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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本共産党・山添拓政策委員長に聞く!声を上げ続ければ、理不尽は変えられる。社会を変えていくための道筋

日本共産党・山添拓政策委員長に聞く!声を上げ続ければ、理不尽は変えられる。社会を変えていくための道筋

投稿日2025.7.14
最終更新日2025.07.14

山添 拓 やまぞえ たく 議員

1984年11月生まれ。東京大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
2010年司法試験合格、2011年弁護士登録。
2016年参議院議員初当選(東京選挙区、2期)。2024年日本共産党政策委員長就任。

7月20日に第27回参議院議員選挙が迫っています。

株式会社PoliPoliでは、参議院議員選挙の主要な政策上の争点を明らかにし、各党の政策を分かりやすく有権者に届けるための特集企画を実施します。今回は、日本共産党で政策委員長を務める山添拓議員に、消費税の一律減税を求める背景や増え続ける社会保険費や厳しい舵取りが迫られる外交に対する考えなどをお伺いしました。

(※所属する国会議員が5人以上または直近の国政選挙での得票率が有効投票総数の2%以上という公職選挙法上の政党要件を満たす、すべての政党にインタビューの打診をしております)

(取材日:2025年7月10日)
(文責:株式会社PoliPoli  大森達郎)

消費税の恒久的な一律減税が経済成長につながり、インボイス制度も廃止できる

ー今回の参議院選挙では各党が減税・給付・社会保険料の引き下げなどを訴えています。日本共産党(以下、共産党)は、消費税の一律減税を主張しています。この意図や背景について教えてください。

深刻な物価高が国民生活を圧迫しており、負担軽減は喫緊の課題です。私たちは、所得の低い人ほど負担が重くなる消費税は不公平な税制で、廃止すべきだと以前から訴えてきました。その中でも、まず実現を目指すのが、消費税率5%への引き下げです。

食料品など一部の品目に限定して減税するよりも、一律で下げる方が約2倍の減税効果が見込めます。これは標準的な世帯で年間約12万円の負担減に相当し、非常に大きな効果があります。

さらに、一律減税でもう一つ大きな効果があるのがインボイス制度の廃止が可能になることです。政府は複数税率があることをインボイス制度導入の理由としてきましたが、税率が一つになればその前提が崩れます。私たちはインボイス制度の廃止も合わせて実現したいと考えています。

私たちの減税政策の特徴は、時限的ではなく恒久的に行う点です。一度下げた税率は元に戻さず、将来的な消費税廃止を目指します。

ー消費税の減税については、消費を多くする人ほど負担が減るため富裕層に有利なのではないか、という指摘が一部であります。この指摘についてどのようにお考えでしょうか?

減税額だけを見れば、10万円の消費で1万円の税負担が5千円に、100万円の消費なら10万円の負担が5万円になるため、富裕層優遇に見えるかもしれません。しかし、消費税は所得に占める負担の割合が低所得者ほど高くなる「逆進性」の強い税金です。そのため、税率引き下げは、何よりもまず低所得者層の負担軽減に繋がります。

もちろん、消費額が大きくなれば減税額が大きくなるのも事実であり、だからこそ私たちは、消費税減税とセットで富裕層への優遇税制を正し、所得1億円を超えるような方々には課税を強化すべきだと考えています。

所得のある人が消費をしやすい環境を作ることは、経済を回すことにつながります。消費税を下げ、モノやサービスを購入するハードルが下がれば、消費が促され経済は活性化するため、減税自体が経済成長に結び付くのではないでしょうか。

ー消費税の減税には財源の議論が欠かせません。共産党は新しい税の創設や、大企業の法人税の増税を財源に、消費税を減税して家計が苦しい層に還元することを打ち出しています。このような政策を掲げる背景について教えてください。

私たちは、法人税のあり方を見直すことが重要だと考えています。アベノミクス以降、法人税率は下がっていくばかりでこの下げた税率を元の水準に戻すことが第一歩です。

この10年間で大企業の利益は2.6倍に増えましたが、法人税額の伸びは1.6倍に留まっています。これは度重なる減税で負担を免れているからに他なりません。法人税の減税により、本来あるべき税収が2023年度だけで11兆円も失われていると試算しています。

上場企業は株主へ年間20兆円もの配当金を支払っています。株主に還元する資金がありながら、税金を納める体力がないというのは筋が通りません。まずは利益に応じて相応の税金を納めていただきたいと考えています。

山添政策委員長_1

社会保険料は負担を下げる部分と上げる部分のすり合わせが必要

ー今回の参議院選挙では、社会保険制度改革も争点の1つとなっています。社会保険政策について、どのようなスタンスを取られているのでしょうか?

