政治ドットコム環境・社会災害・復興国土強靭化とは?防災・減災を目指す取り組みを簡単解説

国土強靭化とは?防災・減災を目指す取り組みを簡単解説

投稿日2021.5.4
最終更新日2021.05.04
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

国土強靭化とは、どのような災害が発生しても、被害を最小限に抑えて迅速に復旧・復興できる国全体での体制作りを指します。 

ナショナル・レジリエンスとも呼ばれ、災害に負けない、強くしなやかな国づくりを目的としています。

今回の記事では、国土強靭化について、

  • 国土強靭化の概要、背景
  • 国土強靭化のための具体的な取り組み
  • 国土強靱化のための5か年加速化対策

などをご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、国土強靭化(ナショナルレジリエンス)とは

国土強靭化
国土強靭化(ナショナルレジリエンス)とは、災害時の被害を最小限に抑え、迅速に復旧できるような、強くしなやかな国づくりを目指す取り組みです。
 

具体的には、災害の発生時に、以下4項目を達成することを目指しています。

  •   人命を保護すること
  •   被害を最小化すること
  •   経済社会を維持すること
  •   迅速な復旧復興を実現すること

国民の命や財産を守り、地域や国単位での迅速な立て直しを進める政策になります。

参考:内閣官房国土強靭化

2、なぜ国土強靭化が必要なのか|背景事情について

日本の防災対策の原点は、1961年に制定された「災害対策基本法」です。
災害対策基本法制定のきっかけは、1959年の伊勢湾台風と言われています。

死者・行方不明者数が5098名にも及ぶ大きな災害でした。
その後、1995年の阪神・淡路大震災の発生により、日本の災害への意識が大きく高まり、

  • 住宅・建築物の耐震化
  • 木造住宅が密集している市街地の対策強化
  • インフラの耐震性強化

のような施策が、国全体で進められました。

しかし、2011年に発生した東日本大震災による大きな被害によって、これまでのインフラ整備中心の「防護」だけでは不十分である、と政府は考えるようになったのです。

そうした考えから、「災害が起きても、社会への被害が致命的なものにならず、迅速に回復する」ことができる、強さとしなやかさを備えた社会システムの構築を目指す、「国土強靭化」が生まれました。

