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政治ドットコム政治用語「相互関税」とは? その概要や問題点をわかりやすく解説

「相互関税」とは? その概要や問題点をわかりやすく解説

投稿日2025.2.25
最終更新日2025.02.25

トランプ米大統領は2月13日、「相互関税」導入に関する大統領覚書に署名しました。

相互関税は、関税負担を相手国と対等にすることを目的としており、日本も対象国に含まれる可能性があるため、注目を集めています。

以下では、トランプ米大統領が相互関税導入を決定した経緯や具体的な内容、日本への影響、そして課題について詳しく説明します。

1.「相互関税」とは?概要とその目的

相互関税について、トランプ米大統領は「相手国がアメリカに税金や関税を課せばアメリカも相手国に対して全く同じ税金や関税を課す」と述べています。

また、導入目的について、大統領覚書では「長年にわたってアメリカは友好国・敵対国問わず貿易の相手国から不当な扱いを受けてきた。この相互性の欠如がアメリカが抱える巨額で恒常的な貿易赤字の要因の1つになっている」と説明されています。アメリカの貿易赤字は過去最大の1兆2117億ドル(約185億円)に達しており、相互関税の導入によってその是正を期待したとされています。

また、大統領覚書には、相手国の関税や規制について調査を行うことが明記されており、日本もその対象国に含まれています。相互関税の発動は4月以降を見込んでいることも記載されています

引用:NHK

2.想定される「相互関税」の具体的内容

相互関税の実施時期や対象国、具体的な内容についてはまだ明らかにされていません。しかし、野村総合研究所によれば、以下の3種類の相互関税が想定されています。

  • 第1の方式:同じ製品に対して同じ税率を適用する方法

主な対象国として、中国、インド、トルコ、ブラジルなどの新興国が挙げられています。新興国は一般的に、国内産業を育成するため、先進国から輸入する工業製品に高い関税を課すことが容認されています。この点に対し、トランプ米大統領は、関税率を等しくすることを求める可能性が指摘されています。

  • 第2の方式:税率の差分を別の製品に追加で課す方法

この方式では、日本も相互関税の対象国になる可能性があります。例えば、牛肉や穀物などの農業分野では、米国からの輸入品に関税が課されています。この差分を基に、自動車を含む工業製品については、米国からの輸入品にほぼゼロの関税が課されているものの、農業分野での関税税率の差分が工業製品に追加されることで、対米自動車輸出に高い関税が課される可能性が指摘されています。

  • 第3の方式:相手国の平均税率に応じて追加で課税する方法

トランプ米大統領が名指しで批判したインドは、この方式に該当します。2023年度におけるインドの平均関税率は12%であるのに対し、アメリカは2.2%です。大統領覚書署名後、米印首脳会談では貿易赤字削減に向けて交渉が行われることで合意されました。

参考:野村総合研究所

3.「相互関税」の日本への影響と日本政府の対応(2025年2月19日現在)

相互関税の対象国についてはまだ明らかにされていませんが、日本は米国の貿易赤字で第7位、輸入額で第5位に位置しているため、相互関税の対象となる可能性が高いと指摘されています。

具体的には、第2の税率の差分を別の製品に追加で課す方法のほか、非関税障壁を理由に自動車に追加関税が課される可能性も指摘されています。今回の相互関税の特徴として、相手国の消費税を加算し、税率を比較する仕組みが挙げられます。米国政府は長年、米国製自動車の対日輸出が伸びない理由として、車検制度など日本の自動車輸入に対する非関税障壁を挙げてきました。このような非関税障壁により、日本の対米自動車輸出に高い関税率が課される可能性が指摘されています。

さらに、自動車関税が日本経済に与える影響について、仮に日本車に25%の関税が上乗せされた場合、日本の実質GDPが2年間で0.2%ほど下押しされるとの試算もあります。このことから、トランプ米大統領が進める相互関税は、日本の経済の要である自動車産業に大きな影響を与え、経済的な打撃が大きいことが予測されます。

このような相互関税に対し、日本政府は適用除外の申し入れを行う姿勢であることが指摘されています。岩屋外務大臣は2月15日にルビオ米国務長官との意見交換時に、「我が国は対象となるべきではない」と伝えたと述べています。

参考:野村総合研究所

引用:外務省

4.「相互関税」がもたらす問題

トランプ米大統領が導入した相互関税は、自由貿易体制の崩壊を招くリスクがあると指摘されています。

戦後、各国は国際貿易の自由化を進め、関税を引き下げることで経済成長を促進してきました。しかし、相互関税の導入は、自由貿易の基本原則を覆すものであり、各国が報復関税を発動する連鎖反応を引き起こす可能性があると懸念されています。例えば、トランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウム製品に対してすべての輸入品に25%の追加関税を適用する大統領令に署名し、その対象となった欧州連合(EU)は2月11日に、「不当な関税には断固たる相応の対抗措置をとる」との声明を発表し、報復関税の発動も辞さない姿勢を示しています。

一方で、相互関税に対する各国の対応として、アメリカに譲歩し、関税を回避しようとする動きが広がることが予想されています。EUと同様に、鉄鋼・アルミニウム製品に25%の追加関税を課される日本は、日本製品を追加関税の適用除外とするようアメリカ政府に申し入れたことが明らかになっています。こうした例外を求める動きが強まれば、多国間の貿易ルールが形骸化し、経済的な力関係が優先される状況に陥る恐れがあることが懸念されています。

参考:朝日新聞日経新聞

まとめ

相互関税は、米国が貿易赤字解消を目的に進める政策で、導入には多くのリスクと課題が伴います。日本もその影響を受ける可能性が高く、特に自動車産業への影響が予測されています。自由貿易体制の崩壊を招く懸念もあり、今後の日本政府の対応が注目されています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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