社会保障は命と健康を支える大事なセーフティーネットであり、単純に削ればよいという問題ではありません。特にベッド数を減らす・OTC類似薬の保険適用除外などの医療費削減策は、医療機関を逼迫させ、患者の自己負担を増やすことになりかねません。そのような道に進むべきではない、と考えています。

一方で、社会保険料の負担については、確かに見直すべき所があります。社会保険料も消費税と同様に逆進性のある制度です。例えば国民健康保険の「均等割」は、子どもの数が増えるだけで負担が増えてしまいます。非正規雇用の方も多く加入する国民健康保険の負担軽減は重要な政策課題です。

逆に、現在の制度では健康保険料は年収2,000万円まで累進的に上がりますが、年金保険料は年収1,000万円で負担が頭打ちになります。高所得者の方には、よりご負担いただくことも含めた改革が必要です。

ー下げる部分と上げる対象の部分をすりあわせながら財源を含めて対応する、という理解でよいでしょうか?

その通りです。負担を下げる部分と、上げていただく部分の両方が必要です。また、医療・介護・年金の財源の半分は税金で賄われていますが、その財源を消費税に頼るのではなく、法人税や所得税の改革によって確保すべきだと私たちは提案しています。税負担のあり方を含め、改善の余地は大きいと考えています。

ー今後高齢化が更に進む中で、社会保障の負担は将来的に重くならざるを得ないと思います。そのような将来を前提とした場合、今の制度で対処できるのか、それとも当面はこの方針でいく方針なのか、あるいは別の制度などを考える必要があるのか、いかがお考えでしょうか?

高齢化が進む中で、社会保障費の切り下げを続ければ、医療や介護の現場は持ちこたえられません。病院の窓口負担が3割になれば受診を諦める人が増え、介護報酬の引き下げで事業所が地域からなくなるなど、制度はすでに限界に達しています。これ以上削ることは、今やるべきことではありません。

社会保障の負担が増えるではないか、と言われますが、その通りなのです。しかし、増えるから削る、という発想では、社会保障は痩せ細る一方です。必要な費用は、きちんと確保する方向に舵を切るべきです。現に政府は、防衛費は「必要だから」と増額しています。社会保障も同様に、必要なものをどう財政的に支えるか、という議論が求められています。

山添政策委員長_2

国際法や国連憲章を重視、日本が進むべき外交の方向性

ー安全保障政策について、共産党は各国の共産党と連携しながら外交を行っているイメージがありますが、実際どのような外交を行っているのでしょうか?

実は名前のイメージと異なり、世界各国に共産党がありその支部として日本共産党が活動するような組織ではありません。私たちは完全に独立しており、各国とは等距離で独自の活動をしています。

ー外交や安全保障は政府の仕事、と捉えられており、野党どのように外交や安全保障に関わっているのか見えにくい部分があります。日本共産党は独自に活動しているとのことですが、外交面では具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか。

私たちは野党として、各国の政権や政党と「野党外交」を展開しています。与野党問わず参加資格のあるアジア政党会議のような国際会議に出席し、日本の立場から主張すべきことを伝えています。

例えば中国との関係では、自民党から共産党までが参加する超党派の議員連盟で訪中し、中国側の代表と協議しました。その中で私たちは、東シナ海や南シナ海における力による現状変更の動きに反対し、台湾問題も平和的に解決すべきだと提起しました。また、2008年の日中共同声明で「互いにパートナーであり、脅威とならない」と合意したことを再確認する重要性を主張し、中国側もその重要性を認めています。

ー安全保障に関しては、ロシアのウクライナ軍事侵攻や中国の台頭などにより、大きく環境が変わっています。共産党としては国の防衛を含めてどのように平和を維持しようとお考えでしょうか?

現在、核兵器を持つ大国が、他国を攻撃するような緊迫している環境に世界はあります。そこで問われているのは、国連憲章や国際法という世界のルールを守ることです。ロシアのウクライナ侵攻は明らかに国際法違反です。このルールは全ての国に等しく適用されなければなりません。どの国であろうと国連憲章を守るよう、国際社会全体で強く迫る必要があります。それはアメリカに対しても例外ではありません。

ー国連の今の枠組みは機能していない所がある、とお考えでしょうか?

