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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー元ワクチン接種推進担当大臣の堀内詔子議員に聞く!コロナ禍後のインバウンド回復の鍵「高付加価値化」

元ワクチン接種推進担当大臣の堀内詔子議員に聞く!コロナ禍後のインバウンド回復の鍵「高付加価値化」

投稿日2023.9.5
最終更新日2023.12.22

2023年6月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月(12万430人)の17倍強の207万3300人で、コロナ禍前の約70%の水準まで回復しています。

自民党・観光立国調査会のメンバーとして観光政策に携わる堀内詔子議員(以下、堀内議員)に、コロナ禍後のインバウンド回復のポイントと、政治への思いなどについて聞きました。

(聞き手・文責:中井澤卓哉)

堀内詔子氏
1965年生まれ(57歳)。衆議院議員(4期)。自民党副幹事長。
元東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣、元ワクチン接種推進担当大臣。
厚生労働大臣政務官、環境副大臣も歴任。
2012年、山梨県2区から初当選。
苦手なことは「じーっとしていること」。

(1)ポストコロナの観光復興へ

ーまずはじめに、堀内議員が政治家を志したきっかけについて教えてください。

山梨の皆様から、「これからは女性が頑張るべき」と背中を押されたことが大きかったです。

義父の堀内光男(元通商産業大臣)は、長い間山梨の皆様に支えていただいて政治活動してきたのですが、引退ということになったとき、山梨の皆様から背中を押されて選挙に出ました。「詔子さんは義父の選挙を手伝いながら子どもの世話もして、次はそのような人が政治を担ったらどうか」ということをおっしゃってくださいました。

ー堀内議員の地元は、富士山や山中湖など観光の名地ですが、コロナ禍の状況などはいかがでしたか?

新型コロナウイルスでは、山梨も本当に大打撃を受けました。富士北麓も、私の出身地の笛吹も石和温泉というところがあり、一大観光地ですが、当時は文字通り「閑古鳥が鳴く」状態でした。こんな状態がいつまで続くのか、旅館や民宿などの皆様にとって不安な毎日だったと思います。

私は当時、ワクチン接種担当大臣でした。当時は新型コロナウイルスがどんなウイルスなのか、どのくらいの毒性を持っているのかなどほとんどわからない中で、ワクチン政策を進めていかなければなりませんでした。そのような中でも、むやみやたらに接種を進めるのではなく、ワクチン接種の期間や効果など慎重な分析・判断をもとに国民の健康に資するワクチン接種を進めていきました。

ただ、国民がひと通り、ワクチン3回目を打ち終わった頃は、すでにコロナ禍のさまざまな制限を余儀なくされてから1年以上が経っており、すぐに旅行に行こうというマインドにはなりづらかったのではないかと思います。コロナ禍に、なんとか経営を続けようと頑張っていたところは、さまざまな工夫をして経営や事業を続けてきたわけですが、特にパートタイムなど非正規雇用で働いていた方々から仕事がなくなっていくということが相次いでいました。

ー新型コロナウイルスが5類相当の位置付けになって、東京でも外国人観光客の姿を見ることが多くなりました。観光客が戻りつつある今、感じている課題などはありますか?

先ほどの話の続きですが、コロナ禍でかなり事業活動を抑制した分、いま観光客が戻ってきている中で逆に人手不足が起こっています。例えば宿泊業では、旅館の部屋もあるし、来たい観光客もいる一方で、コロナ禍の間に離れてしまった働き手が戻って来ず、観光客に対応できる人員が不足しているので、十分に部屋を埋められない、というような状況が起こっています。

そのような課題を数多く見聞きしてきたので、観光業に関わる方々の立場、職場を守ることが大事で、コロナ禍のような時に職場を離れなくて済む体制をまず作ることが必要だとつくづく感じました。

人手不足対策としては、来年度に向け、倍以上の予算要求を行っています。観光は日本の基幹産業です。コロナで傷んだ地域経済を盛り上げていくためにも、観光産業を後押しする取り組みを力強く続けていきたいと思っています。

ー今後、コロナ禍を経て観光の復興を目指す上で、人手不足のほかに感じている課題はありますか?

