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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本維新の会・守島正議員に聞く!地方分権のあるべき姿、持続可能な自治体づくりとは?

日本維新の会・守島正議員に聞く!地方分権のあるべき姿、持続可能な自治体づくりとは?

投稿日2024.3.26
最終更新日2024.03.26

地方分権が進むにつれて地方公共団体の自己決定権は拡大しています。その一方、地方財政は依然として厳しい状況が続いています。

令和5年度においては、地方財政全体で約2兆円の財源不足となり、借入金残高は、令和5年度末見込みで183兆円、対GDP比も32.1%と高い水準にあります。国は地方財政を支えるため、令和5年度には18兆円以上の交付金を交付しました。

持続可能な地方行政を実現するためには国と地方の関係性や権限の切り分けについて、継続的な議論が必要です。

今回のインタビューでは、大阪市議会議員として大阪市の行財政改革を行った経験を持つ守島正議員に、地方分権のあるべき姿、持続可能な自治体づくりについてお伺いしました。

(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
(取材日:2024年3月7日)

守島正議員インタビュー

守島 正(もりしま ただし)議員
1981年生まれ。大阪府出身。
会社員を経て、2011年に大阪市議会議員に初当選。
3期10年務めたのち、2021年衆議院議員選挙で当選(1期)。
好きな言葉は「知行合一」。

(1)地元・大阪の財政状況に危機感を持ち、政治家の道へ

ー守島議員が政治家を志したきっかけは何だったのでしょうか。
地元・大阪市の財政状況に危機感を持ったことがきっかけです。

2004年に大学を卒業した私はしばらく民間企業へ勤めていました。家族や親戚にも政治家はおらず、政治家になろうとはまったく思っていませんでした。

しかし、ある時地元の議員から「政治に興味ないか」と声をかけられたことが転機となり、政治の世界に関心を持つようになります。

そこで大阪市の財政状況を調べてみたところ「このままでは2015年に財政破綻する」との見通しが目に飛び込んできて、とても驚きました。

さらに調べてみると、当時の大阪市は大阪府と大阪市の二重行政や市役所職員の異常な高待遇が問題視されていることもわかりました。

しかし本来、改革を担うはずの市議会には高齢議員や世襲議員が多く、変化を期待できる状況にはありませんでした。

地元の危機的な状況を知り、このまま手をこまねいていていいのだろうか、自分の民間の感覚を活かし、今の政治を変えるべきではないか、と思い立つにいたります。

そのときちょうどその時、ちょうど橋下徹 大阪府知事が大阪府行政の抜本的な改革に取り組んでおられ、その行動に強く共感を覚えたことから、大阪維新の会が立ち上げられたタイミングでボランティアとして参画し、大阪市議選挙に挑戦することを決めました。

ーその後2011年から2021年まで大阪市議会議員を務められましたが、どのような改革を行ったのでしょうか。
私が市議会議員時代に特に力を入れたのは、1億円を超える公共事業をすべて見直すことと公共施設や公共空間のマネジメントを民間へ権限ごと移譲する改革です。

まず公共事業の全件見直しについては、橋下市長(当時)の下でムダな公共事業を洗い出すために、予算規模が1億円以上かつ市に裁量権のある約450の事業をすべて見直しました。

これはまさしく既得権益との闘いです。一部から反発も受けましたが、市民への丁寧な説明を行うことを心がけました。

公園など公共空間を管理する権限(エリアマネジメント)を民間へ移譲する改革も私が提案から実行まで一貫して行ったものです。これはそれまで定められていた管理者以外の民間の力を活用し、魅力ある公共空間をデザインしようとする取り組みです。

この改革の最も有名な事例は大阪城公園だと思います。大阪城公園はもともと指定管理者制度の下で管理をする事業者には小さな権限しか与えられていませんでした。

そこで2012年からは民間企業へ土地を解放して観光拠点化に取り組み、敷地内にレストランや観光施設などが新しく作られました。

2012年以前の大阪城公園は毎年4000万円もの赤字を生む施設でした。改革後は、民間企業に利用料と収益の一部を払ってもらうことで2億円以上の収入を生む施設へと生まれ変わりました。

エリアマネジメント改革を推進したのは公園だけではありません。たとえば、大阪・梅田のグランフロント周辺には、うめきた広場やナレッジプラザ、水景、地上・屋上の庭園などのパブリックスペースが散りばめられています。

これらの施設については、民間のタウンマネジメント組織が一体的な管理・運営を担っています。街の魅力や価値を向上させる上で民間との協力を進める体制を整えることに成功した点は改革の成果と言えます。

ー2021年には衆議院選挙に初出馬し、当選されました。国政に移られた理由は何だったのでしょうか。
大きな理由としては自分自身がチャレンジできる環境にあったことがあります。市議を務めていたころ、私の父は、がんで闘病していました。そのため父の体調が厳しくなれば、政治家を引退し、父の会社を継ぐことを常に考えていました。

しかし、幸いにも父の体調が回復したため、父から「お前は自分の好きなことをやればいい」と後押しをもらいました。そのときの率直な思いは「やはり政治の道を続けたい」、「チャレンジするなら今しかない」でした。周りの支えもあり政治の道に覚悟を持って進むと決断することができたんです。

