吉田 はるみ よしだ はるみ 議員
「八百屋の娘」として生まれる。投資・証券会社の会社員として
東京・シンガポール・ロンドンで働き、中小企業の発展に注力。
2021年10月の衆議院議員選挙で初当選(2期)。
2024年「次の内閣ネクストジェンダー・共生・孤独孤立担当大臣」就任。
特技は料理、カラオケ(演歌、民謡)。
高校の就学支援金の所得制限撤廃、多子世帯に対する大学等の授業料・入学金の無償化など、国会では教育無償化を巡る議論が活発化しています。今回のインタビューでは立憲民主党の吉田はるみ議員に、めざすべき教育政策のあり方や、党の活性化に向けた提言をお聞きしました。
(取材日:2025年8月19日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
政治の“人間らしさ”を肌で感じた代表選

ー昨年、党の代表選挙直前にインタビューさせていただきましたが、まずは代表選に出馬して感じられたことを聞かせてください。
率直に言うと、あの大変さを知っていたら、おそらく出馬しなかったと思います。一期生で実績のない私が20人の推薦人を集めるのは想定以上に困難で、「集まっては減る」という出口の見えないトンネルのようなものでした。その中で、信頼と裏切りといった政治の“人間らしい”場面も目の当たりにしました。一期生にしてこの洗礼を受けたのは苦い思い出ですが、政治の人間臭さを学ぶ良い機会になったと思います。
ー政治家としての成長につながる学びはありましたか。
ひとつ良かったのは、チームで動いたことです。本来、当選回数を重ねた経験豊富な方が出馬する代表選に一期生の私が出ることになったので、私一人では政策の議論を積み上げることができませんでした。そんな中、外交や防衛、農業などの専門知識を持った方が支援チームに入ってくださったおかげで幅広い議論ができ、私も多くのことを吸収させていただきました。時にはベテラン議員の方々とディスカッションすることもありましたが、支えてくれる仲間がいたことでプレッシャーを乗り越えられたと思います。
ー代表選に出馬された背景として、どのような党のビジョンをお持ちだったのでしょうか。
私が代表選に出たのは「立憲民主党は次の世代も担う政党であるべきだ」という思いからでした。周囲の反応は「一期生なのに元気でいいね」とか「どの時代の一期生もそんなもんだよ」という感じで、推薦人集めもギリギリの状態でした。出馬届を出したのは締め切りの1分前でしたからね。
私がそこで訴えたかったのは「一期生でも、理念があって賛同する仲間がいれば代表選を戦える自由闊達な政党であってほしい」という思いです。これは立憲民主党だからこそできることです。私が無理でも、次の世代の一期生でもいいのです。志を持って政治に挑戦する人たちが、3期も4期も当選を重ねなければ活躍できないような国会では、世の中の変化についていけないと思ったからです。
ーあれから国会の勢力図も変わり、立憲民主党は責任政党として政策の発信に対しても慎重にならざるを得なくなったように感じます。
特に参院選後は責任政党としての立場が強くなりましたが、もっと次の世代の国会議員が自由に発言する空気を作っていきたいですね。もちろん発言内容については責任を持つべきですが、何となく遠慮したり、炎上を恐れて「無難にしておこう」という風潮があります。逆に、突き抜けようとして極端に尖ったことを言ってしまうケースもあります。「まともな議論をしよう」と思っても「できない」と感じることがあるのです。
若い世代には、今抱えている問題について自信を持って議論してほしいと思います。これは地元の方々からの声でもあります。立憲民主党は本来、それができる環境を作るべきなのです。世代間対立を煽るのはよくないですが、多様な年代の多様な意見があっていいのではないでしょうか。
地方創生には「良い教育を受けられるかどうか」という視点が不可欠

