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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー【連載企画:なぜ今グローバルヘルスなのか】逢沢一郎議員に聞く!「骨太の方針」に盛り込まれたグローバルヘルスにおける日本の役割とは

【連載企画:なぜ今グローバルヘルスなのか】逢沢一郎議員に聞く!「骨太の方針」に盛り込まれたグローバルヘルスにおける日本の役割とは

投稿日2024.7.8
最終更新日2024.07.08

2024年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)には「戦略的な国際保健」が掲げられ、日本のODA(政府開発援助)の効果的な活用のあり方の一つとしてグローバルヘルス(国際的な視点から人類の健康、感染症予防、医療アクセス向上など幅広い課題に対処するための取組み)をめぐる議論が活発化しています。

政治ドットコムでは連載企画「なぜ、今グローバルヘルスなのか」と題し、グローバルヘルス政策に携わる政治家をはじめとするルールメイカーについて深掘りします。

今回は、党の国際保健医療戦略特命委員会顧問などを務める自由民主党・逢沢一郎議員に、「骨太の方針」に盛り込まれたグローバルヘルスにおける日本の役割についてお伺いしました。

(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)(取材日:2024年6月6日)

逢沢一郎議員インタビュー

逢沢一郎(あいさわ いちろう)議員
1954年生まれ。1986年、岡山県1区より衆議院議員選挙で初当選(12期)。
松下政経塾一期生。外務副大臣、衆院議運委員長、予算委員長などを歴任。
趣味はサッカー。国会サッカーチームキャプテン。

松下政経塾生初の国会議員に

ー逢沢議員はなぜ政治家を志したのでしょうか。

私も実は「2世3世議員」でしてね。生まれたときにはすでに祖父が政治家でした。その後、父が国政にチャレンジする際には、その手伝いを自然としていました。父の代わりにさまざまな地方をまわってスピーチすることもありましたが、それが苦ではなく、早く政治という大人の世界に入りたいという憧れを抱いていました。大学も休学して選挙活動にのめり込んでいました。

そんな中、1980年、26歳のときに松下政経塾が創設されました。松下政経塾とは、パナソニック株式会社の創業者の松下幸之助が立ち上げた未来のリーダーを育成する公益財団法人です。松下幸之助さんが日本の国の未来を考えたとき、「良い政治でなければ日本の未来を切り開くことができない」と、最終的に政治に行き着いた結果、立ち上げたものでした。その思いに共感し、第一期生として入塾したのです。そこでは松下幸之助さんの薫陶を受け、自分で見つけ出した日本の課題を、時には専門家のアドバイスも受けながらとことん考え抜くことをしました。

松下政経塾での経験も相まって、元々あった政治への関心がより強くなり、出馬を決意しました。そして1986年に塾生として初の国会議員の道を歩みはじめました。

逢沢一郎議員インタビュー

ー初当選当時からどういう課題に向き合おうと考えていたのでしょうか。

政治の目的は人の幸せをつくりだすことだと考えています。そのために大事なことは国家の安全保障と平和。初当選した1986年は、第二次世界大戦の敗戦で全てを失った日本が戦後復興を成し遂げ、世界の平和に貢献する大きな役割を担いはじめていたときでした。このポジションをさらに確立させ、加速させていく。こうしたことを念頭に政治家としてスタートしました。

アフリカへの探究心からグローバルヘルス政策へ

ー逢沢議員は安全保障政策の一つとして、グローバルヘルスにも取り組まれています。きっかけは何だったのでしょうか。

政治の目的は人の幸せをつくりだすこと。人として自分や家族の幸せを考えるときに、なんといっても体と心の健康が大前提ですよね。これがグローバルヘルスを含めた健康のための政策に取り組む理由です。

加えて幼い頃からアフリカに魅了されていたこともグローバルヘルス政策に熱心に取り組む理由になっています。ただアフリカの国々は大きな魅力と可能性を秘めていると同時に、飢餓や貧困など、人類が対峙しなければならない困難が凝縮されている地域であることも事実です。アフリカを考えることは人類の未来を考えることにつながるとの思いから、日・アフリカ連合(AU)友好議連の会長を務めています。

