財政投融資とは、財投債の発行などによって調達した資金を利用し、国が投資や融資を行うことです。
今回の記事では、財政投融資について、以下のとおりご紹介します。
- 財政投融資とは
- 財政投融資の目的
- 財政投融資の具体的な3つの効果・メリット
- 財政投融資が貢献している分野
- 財政投融資における3つの具体的手法
- 財政投融資改革と「第二の予算」とは
本記事がお役に立てば幸いです。
1、財政投融資とは
財政投融資とは、税金ではなく、国債の一種である「財投債」などにより調達した資金を利用し、国が行う投融資活動を指します。
政策上必要なのに民間での対応が難しい大規模・超長期のプロジェクトなどを実施するために利用されます。
投融資の対象機関としては、
- 政策金融機関
- 日本学生支援機構などの独立行政法人
- 地方公共団体
などがあります。
参考:財務省
2、財政投融資の目的
日本は、市場を通じて自由に財(≒商品)やサービスの取引が行われる「市場経済」ですが、市場メカニズムに経済を委ねすぎてしまうと、
- 社会全体として必要な財・サービスの供給不足
- 経済的に著しい不平等
といった事態が生じます。
このような問題を解決するため、国による経済への介入が行われるのです。
このとき、利用される財源は以下2つになります。
- 無償資金:主に租税を財源とする資金、補助金の予算措置といった返済義務を課さない
- 有償資金:融資や投資による資金、元本の償還、利子や配当など将来のリターンが前提となる
財政投融資は、上記の「有償資金」にあたる財政政策なのです。
特に民間の金融機関では対応が困難な分野において、財政投融資は効果を発揮する傾向にあります。
3、財政投融資の具体的な3つの効果・メリット
ここでは財政投融資の主なメリットである
- 資源配分の調整
- 経済の安定化
- 所得の再配分
の3つについて、確認していきましょう。
(1)資源配分の調整
市場メカニズムに、経済を完全に委ねてしまうと、「社会全体として必要な財・サービスが供給されない」可能性が出てきます。
そうした事態を回避するため、財政投融資を利用し、国が必要な財・サービスを供給するのです。
この国による供給が「資源配分の調整」になります。
資源配分の調整の一例として挙げられるのは、中小企業に対する資金貸付です。
中小企業は、大企業に比べて信用力が弱い傾向にあり、民間の金融機関だけでは、必要な資金が集まらない場合もあります。
そこで財政投融資によって、中小企業の資金調達をサポートし、日本経済全体がプラスとなるような調整を図るのです。
(2)経済の安定化
世界の経済情勢の変化は、日本経済に大きな影響を与えることがあります。
そした経済情勢の変化に応じて、財政投融資は
- 景気が悪化したときは回復を助ける
- 景気が過熱したときはブレーキをかける
といった経済の安定化の役割を果たすことができます。
経済の安定化の例として挙げられるのは、2008年の経済金融情勢悪化への対応です。
政府は3度にわたる財政投融資計画を追加することで、経済情勢の安定化を図りました。
また、続く2009年も、引き続き厳しい状況にあったため、当初計画比14.4%増の財政投融資計画の規模拡大が行われました。
(3)所得の再分配
所得の再分配とは、社会保障制度などを通じて、高所得者から低所得者に対して所得を分配することです。
この所得の再分配を行うため、財政投融資が利用されることがあります。
参考:財務省 財政投融資
4、財政投融資が貢献している分野
財政投融資が、以下6分野にどのように貢献しているのか、についてご紹介します。
- 教育・福祉・医療
- 中小企業・農林水産業
- 社会資本(インフラ)
- 産業・研究開発
- 地方公共団体
- 国際金融・ODA(政府開発援助)
(1)教育・福祉・医療
教育分野における、財政投融資の活用で、一般の方が最もイメージしやすいものは「奨学金」です。
学生などに対する、有利子の奨学金の貸与事業については、財政投融資が活用されることがあります。
この利用は、人材育成・教育の機会均等を保証するためです。
また、福祉・医療分野においては、少子高齢社会への対応や医療体制の強化のため、
- 少子高齢社会児童福祉施設
- 老人福祉施設及び病院・診療所
などの整備費用に、 財政投融資が活用されています。
(2)中小企業・農林水産業
中小企業は、大企業に比べて信用力が弱い傾向にあるため、民間の金融機関だけでは必要な資金調達ができない場合があります。
そこで政府は、日本政策金融公庫などを通じて、「低利・長期」という有利な条件で、資金の供給を図ろうとしているのです。
また、農林水産業の分野は、予測できない自然災害によって大きな影響を受けることがあります。
