黄砂とは、偏西風によって中国やモンゴルの砂漠の砂が、日本にまで飛んでくる現象を指します。
中国では年々砂漠化が進行しており、それに伴う黄砂の被害も年々深刻化しています。
今回の記事では、以下についてわかりやすく解説していきます。
- 黄砂とは
- 日本における黄砂の現状
- 黄砂による具体的な被害
- 黄砂に対する国の取り組み
本記事がお役に立てば幸いです。
1、黄砂とは
黄砂とは、中国やモンゴルに位置する以下の土壌の小さな鉱物が、偏西風によって舞い上がり、東アジアまで飛んでくる現象です。
- タクラマカン砂漠
- ゴビ砂漠
- 黄土高原
画像出典:黄砂ってなに?|環境省
黄砂は、
- 農業
- 生活環境
- 人体
に被害を与えるばかりではありません。
黄砂を核とした雲や雨などによって、地球全体の気候に影響を及ぼしています。
こうした悪影響から、黄砂はサハラ砂漠のエアロゾルと合わせて「世界の2大鉱物性ダスト」と呼ばれています。
参考:黄砂ってなに?|環境省
(1)黄砂の原因
黄砂被害が拡大する原因には、過放牧や森林伐採などの「人間の活動」が、関連していると言われています。
黄砂は主に乾燥地帯で発生します。
乾燥地帯では、冬に土壌がむき出しになり、春になるにつれて低気圧が発達し、強風が発生します。
この強風により巻き上げられた砂塵が、日本を含む東アジア一帯に飛来するのです。
そして近年、中国による都市開発などの影響で、黄砂の発生地域が拡大していると言われています。
例えば、開発に伴う森林伐採によって、多くの土壌が剥き出しになります。
剥き出しになった土壌は劣化し、砂漠化につながるのです。
また、人口増加に伴う食料需要を満たすため、十分に回復していない土壌が使われます。
こうした不完全な土壌を酷使することで、荒れ地となっているケースもあるようです。
(2)黄砂の成分
黄砂の主な成分は、石英や長石、雲母などの鉱物粒子です。
これらの鉱物にアレルギー物質はありません。
しかし中には針状や繊維状の鉱物があり、吸い込むことで人体に悪影響が出る場合があります。
また飛来する途中で、PM2.5やカビ類が付着します。
こうした汚れのついた黄砂を吸い込むことで、アレルギーを発生させることもあるようです。
上記の理由により、中国の工業都市から出る大気汚染物質が非常に問題となっています。
2、日本における黄砂の現状
黄砂は年間約1億トンにも上ります。
そのうち数百万トンが、日本の上空に飛んでくると予想されています。
黄砂が問題になり始めたのは、日本への飛来回数が急増した2000年頃のことです。
黄砂はほぼ年間を通して日本列島に飛来していますが、2月頃から増加し、3〜5月にピークを迎えます。
画像出典:黄砂観測日数の経年変化|環境省
環境省のまとめた黄砂飛来状況によると、黄砂の飛来量は、
- 東日本より西日本
- 太平洋側より日本海側
の方が多いようです。
特に九州では空が黄色く染まり、洗濯物や自動車に大量の汚れが付着しました。
極端に見通しが悪化したため、飛行機が欠航する事態にもなりました。
画像出典:黄砂観測日数の経年変化|環境省
2021年3月には、高濃度の黄砂が日本に飛散し、国境を越えた深刻な問題となっています。
参考:知ってる?意外な豆知識|環境再生保全機構
参考:過去の黄砂飛来状況|環境省
参考:黄砂とその健康影響について|環境省
3、黄砂による具体的な被害
黄砂による具体的な被害である
- 生活への影響
- 健康への影響
についてみていきましょう。
参考:PM2.5成分および黄砂が循環器・呼吸器疾患に及ぼす短期曝露影響に関する研究
参考:黄砂とその健康影響について|環境省
(1)生活への影響
黄砂は一過性の砂ぼこりではなく、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。
実際に以下のような被害が、モンゴルや中国で報告されています。
- 精密機械工場への影響
- 航空機の運航影響
- 家畜の死亡
- 畑やビニールハウスへの被害
- 道路や建物埋没
- 送電線への被害
また黄砂の社会的影響は、砂漠化が進んだ地域だけでなく、周辺地域も巻き込んだ広範囲に渡ります。
日本でも、視界不良による交通障害や、洗濯物への付着などの被害が出ています。
(2)健康への影響
黄砂は、人体に対しても大きな影響を及ぼします。
黄砂はスギ花粉より小さいため、吸い込んでしまうと肺胞まで到達する恐れがあるのです。
環境省が2018年3月に発行した「黄砂とその健康影響について」では
- アレルギー疾患
- 呼吸器疾患
- 循環器疾患
といった健康への被害が懸念されています。
①アレルギー疾患
黄砂は、アレルギーの発症リスクを高めます。
具体的には
- 目のかゆみ
- 結膜炎
- 鼻水
- くしゃみ
といった症状を引き起こします。
②呼吸器疾患
黄砂は、呼吸器疾患の発症リスクを高めます。
黄砂の粒子に付着する
- 大気汚染物質
- 細菌
