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選択的夫婦別姓制度とは?メリットやデメリット海外事例も踏まえ解説

投稿日2021.2.18
最終更新日2023.05.24

選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が望む場合に結婚後もそれぞれの苗字を名乗ることができる制度です。

そこで今回は以下について解説します。

  • 選択的夫婦別姓制度とは
  • 選択的夫婦別姓制度導入の背景
  • 選択的夫婦別姓制度のメリットとデメリット
  • 海外における選択的夫婦別姓制度

本記事がお役に立てば幸いです。

1、選択的夫婦別姓制度とは

選択的夫婦別姓制度

選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が別々の姓を名乗ることを選択できる制度です。

正式には『選択的夫婦別氏制度』と呼ばれます。
この制度では田中さん(夫)と佐藤さん(妻)が結婚しても、妻はそのまま佐藤という姓を名乗ることができます。

日本では現在、夫婦がそれぞれ別の苗字を名乗ることは公には認められていません(2021年時点)。

民法750条では「夫婦は同じ苗字にすること」を定めています。
民法750条(夫婦の氏)
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
引用:民法 e-Gov

一方で、妻が夫の苗字を名乗らなければいけないという法律はありません。

2、選択的夫婦別姓制度の導入検討の背景

選択的夫婦別姓制度の導入が考えられるようになった背景は、主に以下の3つです。

  • 女性の社会進出
  • 男女平等の推進
  • 若年層の声

それぞれ確認しましょう。

(1)女性の社会進出

厚生労働省によると、2021年の働く女性の人口は3057万人となり、前年に比べて13万人増加しました。

そして労働力人口に占める女性の割合も44.6%まで増えています。
このような女性の社会進出に伴い、結婚後の女性の苗字変更で生じる不便さが指摘されるようになりました。

例えば、名前を変えると名刺や印鑑など、仕事で使うツールの名前を変更しなければなりません。
またメールや電話の際に、取引先を混乱させてしまうといったことも考えられます。

参考:働く女性の状況 厚生労働省

(2)男女平等の推進

民法では結婚後の苗字は、夫と妻のどちらの苗字でもよいとしています。
しかし、実際には女性が夫の苗字を名乗っているケースが多いです。

そのため現状では、憲法の掲げる『両性の平等』と『基本的人権』などに違反するのではないか、という声が挙がっています。

以下で憲法が掲げる『両性の平等』と『基本的人権』について見てみましょう。

・両性の平等

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

・基本的人権

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

憲法条文引用:e-Gov 日本国憲法

また、以下の憲法13条14条を根拠に、夫婦同姓が憲法に違反するのではないか、という議論も起こっています。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法条文引用:e-Gov 日本国憲法

(3)若年層の声

2017年に政府が実施した『家族の法制に関する世論調査』によると、

  • 夫婦は同じ名字を名乗るべきであり、法律を改める必要はない:29.3%
  • 夫婦が婚姻前の名字を名乗ることができるように法律を改めてもよい:42.5%
  • 夫婦は同じ名字を名乗るべきだが、婚姻前の名字(姓)を通称として使えるように法律を改めることはかまわない:24.4%

という結果になりました。

同調査では世代ごとの回答も集計され、「苗字が変わることで仕事に不便が生じると思う」と答えたのは若年層が多く、「不便が生じないと思う」と答えたのは60歳以上の高齢層が多いこともわかりました。