観光のデジタル化です。スマホ一台あれば、日本中を回れるようにすべきだと考えています。

日本は、地域によって電波が通じにくいところもあるので、観光客が不安を持ってしまうところがあります。なるべく広い範囲でWi-Fiが通じるようにして、安心して外国人環境客が日本各地で観光できる状況を作りたいと思ってます。そこまでインフラを整えることが難しければ、どこでインターネットが通じるか通じないかを明確にするだけでも、安心して観光客が回れるようになります。

ー確かに、Wi-Fiをはじめ、不便だと感じることが多いという話をよく耳にします。

例えば宿泊や食事の予約なども、ウェブサイトの機能を充実させ、簡単な操作で予約ができるようにしたいです。都市部の事業所はほとんどオンラインで完結できるところが多いと思いますが、例えば地方の旅館などはまだまだ電話でしか予約できない、というようなところも多くあると聞きます。

また、交通機関については、いわゆる「2次交通」と呼ばれる、空港や主要駅などから観光地までの交通手段にまだまだ課題があると感じています。外国語表記があっても、空港からどの手段でどのようにいくのが最適なのか、どこの駅で乗り換える必要があるのかなどは結構複雑で、スムーズに移動できないことがあり大変だという話をよく聞いています。「これさえやればどこでも移動できるシステム」のようなものが必要だと感じます。

このようなデジタル化を進めることで、業務の効率化や省力化を実現し、その分浮いた人手を回らないところに回して人手不足を解消することもできると思っています。

(2)観光復興へのキーワードは「高付加価値化」

ー堀内議員は、自民党の観光立国調査会のメンバーとしても活動しています。2023年3月には訪日観光や国内旅行に関する目標などを定める「観光立国推進基本計画(第4次)」が6年ぶりに改訂されました。その中の3本柱として「インバウンド回復」を掲げていますが、インバウンドの復活が今後の観光の鍵であるということでしょうか?

おっしゃる通りです。人口減少が避けられない課題で、今後もその傾向が続く限り、わが国の経済を国民だけで賄っていくという考えを変えなければいけません。観光業、特にインバウンドで外貨を稼ぐことはとても大事だと思っています。

インバウンドについては、コロナ禍前から「観光は日本の基幹産業」と、政府は打ち出していました。国も覚悟を持って、世界の中で戦える一つの産業として、観光業を大事に育てていく必要があります。

ー今回の基本計画では訪日外国人の人数だけでなく、「消費額5兆円」も目標としています。消費額に注目した意図はなんでしょうか?

人数ももちろんそうですが、観光客一人が日本でどのくらい消費していただけるかというのも、観光業として経済に与えるインパクトを考える上でとても重要だと考えています。そこでクローズアップされたのが「高付加価値化」というキーワードでした。例えば、これまで1泊15,000円で泊まっていたところを、25,000円で泊まってもらうにはどうしたらよいか、ということを考えたのです。1人あたりの消費額を上げるために、観光の体験価値を高めていくことで、インバウンド復興を推進しようという狙いです。

コロナ禍では観光に関してはほとんど何もできなかったので、逆に「反転攻勢に出る準備をこの間にしよう」と、我々が打った施策の1つに、観光庁による「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」(以下、「高付加価値化事業」。参照:https://kankosaisei.net/ )があります。

この事業は、観光地経営のマスタープランとなる地域計画の構築・磨き上げ、 および宿泊施設・観光施設の改修、廃屋の撤去、面的DXなど、 地域・産業の「稼ぐ力」を回復・強化するための取り組みを国が支援するものです。

