レアメタルとは、産業界で流通量が少なく、希少な非鉄金属のことです。
電子機器や自動車などのハイテク化に大きく貢献する資源として、最近ますます注目されています。
今回の記事では、以下について紹介します。
- レアメタルとは
- 日本のレアメタル事情
- 日本のレアメタル確保戦略
本記事がお役に立てば幸いです。
1、レアメタルとは
レアメタルとは、流通量が少なく、希少な非鉄金属のことです。
低炭素化やハイテク技術を支えるのに重要な「レアメタル」ですが、国際的な細かい定義はありません。
そもそもは、生産量・使用量の多い鉄や銅、アルミニウムのような金属を指す「ベースメタル」との対比語として使われてきました。
そのため、国や地域ごとにレアメタルに区分される種類が異なります。
年々レアメタルの需要が増しつつありますが
- 新興国の経済成長に伴う、スマートフォンや自動車などの需給増加
- 資源産出国による生産及び輸出制限
などが要因にあります。
時代の変化に合わせて、希少性の高いレアメタルのニーズが世界的に増大してきているのです。
(1)レアメタルの特徴
レアメタルとベースメタルの大きな違いは、「手に入れるのが困難である」という点です。
レアメタルは、以下のような特徴があります。
- 鉱石への濃縮が少ない
- 精錬が難しい
- 埋蔵地域が偏っている
つまり、掘り出した鉱物に含まれるレアメタルの量が少ない上に、レアメタルだけを採り出すのが難しいということです。
また、レアメタルは中国や南アフリカ、ロシアなど特定の国や地域に偏って埋まっています。
画像出典:経済産業省
そのため、産出国・地域の情勢や政策に左右されることも多く、需要の増加とともに、今後の資源獲得競争はますます激しくなると言われています。
(2)レアメタルの種類
日本でのレアメタルの定義は
「地球上の存在量が少ない、もしくは技術的・経済的な理由で採り出すのが難しい金属のうち、工業用需要がある(見込まれる)ため、安定供給の確保が重要なもの」
引用:経済産業省
となっています。
令和元年の資料によると、以下の元素がレアメタルに当たり、その数は34鉱種(55元素)です。
- リチウム
- ベリリウム
- ホウ素
- 希土類(レアアース)
- チタン
- バナジウム
- マンガン
- コバルト
画像出典:経済産業省
「リチウム」「コバルト」はリチウムイオン電池や水素電池などの加工に利用されます。
「インジウム」は太陽電池や液晶画面などに、「ガリウム」「タンタル」はICや半導体の接点、コンデンサーなどの生産に必要不可欠です。
そして、ここに書かれている34鉱種は国内に備蓄する金属資源の対象としても指定されています。
2、日本のレアメタル事情
レアメタルは、リチウム電池や半導体材料、電子材料などさまざまなハイテク製品で利用されています。
他の元素と合金を作ることで新たな性能や機能を持つようになるため、スマートフォンやパソコン、自動車など高性能化に役立つ有効な物質として注目を集めているのです。
このことから、鉄が「産業のコメ」と呼ばれるのに対して、レアメタルは「産業のビタミン」とも呼ばれています。
とくに日本は、世界でも有数のレアメタル消費国です。
なかでも、リチウム、コバルト、ニッケルに関しての輸入量はほぼ100%です。
日本は、レアメタルの国内消費の大部分を外国からの輸入に頼っている状況と言えます。
画像出典:経済産業省
こうした多くのレアメタルについて輸入に依存している日本の現状に対して、危惧する声も多くあがっています。
もし輸入国とのトラブルが生じれば、レアメタルの確保が難しくなる可能性が高まるからです。
そんな日本の重要な課題ともいえる「レアメタルの確保」に対し、国は様々な対策をとっています。
3、日本のレアメタル確保戦略
貴重なレアメタルを戦略的に確保するために、経済産業省は2009年4月に「レアメタル確保戦略」を公表しました。
この戦略は、主に以下の5つの方法で国内のレアメタルの安全確保を図ろうとしています。
- 海外資源の確保
- リサイクル
- 代替材料の開発
- 国内における備蓄
- 日本周辺海域の海底熱水鉱床等の開発
加えて、今後の需要拡大に対応すべく
- 鉱種ごとの確保策の策定
- 供給源の多角化
- 備蓄制度の見直し
- サプライチェーン強化に向けた国際協力の推進
などの取り組みを行っていくことを「新・国際資源戦略」(2020年策定)として掲げています。
(1)海外資源の確保
資源国との関係強化を図ることは、日本がレアメタルを長期的かつ安定的に確保する上でとても重要です。
レアメタルは埋蔵地域が偏っていることもあり、産出国による独自の輸出制限や政情不安などのトラブルに影響されやすいというデメリットがあります。
たとえば「タングステン」は90%以上が中国、「コバルト」は50%以上がコンゴで採掘されており、こうした国々からの輸入が止まると日本産業は大きな打撃を受けてしまうのです。
そこで日本は、資源国との戦略的互恵関係の構築のために、以下の取り組みを強化しています。
- 鉱山周辺インフラ整備などへODAの活用
