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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー大阪維新の会・杉江ゆうすけ幹事長に聞く!身を切る改革の歴史と万博後の成長

大阪維新の会・杉江ゆうすけ幹事長に聞く!身を切る改革の歴史と万博後の成長

投稿日2025.10.23
最終更新日2025.10.23

杉江 ゆうすけ すぎえ ゆうすけ 議員

1978年大阪府生まれ。京都府立大学、京都大学大学院で土砂災害対策について研究し、2004年に国土交通省入省。
2011年、大阪府議会議員選挙で初当選(4期)。大阪維新の会 政務調査会長代行、総務会長などを歴任した後、昨年11月に幹事長に就任。

地域政党として2010年に産声を上げた「大阪維新の会」は、府と市の二重行政解消で成果を上げ、関西で確固たる地位を築いてきました。今回のインタビューでは府議会議員として結党から歩みを共にし、現在は幹事長を務める杉江ゆうすけ府議に、維新が守り続ける価値観と、さらなる成長に向けた展望をお聞きしました。

(取材日:2024年9月18日)
(文責:株式会社PoliPoli 大森達郎 )

「既存の制度をゼロベースで見直す」というスローガンから受けた衝撃

ー府議会議員になる前は国土交通省に勤められていましたが、どのようなキャリアを描かれていたのでしょうか。

もともとは、大学で土砂災害などを防ぐ「砂防」について研究していました。日本は災害大国ですから、「人の命を守る仕事がしたい」という一心で、日本全土に関われる国土交通省に入省しました。

ただ、実際に行政の現場に立つと、たとえ「こちらの方が優先順位が高い」と確信していても、政治的な事情に左右されることが多々ありました。そんな矛盾を感じ、少しずつ政治に関心を持つようになった頃、「大阪維新の会」が誕生したのです。

ー「大阪維新の会」の誕生を、どのような目でご覧になっていたのですか。

行政の仕事は毎年の予算の大枠は決まっており、正直「歯車を回しているだけ」という感覚に陥っていました。「いくら自分が頑張っても、大きな仕組みは変わらないのでは?」と。そんな疑問を抱いていた私にとって、大阪から聞こえてくる「もうこ事業はやりません」「大阪はゼロベースで見直します」という声は、衝撃的でした。「そんなこと、本当にできるのか?」と。

その改革を主導していた維新の会が議員を募集しているのを知り、「これはチャレンジするしかない!」と。若かったこともあり、まさに勢いでしたね。

維新の会への共感が、大阪出身という事実よりも圧倒的に大きかった。現状の仕組みに誰もが切り込めずにいる中、それを断行する姿に胸を打たれ、「自分もその一員になりたい」と、一心不乱に維新のホームページから応募用紙を送ったのを覚えています。

ーその時は、もう国土交通省も退職されていたのでしょうか。

本当に何も考えずに動いていたので、まだ在職中でした。

面接には当時の松井幹事長もおられましたが、公務員の身分では選挙に出られないので「先に退職しないと始まらない」と門前払いだったのを覚えています。そこで霞が関の人事担当に退職の意向を伝えたのですが、当時はまだ東京での維新の認知度は低く、「そんな怪しい政党から出るなんて、何を考えてるんだ!」と上司から何度も説得されました。

しかし、私の意志は固く、退職して再び面接に臨みました。すると今度は「本当に辞めたんか?選挙なんて、どうなるかわからないぞ」と言われ。「先に言ってくださいよ…」と心の中で思いましたが。。

完全な見切り発車でしたが、私の政治家としてのキャリアはそこから始まりました。

技術やノウハウの社会実装こそ、万博の真のレガシー

ー維新の会を創設期から見てきた杉江議員にとって、これまでの最大の成果とは何でしょうか。

党が結成当初から訴え続けた、大阪府と市の二重行政の解消です。

かつての大阪は、府と市が同じような施設をバラバラに作り、ヒト・モノ・カネを無駄遣いしている状態でした。「この二重行政の解消なくして、大阪の成長はない」というのが、我々の揺るぎない信念でした。

