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公正取引委員会とは?独占禁止法と今後の課題について

投稿日2021.2.12
最終更新日2021.02.12

公正取引委員会とは日本経済の門番のような存在であり、よく耳にする独占禁止法を執行する組織でもあります。

しかし公正取引委員会が具体的にどんな組織なのか、そもそも独占禁止法の指す独占とは一体何なのかわからないという方も多いと思われます。

そこで今回は初めての方にもわかりやすく

  • 公正取引委員会
  • 独占禁止法

について解説したいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、公正取引委員会とは

公正取引委員会はどのような組織で何を目的としているのでしょうか?
詳しくみていきましょう。

(1)目的

公正取引委員会とは、名前の通り「公正な市場取引」を監視する委員会のことで、安心できる消費活動と事業者の平等な競争を目的に存在しています。

ここまで書くと難しくて頭が混乱しますよね。
簡単にまとめると、不公正な手段を用いて市場でひとり勝ちする企業などを取り締まるのが公正取引委員会です。

どんな企業でもライバルに勝って市場を独占したいと考えます。
正面から競い合えば、同業他社よりも消費者に評価してもらうために、より良い商品が生まれるきっかけになります。
しかし一部の企業は違法な手段を使ってライバル企業の邪魔をします。

特定の企業がひとり勝ちをして市場競争が無くなるとどうなるか?
身近な例で例えてみましょう。

貴方は新生活で掃除機が必要になりました。
予算はできるだけ抑えたい。

しかしどの家電店に行ってもA社の掃除機しか売っていません。
A社が市場を独占したことで他メーカーはお店から排除されてしまいました。
そこで貴方はA社の掃除機を買いましたが値段が高く思わぬ出費になりました。

これが市場独占で生まれる消費者へのデメリットの一例です。
競争もないので商品の質も下がり、新しいアイデアも生まれません。
ゆくゆくは市場の停滞を生み、日本経済の停滞をも招く原因になります。

消費者のために市場の独占状態を防ぐことが公正取引委員会の組織目的です。

(2)組織図

公正取引委員会

 

引用:公正取引員会とは 公正取引委員会

公正取引委員会は行政機関のひとつで、内閣総理大臣に任命された委員長と4人の委員の5名で構成されています。

委員会の下には、調査と監視を行う事務総局があり、その下に官房、経済取引局、取引部、審査局、犯則審査部、地方事務所、支所があります。

下の図を見ると委員会の下にかなりの数の部署があることがわかりますよね。

公正取引委員会

引用:公正取引委員会の組織図 公正取引員会

たとえば、審査局は違反の通報の受け付け、企業への立入検査など調査全般を担当し、官房は広報や人事、外国との情報交換などを担当しています。

公正取引委員会が監視する対象は「消費者と企業」にとどまらず「企業と企業」「国と企業」まで含まれ、市場全体を監視するには膨大な人員が必要なことが想像できます。

2、独占禁止法とは

ここまで公正取引委員会の組織や目的を見てきましたが、そもそも独占とはなんなのでしょうか?
また、これを禁止する独占禁止法という法令についてもご紹介します。

(1)独占とは

公正委員会は「独占禁止法」に基づいて市場の監視を行います。
“独禁法”という呼び名で耳にしたことがある人もいるかもしれません。

禁止されている独占には、独占と寡占(かせん)があります。
寡占とは少数の企業が手を組んで市場を支配しようとすること、独占は1つの企業が市場を支配しようとすることを指します。

独占禁止法で有名な「カルテル」という寡占行為を挙げてみましょう。

カルテルとは複数の企業が価格や生産量を共同で決める行為のことで一斉に価格を上げて消費者を孤立させ利益を得ます。
消費者は選択肢が無くなり高い価格で買うことしかできなくなります。

公正取引委員会

引用:不当な取引制限(カルテル)公正取引委員会

(2)公正競争阻害性

企業が独占または寡占しているかどうかは、“公正な競争を阻害するおそれがあるか”によって判断されます。
これを公正競争阻害性(こうせいきょうそうそがいせい)と呼びます。

公正競争阻害性と見なされるポイントは

  • 自由競争減殺(じゆうきょうそうげんさい)
  • 競争手段の不公正さ
  • 自由競争基盤侵害

があるかどうかです。

自由競争減殺とは、市場で自由に競争できる環境を壊す行為のことで、取引の機会を排除し、競争者の競争機能を直接的に低下させる行為を指します。

メーカーが販売店に販売価格を命令する行為(再販売価格の拘束)もここに当てはまります。

競争手段の不公正さは品質以外で競争に勝とうとすることです。
抱き合わせ販売(違法なセット売り)や誤解させるような広告やシステム(不当な利益提供による顧客誘引)などがこれに当てはまります。

自由競争基盤侵害は、優位的な立場にある事業者が取引先の権利を侵害することで、押し付け販売、返品、従業員の派遣、協賛金の負担などを強制する行為を指し、「優越的地位の濫用」とも呼ばれます。

取引先に自社の季節商品を無理やり買わせたり(購入・利用強制)、取引先のコストを考えずに一方的に単価を決めること(取引の対価の一方的決定)などの行為もここに含まれます。