- 真菌
などが、原因の1つです。
③循環器疾患
黄砂は、循環器疾患の発症リスクを高めます。
黄砂が肺を通り抜けて、血管に入る可能性があるためです。
特に高齢者への影響が大きく、
- 高血圧
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 喫煙者
であるほど、循環器疾患へのリスクが高まると言われています。
4、黄砂に対する国の取り組み
ここからは黄砂に対する、政府の取り組みについて詳しくみていきましょう。
日本では、以下のようなプロジェクトを通して、黄砂への取り組みを進めています。
- ライダーモニタリングシステムの構築
- ADB-GEF黄砂対策プロジェクト
- 黄砂情報提供ホームページ
(1)ライダーモニタリングシステムの構築
環境省では、リアルタイムで黄砂を観測する「ライダー」の設置を進めています。
ライダー(LIDAR:Light Detection And Ranging)とは、浮遊する粒子状物質に反射するレーザー光線を捉え、上空の黄砂をリアルタイムで計測する機械です。
規模や頻度が拡大している黄砂に対し、より詳細な黄砂現象を解明するため、設置されました。
環境省がライダーを設置しているのは、
- 富山県
- 島根県
- 長崎県
- 新潟県
- 東京都
の5基です。
これに加え、国立環境研究所などの研究機関が、
- 札幌市
- 仙台市
- つくば市
- 千葉市
- 東大阪市
- 長崎県福江島
- 沖縄県辺戸岬
の7ヶ所にライダーを設置しました。
官民一体となり、黄砂観測用のライダーモニタリングシステムの整備を進めています。
(2)ADB-GEF黄砂対策プロジェクト
国境を越える環境問題である黄砂について調査や対策を行うには、関連する国・地域との協力が欠かせません。
そこで、2003年1月、
- 国連環境計画(UNEP)
- 国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)
- 国連砂漠化対処条約事務局(UNCCD)
- アジア開発銀行(ADB)
の4つの国際機関と
- 日本
- 韓国
- 中国
- モンゴル
の4ヶ国合同でADB-GEF黄砂対策プロジェクトが開始されました。
画像出典:黄砂対策への環境省の取組|環境省
ADB-GEF黄砂対策プロジェクトは、ADBおよび地球環境ファシリティー(GEF)の資金を活用し、
- 地域協力のフレームワーク作り
- 黄砂被害緩和へのマスタープラン作り
を目的としたプロジェクトです。
2005年には、北東アジアの「黄砂被害緩和における地域協力活動プラン」を報告書として作成しました。
このプランに従い、日本・韓国・中国・モンゴルの4ヶ国が協力して、黄砂への取り組みを行っています。
(3)黄砂情報提供ホームページ
環境省と気象庁は、黄砂情報をまとめた共同のHPを開設しています。
具体的には
- 黄砂分布の解析
- 気象衛星による観測情報
- 目視による黄砂観測情報
- ライダーによるリアルタイムの黄砂観測情報
- 地図から見る浮遊粉じんの観測情報
- 黄砂予測情報
- 黄砂に関する気象情報
が主に公開されています。
黄砂について、更に詳しく知りたい方は以下のURLをチェックしてみてください。
参考:黄砂情報提供ホームページ
PoliPoliで公開されている環境関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策について、以下のように公開されています。
あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。
PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!
(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者
議員名 | 田嶋 要 |
政党 | 衆議院議員・立憲民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies |
(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- 分散型エネルギー社会を実現するための基本法をはじめとした環境整備を行い、エネルギーの地産地消や原発依存からの脱却、エネルギー転換の過程で起こる雇用の公正な移行を実現します!
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
今回は黄砂について解説しました。
黄砂は自然現象の1つですが、人間の開発に伴う伐採などで、被害が拡大しているようです。
日本においても黄砂による悪影響に悩まされる人が、今後増えていくかもしれません。
中国では黄砂だけでなく、大気汚染のレベルも急上昇しており、国際的な取り組みが強く求められています。