現在、アフリカ大陸全体の人口は約14億人ですが、2100年には40億人になるという推計があります(国連の世界人口予測2024より)。地球全体の人口が100億人を超えるとみられているので、10人のうち4人はアフリカ地域で生まれた方々になる可能性がある。そうなった時、たとえば気候変動で安全な水が確保できなかったり、農業がひどく影響を受けていたりすると、地球全体としてもアフリカの人口増加が大きなリスクとなってしまいます。これは感染症についても言えることですから、グローバルへルスに向き合う一つの理由になっています。

逢沢一郎議員インタビュー

ー逢沢議員は世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(グローバルファンド)やポリオ議連など感染症に関わる分野でも活動されています。

グローバルファンドでは、エイズ・結核・マラリアの三大感染症のための予防、治療、感染者支援、保健システムの強化に日本をはじめとする先進国や民間企業などが資金を提供しています。その活動を支援するための日本委員会の下に置かれている議員タスクフォースで、国民民主党の古川元久議員と共に共同議長を務めています。

特にこのグローバルファンドを通じて、健康をめぐる課題解決に携わっていきたいという思いがあります。予防のためのワクチン、ということでワクチン議連の会長も務めています。ポリオ議連では、ポリオ根絶のためのラストワンマイルを議論しています。

ーグローバルファンドでの活動における課題は何でしょうか。

グローバルファンドでは3年に一度、増資が行われ、そこで集まった資金額をベースに途上国の感染症や保健システム強化などへの資金配分を決定しています。今は第8次の増資に向けて議論を重ねています。世界の感染症対策は予断を許さない状況が継続していますが、今、厄介なのは「多剤耐性」です。感染症の菌に耐性ができてしまい、抗生剤が効かなくなっている事例が世界で増えているのです。感染を防ぐことが第一ではありますが「多剤耐性」に関する知識や理解を深め、上手な薬の飲み方の普及の必要性を感じています。新たな課題を認識しつつ、真に必要な感染症対策やその実現に必要な資金はどの程度なのかに関する議論をする必要があると感じます。

「骨太の方針」から読み解くグローバルヘルスにおける日本の役割

ーなぜ今日本が、政策としてグローバルファンドをはじめとする国際貢献に政策として向き合うべきなのでしょうか。

遠い途上国の話と言ってしまえばそうですけれども、足下ではグローバル化が進み、人の移動も止めることができない時代になっています。特に日本で労働力不足が叫ばれる今、ベトナムなどを中心に海外から多くの人材を受け入れていますよね。人の移動によって日本に結核などの感染症が持ち込まれるリスクが大いにあるのです。入国の際のスクリーニングも大事ですが、同時に、新興国での感染症対策を進めることは、日本の国益にもつながると考えています。

逢沢一郎議員インタビュー

ー2024年6月にまとめられた「骨太の方針」にも、国際保健(グローバルヘルス)の方針やODAのあり方が盛り込まれました。ポイントは何でしょうか。

今回の「骨太の方針」には「戦略的な国際保健」が掲げられました。ポイントとしては、2020年に流行が始まった新型コロナウイルスのパンデミックを経験して、学んだことをきっちり実行していくことです。

たとえば創薬。日本国内では治験が依然として大きなハードルになっており、仮に新たなパンデミックに直面したところでスピーディーな新薬の開発や販売が難しいのが現実です。国内でやりきるのは難しいですから、海外企業と協力関係を深化させることにこれまで以上に積極的になっていくことが必要だと思います。

ODAのポイントは、今までの受動的なスタイルからオファー型への移行です。これまでは途上国から「こうしてほしい」「これがほしい」というリクエストを受けての支援が主でした。これからは民間の投資も積極的に活用し、官民連携での提案型のものにしていくべきだと考えています。そのための信頼関係構築や現地情勢の調査がますます重要になってくるでしょう。

日本の支援として、「キャパシティビルディング(能力構築:集団・組織・社会がある目標を達成するために必要な能力を構築・向上させること)の輸出」という観点も重要です。たとえばベトナムでは、意外なことに医師免許制度がありません。栄養士制度がない国も多いです。健康的な社会を考える上で、国が持つべき国家資格や法律などの制度が確立してはじめて、国の形が整い、成長軌道に乗ることができる。グローバルヘルスの分野でもこうした支援を日本として進めるべきだと考えています。そこで果たす政治の役割も大きいと思います。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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