「控除」とは、「一定の金額を差し引く」ことができる制度を指します。
控除にはいくつかの種類があり、税制上の控除を活用すると支払う税金額が減る場合があります。しかし、状況によって利用できる控除の種類は変わるので注意が必要です。
また、会社員・個人事業主など、働き方によって年末調整・確定申告などの控除の申請方法も異なってきます。
そこで今回は以下について詳しく解説します。
- 控除とは
- 控除の種類
- 控除の対象者・申請について
- 控除の注意点
本記事がお役に立てば幸いです。
1、控除とは?
「控除」とは、「一定の金額を差し引く」ことを指す言葉です。
今回は税金に関する控除制度について解説します。
税金に関する控除制度では、主に所得額から一定額を差し引くことにより、支払う税金の金額を減らすことが可能です。
そもそも税金は、収入額そのものに対して課されるわけではありません。
納税者の経済事情を反映して、税額が決定されるようになっています。
そのための制度のひとつが控除なのです。
*所得とは:収入から必要経費などを差し引いたもの
2、控除の種類
納税額を減らすことができる「控除」には、大きく分けて次の2つのものがあります。
いずれも所定の手順で控除すると、支払う税額を減らすことが可能です。
- 所得控除
- 税額控除
大きな違いは「所得金額」を差し引くことで税額を減らすか、直接的に税額そのものを減らすかという点です。
それぞれの控除の特徴や種類について確認していきましょう。
(1)所得控除
「所得控除」は、所得額から一定の金額を差し引くことによって、納税額を減らすことができる制度です。
控除の中で最も基本的なものであり、生活のためにかかる費用の一部を所得額から差し引くことができます。
所得控除には全部で14種類のものがあります。
それぞれの控除について、簡単な説明を交えて確認していきましょう。
- 雑損控除:火災や盗難などによって「生活に必要な財産」を失ったときに、一定の範囲内で損失金額を控除できる
- 医療費控除:年間10万円以上の医療費が掛かった場合に、生計を共にする家族の分も合わせて控除できる
- 寄附金控除:特定の個人や団体に利益が及ばない、国や公益法人などに指定の寄付金を支払った場合に一定の範囲内で控除できる
- 社会保険料控除:「国民健康保険料」「国民年金保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「後期高齢者保険料」など、生計を共にする家族の分も合わせて控除できる
- 小規模企業共済等掛金控除:「小規模企業共済掛金」や「確定拠出年金」などに加入している人が、拠出した掛け金を控除できる
- 生命保険料控除:「生命保険」「個人年金」「介護医療」の保険料を支払っている人が、年間12万円まで控除できる
- 地震保険料控除:地震保険など損害保険に加入している人が、年間5万円まで控除できる
- ひとり親控除・寡婦(寡夫)控除:夫と死別した女性や妻と死別した男性が、一定の条件を満たすことで特定の金額を控除できる
- 障害者控除:自身や配偶者および扶養家族に障害者がいる場合、一定額を控除できる
- 勤労学生控除:納税者自身が学生で所得額が75万円以下の場合、27万円を控除できる
- 配偶者控除:納税者本人の所得が1000万円以下で、配偶者の所得が48万円以下の場合に38万円を控除できる
- 配偶者特別控除:納税者本人の所得が1000万円以下で、配偶者の所得が49万円~133万円の場合、一定額を控除できる
- 扶養控除:所得が48万円以下の扶養家族がいる場合、38万円~63万円を控除できる
- 基礎控除:所得が2500万円以下の人が、無条件で48万円を控除できる
上記のように、所得控除にはさまざまな種類があります。
複雑な条件が定められている場合もあるので、利用したい控除がある場合は以下の国税庁サイトにて確認しておきましょう。
参考:国税庁
(2)税額控除
「税額控除」は、「所得税額から控除額を直接差し引くことができる」制度です。
先ほどの所得控除は所得額を減らすことにより、いわば間接的に税額を下げるものでした。
税額控除は所得税額が直接的に減るので、より大きな節税効果を得ることができる可能性があります。
下記5つの税額控除について、概要を確認しておきましょう。
- 住宅ローン控除:自宅を新築や購入、もしくは増改築をして、住宅ローンを組んだ人が一定額を控除できる
- 配当控除:法人から受ける配当所得のある人が、配当所得の10%など一定額を控除できる
- 外国税額控除:海外で税金を納めている人が、二重課税を防止するために外国所得税額を控除できる
- 源泉徴収税額:企業が個人の収入から天引きしている「源泉徴収税額」を控除できる
- 災害減免額:自然災害や火災などにより、住宅や家財道具などに損害を受けた人が一定額を控除できる
上記のように、税額控除の種類も多いため分かりづらいかもしれません。
特に、控除額については総所得額などで細かく変わることがあるため、税額控除を利用する場合は事前に国税庁のサイトにて詳細を確認しておきましょう。
参考:国税庁
3、控除の対象者・申請について
そもそも「控除」はどのような人が受けることができるのでしょうか。
基本的には「所得」があって条件に当てはまる人であれば、誰でも控除の制度を活用することが可能です。
ただし、次の2つの場合に応じて、控除を受けるための方法が異なります。
- 会社員
- 個人事業主
両者の大きな違いは「確定申告」つまり所得申告の必要性の有無という点です。
会社員は一定の場合を除いて確定申告は不要ですが、個人事業主の場合は必ず確定申告をしなければなりません。
その点について重要なポイントを確認しておきましょう。
(1)会社員
会社員およびサラリーマンの場合は、企業側が納税手続きや年末調整を行うため、基本的には確定申告をする必要はありません。
ただし、「医療費控除」「雑損控除」「寄附金控除」の3つを受ける場合と、「住宅ローン控除」の初年度は確定申告が必要です。
確定申告には面倒なイメージがありますが、会社員の場合はすでに基本的な納税手続きは済んでいます。
企業から受け取った源泉徴収票を利用して、必要な控除額を記入すれば比較的簡単に手続きが可能です。
(2)個人事業主
個人事業主の場合は、毎年必ず確定申告をすることが必要です。
また、控除を申請する際は別途書類が必要な場合もあるため、こちらも同様に国税庁サイトにて詳細を確認しておきましょう。
参考:国税庁
確定申告について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
確定申告とは?対象者・青色、白色申告の違い・申請方法を簡単解説
4、控除の注意点
控除を利用することで、税金の納税額を軽減することができますが、以下に注意しておきましょう。
(1)控除となる条件を確認すること
申請前に、控除の条件をよく確認しておくことが大切です。
控除には様々な条件があり、それらをクリアしなければなりません。条件を確認せずに申告すると、後に申告漏れや不正申告につながる可能性があります。
(2)申請期限と申請書類を確認すること
控除の申請期限と申請書類は再度確認しておくと良いでしょう。
控除の申請方法・期限は、種類によって異なります。また、申請書類の不備や不足がある場合は、控除が受けられないこともあるため、早めに手続きを進めるようにしましょう。
まとめ
控除を上手く活用すれば、納税額を減らすことができます。
控除の種類はとても多く、適用するためには一定の条件を満たさないといけません。
控除を上手に利用して、節税に繋げてみましょう。