そのため全体としてリスクが高く、生産サイクルも長いといった特徴があるため、農林水産業でも中小企業と同様に、政府による資金調達支援を行っているのです。
(3)社会資本(インフラ)
社会資本(インフラ)と呼ばれる、
- 空港
- 高速道路
- 都市再開発
などに関わる大規模プロジェクトは、その規模の大きさゆえに、リスクが高いとされています。
そのため、社会資本の分野でも、財政投融資による「長期かつ低利での資金調達」をサポートしているのです。
(4)産業・研究開発
比較的資源が少ない日本にとって、世界の市場と戦うためには、技術革新などによる新しい価値の創造が非常に重要です。
そうした価値を生み出すため、産業・研究開発分野への大規模な投資が必要になります。
産業・研究開発分野は、結果が出るまでに時間がかかる傾向にあるため、民間だけでは資金の調達が難しいのです。
そのため、財政投融資による資金調達のサポートが、産業・研究開発でも活用されています。
(5)地方公共団体
地方公共団体が行う事業でも、財政投融資が活用されている場合があります。
ただ、全ての事業が対象というわけではなく、
- 災害復旧
- 廃棄物処理
など、「政策的な重要性・国の責任度」が高い事業に限られます。
また、地方公共団体間の資金力格差を考慮し、調達能力が低い地方公共団体に対して、財政投融資が活用されることもあります。
(6)国際金融・ODA(政府開発援助)
国際金融の分野については、
- 海外における資源の開発や取得の促進(日本には資源が少ない)
- 日本の産業の国際競争力の維持・向上
- 国際金融秩序の混乱への対処
などに関わる業務に、財政投融資が活用される場合があります。
また、発展途上国へのODA(政府開発援助)についても、「国の安全と繁栄につながる」として、財政投融資が行われる傾向にあります。
参考:財務省 財政投融資
5、財政投融資における3つの具体的手法
最後に、財政投融資における
- 財政融資
- 産業投資
- 政府保証
の3つの具体的手法についてご紹介します。
(1)財政融資
財政融資とは、政策的に必要な分野に対して行われる融資です。
政策的に必要な分野に対し、
- 政策金融機関
- 地方公共団体
- 独立行政法人
などの機関を通じて融資が行われます。
主な財源は、国債の一種である「財投債」により調達された資金です。
政府の特別会計から預託された「積立金・余裕金」が使われる場合もあります。
また財政融資は、国の信用を基にしており、最も有利な条件である「長期・固定・低利」での資金供給が可能です。
(2)産業投資
産業投資とは、産業開発や貿易振興のための投資です。
産業投資では、「政策的必要性が高く、リターンも期待できるが、リスクが高い」ため、民間だけでは十分に資金が供給できない事業について、投資を行います。
投資対象となる分野としては、
- 研究開発・ベンチャー支援
- レアメタルなどの探鉱・開発
などがあげられます。
産業投資の財源は、
- 国が保有するNTT株やJT株の配当金
- 日本政策金融公庫の国庫納付金
などです。
(3)政府保証
政府保証とは、
- 政策金融機関
- 独立行政法人
などが円滑に必要資金を資金調達できるように、政府がつける保証のことです。
以下の4類型に照らし、個別に厳格な審査を経た上で、財布保証は与えられます。
-
民営化の方向性が示されている機関について市場からの資金調達を原則とする形態への円滑な移行を図るための措置としての政府保証債の発行
-
政策金融機関におけるALMの観点からの政府保証債の発行
-
外貨貸付に対する資金需要に対応するための政府保証外債の発行
-
財政融資資金からの借入れが出来ない仕組みとなっている機関における政府保証債の発行
引用:財務省 財政投融資
参考:財務省 財政投融資
6、財政投融資改革と「第二の予算」とは
財政投融資改革とは、2001年に財政投融資の資金調達の方法を変更した改革です。
財政投融資改革前までは、国民は郵便貯金、国民年金、厚生年金などすべて国に義務預託し、国はその資金を財政投融資に運用していました。当時は「第二の予算」とも呼ばれていました。
そして2001年に郵便貯金や年金の義務預託が廃止され、現在は国債の発行などによって資金調達をしています。
参考:財務省
まとめ
今回は「財政投融資」について解説しました。
財政投融資の目的に加えて、メリット、具体的手法についても、お分かりいただけたのではないでしょうか。
民間の金融機関だけでは対応が難しい分野や、国にとって重要な政策について、財政投融資は効果を発揮しています。
「投資」「融資」と聞くと難しいと感じるかもしれませんが、利用のメリットや具体的な手法を理解することで、財政投融資の意義を理解して頂ければ幸いです。