応募してくださった団体等については、観光地の再生・高付加価値化プラン(地域計画)の作成に向け、 再生・高付加価値化のコンセプトづくりや地域の合意形成、個別施設の改修等の事業の内容の磨き上げや資金調達 などの点について、専門家の派遣等の伴走支援を実施しています。補助率は原則1/2となっており、今年度からは単年度ではなく、次年度にかけた期間で事業を実施できるようになりましたので、より規模の大きい事業実施が可能になりました。

ウェブサイトの「ヒント集」からさまざまな事例を見ることができますが、日本独特の歴史や文化は、外国人観光客にとっては日本でしか味わえないオンリーワンのものです。その魅力を適切に発信し、ただ安く売るのではなく適切な価格で体験してもらい、価値を高めることができるものについては価値を高めて売っていくようなことをしていく必要があります。この過程で、私たち自身も、客観的に日本の価値を見つめ直すことが重要ではないかと考えています。

例えば、私の地元に富士山と五重塔と桜が一緒に綺麗に撮れるスポットがあって、海外のガイドブックに載ったことがきっかけで大人気になったのですが、それまではあまり注目されて来なかった場所でした。今はインスタグラムなどで、誰でも瞬く間に世界に発信できる環境があります。日本人にとっては何気ない場所が、実は外国人にとってはたまらなく魅力的である、そのような場所がまだまだたくさん眠っていると思っています。観光資源になり得る場所や風習、文化を発掘し、アピールしていくことにも取り組んでいきたいです。

(3)山梨を世界に拓く

ー堀内議員の地元・山梨についてもお聞かせください。山梨の観光を押し出す上で、今後アピールしたいポイントなどありますか?

私自身、政治家として「山梨を世界に拓く」ということに取り組みたいと思ってます。

私自身の選挙区である山梨2区の中では、富士山は言うまでもありませんが、峡東地域の果物やワインもとても有名で人気があり、観光農園としてたくさんの方にお越しいただいています。

そのようなすでに広く知られている魅力もさることながら、あまり知られていない文化や歴史もあります。例えば、富士吉田市には北口本宮冨士浅間神社から富士山駅に続く富士道の両脇に、室町時代より続く「御師住宅」が残されています。「御師」は富士山を信仰する方々へ自宅を宿泊所として提供しながら、登山の準備や食事の提供をする方々のことです。この御師町の食生活文化を継承する料理が「御師料理」です。この「御師料理」を和食が好きな外国人の方にアピールしていくことなどは、ぜひ実行していきたいと思っています。

ー日本で生まれ育った私でも、御師のことははじめて聞きました。まだまだ知らない魅力がたくさんあるということですね…最後の質問になりますが、堀内議員が政治家として成し遂げたいことは何でしょうか?

3つあります。1つは先ほど申し上げた「山梨を世界に拓く」ということ。もう1つは、女性議員として女性目線の政治を推進していくことです。

実際に、子育てや介護に従事するのは、まだ女性の手によるものが多い現状です。日本も、北欧のような「ネウボラ(「ゆりかごから墓場まで」)」の考えにだんだん近づいていると思っています。それをさらに充実したものにするために、女性目線が必要だと確信しています。そのような政策に私自身がしっかり参加して、推進していきたいと思っています。

最後の1つが、地球環境問題の対策です。環境問題というといろいろありますが、最近は特に気候変動の問題が深刻です。地球規模の話なのでなかなか実感が持ちにくい話題ではありますが、例えば夏の酷暑で熱中症で亡くなる方が増えており、長期的に増加傾向を示しているのですが、気温の上昇が関連しているという指摘もあります。

私自身、熱中症対策推進議員連盟の事務局長として、熱中症対策の推進に取り組んできました。6月に閉会した国会では、熱中症対策関連の改正法を成立させることができました。今後は、社会福祉的な観点からも食品ロス削減に向けた取組を積極的に進め、地球温暖化問題に対峙していきたいと思っています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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