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デジタル手続法とは?概要や適用除外についてわかりやすく解説

投稿日2021.3.16
最終更新日2023.06.06

デジタル手続法は、原則として全ての行政手続きのデジタル化を目指す法律です。

新型コロナウイルス対策の一環として10万円給付のオンライン申請が推奨され、河野太郎大臣の「脱はんこ政策」の推進により、手続きのデジタル化はこれからも加速することでしょう

そこでこの記事では、以下についてわかりやすく解説します。

  • デジタル手続法の概要
  • デジタル手続法が施行された背景
  • デジタル手続法の基本原則
  • デジタル手続法に伴う行政施策の改正

本記事がお役に立てば幸いです。

1、デジタル手続法とは

デジタル手続法
デジタル手続法とは、行政に関係する手続きを原則デジタル申請に統一するという内容の法律です。

正式には「情報通信技術の活用による行政手続き等に係る関係者の利便性の向上ならびに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続き等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」といいます。

ただ名称が長いため、「デジタル手続法」「デジタルファースト法案」とも呼ばれています(この記事では、「デジタル手続法」と呼び、解説していきます)。

従来の「行政手続オンライン化法」の名称を変更するとともに、その内容も大きく改正されました。

(1)デジタル手続法の目的

デジタル手続法は、

「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現(第1条)」

引用:情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律

を目指して、2019年5月24日に国会で成立、5月31日に公布されました。

上文をまとめると、

  • 利用者が行政サービスをより受けやすくする
  • 行政運営の業務率を上げる

という2つの目的を、行政手続きのオンライン化によって達成しようとしています。

具体的には、これまで窓口で対面・郵送していた手続きを原則インターネットでも可能にし、必要な添付書類を行政機関同士で連携する仕組みづくりを目指しているのです。

2021年2月時点では、国や自治体に義務付けるものです。
民間企業に法的な義務が生じるわけではなく、罰則規定もありません。

参考:デジタル手続法 首相官邸

2、デジタル手続法が定められた背景

デジタル手続法が日本で定められた背景には

  • 日本行政のデジタル化の遅れ
  • 人口減に伴う行政サービス低下の危惧

などがあります。
それぞれについて見ていきましょう。

(1)日本行政のデジタル化の遅れ

世界では多くの国がデジタル化されつつある一方、日本の行政手続きは申請1つでもなかなか進まないと言われています。

その理由の1つは、日本での手続きが「印鑑・書類・対面」をベースにしている点が挙げられます。

日本は世界的にもITインフラの整備が高い国であるにもかかわらず、行政手続きのデジタル化は海外と比べて遅れていると言われています。

参考:World Competitiveness Rankings 2020 Results

(2)人口減に伴う行政サービス低下への危惧

日本の人口減少と少子高齢化は大きな社会問題となっています。 

総務省統計局の「人口推計」によると、2021年1月1日時点で日本の総人口の概算値は、約1億2557万人で、2020年同月と比べれば約42万人のマイナスでした。

政府の地方制度調査会の調べでは、日本の高齢者人口は2040年ごろにピークを迎え、その人数は3900万人を超え、高齢者率は36.1%なると見込まれています。

一方で、15歳から64歳の生産年齢人口は6000万人を割り込むと予想されています。生産年齢人口が減少し続ければ、医療や介護の負担増加だけでなく、老朽化した施設の維持も難しくなるでしょう。

また人口の減少によって、特に大きな影響を受けるのが地方です。人口減に直面している自治体は多く、「行政サービスがうまく機能しなくなるのではないか」とも危惧されています。

行政機能を維持するためにも、行政手続きに関するコスト削減などの整備が求められています。

参考:人口統計(令和2年概算値)総務省統計局
参考:地方自治をめぐる動向 総務省
参考:2040年頃から逆算し顕在化する地方行政の諸課題とその対応方策についての中間報告(令和元年7月31日)

