続で過去最大を更新しました。
今回のインタビューでは、平和を求めて政治家の道を志し、防衛副大臣を4年にわたって務めた鬼木誠議員に、国防のあるべき姿や政治家としての信念についてお聞きしました。

(取材日:2025年3月27日)
(文責:株式会社PoliPoli 児島 花生里 )

鬼木誠議員インタビュー

鬼木誠(おにき まこと)議員
1972年生まれ。福岡県出身。九州大学法学部を卒業後、
西日本銀行(現西日本シティ銀行)に入行し、2002年に退職。
翌年の福岡県議会議員選挙に無所属で立候補し当選。
2012年の衆議院議員総選挙に自民党公認で出馬し初当選(5期)。
環境大臣政務官などを経て、2021年には防衛副大臣兼内閣府副大臣に就任。
衆議院安全保障委員長、党国防部会長、党税制調査会幹事などを歴任。

「世界はなぜ平和にならないのか?」から始まった政治家への道

ー鬼木議員はもともと銀行員でしたが、その前から政治への関心をお持ちだったのでしょうか。

実は最初に「政治家になろう」と思ったのは、小学校の高学年でした。平和学習に熱心に取り組む先生が「世界はなぜ平和にならないと思いますか?あなたなら何をしますか?」と生徒に問いかけました。それに対し「僕は戦争反対です」というような模範的解答にあふれる中、私は「ただ反対していても無くならない。誰もがやりたくない戦争なのに、政治をする国を動かす人たちが戦争を起こしているのだ」というおもいから「先生、僕は大人になったら政治家になって平和な世の中を作ります」と答えたのです。あれが政治家を志す原点でした。

中高生の頃もずっと「政治家になる」と言っていましたし、大学時代には縁があって衆議院議員の先生の事務所でボランティアをさせていただき、政治の世界を少し勉強することができました。

ー大学卒業後、銀行に就職されたのはなぜでしょうか。

「政治をやるなら銀行で経験を積むのがいい」という恩師のアドバイスがあったからです。しかし、銀行で働き続けても政治家になるチャンスはまったく訪れず、気が付けば7年が経っていました。そんな中、平成の金融危機が起こり「お客様が大変だ!」という状況になったのです。「政治は何をやっているんだ?」と思ってニュースを見れば、国会では与野党ともにスキャンダルを巡る応酬ばかり。「こんなことで日本は大丈夫か?」と心から危機感を抱き、それで銀行を辞めて政治の道に飛び込んだのです。

政党の支援も何もない、完全な無所属のサラリーマンが、ゼロから始めた選挙でした。お金も、支えてくれる組織もない。それでも福岡県議会議員に当選させていただき、10年間務めることができました。
鬼木誠議員インタビュー

将来世代の未来にも、責任を背負う覚悟

ーその後、衆議院議員にも当選されて今は5期目です。国政へ進む中で苦労されたことはありますか。

外から見ると順風満帆に見えるかもしれませんが、正直、苦労の連続です。特に国政に出てからは「やればやるほど苦しい」というのが本音です。登れば登るほど、山は険しくなるんですよ。

なぜかというと、日本が今、本当に難しい局面に立たされているからです。充実した社会保障を作ってきた中で、少子高齢化で支える負担が重くなっている。負担を減らせばサービスが充実せず、サービスを充実しようと思えば負担が増えます。この当たり前の話を、本当は政治家がきちんと発信しないといけないのですが、それを言えば支持が減る。だから多くの政治家が言いたがらないのです。

ただ当選することだけを考えて国を間違った方向に進めるような人に、政治家の資格などないと思うのです。だから僕は「たとえ落選しても、正しいことを言わなければならない」という信念で政治家を続けています。

ー鬼木議員は国会でも将来世代の負担まで考えないといけないということを強調されていますね。

かつての政治は「利益をどう分配するか」を考えていましたが、今の政治は「負担をどう分け合うか」と調整することが主な仕事です。やればやるほど国民の皆さまからの風当たりも強くなってきますが、それでもやり切らないといけません。責任政党である与党にいる以上、その覚悟を持って毎日仕事をしています。
鬼木誠議員インタビュー