参考:内閣官房国土強靭化とは

3、国土強靭化への具体的な取り組み

国土強靭化
国土強靭化のための具体的な取り組みである

  • ソフト施策
  • ハード施策

 について以下の通りご紹介します。

(1)ソフト施策

ソフト施策とは、避難訓練などといった、意識レベルでの災害防止・軽減への取り組みです。

主なソフト施策である、

  • ハザードマップの作成と活用
  • 避難訓練
  • 防災教育

についてご紹介します。

①ハザードマップの作成と活用

ハザードマップとは、水害や土砂災害などの自然被害を想定することで、その被害範囲を予測し、地図化したものです。

具体的なハザードマップとしては、

  • 洪水ハザードマップ
  • 土砂災害ハザードマップ
  • 火山ハザードマップ

などがあります。

一般的に、ハザードマップには以下のような情報が載っています。

  • 避難経路
  • 避難場所
  • 防災関係施設の位置

 ハザードマップは、地域環境の変化に合わせ、定期的な見直しが行われています。

また、災害の種類を問わず横断的に作成される「防災マップ」もあります。
行政と民間が協力して、防災マップ作りを進めている自治体もあるようです。

②避難訓練

大きな災害が起きた場合は、考えずとも即座に避難する必要があります。

そのためには、事前の訓練が非常に大事です。

学校や職場で義務付けられている訓練はもちろん、地域主体の避難訓練など、様々な場所で避難訓練が実施されています。

 ③防災教育

防災教育として身近なものは、学校で定期的に行われる防災教室などでしょう。
また、地域と連携して日頃から協力関係を築くことも、重要なことと言えるかもしれません。

具体的には、

  • 地域住民と協力し、防災マップを作る
  • 合同の避難訓練に参加する

などの活動が挙げられます。

(2)ハード施策

ハード施策とは、防波堤の設置などといった、土木レベルでの災害対策・軽減の取り組みです。

主なハード施策である

  • 河川や海岸における堤防整備
  • 海岸防災林の整備
  • 避難施設及び避難経路の整備
  • 住宅や建築物、公共施設の耐震化

についてご紹介します。

①河川や海岸の堤防を整備する

東日本大震災では、想定を超える非常に大きな津波により、堤防はその役割を果たしきれませんでした。

そのため、堤防の高さや強度については、定期的に見直され、整備が進められています。

②海岸防災林の整備

海岸防災林には、

  • 潮害
  • 飛砂
  • 風害

などから地域を守る、防災機能があります。
海岸に近い居住地などに、海外防災林を積極的に設置することで、自然にも優しい災害対策ができます。

③避難施設及び避難経路の整備

東日本大震災などの大災害では、多くの帰宅困難者が発生します。
こうした帰宅難民者の発生に対処すべく、官民一体となった

  • 避難施設の増加
  • 1つの施設辺りの受け入れ可能人数の増加

などが進められました。

避難経路の整備について、補助金などにサポートしている自治体もあります。

参考:緊急避難路の整備費用を助成いたします!|足立区

④住宅や建築物、公共施設の耐震化

住宅を選ぶ際に、耐震について気にする方も増え、

  • 住居用の建物
  •  学校
  • 図書館

といった、誰もが利用する施設についての耐震化が進められています。

観光名所においても、耐震能力を高めるべく

  • 定期的な見直し
  • 整備のための休館対応

などをしている場合があります。 

耐震化といっても、建て替えなどの大掛かりなものから、家具の固定まで、できることは多岐に渡ります。
政府レベルだけではなく、個人や民間企業における、個々の努力が必要な部分と言えるかもしれません。

参考:内閣官房国土強靭化とは

4、起きてはならないとされている最悪の事態について 

政府は、効率的に国土強靭化を行う上で、特定分野への重点的対策をすべく「回避すべき起きてはならない最悪の事態のうち重点化すべき15のプログラム」を選定しました。 

具体的には、以下の内容についての重点的な取り組みがまとめられています。

  •  大都市での建物・交通施設等の複合的・大規模倒壊や、住宅密集地における火災による死傷者の発生

  •   広域にわたる大規模津波等による多数の死者の発生

  •   大規模な火山噴火・土砂災害(深層崩壊)等による多数の死傷者の発生のみならず、後年度にわたり国土の脆弱性が高まる事態

  •   異常気象等による広域かつ長期的な市街地等の浸水

  •   情報伝達の不備等による避難行動の遅れ等で多数の死傷者の発生

  •   被災地での食料・飲料水等、生命に関わる物資供給の長期停止

  •   自衛隊、警察、消防、海保等の被災等による救助・救急活動等の絶対的不足

  •   首都圏での中央官庁機能の機能不全

  •   電力供給停止等による情報通信の麻痺(まひ)・長期停止

  •   サプライチェーンの寸断等による企業の生産力低下による国際競争力の低下

  •   社会経済活動、サプライチェーンの維持に必要なエネルギー供給の停止

  •   太平洋ベルト地帯の幹線が分断する等、基幹的陸上海上交通ネットワークの機能停止

  •   食料等の安定供給の停滞

  •   電力供給ネットワーク(発変電所、送配電設備)や石油・LPガスサプライチェーンの機能の停止

  •   農地・森林等の荒廃による被害の拡大

引用:内閣官房国土強靭化とは

5、今後発生が予想されている大きな災害

ニュースでも話題になることがありますが、発生が予想されている大きな災害がいくつかあります。 

ここでは、政府レベルでの対策が進められている

  • 南海トラフ巨大地震
  • 首都直下地震

についてご紹介します。

(1)南海トラフ巨大地震

南海トラフ巨大地震とは、南海トラフ(四国の南の海底にある水深4,000m級の深い溝)を中心とした、予想されている巨大地震です。

被害想定は、以下のように言われています。 

  • 静岡県から宮崎県にかけての一部地域では震度7
  • 隣接する周辺の広い地域では、震度6強から6弱の強い揺れ
  • 関東地方から九州地方にかけて、太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波
  • 死者32万人超、経済被害220兆円超の被害

参考:気象庁|南海トラフ地震について
参考:南海トラフ巨大地震 被害想定 死者32万人超|日本列島 どこで何が起きるのか|災害列島 命を守る情報サイト|NHK NEWS WEB

(2)首都直下地震

首都直下地震とは、都心南部の直下において、マグニチュード7程度が予想されている大地震です。

 被害想定は、以下の通りです。 

  • 東京の江戸川区と江東区では震度7
  • 東京、千葉、埼玉、神奈川の4つの都県では、震度6強の激しい揺れ
  • 全壊または焼失する建物は61万棟、そのうち火災で焼失するのはおよそ41万2000棟(冬の夕方、風が強い最悪の場合)
  • 死者2万3000人、経済被害95兆円の被害

参考:首都直下地震 被害想定 死者約2万3000人|日本列島 どこで何が起きるのか|災害列島 命を守る情報サイト|NHK NEWS WEB 

6、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策

防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策とは、2020年に閣議決定された、以下3分野における、加速化・深化が図られた対策です。

  • 激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策
  • 予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速
  • 国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進

2025年度までの5か年の間で、追加で必要となる事業規模などを定め、重点的・集中的な対策を講ずることが決定しました。

参考:報道発表資料:「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定

まとめ

今回は国土強靭化について詳しくご紹介しました。

国土強靭化の概要に加えて、その具体的な取り組み、などについてもおわかりいただけたのではないでしょうか。

ご紹介した、政府や地方自治体が行う災害対策について理解を深めつつ、個人レベルでも防災意識を高めることが、国土強靭化では重要になってきます。