(3)不公正な取引方法

公正取引委員会は独占禁止法に基づき、企業への立ち入り調査などを行います。
独占禁止法が定める15の不公正な取引方法を一覧で見てみましょう。

  • 共同の取引拒絶

特定の事業者から商品や役務の供給を拒絶、または内容を制限すること。他の事業者に特定の事業者を拒絶させる、または内容を制限させること。

  • その他の取引拒絶

特定の事業者からの取引を拒絶、または内容を制限し、他の事業者に同様の行為をさせること。

  • 差別対価

不当な対価をもらい、商品や役務を供給する、または供給を受けること。

  • 取引条件等の差別取扱い

不当に特定の事業者に対し取引で有利または不利な取扱いをすること。

  • 事業者団体における差別取扱い等

事業者団体または共同行為から特定の事業者を不当に排除、または差別的に扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。

  • 不当廉売(ふとうれんばい)

不当に商品や役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせること。

  • 不当高価購入

不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせること。

  • ぎまん的顧客誘引

実際のサービス、競争者のサービスよりも著しく優良であると誤認させ、競争者の顧客を不当に誘引すること。

  • 不当な利益による顧客誘引

不当な利益で競争者の顧客を取引するように誘引すること。

  • 抱き合わせ販売等

商品または役務の供給に併せて、他の商品または役務を自己または指定する事業者から購入、取引するように強制すること。

  • 排他条件付取引

相手が競争者と取引しないことを条件として取引し、競争者の取引の機会を減少させること。

  • 拘束条件付取引

相手の事業活動を不当に拘束する条件をつけて取引すること。

  • 取引の相手方の役員選任への不当干渉

取引会社に対し、会社の役員の選任について自己の指示に従わせること。

  • 競争者に対する取引妨害

株主若しくは役員である会社と競争関係にある事業者と取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引など、その取引を不当に妨害すること。

  • 競争会社に対する内部干渉

株主若しくは役員である会社と競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいなど、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、強制すること。

参考:不公正な取引方法 公正取引委員会

3、独占禁止法違反事例


これまで独占禁止法違反に当てはまったいくつかの事例を見ていきたいと思います。

(1)藤田屋事件|抱き合わせ販売

藤田屋事件は1989年に卸売業者である藤田屋が違法な抱き合わせ販売で独占禁止法に違反したとされる事件のことで、1992年に審判が下っています。

事件の中身を見てみましょう。

人気ゲームソフトのドラクエ IV の確保が難しい中、藤田屋は小売店に対して在庫処分のゲームソフト3本の購入を条件にドラクエ IV1本を販売することを決め、ドラクエ IV 約1700本と他ゲームソフト約3500本を抱き合わせて購入させました。

抱き合わせ販売とはセット売りにすることで強制的に希望外の商品を購入させ、消費者(購入者)に損害をもたらします。

最近(2020年5月)でいえば、流行病で入手が難しいマスクと商品の抱き合わせ販売が問題視されています。
「マスクは欲しいけど、この商品は要らないなぁ」と思いつつ、本当にマスクが必要なら買ってしまうのが消費者の心理ですよね。

藤田屋(ドラクエ IV)事件 公正取引協会

(2)優越的地位濫用事例

優越的地位の濫用(ゆうえつてきちいのらんよう)とは、取引上で優越的な地位にある者が地位を利用して相手に不利益を与える行為のことをいいます。

ソフトウェアメーカーによる保守契約の義務付けで考えてみましょう。

ソフトウェアは定期的にアップグレード版が提供されます。
ほとんどの顧客が通常版からそのままアップグレード版を使いますが、最初からアップグレード版の契約をしていないために会社側にも顧客側にも更新手続きにコストがかかります。

この場合、コストを削減するために、保守契約の締結後と併せてアップグレード版を顧客に事前購入させることが優越的地位汎濫用に当てはまるかどうかということが問題になります。

公正取引委員会の回答では、購入者のほとんどがアップグレード版を引き続き購入すること、アップグレード版を最初から販売することで販売側も購入者側のコストも抑えられることから独占禁止法に違反しないとされています。

4、公正取引委員会の今後の課題

公正取引委員会が警戒を強めている市場は携帯市場です。

  • 一定期間が経過しないと解約できない2年縛り
  • 利用できるSIMカードを限定するSIMロック
  • わかりづらい解約手数料

などのシステムが独占禁止法に違反しているのではないかと強く問題視されています。
また、公正委員会が注目しているのは携帯会社が決めるスイッチングコストの高さ。

スイッチングコストとは他社への乗り換えでかかるコストを指し、解約手数料やSIMロックなどから消費者の選択肢を狭めていると指摘しています。

第5世代移動通信システム(5G)で市場が盛り上がるなか、大手キャリアの消費者囲い込みは新たな参入企業を邪魔し、市場成長を停滞させます。

しかし、“スマホとインターネット”という新しい市場の競争環境はまだ不十分で、今後の整備が重要課題であることは間違いありません。

まとめ

今回は公正取引委員会と独占禁止法について解説しました。

難しいイメージのある独禁法も、スマートフォンやゲームソフトなど生活に深く関係があります。
日頃から契約や広告に目を光らせて商品やサービスが独占禁止法に違反していないか考えていきたいですね。

また、事業者の方はより良い市場を目指して独禁法の順守を心がけていきましょう。

 

 

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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