3、デジタル手続法の基本原則

デジタル手続法
デジタル手続法では、以下3つの原則を目指すことで、行政手続きの問題を解消できると考えられています。

  • デジタルファーストの実現
  • ワンスオンリーの実現
  • コネクテッド・ワンストップの実現 

今後、中小企業や個人事業者にとっても対応が求められることも予想されますので、しっかり基本原則を押さえておきましょう。

参考:デジタル手続法の概要 首相官邸
参考:情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律

(1)デジタルファーストの実現

「デジタルファースト」とは、行政手続きについて紙などを介さず、デジタルで完結させるという取り組みです。

これまでの行政手続きには、行政オンライン上で申請ができても添付資料を別途送付する必要があったり、手数料がかかったりと不便な部分が多くあります。

こうしたアナログな手続きのデメリットを解消するために、一貫したデジタル化を進めることで、利便性を向上させようとしているのです。

具体的には、

  • 添付書類
  • 本人確認制度
  • 手数料の支払い

などの制度のあり方を見直し、デジタル化を図ります。 

(2)ワンスオンリーの実現

「ワンスオンリー」とは、1度提出した情報について2度出す必要はないようにする取り組みです。

これまでの行政手続きには、窓口が変わるごとに添付書類を提出するといった場合がありました。ワンスオンリーではこうした手間を改善します。

原則1度目の提出でデータ化を行い、それ以降は提出不要にしようとする試みです。

たとえば、

  • 法人設立関係手続き
  • 住民票の写しや戸籍謄抄本の提出

などの制度の見直しが具体的な施策として挙げられます。 

(3)コネクテッド・ワンストップの実現

「コネクテッド・ワンストップ」とは、行政と民間が関連する手続きを一度の申請で、同時に完結できるようにする取り組みです。

たとえば、引っ越しの時に住民票を移動させれば、同時に電気・ガス・水道などの手続きも完了できるようにする、というようなものです。

4、デジタル手続法に伴う行政施策の改正

デジタル手続法の制定に伴い、関連法である

  • 住民基本台帳法
  • 公的個人認証法
  • マイナンバー法

の3つの法律も合わせて改正されました。

具体的に改正された行政施策については、以下の通りです。

  • 国外転出者に関する手続きのオンライン化
  • 本人確認情報の長期期間の保存および公証
  • マイナンバーカードへの移行促進

それぞれについて解説していきます。

参考: デジタル手続法案の概要 内閣官房
参考:「社会全体のデジタル化に向けて」参議院常任委員会調査室・特別調査室 

(1)国外転出者に関する手続きのオンライン化

これまで、マイナンバーカードは住民票をベースにしていたため、住所が海外にあった場合、マイナンバーカードが発行されませんでした。

しかし、昨今国外に滞在する日本人も増加しており、国外からでも本人確認ができるニーズが高まっています。

そうした背景から、今後は国外にいる日本国民もマイナンバーカードが発行でき、国外からでも公的個人認証や個人番号カードを活用したオンライン手続きが可能になります。

(2)本人確認情報の長期期間の保存および公証

デジタル手続法をもとに、申請や届出などをオンラインでやり取りするためには、本人確認情報を長く保存する必要があります。

そこで、本人確認情報である住人票の除票・戸籍附票の除票の保存期間を、現行の5年間から150年間に改正しました。

(3)マイナンバーカードへの移行促進

マイナンバーカードの健康保険証としての活用が2021年から本格的に開始されることを見込み、「利用者証明用電子証明書」については、暗証番号の入力を必要としない方式が導入されます。

また、通知カードの発行が廃止され、マイナンバーの通知は原則個人番号通知書を送付する形になりました。

これにより確定申告書の際、提出が必要とされている「マイナンバーの記載」と「本人確認書類」が、マイナンバーカード1つで可能となりました。

参考:通知カード 総務省
参考:「税務署へ提出する申告書や届出書などにはマイナンバーの記載が必要です!」

5、デジタル手続法の適用除外について

デジタル手続法は基本的に行政手続をオンライン化するとしていますが、その例外として下記の2点に該当する者はオンライン化の適用除外となる事項が定められています。

  1. 対面による確認を要すること、許可証等を事業所に備え付ける必要があること等の事由によりオンライン化が適当でないものとして政令で定めるもの
  2. 当該手続等に関する他の法令の規定においてオンラインにより行うことが規定されているもの

参照:参議院常任委員会調査室・特別調査室 

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まとめ

デジタル手続法は、行政手続きをデジタルによる申請に統一するために制定された法律です。

デジタル政府としての取り組みが今後どのように行政および国民に行き渡っていくのか、注目していきましょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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