ー「鬼木誠政治塾」というYouTubeチャンネルで情報発信に力を入れていますが、どのような思いで配信を続けられているのでしょうか。

これは福岡県議の時代から対面で毎月開催していた勉強会がルーツです。今のネット社会にはデマや偏った情報があふれています。「テレビは嘘だ」「新聞は嘘だ」などという人が、ネットの情報は簡単に信じてしまう現実があります。だからこそ、私が現場の一次情報をしっかり発信することに意味があると思ったのです。「政治を学びたいあなたに送る、現職議員が発信する一次情報」というコンセプトを動画の最初に掲げているのも、そのためです。

私が子どもの頃は、政治について知りたいと思っても、情報がテレビと新聞にしかありませんでした。でも今は政治家自身が直接発信できる時代です。偏りすぎないように心がけつつ、自分の言葉で伝えることを大切にしています。
(鬼木誠政治塾 https://www.youtube.com/channel/UCDxTXT-q9NJ7qSshzR9NoLw)

身を守るための「刀」は必要。ただし、抜いてはならない。

ー子どもの頃に「平和」をめざしていた鬼木議員ですが、防衛政策に対してどのようなお考えをお持ちでしょうか。

2021年から防衛副大臣を務めさせていただきましたが、その中で一番大きな出来事はやはりロシアによるウクライナ侵攻でした。あのとき、多くの日本人が「これは他人事じゃない」と思ったのではないでしょうか。「もし日本が攻められたら、政府は本当に自分たちを守ってくれるのか?」と。

その不安に応えるために、防衛3文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)を改定して防衛予算を増やし「日本を守る体制を作る」という仕事をさせていただきました。

「平和のためには、武器を持ってはいけない」という意見もありますが、私はそうは思いません。「武」という漢字は、「ほこ」を「止める」と書きます。「武力=戦う力」だけでなく、「戦いを止める力」「平和を守る力」という側面も含んだ、深い意味のある漢字なんです。日本の武士道にも「刀は持つが、抜かない」という精神があります。大切なのは身を守るために刀を「持つ」ということで、それが本当の抑止力になるのです。

日本自身が、隙のない防衛能力や意思を持ち、自立した防衛体制を整えることが非常に重要です。
鬼木誠議員インタビュー

ー防衛産業については、今後どんなことが求められるとおもいますか。

防衛産業の振興も非常に重要です。日本は戦後、「軍事は悪だ」という考えが強すぎて、民間の産業と防衛の連携が進みませんでした。しかし世界を見渡すと、イノベーションは軍事・学術・産業が連携してこそ生まれるものです。インターネットの進化だって軍事通信から始まったものです。戦後の日本の経済成長を支えた自動車や船、家電製品などの産業も戦時中の軍事産業でした。今、日本はイギリス、イタリアと共同で第6世代の戦闘機を作ろうとしていますが、このような挑戦を通して通信やドローンの技術が進化し、いずれはその恩恵が他の民間企業にも広がっていきます。その先には航空機の製造や輸出など、新たな産業の創出も期待できるのです。

ー防衛産業に関わることによる、企業イメージなども気になりますね。

防衛産業として国内で生産力があるということが島国である日本にとっては重要な抑止力。日本を守り抜くことにつながるんです。「防衛装備は防衛力そのものである」という防衛省の発信もあります。
鬼木誠議員インタビュー
ただ、これを実現するには国民の皆さまの理解が必要です。
日本では、ある企業が防衛に関わっているとわかると、その企業の商品の不買運動が起こったり、株価が下がったりするので、公言できないという状況があるんです。
研究分野でも「科学は軍事と結びついてはいけない」という思想により防衛省からの資金提供はいけない、などの雰囲気もある。国防というのは国民の意思とイコールで、一人ひとりに「自分の負担において国を守るんだ」という意思がなければ国は守れません。まさに軍・産・学が連携していかなければいけない。その意思を政治と国民が共有するために、政治家は声を上げ続ける必要があるのです。

