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こども未来戦略とは?概要や加速化プランについてわかりやすく解説

投稿日2024.1.23
最終更新日2024.01.23

こども未来戦略は、岸田政権の掲げる「異次元の少子化対策」を具体化したものです。2022年に生まれたこどもの数が約77万人と過去最少となる中、急速な少子化を食い止めるために策定されました。

特に、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが少子化トレンドを反転させることができるラストチャンスであるため、今後3年間に集中して取り組む政策を「加速化プラン」としてまとめています。。

本記事では、以下についてわかりやすく解説を行います。

  • こども未来戦略について
  • こども未来戦略の背景と概要について
  • こども未来戦略の加速化プランについて
  • こども未来戦略の財源や予算について

1、こども未来戦略とは?3つの基本理念について

こども未来戦略3つの基本理念

「こども未来戦略」では、少子化の主な原因として(1)若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない、(2)子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境、(3)子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感、の3つを挙げています。

この課題に対応するため、こども未来戦略は以下の3つの理念を掲げています。

  • 若い世代の所得を増やす
  • 社会全体の構造と意識を変える
  • 全てのこどもや子育て世帯を切れ目なく支援する

(1)若い世代の所得を増やす

若い世代が学生時代、就職、結婚、出産、子育てなど様々なライフイベントが重なる時期に「現在の所得から将来の見通しを持てるようにすること」が必要です。

そのためには、若い世代の所得を増やす必要性があります。社会経済政策として最重要課題である賃上げに取り組むとしています。

現在は若者一人ひとりがキャリアを選択する時代となり、労働者の主体的な職業選択は企業と経済の更なる成長に導いています。その結果として賃上げに繋がるよう、リスキリングによる能力向上支援や、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動を円滑化するといった三位一体の労働市場改革の加速を目指しています。

また、週の労働時間が20時間以内の労働者に対する雇用保険の適用拡大を、2028年度を目途に実施するという考えも盛り込まれています。

さらに、収入の壁と言われている106万円、130万円の壁を意識せずに働けるよう、短時間労働者への被保険適用の拡大と最低賃金の引き上げに取り組みます。

収入の壁を超えても手取りの逆転を起こさないようにするための対応を2023年度中に実行し、制度の見直しにも取り組みます。

(2)社会全体の構造と意識を変える

現在の日本では、家庭内で育児や負担が女性に集中している「ワンオペ」の状態である家庭が多いといわれています。

こども未来戦略ではこの実態に焦点を当て、夫婦が協力して子育てを行い、その現状を職場や地域全体で応援、支援をする社会を作らねばならないとしています。

企業においても出産や育児の支援を投資と捉え、職場の文化や雰囲気を本格的に変え、女性、男性問わず希望通りに気兼ねなく育児休業制度を利用できるようにしていく必要性があるとしています。

また育休に限らず、職場復帰を果たしても子育て期間の「働き方」を変えていく必要があります。

育児休業の取りやすさと育児休業の強化が両立してこそ、子育て世帯の「こどもと過ごせる時間」が作られると考えており、政府・経済界・労働界が一体となって働き方改革の推進と育児休業制度の強化などに取り組むこととしています。

(3)全てのこどもや子育て世帯を切れ目なく支援する

こども未来戦略では、親の就業の有無に関わらず、どのような家庭状況であっても分け隔てない子育て支援を行い、ライフステージに沿って切れ目のない支援の必要性を唱えています。

幼児教育や保育については、量と質の両側面の強化を図ることも重要視しています。

現在まで、比較的手薄と言われていた0歳から2歳までの支援を強化し、子育て家庭の様々な困難や悩みに応えられる伴走型の支援強化を目指しています。

また、子育て世帯の中には障がいを抱えているこどもや、医療ケアを必要としているもおり、そのこどもを育てる家庭やひとり親家庭に対してのきめ細かい対応の必要性も掲げています。