- 技術移転、環境保全協力など日本の強みを活かした協力
- 重要なレアメタル資源の開発への直接的関与・権益確保
また、「新・国際資源戦略」では、日本企業がレアメタルの精錬工場に出資するときに、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通して政府が債務保証などを行えるようになりました。
資源調達などの後押しを政府が行うことで、供給源の多角化や域外依存度の低下を促進させることが目的です。
(2)リサイクル
世界有数のレアメタル消費国である日本では、国内で発生する使用済み製品などを「資源」と考える「リサイクルシステムの構築と強化」の実現を目指しています。
たとえば、
- 携帯電話には液晶画面にインジウム
- カメラにはニッケルや金
- リチウム電池にはコバルトやリチウム
が含まれています。
そこで、携帯電話などの廃材を「都市鉱山」と呼び、含まれる金属資源を回収して再利用を行うことを推し進めています。
2020年時点では、リサイクルを優先的に行うべき資源として具体的に検討されているのは、以下の5鉱種でした。
- タングステン
- コバルト
- タンタル
- ネオジム
- ジスプロシウム
リサイクルシステムの構築は国内のみならず、アジア全体を視野に入れて検討が進められています。
(3)代替材料の開発
希少資源や不足資源に対する抜本的な解決策として、積極的に行われているのが「より豊富で調達しやすい金属で代替する」という試みです。
日本が持つナノテクノロジーなど優れた材料開発技術を活用し、供給リスクの高い資源の代わりとなる材料の開発などを産学官が一体となって進めています。
代替材料で補うことができれば、資源の少ない日本が安定的に資源を確保できるチャンスです。
加えて、技術力に磨きをかけることで、輸入品の価格交渉などで有利に働くことも期待されています 。
(4)レアメタルの備蓄
短期的な供給途絶リスクに対応するため打ち出された政策が、「備蓄策」です。
日本の備蓄は、国家と民間の2本柱で行われています。
対象範囲はレアメタル34鉱種です。
備蓄量は国内基準消費量の42日分を国家が、18日分を民間が担当し、一律で合計60日分を目標としていました。
しかし現状のレアメタルの重要性などを踏まえ、2020年に策定された「新・国際資源戦略」では
- 種類によっては180日分程度に伸ばすこと
- 備蓄量については経済産業省の承認を必要とすること
- 国家備蓄単独での備蓄目標を設定すること
などの備蓄制度の強化が決定しました。
金属資源の大部分を輸入している日本では、このような形で備蓄という手段を用いて短期的な供給障害に備えているのです。
(5)日本周辺海域の海底熱水鉱床等の開発
海底熱水鉱床とは、海底から噴き出した熱水に溶け込んでいた金属成分が析出したものです。
新たな供給源となり得る海洋資源の開発として
- 海洋基本法
- 海洋基本計画
- 海洋エネルギー・鉱物資源開発計画
に従い取り組みが進められているのです。
2017年には水深約1600mの海底で、レアメタルを含む海底鉱石の鉱物掘削作業から海上引き揚げまでを通した実験に世界で初めて成功しました。
また2020年7月には、南鳥島(小笠原諸島)の南方にある日本の排他的経済水域内において、コバルトやニッケルを含むコバルトリッチクラストの掘削試験にも成功しました。
これらの商業的採鉱が実現すれば、外交の立場も強まるとして期待が高まっています。
PoliPoliで公開されている環境関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政策共創プラットフォーム『PoliPoli』では、再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策について、以下のような政策が掲載されています。
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PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!
(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者
議員名 | 田嶋 要 |
政党 | 衆議院議員・立憲民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies |
(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
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まとめ
今回は「レアメタル」について解説しました。
世界中で需要が高まる中、環境技術やハイテク産業を発展させる上でもレアメタルはまさに日本産業の基盤であり、その確保は必要不可欠です。
今後もレアメタルを安定的に確保していくために、産出国との関係強化や代替技術、リサイクルシステム構築の実現などがより一層重要となっていくでしょう。