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農家レストランとは?メリット・規制緩和の内容・背景を簡単解説

投稿日2021.2.18
最終更新日2023.10.19

農家レストランとは、農家が育てた野菜や果物を使った料理を農家自身が提供するレストランのことです。「地産地消」や「食の安心」というメリットもあり人気を集めています。

そして農家レストランの魅力は、食の美味しさだけではありません。耕作放棄地や空き家などの再利用、農村の活性化といった効果もあります。

今回の記事では、以下について紹介します。

  • 農家レストランとは
  • 農地利用のための規制緩和
  • 規制緩和の背景
  • 農家レストランの実例

本記事がお役に立てば幸いです。

1、農家レストランとは

農家レストラン
農家レストランとは名前の通り、農家が食事を提供するレストランのことです。
自家生産の食材または地域食材を使った料理を提供します。

政府は農家レストランを6次産業化として推進しており、

  • 地域資源の活用(地産地消、食料自給率の向上)
  • 農地の保全(耕作放棄地の削減、環境保全)
  • 消費者と生産者の関係構築(国産の消費促進)
  • 企業の農地への投資促進

などの効果を狙っています。
6次産業化とは、1次産業を担う農家が加工(2次)、そして流通と販売(3次)を行う形態を推進する取り組みのことです。

1次×2次×3次を合わせて6次産業化と呼ばれます。

参考:農林漁業の6次産業化 農林水産省

(1)農家レストランのメリット

農家レストランは、農家と消費者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
それぞれの立場から見てみましょう。

①農家のメリット

農家側としては以下のようなメリットが挙げられます。

  • 地域の農産物をアピールできる
  • 市場に出せない不格好な農産物も活用できる
  • 地域の観光業と連携することができる
  • 地域の活性化に繋がる

②消費者のメリット

消費者側としては以下のようなメリットが挙げられます。

  • 新鮮な食材を使った食事を安心して楽しめる
  • 地域の食文化を楽しむことができる
  • 生産者と交流ができる

農家側は農作物の生産だけでは得られなかった経験及び利益を見込むことができ、消費者側は普段体験できない新鮮な食事や文化を安心して楽しめるメリットがあります。

③注意点

農家側には以下が求められるため、注意が必要です。

  • サービス業の提供
  • レストランの財務管理(売上高、固定費、変動費の把握)
  • スタッフの教育
  • 安全衛生管理の徹底(食中毒や異物混入の防止)
  • 栽培管理記録

などが農家側には求められ、農作物の生産以外での業務が必要になります。

参考:農家レストラン 農林水産省

2、農地利用のための規制緩和

農家レストランを含む農地利用は、第2次安倍政権の日本再興戦略(にほんさいこうせんりゃく)内の「国家戦略特区」としてはじまりました。

国家戦略特区とは、世界で一番ビジネスをしやすい環境を実現するために、大胆な規制緩和や税の優遇が行われる特別な地域のことです。

2013年に「国家戦略特別区域法」が制定されました。

2014年には、「地域で生産した農産物を使用した料理を生産者自らが提供する」などの要件を満たせば、農用地区域であっても、レストランの営業を可能とする特例が施行されました。

今までは「農業振興地域の整備に関する法律」によって農用地区域は、農業目的以外の利用は認められていませんでしたが、指定された国家戦略特区では営業許可が降りるようになりました。

この特例によって2016年には、新潟市に3軒の農家レストランが開店し、2017年度には1.2億円を超える売上を出しています。

2020年3月には「農業振興地域の整備に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行され、特区で実施されていた「地域農畜産物利用促進事業」の特例が全国展開することとなり、農用地区域内での農家レストランの設置が全国で可能になりました。

参考:地域農畜産物利用促進事業(農家レストランの農用地区域内設置の容認)の全国展開について 内閣府

規制改革の内容は以下の通りです。

一定の要件を満たす農家レストランについて農用地区域内の設置を可能とする。

(要件)

農業者が設置・管理するレストランであって

① 自己の生産する農畜産物 又は

② 自己の生産する農畜産物及び施設が設置

される市町村内若しくは農業振興地域内で生産される農畜産物を主たる材料として調理して提供するもの

引用:農家レストランの農用地区域内の設置の容認 首相官邸

3、規制緩和の背景

規制改革により生まれた農家レストランですが、これらの規制緩和の背景にはどのような理由があるのでしょうか?