ーエネルギー安全保障にも力を入れておられますね。

日本が太平洋戦争に突入した理由のひとつが、エネルギー封鎖です。資源のない国がどうやって生きていくか。それを考えたときに、エネルギー政策は非常に重要です。私は「エネルギーを自給できる国にしたい」とずっと取り組んできました。再生エネルギーも必要ですし、原子力も安全性を高めていくことが必要です。

また、災害に強いエネルギーとして「LPガス」を推進しています。管が切れたら止まってしまう都市ガスや水道と違い、ボンベがあれば料理もできるし暖房にもなります。日本のように災害が多い国には、本当に適したエネルギーなのです。

これからはAIを中心にデジタル活用が進む時代で、電気の需要がさらに高まります。災害時に、どうやって安定的にエネルギーを供給するかを考えれば、「分散型エネルギー」であるLPガスは有益な選択肢となります。エネルギーというのは豊かさの基礎なので、多様なエネルギーを組み合わせることに力を入れています。

ー国連ハビタットの活動にも関わられていますが、この活動に込める思いを教えてください。

地元・福岡に「国連ハビタット」のアジア太平洋本部があり、そのご縁で今は「国連ハビタット推進議員連盟」の会長を務めさせてもらっています。国連ハビタットの活動は、戦争や災害で住む場所を失った人たちの住環境を整えることです。アフガニスタンのように紛争で破壊された村の復興や、都市化でゴミが増えてスラムになった地域の再整備などを行います。

日本も戦後の焼け野原から復興してきましたし、高度経済成長の中でゴミや環境問題と向き合って都市を整備してきました。そのノウハウは国際貢献に生かすことができます。「福岡方式」というゴミ処理方法が世界中に展開されているんですよ。コストが安く、安全でクリーンな処理方法です。このように、日本の都市づくりのモデルが広がることで、世界の社会課題解決に日本方式が採用され、結果的に日本の存在感が高まっていきます。たとえ目立たなくとも、大きな意義のある仕事だと思っています。
(福岡方式について:福岡県HP
鬼木誠議員インタビュー

政治はあくまで手段。持続可能な日本を次の世代へ

ー今後の政治家としてのビジョンを聞かせてください。

これからの日本は高齢化がさらに進み、人口は減少していきます。そのため「持続可能な社会保障」と「持続可能な財政」の両立がますます難しくなっていきます。日本の健康保険や医療の制度は本当に素晴らしく、これを守り続けるためにも、財政が破綻しないように注意しなければなりません。

インフラもどんどん老朽化しており、令和4年だけで道路の陥没が2600件も起きています。これを放っておくわけにはいきません。財政を健全化しつつ、必要な投資にも目を向ける必要があるのです。IT化やDXを進めてコストを下げながら生産性を上げ、貿易黒字を維持し、何とか持続可能な社会を作っていきたい。それが私のめざすところです。

ー最後に、日本の将来を担う若い世代に向けてメッセージをお願いします。

若い人にはまず「やりたいことをやってみよう」と伝えたいです。社会に出てやりたいことをやっていく中で、さまざまな課題にぶつかると思います。すると、それを解決する手段として政治への関心も芽生えます。
鬼木誠議員インタビュー

社会課題を解決するうえで、政治というのは大事な仕事だし、やりがいがあります。ただ、政治は何でも変えられる万能薬ではありません。あくまで手段であって、本当に大切なのは目的です。目的を正しく持たなければ、「選挙に通ること」が目的になってしまい、それでは本末転倒です。

私は、世界を平和にしよう、日本を守ろう、と思って政治家になりました。そして今はその先に、「持続可能な日本を次の世代につなぎたい」という想いがあります。そのためなら、どんなに苦しくても頑張り続けられます。

だからこれからも「正しい」と信じることを発信し、実行していきます。その結果、たとえ落選することになったとしても、それは国民の皆さまからの評価として受け入れます。しかし、任せていただいた以上は、やるべきことをやり抜いていきます。

 

この記事の監修者
秋圭史(株式会社PoliPoli 渉外部門)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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