国民の祝日とは、1948年に制定された「国民の祝日に関する法律」の中で定められている祝日のことです。
今回の記事では
- 国民の祝日の概要・種類
- 祭日との違い
について、わかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、国民の祝日とは
「国民の祝日」とは、1948年施行の「国民の祝日に関する法律(以下:祝日法)」によって規定された、日本の公的な休日を指します。
国民の祝日は、全世界で共通ではなく、国によって違ってきます。
例えば、アメリカでは、
- キング牧師誕生日
- 独立記念日
- レイバー・デー
などといった祝日を設けています。
この章では、
- 祝日の由来
- 1年間の祝日数
についてみていきましょう。
(1)祝日の由来
「国民の祝日」について、祝日法の第1条には、以下のように記載されています。
第1条
自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
引用:国民の祝日に関する法律
つまり、「国民が祝い、感謝し、記念する日」とされている国民の祝日は、そのひとつひとつに意味があるのです。
もしも国民の祝日が日曜日と重なった場合は、「振替休日」として、直近の平日が休日となります。
また、2つの祝日に挟まれた平日については、休日に変わります。
いわゆる「国民の休日」といわれるもので、不定期な休日です。
現行法では、第3条3項に基づき、国民の休日になり得るのは、
- 敬老の日
- 秋分の日
に挟まれる平日のみとなります。
(2)1年間の祝日数
日本の1年間の祝日数は、2021年時点で16日です。
休日は基本変わりませんが、以下の場合に変動が起こります。
- 日曜日に祝日が重なった場合⇨周辺にある平日が振替休日になる
- 土曜日に祝日が重なった場合⇨振替休日はないため、休日日数が1日少なくなる
また、日付固定の祝日のほかに、ハッピーマンデー制度による祝日の変動があります。
ハッピーマンデー制度とは、月曜日を国民の祝日にすることで、土曜日からの3連休を過ごして貰おうという考えのもと、2000年から導入されたものです。
ハッピーマンデー制度の実施によって、
- 成人の日
- 海の日
- 敬老の日
- スポーツの日
が月曜日に移動し、カレンダー上では3連休となりました。
ただし、2021年はオリンピックが開催されるため、国民の祝日が少し変則的となっています(令和二年度の時点における首相官邸からの情報に基づく)。
具体的には、
- 海の日は7月22日(オリンピック開会式前日)
- スポーツの日は7月23日(オリンピック開会式当日)
- 山の日は8月11日(オリンピック閉会式当日)
に移動しているので、注意しましょう。
画像出典:2021年の祝日移動について|首相官邸
2、国民の祝日の一覧
国民の祝日は、1年のうち16個あります。
この章では、すべての国民の祝日の種類とその趣旨について、解説していきます。
(1)元日
元日は、1月1日にある祝日です。
趣旨は「年のはじめを祝う」というものです。
明治から昭和初期にかけては「四方節」と呼ばれました。
天皇陛下が、1年間の豊作と無病息災を祈る「四方拝」という儀式を行う、祭日だったのです。
その後、祝日法に基づいて現在では祝日となりました。
(2)成人の日
成人の日は、1999年までは1月15日に制定されていたものの、ハッピーマンデー制度の導入によって日付が移動しました。
現在では、1月の第2月曜日となっています。
趣旨は、「大人となったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝いはげます」というものです。
「元服」と呼ばれる儀式をもとに、定められた記念日になります。
(3)建国記念の日
建国記念の日は、2月11日にある祝日です。
かつては「紀元節」と呼ばれていましたが、1948年にGHQによって廃止されました。
その後、国民からの要望によって、1967年に「建国記念の日」として復活したのです。
「建国をしのび、国を愛する心を養う」という趣旨のもと定められた祝日ですが、実際の日本の建国日は、はっきりとわかっていません。
日本の建国について記した、古事記や日本書紀では、日本の初代天皇である神武天皇が即位した日が、2月11日とされているため、この日を建国記念の日としたのです。
なお、2021年時点で日本の天皇家は、1度も滅びることなく続いています。
世界一長く王朝が続いている国として、世界から評価されているようです。
(4)天皇誕生日
天皇誕生日は、原則として今上天皇(在位中の日本の天皇)の誕生日になります。
趣旨は「天皇の誕生日を祝う」というものであり、令和時代では、2月23日が当てはまります。
(5)春分の日
春分の日は、国立天文台のデータに基づいて、日付が決定される祝日です。
たいていは、3月20日もしくは21日のいずれかが当てはまる場合が多いです。
趣旨は「自然をたたえ、生物を慈しむ」というものです。
もともとは天皇が歴代の、
- 天皇
- 皇后
- 皇神
などの霊への感謝と祈りをささげる「春季皇霊祭」という祭日でした。
この祭日が、祝日法に基づいて「春分の日」と命名されたのです。
(6)昭和の日
昭和の日は4月29日にある祝日で、もともとは昭和天皇の誕生日です。
趣旨は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和時代を顧み、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いを致す」というものです。
この祝日は、昭和天皇が崩御された後、本来ならば祝日ではなくなる予定でした。