その理由となった農業分野における問題について見ていきましょう。

まず農業が抱える問題として、以下が挙げられます。

  • 所得の低下
  • 労働力の不足
  • 後継者問題

そこで農家レストランを含む農地利用の規制を緩和することで、所得の増加や雇用の拡大などを図ることができるのです。

特に深刻な「農家の所得低下」について見ていきましょう。
農業純生産(国全体の農業所得に当たるもの)は年々減少しており、2009年ではピーク時の1990年に比べてほぼ半分になっています。

農家レストラン
引用:第4節 農業経営の動向と所得増大に向けた取組 農林水産業

農家1戸当たり総所得においても同様の傾向があり、農業で生計を立てている主業農家の総所得は2004年の約573万円から2008年の約546万円まで減少しました。

農家レストラン
引用:(2)農業経営の動向と農業生産を支える経営体・農地等をめぐる状況 ア 農業所得と農業経営の動向 農林水産業

所得低下の背景には、農産物の価格低迷が1つの理由として挙げられ、特に基幹作物である米においては、米価(農家が受け取る利益)だけでは生産費を賄えない状況です。

農家レストラン
引用:(2)農業経営の動向と農業生産を支える経営体・農地等をめぐる状況 ア 農業所得と農業経営の動向 農林水産業

農家の所得低下は後継ぎ問題にも関わるため、農家レストランによる6次産業化の推進とそれに伴う農家の所得の向上が期待されています。

4、農家レストランの実例

規制改革が進み、さまざまな農家レストランが誕生しています。
農家レストランの実例を一部ご紹介していきます。

農家レストラン
引用:農家レストランに係る国家戦略特区の全国展開について

(1)新潟特区 ラ・トラットリア・エストルト

2016年5月14日に開店した新潟特区のラ・トラットリア・エストルトは、タカギ農業が経営する農家レストランです。

レストランから見える農場で採れた野菜と自家製のベーコンやソーセージを使った新鮮な料理が楽しめます。

お店の一押しは糖度の高いフルーツトマトを使ったトマト料理です。トマトソースパスタやサラダ、サンドイッチ、マルゲリータなどがあります。

参考:ラ・トラットリア・エストルト

(2)愛知特区 サンセット・ウォーカー・ヒル

2018年4月9日に開店したサンセット・ウォーカー・ヒルは、地元食材をふんだんに使ったアメリカンスタイルの農家レストランです。

レストランの近くには自社経営の畑もあるので、新鮮な野菜やフルーツを味わうことができます。

野菜からお肉、卵、お米、フルーツまで地元の常滑市や知多半島の食材がふんだんに使用され、カントリー風の内装でゆったりとした時間を過ごせるのも魅力の1つです。

お店からは伊勢湾に沈む夕日を眺めることもできます。

参考:サンセット・ウォーカー・ヒル

PoliPoliで公開されている環境関連の取り組み

誰でも政策に意見を届けることができる、政策共創プラットフォーム『PoliPoli』では、再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策について、以下のような政策が掲載されています。

あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。

PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者

議員名 田嶋 要
政党 衆議院議員・立憲民主党
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies

 

(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • 分散型エネルギー社会を実現するための基本法をはじめとした環境整備を行い、エネルギーの地産地消や原発依存からの脱却、エネルギー転換の過程で起こる雇用の公正な移行を実現します!

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。

再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

まとめ

今回は農家レストランについて解説しました。

新鮮な野菜や果物を使った農家レストランは消費者だけにメリットがあるものではなく、農家とその地域全体に良い効果をもたらしてくれる存在です。

観光地として農家レストランが人気になれば、活気ある若年層の農家が増える可能性もあります。

世の中が便利になり、生産者の顔が見えづらいということもありますが、地産地消を心がけながら日本の農家を応援していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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