あれから約15年が経ち、府知事と大阪市長を大阪維新の会が担い、議会でも過半数の議席をいただいています。大阪の二重行政は、完全には解消していませんが、掲げた公約を反故にせず、たとえ百点満点ではなくとも、真摯に改革に取り組んできた結果だと自負しています。

ー大きな注目を集めたトピックとして、2度の大阪都構想の住民投票があります。2回とも否決されながらも、盤石な支持を得られている要因はどこにあるのでしょうか。

確かに住民投票では2回否決されました。しかし、私たちは「負けたから知らない」といった無責任な態度は決して取りませんでした。党の幹部がきちんと会見を開いて総括し、たとえ自分たちの望んだ結果でなくとも、示された民意に従って最大限の責任を果たしていく姿勢を示した。

そのことが、「維新は大阪のことを本気で考えて仕事をしてくれる」という府民の皆様からの信頼につながっているのだと思います。

ーそして現在の大阪のビッグトピックは、やはり大阪・関西万博です。このレガシーをどう受け継いでいくお考えですか。

先日、大屋根リングの一部を残す話が出ました。もともとは「コストをかけてまで残す必要があるのか」というご意見も少なくありませんでしたが、今では「なぜ残さないのか」というお声をいただいています。すべてを残すのは費用的に難しいので、最終的には200メートル分を市営公園の一部として残すことになりましたが、この変化は、府民の皆さんが万博を誇りに感じていただけているのではと非常に嬉しく思います。

同時に、本当に大切なレガシーは、目に見えない技術やノウハウだと考えています。万博では「空飛ぶクルマ」のような最新技術が披露され、未来社会の実証実験が行われました。これをこれを「万博だからできた特別なこと」で終わらせず、いかに実社会に落とし込んでいくか。今後はそこが最も重要です。

例えば、会場を走った自動運転バスでは、走行しながら道路から給電する技術開発の実証が行われました。これが社会実装されれば、電気自動車が充電のために停車する必要がなくなるかもしれない。こうした目に見えない技術やアイデアこそが、未来を作る本当のレガシーです。

大阪・関西万博では「地元にこんな素晴らしい企業があるのか」や「この団体はこんな素敵な取り組みをしているのか」と、私たちにとっても多くの発見がありました。都道府県や市町村などの自治体、そして企業やNPOなどの多様なプレーヤーの繋がりを発展させ、新しい取り組みが大阪から次々と生まれてきたら、世の中はもっと面白くなるはずです。

日本の成長に不可欠な「多極分散型」の国づくり

ー2025年7月の参院選では、社会保障改革と並んで「副首都構想」を掲げられていました。この構想について詳しく教えてください。

予測不能なリスクに備え、日本の各地域に核となる都市圏を置く「多極分散型」の国家を目指すものです。首都直下地震などの有事が起きた際、日本の心臓部が一つだけでは、国全体が機能不全に陥ってしまう。関西なら大阪、九州なら福岡というように、いざという時に補い合える体制を作ることが、今後の日本の成長と安全保障に不可欠です。

これは維新だけで実現できるものではなく、他党や国民の皆様のご理解がなければ進みません。一極集中の是正が必要なことは誰もが感じているはずですが、具体的な制度設計の議論は進んでこなかった。我々がその合意形成の先頭に立って動いていきます

ー副首都構想に対する周囲の反応はいかがですか。

「コストをかけてまでやる必要があるのか?」という疑問の声はあります。都構想のときも「知事と市長の両方とも維新で、うまく連携しているから十分なのでは?」というご意見がありました。同様に、東京一極集中があるからといって今すぐ生活できなくなるわけではありません。将来のための構想を理解して受け入れていただくには、丁寧な説明を重ねていく努力がまだまだ必要です。