参考:こども家庭庁ウェブサイト「こども未来戦略」(最終閲覧日:2024年1月12日)

2、こども未来戦略の背景について

こども未来戦略が制定された背景には、日本の少子化問題が深く関係しています。

2022年の日本の出生数は77万747人と、出生数の統計を取り始めた1899年以降最も低い数字となっています。

日本では、第二次世界大戦後2回ベビーブームが到来しましたが、その後ベビーブーム世代が親となる年齢が来ても出生率は年々低下の一途をたどっています。

参考:
内閣府ウェブサイト「少子化対策の現状と課題」(最終閲覧日:2023年10月10日)
厚生労働省「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」(最終閲覧日:2023年10月10日)

出産・子育てに関する意識

画像出典:厚生労働省ウェブサイト「出産・子育てに関する意識」(最終閲覧日:2023年10月10日)

厚生労働省の「出産・子育てに関する意識」によると結婚の有無に関わらず、理想は2人以上のこどもが欲しいと希望する人が多く、こどもを欲しくないと思っている夫婦が少数派であることが分かっています。

しかし、実際はこどもを2人以上産み育てている家庭は25歳から29歳の家庭で47.5%、30歳から34歳の家庭で28.3%、35歳から39歳の家庭では6.8%と少数です。理想のこどもの数は2人以上と回答する夫婦は9割を超えているのに対して、実際に産み育てるこどもの数が少ないことが分かります。

理想のこどもの数と実際の出生数が異なる1番の理由として、経済的な理由が最も多いと回答していることが分かりました。

子供を持たない理由

画像出典:厚生労働省ウェブサイト「出産・子育てに関する意識」(最終閲覧日:2023年10月10日)

上記の結果を踏まえても、経済的な支援と就労環境の支援が少子化対策の必須項目であることがわかります。

3、こども未来戦略の概要と加速化プランについて

こども未来戦略の方針

こども未来戦略における主な施策は、以下の6点です。

  • こども誰でも通園制度
  • 伴走型相談支援
  • 産後ケア
  • 子育て世帯の家計を応援
  • 共育て支援
  • 授業料等減免

(1)こども誰でも通園制度

こども誰でも通園制度とは、親の就労に限らず全てのこどもが保育園に通えるようにする制度です。

現在の日本では、親の就労や就学、介護などの保育園に預ける必要性が認められなければ保育園やこども園への通園はできません。

しかし、こども誰でも通園制度は全ての家庭が時間単位でこどもを保育施設に預けることができる新たな制度です。

現在、0歳から2歳児の約6割が未就園であり、親がこどもと向き合い続けて疲弊してしまったり、悩みを誰にも打ち明けられなかったりするという課題があります。また、未就園によってこどもへの虐待や障害といった問題の発見が遅れてしまうということも課題となっています。

「こども誰でも通園制度」は、保育士などの専門的な知識を持った資格者からの支援により、保護者の孤立や孤育てを防ぐ狙いがあります。

こどもにとっても集団生活や遊びの経験は発育に良い影響をもたらす効果が期待されています。

参考:
NHKウェブサイト「就労問わず保育所など利用 こどもされでも通園制度とは 対象や条件 議論のポイントは」(最終閲覧日:2023年10月10日)
公明党ウェブサイト「こども誰でも通園制度 モデル事業、各地で始動」(最終閲覧日:2023年10月10日)

(2)伴走型相談支援

伴走型相談支援とは、出産や育児の見通しを一緒に立てるため、以下の3つのポイントで対面、SNS、アプリ、オンラインでの面談を行います。

  • 妊娠届出時
  • 妊娠8か月頃
  • 出産後

また、面談を受けると合計10万円相当の現金やクーポン、ギフトが居住の自治体から支給される取り組みを開始しました。

出産・子育て応援交付金

画像出典:こども家庭庁ウェブサイト「(概要)出産・子育て応援交付金」(最終閲覧日:2023年10月10日)