機能していると思います。問題なのは、安全保障理事会です。大国が自国のエゴを通すために拒否権を発動し、機能を麻痺させています。国連全体が機能不全に陥っているのではなく、拒否権を持つ常任理事国の一部が自国本位の行動をとり、その無責任さが際立っているのではないでしょうか。

ー難しい舵取りが迫られる日本の外交政策について、どのようにお考えでしょうか?

日本は、あらゆる国と対等な立場で付き合う姿勢が不可欠です。アメリカ側か、中国側か、という軍事ブロック的な対立の発想ではなく、全ての国が参加する枠組みを発展させることが大切です。どちらかが敵だという前提に立てば、緊張は高まる一方です。簡単ではありませんが、全ての国が参加する枠組みを作る努力を怠れば、対立はエスカレートするばかりです。

企業の利益のため、戦争のために国費を投入しない

ーAI開発や半導体支援など、研究開発や産業育成についてはどのような政策を掲げているのでしょうか。

国の支援のあり方は、分野ごとに明確な方針が必要です。私たちは「国が責任を持って支えるべき分野」と「市場原理に任せるべき分野」を、きちんと区別すべきだと考えます。

まず、あらゆる技術の土台となる「基礎研究」は、国が支えるべき分野です。大学や公的研究機関で行われる基礎研究は、すぐに利益に結びつかなくても、未来の発展の芽を育むために不可欠です。多くのノーベル賞受賞者が日本の基礎研究予算の乏しさに警鐘を鳴らしていることからも、大学や研究機関への予算を増やす必要性は明らかです。

一方で、半導体やAIのように、企業の利益に直結する応用・開発研究は、市場原理に任せるのが基本です。将来性があると判断すれば、企業は自らの経営判断で投資を行うはずです。現在、政府は半導体産業に巨額の税金を投入していますが、その技術を利用するはずの民間企業は、失敗のリスクを恐れ、ごく僅かな投資しかしていません。これは本末転倒です。

技術開発を進める上で、倫理的な視点も忘れてはなりません。特にAIのような先端技術が、兵器開発や軍事利用を前提に研究されることは、平和主義を掲げる日本の国是に反するため、決して進むべきではありません。

山添政策委員長_3

声を上げ続ければ、理不尽は変えられる

ー最後に読者層である現役世代の方々に対して、メッセージや、特に知ってほしいことなどがあればお願いします。

声を上げ続ければ理不尽は変えられる、ということを知っていただきたいです。

例えば、大学入学金の二重払い問題。複数の大学に合格した場合に生じるこの理不尽な負担について国会で解決を求めた結果、政府は私立大学へ負担軽減を検討するよう通知を出しました。多くの人が感じる理不尽さを国会に届け、議論を通じて政治を動かすことこそが、民主主義の本来の姿です。

したがって、私たちは諦める必要はありません。非正規雇用の多さ、上がらない賃金、長時間労働、高額な学費といった社会問題も同じです。「仕方ない」と諦めるのではなく、声を上げ続けることが非常に重要です。問題を解決するための財源は、政治の姿勢が一つ変わるだけで確保できます。

今、失われた30年が、失われた40年になろうとしています。この間、大企業や富裕層を優遇し、国民に対しては増税を行い、非正規労働者を増やし、大学の学費は高止まりしてきました。この構造を変えなければなりません。声を上げ続ければ、社会は変えられるのです。

そして最後にもう一つ。最近では、外国人や高齢者が優遇されているといった、社会に分断を持ち込むような言説が見られるようになりました。しかし、そのような議論は対立を煽るだけで、社会全体の発展には繋がりません。本当の対立構造は、一握りの富裕層や大企業と、圧倒的多数の苦しんでいる人々との間にあります。国民の皆様には、ぜひその本質を見極めていただきたいと思います。

山添 拓 議員

やまぞえ たく
山添 拓
  • 生年月日 1984年11月20日
  • 出身地 京都府向日市
  • 学歴 東京大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
  • 職歴 2010年司法試験合格、2011年弁護士登録。
    2016年参議院議員初当選(東京選挙区、2期)。
    2024年日本共産党政策委員長就任。
この記事の監修者
株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。その傍ら、株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当している。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)

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