ー「副首都構想」と「大阪都構想」は、一見すると同じ政策にも見えるのですが、どのような違いがあるのでしょうか。

都構想は、一つの都市圏の中にある広域行政体を一つにして、意思決定を迅速化し、都市の力を最大化するものです。例えば防災に関して、昔は大阪府と大阪市が南海トラフ巨大地震に対する防潮堤の整備や液状化対策をバラバラに行っていました。松井知事、吉村市長の時代に府市一体で取り組めるようにしました。2つの行政体があると、このような問題が生じます。

一方で副首都構想は、日本全体をどう多極分散型にするかという、より大きな「網」、つまり国全体の制度設計です。その大きな制度の中で、副首都になり得るエリアは東京のような「都制度」を導入する、というイメージです。

身を切る改革、改革の鉄則は「順番を間違えないこと」

ー大阪では圧倒的な強さを誇る一方、他の地域では苦戦が続いています。全国政党になる上での課題は何でしょうか。

やはり「大阪での改革」というアピールが強すぎたのかもしれません。「大阪で二重行政をなくし、財政を立て直した」と訴えても、それはあくまで大阪の話。「私たちの住む地域では何をしてくれるの?」と、他の地域の有権者には響きにくい。これからは、それぞれの地域が抱える課題に深く寄り添い、具体的な解決策を提示していく努力が必要だと感じています。

ー党のアイデンティティとして守り続けていきたい理念は何でしょうか。

「改革の順番を間違えない」ということです。行政改革で住民サービスを見直す必要があっても、まずは自分たちの身分から改める。例えば、財政が危機的状況だった大阪では当時、府議会議員の報酬は月額93万円でしたが、一般の感覚で言えば「もらいすぎだ」というご批判も当然です。だからこそ、まずその議員報酬を削減し、知事の退職金も廃止したのです。私が初当選したとき109人いた大阪府議会議員は、今79人まで減らしました

この「まず自分たちの身を切る」という姿勢、この順番だけは決して間違えてはいけない。この姿勢が、大阪で信頼をいただく礎となっていると信じています。この理念を胸に、各地域に最適なソリューションを提示していきたいです。

ー大阪の若い世代を中心に、読者に向けたメッセージを最後にお願いします。

万博が終わり、「楽しかった」という思い出だけで終わらせず、「万博を機に大阪はさらに成長した」と実感してもらえる未来を作ることが、私たちの責任です。そのためには、教育の無償化をはじめとする次世代への投資を止めてはなりません。

私たちの願いは、次の時代を担う若い方々が、何度でもチャレンジできる社会を作ることです。「これを始めたい」「この分野に挑戦したい」と思った時、その背中を押せる環境を、特にこの大阪から築きたい。ですから、若い皆さんには、我々に「もっとこうしてほしい」という意見や要望を、遠慮なくぶつけてほしいのです。そして、それぞれの夢に向かって、この大阪という舞台で存分に活躍してくれることを心から願っています。

杉江 ゆうすけ 議員

すぎえ ゆうすけ
杉江 ゆうすけ
  • 生年月日 1978年06月15日
  • 出身地 大阪府出身
  • 学歴 大阪府立枚方津田高等学校 卒業
    京都府立大学 農学部 森林科学科 卒業
    京都大学大学院 農学研究科(森林科学専攻)修士課程修了
  • 職歴 大阪維新の会 政務調査会長代行、総務会長などを歴任した後、昨年11月に幹事長に就任。
   
この記事の監修者
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株式会社PoliPoli 政府渉外部門マネージャー 秋圭史
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京大学大学院に進学し、比較政治学・地域研究(朝鮮半島)を研究。修士(学術)。2024年4月より同大博士課程に進学。株式会社PoliPoliにて政府渉外職として日々国会議員とのコミュニケーションを担当。(紹介note:https://note.com/polipoli_info/n/n9ccf658759b4)