パブリックコメントとは、国(行政機関)があるルールを決める際に、国民に対して意見を求める制度です。
意見公募手続きとも呼ばれます。
本記事では
- パブリックコメントとは
- パブリックコメントの対象と例外
- パブリックコメントの手続き
- パブリックコメントの事例
についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、パブリックコメントとは
パブリックコメントとは、行政機関が政令や省令などの法律のルールを決める時に、原案を公開し、国民からの意見を求める制度です。
パブリックコメントは『意見公募手続(いけんこうぼてつづき)』とも呼ばれます。
現行のパブリックコメントは、2005年6月の『行政手続法』の改正によって始まった制度です。
パブリックコメント以前は『規制の設定又は改廃に係る意見提出手続(1999年閣議決定)』によって意見が集められていました。
パブリックコメントについて記載している『行政手続法』の条文を見てみましょう。
第六章 意見公募手続等
(意見公募手続)
第三十九条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
引用:行政手続法 e-GOV
上記の条文をまとめると、パブリックコメント(意見公募手続き)とは
- 命令等の制定時に、国民に意見を求める手続きである
- 意見を求める際には、原案・関係資料を公開する
- あらかじめ意見を募集する期間を決める
などの特徴を持つことがわかります。
2、パブリックコメントの対象となる行政ルール
パブリックコメント(意見公募手続き)の対象となる行政ルールには
- 政令
- 府省令
- 処分の要件を定める告示
- 審査基準
- 処分基準
- 行政指導方針
が含まれます。
それぞれ解説していきましょう。
(1)政令
政令とは『内閣』が制定する命令です。
政令には『執行命令』と『委任命令』の2種類があります。
執行命令とは、法律を執行するための命令です。
委任命令とは、法律の詳細を決めるための命令です。
具体例として2021年1月時点で、意見が求められている政令案には以下のものがありました。
- 介護保険法施行令等の一部を改正する政令(案)
- 押印を求める手続の見直し等のための総務省関係政令の一部を改正する政令案(仮称)
- 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令案
(2)府省令
府省令とは『内閣府』と『各省』が制定する命令です。
府省令は、政令で決められた執行命令と委任命令に基づき、各府省の大臣が発する命令になります。
具体例として2021年1月時点で、意見が求められている府省令案は以下のものがありました。
- 復興庁設置法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令案
- 家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令案
- 国民健康保険法施行規則の一部を改正する省令(案)
(3)処分の要件を定める告示
処分の要件を定める告示とは、行政機関の決定事項等の内、処分の要件を定めるものです。
処分とは、法律的に認められた、役所の行為によって国民の権利や義務に直接影響するものを指します。
(4)審査基準
審査基準とは、法令に従った、申請を許可するかどうかの基準です。
(5)処分基準
処分基準とは、法令に従った、不利益処分の内容や不利益処分とするのかどうかの基準です。
不利益処分とは、特定の人物の権利を制限したり、義務を課したりする処分を指します。
(6)行政指導指針
行政指導指針とは、行政指導を実施するための指針です。
行政指導とは、役所による個人や事業者などへの指導、勧告、助言です。
行政指導には
- 規制的行政指導
- 助成的行政指導
- 調整的行政指導
の3種類があります。
規制的行政指導は、活動を規制する指導です。
助成的行政指導は、活動を支援する指導です。
調整的行政指導は、争いの利害を調整する指導を指します。
3、パブリックコメントが行われない例外的な命令
パブリックコメントを実施せずともよい、とされている例外もあります。
例外とされるのは、行政手続法の適用除外に該当する
- 第3条第2項
- 第4条第4項
- 第39条第4項各号
の命令です。
それぞれについて見ていきましょう。
(1)第3条第2項
第3条第2項の条文は以下の通りです。
第3条
二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
引用:行政手続法 e-GOV
条文によると、裁判所や裁判官による処分にはパブリックコメントが求められないことがわかります。
(2)第4条第4項
第4条第4項の条文は以下の通りです。
第4条
四 国又は地方公共団体の予算、決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格、入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって、これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)
引用:行政手続法 e-GOV
条文によると、国や地方公共団体の
- 予算、決算、会計についての命令
- 財産、物品の管理についての命令
にはパブリックコメントが求められないことがわかります。
(3)第39条第4項各号
第39条第4項各号の条文の一部は以下の通りです。
第三十九条
4 次の各号のいずれかに該当するときは、第一項の規定は、適用しない。
一 公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、第一項の規定による手続(以下「意見公募手続」という。)を実施することが困難であるとき。
二 納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。
三 予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。
引用:行政手続法 e-GOV
条文によると、
- 緊急で命令等を定める必要がある時
- 納付すべき金銭について定める法律の制定または改正に伴う算定方法についての命令等を定める時
- 金銭の給付決定に伴う算定方法についての命令等を定める時
にはパブリックコメントが求められないことがわかります。
4、パブリックコメントの手続き
ルールに関する国民の意見は、どのような手続きで集められるのでしょうか?
パブリックコメントの手続きをわかりやすく解説します。
画像引用元:パブリック・コメント制度について e-GOV
(1)案の公示
まず、行政機関が国民の意見を集めたい命令等の原案・関連資料を公示します。
公示はe-GOVという行政のポータルサイトで行われます。
(2)意見公募
各命令等の原案に対する意見を募集します。
意見は電子メールやFAX、郵送、直接提出のほか、e-GOVのホームページでも提出できます。
意見が提出できる期間は公示日から30日以内です。
(3)意見の考慮
提出された意見がまとめられ、どのように活かすかが話し合われます。
活かせる意見については案に反映され、採用されなかった意見については理由も整理されます。
(4)結果の公示
命令等の公布と同じタイミングで
- 命令等の題名
- 命令等の案の公示日
- 提出意見及び、意見に対する行政機関の考え方
がe-GOVのホームページに公示されます。
5、パブリックコメントの事例
実際の事例をもとに、パブリックコメントの募集から結果までの流れを振り返ってみましょう。
今回は『旧簡易ガスみなしガス小売事業者の指定旧供給地点の指定の解除(中部経済産業局所管分)に対する意見募集』を事例として取り上げます。
上記案についての主な日程は
- 案の公示:2020年12月11日
- 受付締切:2021年1月12日
- 結果の公示:2021年1月13日
でした。
上記の案では提出された意見が0件であったため、提出意見が無かった旨が公示されました。
参考:「旧簡易ガスみなしガス小売事業者の指定旧供給地点の指定の解除(中部経済産業局所管分)」に対する意見募集の結果について e-GOV
まとめ
今回はパブリックコメントについて解説しました。
e-GOVでは、意見の募集されている案件を一覧で確認できます。
興味を持たれた方はぜひ意見を提出してみてください。