全ての妊婦が、安心して出産に臨めるように不安や心配を相談でき、必要な支援につなぐ伴走型の相談支援を充実させ、経済支援を実施することが目的です。

参考:こども家庭庁ウェブサイト「「伴走型支援」で妊婦や子育て家庭に寄り添います」(最終閲覧日:2023年10月10日)

(3)産後ケア

産後ケアとは、産後の女性の心身の健康を支援し、子育ての環境を整えるサービスを指します。

妊娠~出産後の女性は、誰もが不安や心配ごとを抱えやすい時期であるといえます。自分の育児方法が正しいのか不安になったり、慢性的な睡眠不足で心身のバランスを崩しやすくなったりと、家族のみならず、行政や周囲の支援を必要としている時期です。

産後ケア1

産後ケア2

画像出典:厚生労働省ウェブサイト「妊産婦に対するメンタルヘルスケアのための保健・医療の連携体制に関する調査研究」(最終閲覧日:2023年10月10日)

上記の表の通り、産後2~8週の母親の9割が自身の身体のトラブルや育児方法、睡眠不足などの問題を抱えています。

また、里帰り出産をしない選択は全体の約5割となり、母親が夫やパートナーを含む支援を十分に受けなかったと答える割合も1割から3割と少なくありません。

産後ケア3

画像出典:厚生労働省ウェブサイト「妊産婦に対するメンタルヘルスケアのための保健・医療の連携体制に関する調査研究」(最終閲覧日:2023年10月16日)

産後ケア4

画像出典:厚生労働省ウェブサイト「妊産婦に対するメンタルヘルスケアのための保健・医療の連携体制に関する調査研究」(最終閲覧日:2023年10月16日)

母親の体調管理や、出産後特有の精神的ストレスのケア、また、赤ちゃんの初期育児のサポートが必要であり、こども未来戦略では切れ目のない支援として掲げられています。

こうした産後ケアが適切に行われることで、母子ともにより良い健康状態を保ち、赤ちゃんの成長にも良い影響をもたらすと考えています。

参考:厚生労働省ウェブサイト「妊産婦に対するメンタルヘルスケアのための保健・医療の連携体制に関する調査研究」(最終閲覧日:2023年10月10日)

(4)子育て世帯の家計を応援

子育て世帯の家計を応援する戦略とは、経済的な理由で子育てが厳しく感じる家庭のバックアップを指します。

この政策の一環として子育て支援金の支給や児童扶養手当の拡充、そして高等教育による子育て世帯の貸与型奨学金の返済負担の緩和、授業料後払い制度の抜本拡充が組み込まれています。

これらの施策によって、子育て世帯の経済的負担を軽減し、安心して子育てに取り組める社会を目指します。

参考:こども家庭庁ウェブサイト「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2023年10月10日)

(5)共育て支援

現在の日本における男性の育休取得率は国際的に見ても低水準であることが分かっています。

こども未来戦略では、男性の育休取得を促進させ「男性育休」が当たり前な社会の実現に向けて官民一体となって取り組みます。

育休制度を利用する際の不安要素として、第一に思うことの1つに経済的不安が考えられます。育休中は育児休業給付金が支給されますが、給料の100%は支給されません。

そこで、現行の給付率を67%(手取りで8割相当)から手取りで10割相当への引き上げを行います。この取り組みは2025年度からの実施を目指して検討を進めています。

その他にも、個人が育休を取りやすくするために、育休中の社会保険料の免除や育児休業給付の非課税措置、育児休業を支える中小企業に対する助成措置の大幅な強化を行います。

参考:
内閣官房ウェブサイト「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2023年10月10日)
厚生労働省「育児休業給付に関連する閣議決定 等」(最終閲覧日:2023年10月10日)