と同時に、市議として活動する中で国が定めた壁を感じる場面を経験したことで国政にチャレンジする思いも芽生え始めていました。

たとえば、大阪市議会のオンライン議会を実現する上では総務省が各地方自治体に出した通知が実現する上での大きな壁となっていました。国単位でのルールを変えなければ地方行政改革も進まないことを実感しました。

国政選挙それ自体は他に有力な候補もいたため、厳しい戦いでしたが、それまでの市議としての改革の実績を理解していただいたことで初当選することができました。

守島正議員インタビュー

(2)国が主導して、持続可能な自治体づくりを

ー国会議員になられたあと、地方分権にはどのように取り組まれたのでしょうか?
地方分権については昨年まで所属した総務委員会が主な議論の場でした。そこでは2040年に向けた地方行政のあり方をテーマに議論を重ねていました。

日本創成会議(※ 増田寛也氏を中心とする民間有識者で構成する会議体)が2014年に896自治体を「消滅可能性都市」と呼んだことはご存知の方も多いかもしれません。

事実、2040年にかけて人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎え、人口が1万人未満の市町村も増加傾向にあります。だからこそ、政府には2040年に向けて持続可能な自治体づくりを実現する具体的な施策が求められています。

しかし、2020年に総務省の地方制度調査会が発表した答申では、自治体の自主的な取り組みに任せることを基本スタンスとし、地方自治体の広域連携(※ 行政サービスの実施において、複数の地方自治体がその区域を越えて協力すること)の重要性を強調しています。

たしかに広域連携は自治体にとって着手しやすい側面がありますが、その効果は限定的だと考えます。

私はやはり地方行政を持続可能なものにしていく上で市町村合併が必要だと考えます。

ただ市町村合併については、平成の大合併以降、ほとんど行われていません。2010年の合併特例法(市町村の合併の特例に関する法律)改正で、国や都道府県が積極的に市町村合併を推進する仕組みを廃止してから、実は市町村合併は7件しかないんです。

その背景には合併により地名がなくなることに対する地元の方々からの反発や自分達のポストがなくなることを恐れる地方議員からの反発など、制度的・感情的な要因が複雑に絡み合っています。だからこそ国が主導しなければ市町村合併は進みません。国が地方分権・地方自治の大きな絵姿を示していく必要があります。

守島正議員インタビュー

ー地方分権で、なんでも地方に任すのがいいというわけではないんですね。
そうです。国と地方の役割分担が必要です。大阪でも、中核市レベルまで市町村をまとめていった方が、財政的によいことはわかっています。しかし「総論賛成、各論反対」で実際には統合が進んでいません。合併といった大きな構造を変えようとする施策を地方に任せていても進まないことが多い。国が主導すべき点を明らかにして、大きなビジョンの下で推進する地方分権改革が必要です。なんでもかんでも地方に任せることが常に正しい選択肢ではないのです。

守島正議員インタビュー

(3)持続可能性をつくっていくのが政治家の仕事

ー守島議員が今関心を持っている政策テーマについて教えてください。
地方分権・地方自治体改革はもちろんですが、現在の活動の場である国会改革・選挙改革にも関心を持っています。

国会に来てみて、とても驚いたのは国会運営が古い慣習だらけだったことです。ペーパーレスやオンライン議会も実現していない。与野党の日程闘争も横行しています。民間の感覚からズレた生産的でない文化がたくさん残っています。

私は昨年から日本維新の会の行政改革プロジェクトの事務局長に就任しており、「国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」などの議員立法を提出してきました。

国会をより活発で生産的な場にするためには、そのプレイヤーである議員のバックグラウンドをより多様にすることも重要です。だからこそ選挙改革は政治の世界を適切な競争環境にする上でも重要なテーマです。

具体的には昨年「選挙等改革の推進に関する法律案」を提出しました。政治家になるための参入ハードルを下げ、裾野を広げていくことで、民意を適切に反映した政治、効率化・合理化された政治が実現できます。

ー最後に、守島議員が政治家として成し遂げたいことを教えてください。
持続可能な自治体づくり、持続可能な国づくりです。

私は大阪市が持続可能か疑問を持ったことをきっかけに政治家になりました。大阪市議時代に、地方行政改革に携わってきたことから、まずは自治体の持続可能性を支えることができる政策を、国会議員の立場から推進することを目指しています。

今の政治は、近視眼的なものになりがちです。これまでのシステムが回っているから先送りにしても問題ない、といった姿勢では地方自治体も国も持続可能性を失ってしまいます。

しかも、今の国会には地方自治体の財政の健全化に関心のある議員は少なく、地方の利益の代弁者として国から地方にお金を流すことに注力する方が多い。

しかし国から地方に財源や権限を移していくのなら、地方に責任も移譲していく形が健全です。国と地方の関係をあるべき姿にするためには、国が主導しその関係を整えていく必要があります。

だからこそ国会議員が大きな方針や根本的な制度改革に取り組まねばなりません。すでに制度疲労を起こしている制度に対してメスを入れ、国と地方のどちらもが持続可能な状態を作れるよう日々活動を続けていきます。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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