参考:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について 法務省

2.選択的夫婦別氏制度の導入に対する考え方 内閣府

また2020年には、CCCマーケティング株式会社とTポイントジャパンが『学校総選挙プロジェクト』で選択的夫婦別姓制度導入のアンケートを実施しました。

同アンケートでは選択的夫婦別姓制度の賛否が問われ

  • 10~20代の男性:73.4%
  • 10~20代の女性:92.6%

が選択的夫婦別姓制度の導入に賛成を示しました。

2020年12月には、橋本聖子男女共同参画担当相に夫婦別姓を求める署名が若者から提出されるなど、若年層を中心に選択的夫婦別姓の導入を求める声が挙がっています。

参考:夫婦別姓求め、若者ら署名3万筆 橋本担当相に提出 東京新聞

3、選択的夫婦別姓制度のメリットとデメリット

選択的夫婦別姓制度
それでは選択的夫婦別姓制度のメリットとデメリットは何なのでしょうか?
それぞれについて見てみましょう。

(1)選択的夫婦別姓制度のメリット

選択的夫婦別姓制度のメリットには

  • 結婚の手続きが簡略化できる
  • 仕事での女性の負担が軽減される
  • 女性の個(アイデンティティ)を守れる

などがあります。

特に大きなメリットは女性の負担軽減です。
前述のように、結婚による仕事への影響を減らすことができるのではないか、と考えられています。

(2)選択的夫婦別姓制度のデメリット

選択的夫婦別姓制度のデメリットには

  • 子どもが混乱する
  • 家族の一体感が薄れる
  • 伝統的な日本の慣習が失われる

などが考えられているようです。

現在、選択的夫婦別姓制度において、子どもの苗字をどうするのかについてはまだ不明確です。

ただし、1996年の法制審議会の答申をもとに作成された法務省の回答によると、『婚姻の際にあらかじめ子どもが名乗る苗字を決めておく』とされています。

また苗字の変更については、家庭裁判所の許可が必要であり、未成年の場合には、特別な事情と家庭裁判所の許可が必要です。

子どもや家庭が混乱しないような制度整備が予想されるものの、家族の一体感に関する懸念の声があると言えます。

参考:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について 法務省

4、海外における選択的夫婦別姓制度

日本で検討されている選択的夫婦別姓制度ですが、海外ではどのようになってるのでしょうか?

夫婦別姓が認められている

  • アメリカ
  • フィンランド
  • 中国
  • 韓国

の事例についてご紹介します。

(1)アメリカ

アメリカでは夫婦別姓も含めて、苗字について5つの選択肢が認められています。
例えば、お互いの苗字を合体させて新しい苗字をつくったり、相手の苗字をミドルネームにしたりすることが可能です。

子どもの苗字については、両親のどちらかの苗字、または両親の苗字を合体させたものに制限する州もあれば、どのような苗字でも構わないとする州もあります。

(2)フィンランド

フィンランドでは、アメリカと同様に夫婦の苗字を合体させたり、新しい苗字をつくったりすることもできます。

また、事実婚の夫婦が同姓を名乗ることも可能です。

子どもの苗字は、両親のどちらかの苗字を選ぶ必要があります。

(3)中国

中国でも夫婦別姓に加えて、夫婦の苗字を合体させる複合姓を選ぶことが可能です。

子どもの苗字は、両親どちらかの苗字を選択します。

どちらの苗字にするかが決まらない場合には、国が抽選で苗字を決めます。

(4)韓国

韓国も夫婦別姓が認められている国です。
子どもの苗字は、両親のどちらかの苗字を選択する必要があります。

PoliPoliで公開されている選択的夫婦別姓制度の取り組み

誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、現実的な選択的夫婦別姓制度の推進政策について、以下のように公開されています。

あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|現実的な選択的夫婦別姓制度の推進を

(1)現実的な選択的夫婦別姓制度の推進政策の政策提案者

議員名 音喜多 駿
政党 参議院議員・日本維新の会
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/u3tmzzPoY4w6GxHptTRf/policies

 

(2)現実的な選択的夫婦別姓制度の推進政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • 旧姓でも法的に夫婦でいられる現実的な選択的夫婦別姓法案を国会で可決させます

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • 国会で議論を深めます
  • 地方議員で意見書を取り上げ議論を深めてもらいます

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。

現実的な選択的夫婦別姓制度の推進政策

まとめ

本記事では選択的夫婦別姓制度について解説しました。
ライフスタイルの多様化に伴い、結婚や家族のあり方も変化してきています。
海外でさまざまな夫婦別姓の選択肢が増えるなか、今後の政府の方針に注目です。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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