ー党として教育無償化、デジタル、エネルギーなどの重点政策を掲げられていますが、特に注力したい分野の政策について教えていただけますでしょうか。
やはり「教育」がもっとも思い入れのある分野です。私は衆議院の経済産業委員会でラピダスへの投資などの経済政策に関わってきましたが、やはり新しい産業やイノベーションを生み出すには技術力の源泉となる「人」の教育がまだまだ不十分だと感じています。「技術者が海外から来る」という話も多く、地元にある社員50人規模のインターネットセキュリティ会社では、半分が外国籍のエンジニアだと聞きました。人材も含め、何もかも海外から輸入する国になっては、経済の基盤を築くことはできません。
最終的には、エンジニアリングもアートも農業も、あらゆる産業の基盤となるのは子どもたちの世代の「学び」だと思います。子どもが何を学びたいか、その学びをどのように支えるか。興味のある分野をとことん追求することが保証された教育環境こそが、日本を強くする一番の礎になるのです。「教育」や「研究」とは、本来そのようなものだと私は信じています。
ー先の国会では教育無償化が盛んに議論されていましたが、どのような印象をお持ちですか。
先の国会では教育無償化が活発に議論され、対象に私立高校も含まれることになりましたが、これには弊害もあると思います。私が特に力を入れたいのは公教育ですが、現状は教員が不足し、子どもたちのモチベーションも下がるなどの課題を抱え、公教育が揺らいでいます。本来、地域や家庭環境に左右されず、すべての子どもが最適な教育を受けられる環境を公教育が支えなければなりません。
私立も無償化になって「助かった」という声がある一方で、公立高校が消える市町村も出てきており、それが都市への一極集中をさらに進める一因になっています。地方創生をやりながら、教育や研究に関しては一極集中を進めているという意味で、大きく矛盾しているのです。本来、地方創生には「そこに良い教育があるかどうか」という視点が欠かせません。その観点からも「良い学校が地方にあり、それが公立であること」が極めて重要だと考えています。
ー同じことが大学にも言えると思いますが、大学は授業料が値上げされています。
そうなんです。私が代表選で地方を回っていたとき、教育政策のひとつに「国公立大学の無償化」を掲げていました。私立は含めず、「まずは国公立大学から」というのがポイントです。どんな経済的な事情があっても「本人が望めば大学まで行ける」という選択肢は確保しなければなりません。
もし国立大学の授業料が上がれば、国立大学がなくなる地方も出てきます。大学を失った地域からは、研究力も教育力も失われてしまいます。地方を回っていると「域内の産業を支える上でも大学が必要です」という切実な声をいただきます。改めて、大学に行きたいと思う子どもには公立の学校で大学まで行ける道を残してあげたい、という思いを強くしました。

ー無償化を進めるにも、必ず「財源」の議論になると思いますが、この点はどのようにお考えですか。
私たちが何か政策を出すと、必ず「財源は?」と聞かれますよね。でも、ちょっと待ってください。政府が何かやるときに財源論なんて出てこないですよね。定額減税が行われたとき、4兆円規模の経済対策にも関わらず、財源論など出てきませんでした。良い政策であれば、同じ規模で今の政府がやっていることなら「できる」ということです。
国立大学の無償化は約3000億円程度ですからね。やろうと思えばできる規模なのです。給食の無償化も来年から始まりますが、あれは約4800億円。膨大な予算が必要だと感じても「算出してみたら許容範囲内だった」というケースはあるので、やはり優先順位をどこに置くかを考えるべきです。数兆円規模の経済政策であれば「これまでやってきたこの部分をこうしましょう」みたいな議論をすればいいと思いますが、教育予算に関してはそもそものパイが小さいので、予算のパイを大きくしていくことに賛同する勢力を広げたいと思います。
また、今回問題となった基金ですが、外に出してしまうお金があまりにも多すぎて1兆円を超える規模になっています。財政規律ももちろん大事ですが、そもそも「一般会計」「特別会計」「基金」といった分かりにくい会計制度を一度すっきりさせて、国民の皆様に正しく説明することも必要だと思います。
多様な考え方を許容し、若手議員が存分に活躍できる党にしたい

ー最後に、今後の党のあり方や、ご自身の目標を教えてください。
立憲民主党は多様性を大切にする党であり、党の中で意見がバラバラだと批判されることもありますが、私はポジティブに見ています。価値観の異なるメンバーを抱えながらも、党として一つにまとまることができる証なのです。
一方で、私たちには「30~40代の現役世代の支持が足りない」と言われることもあります。その年代の議員がもっと活躍すべきなのです。同じ世代の人と共感し、同じ時代を生きているからこそ、同じ問題を感じるからです。「現役世代や20代の支持が少ない」と感じるなら、その年代の皆さんと一緒に政治を進める、という姿勢を示すべきだと思います。
だから私は「経験の浅い若手議員でも思い切った政策を打ち出せる政党にしたい」と本気で考えています。危なっかしいと思われるかもしれませんが、その裏に「国民の生活のため」という思いがあるなら、挑戦してみよう!と背中を押すような政党にしたいのです。