しかし、すでにゴールデンウィークとして、国民に慣れ親しんだ大型連休のうちの1日であったこともあり、1989年から2006年までの間は「みどりの日」と改名されました。
その後、「みどりの日」が5月4日に移ったことで、2007年からは再び、4月29日を「昭和の日」として定めたのです。
(7)憲法記念日
憲法記念日は、5月3日にある祝日です。
趣旨は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」というものです。
憲法記念日では、憲法にまつわる討論会やイベント、世論調査などが行われることがあります。
(8)みどりの日
みどりの日は、5月4日にある祝日です。
趣旨は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」というものです。
1989年から2006年の間は、4月29日が「みどりの日」でしたが、2007年から「昭和の日」に変更されました。
法律の改正を経て、もともと「国民の休日」扱いを受けていた、5月4日を「みどりの日」として制定しました。
- 4月29日が「昭和の日」になったこと
- 昭和天皇が植物と自然をとても愛していたこと
から、この名がついたようです。
(9)こどもの日
こどもの日は、5月5日にある祝日です。
趣旨は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福を図るとともに母に感謝する」というものです。
男の子との成長を祝う、いわゆる端午の節句が由来の祝日です。
(10)海の日
1995年制定当時、海の日は7月20日でした。
しかし、ハッピーマンデー制度の導入によって、現在では7月の第3月曜日となっています。
趣旨は「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」というものです。
古くから海の恵みを多く受けて発展してきた、島国日本ならではの祝日といえるでしょう。
明治天皇が東北地方巡幸のときに、青森から横浜に無事帰着された日が、7月20日であったこと、に由来しているといわれています。
(11)山の日
山の日は、8月11日にある祝日です。
趣旨は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」というものです。
他の祝日と違って、とくにこれといった出来事もなく制定された珍しい祝日です。
(12)敬老の日
敬老の日は、もともとは9月15日でした。
しかし、ハッピーマンデー制度の導入によって現在では9月の第3月曜日となっています。
趣旨は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」というものです。
制定理由には、
- 兵庫県のある村が9月15日に「敬老会」を開いたから
- 聖徳太子が老人などのために養護施設を建てた日であるから
など諸説あるようです。
(13)秋分の日
秋分の日は、春分の日と同じく国立天文台のデータに基づいて決定されます。
おおよそ、9月23日もしくは9月22日のいずれかが当てはまります。
趣旨は「祖先を敬い、亡くなった人々をしのぶ」というもので、お彼岸を強く意識しています。
もともとは「秋季皇霊祭」の祭日であり、「祝日法」に基づいて祝日となりました。
(14)スポーツの日(旧:体育の日)
スポーツの日はもともと、1964年の東京オリンピックの開会式である、10月10日に由来した「体育の日」とされていました。
しかし、ハッピーマンデー制度の導入によって日付が移行しました。
現在では、10月第2月曜日となっています。
趣旨は「スポーツに親しみ、健康で活力ある心身を培う」というものです。
祝日法の一部を改正する法律が2018年に公布され、2020年以降「体育の日」から「スポーツの日」と名前が変更されました。
(15)文化の日
文化の日は、11月3日にある祝日です。
趣旨は「自由と平和を愛し、文化をすすめる」というものです。
日本国憲法が公布された日であり、戦前は「明治節」という名の明治天皇の誕生日でもあります。
平和と文化を重視する国家の建設を目指すということから、「文化の日」と名前を変えて祝日と制定されたといわれています。
(16)勤労感謝の日
勤労感謝の日は、11月23日にある祝日です。
趣旨は「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」というものです。
もともとは天皇がその年の収穫に感謝をする「新嘗祭」という祭日でした。
その後、祝日法に基づき、「勤労感謝の日」と制定されました。
3、祭日との違い
国民の祝日と似たものとして、「祭日」という言葉があります。
「祭日」とは、皇室を中心とした祭典や神道のお祭りなど、宗教儀礼的に重要な行事を執り行う日のことです。
天皇を中心とした祭儀を行う日を「祭日」と呼び、「国民の祝日に関する法律」によって定められているものが「祝日」です。
祭日の例には、
- 新嘗祭
- 春季皇霊祭
- 先帝祭
などがあります。
戦前では、「皇室祭祀令」によって定められ、「年中祭日祝日の休暇日を定む」として、祭日も休日の対象でした。
しかし、第二次世界大戦の敗戦後、GHQの方針によって、祭日の休日扱いが禁じられたのです。
現在では、名目上カレンダーからは「祭日」という言葉はなくなりましたが、
- 秋分の日
- 勤労感謝の日
と名前を変えて、一部の祭日が祝日として残されています。
まとめ
今回は、国民の祝日について解説しました。
国民の祝日は、さまざまな歴史のルーツをもって制定されています。
先人たちの心に思いをはせて、あらためて祝日の意義に注目してみるのはいかがでしょうか。