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(6)授業料等減免

少子化の加速の一因として、こどもの教育費の負担が挙げられています。

貸与型奨学金では、減額返還制度の利用可能な年収を従来の325万円から400万円に引き上げます。

また、子育て時期の経済的負担に配慮し、こども2人までは年収500万円、こども3人以上の世帯では年収600万円以下まで引き上げます。

奨学金の所得連動方式を利用している人は、こども1人につき33万円の所得控除を上乗せするとしています。授業料の後払い制度では、2024年度から修士段階の学生を対象として導入します。

参考:
内閣官房ウェブサイト「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2023年10月10日)
厚生労働省「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2023年10月10日)

(7)加速化プランについて

少子化対策加速化プラン

画像出典:こども家庭庁ウェブサイト「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2023年10月10日)

こども未来戦略の少子化加速化プランについては、以下の項目を含めた実現を目指します。

  • 児童手当の所得制限撤廃と、支給期間の延長、第三子以降の倍増
  • 高等教育の授業料減免の拡大
  • 2026年から出産費用の保険適用を進める
  • 育休を取りやすい職場に変える
  • 育休制度の拡充
  • 妊娠から子育てまで切れ目のない支援

4、こども未来戦略の財源や予算について

こども未来戦略の財源や予算

こども未来戦略では、収入の増加やこども手当の拡充など大きな予算が必要となります。

ここでは、2024年1月時点で検討されている財源や予算について解説を行います。

(1)こども未来戦略の予算について

「こども未来戦略」では、加速化プランの予算規模を3.6兆円程度と見込んでおり、その内訳は以下の通りです。

  1. ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化や若い世代の所得向上に向けた取組  1.7 兆円程度
  2. 全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充  1.3 兆円程度
  3. 共働き・共育ての推進   0.6 兆円程度

参考:こども家庭庁ウェブサイト「こども未来戦略方針」(最終閲覧日:2024年1月15日)

(2)こども未来戦略の財源について

加速化プランに必要となる3.6兆円の財源について、国は、既存予算などを最大限活用することで1兆5000億円程度、医療や介護などの歳出改革で1兆1000億円程度、さらに、企業や国民から広く集める「支援金制度」を創設して1兆円程度を確保することとしています。

また、新たに設立される「支援金制度」では、2026年度から医療保険を通じて費用を徴収する仕組みが検討されています。

国は、2028年度までに安定財源を確保するとしていますが、安定財源を確保するまでの間、つなぎとして「こども・子育て支援特例公債」を発行する見込みです。

参考:こども家庭庁ウェブサイト「支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会(第2回)資料2」(最終閲覧日:2024年1月16日)

PoloPoliで公開されている子育て関連の取り組み

誰でも政策に意見を届けることができる、政策共創プラットフォーム『PoliPoli』では、こども・若者が輝く未来の実現のための政策について、以下のような政策が掲載されています。

あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|こども・若者が輝く未来の実現のために

(1)こども・若者が輝く未来の実現のためにの政策提案者

議員名 加藤 勝信
政党 衆議院議員・自由民主党
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/58jeTDCmxNRP6ROPz1Qv/profile

 

(2)こども・若者が輝く未来の実現のためにの改革をすすめ、国会改革を実現する政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • すべてのこどもたちが未来に希望を抱き、歩んでいけるよう、どのようなサポートが必要か意見をお寄せください

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • こども・若者の最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組や政策を我が国社会の真中に捉えて進めていく
  • 自民党の「こども・若者」輝く未来実現会議で具体策を検討
  • 「こども基本法案」の成立に向け各党や関係行政機関などと調整

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。

こども・若者が輝く未来の実現のために

まとめ

本記事では、こども未来戦略についてわかりやすく解説を行いました。

まだ詳細が決まっていない部分もありますが、日本の深刻な少子化問題を打破すべく、国民全員が関心を持つ必要のある政策です。

今後、こどもや若者、子育て世帯の方々全員が希望を持って生活を送れるように期待しています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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