
「地方創生2.0」とは、「地方こそ成長の主役」という発想に基づく石破政権の看板政策であり、従来の地方創生政策の限界を踏まえ、地方経済の自律的な成長と国民の生活環境向上を目指す取り組みです。
第2次安倍内閣が「地方創生元年」を宣言したのは2015年。以降の取り組みについて、政府は、「『まち・ひと・しごと創生法』の制定、政府関係機関の地方移転や地方創生の交付金などにより、全国各地で地方創生の取組が行われ、様々な好事例が生まれたことは大きな成果である。一方、こうした好事例が次々に『普遍化』することはなく、人口減少や、東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至らなかった」と反省しています。
その上で、「『都市』対『地方』という二項対立ではなく、都市に住む人も、地方に住む人も、相互につながり、高め合うことで、すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会を実現する」ことを目指しています。
では、どのようにしてその目的を達成しようとしているのでしょうか。具体的な内容を見てみましょう。
「地方創生2.0」の基本構想の5本柱とは?
政府は、以下の5本柱に沿った政策体系を検討して、2025年夏に今後10年間集中的に取り組む基本構想を取りまとめるとしています。
①安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生
- 魅力ある働き方、職場づくり、人づくりを起点とした社会の変革により、楽しく働き、楽しく暮らせる場所として、「若者・女性にも選ばれる地方(=楽しい地方)」をつくる
- 年齢を問わず誰もが安心して暮らせるよう、地域のコミュニティ、日常生活に不可欠なサービスを維持
- 災害から地方を守るための事前防災、危機管理
②東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散
- 分散型国づくりの観点から、企業や大学の地方分散や政府機関等の移転などに取り組む
- 地方への移住や企業移転、関係人口の増加など人の流れを創り、過度な東京一極集中の弊害を是正
③付加価値創出型の新しい地方経済の創生
- 農林水産業や観光産業を高付加価値化し、自然や文化・芸術など地域資源を最大活用した高付加価値型の産業・事業を創出
- 内外から地方への投融資促進
- 地方起点で成⾧し、ヒト・モノ・金・情報の流れをつくるエコシステムを形成
④デジタル・新技術の徹底活用
- ブロックチェーン、DX・GXの面的展開などデジタル・新技術を活用した付加価値創出など地方経済の活性化、オンライン診療、オンデマンド交通、ドローン配送や「情報格差ゼロ」の地方の創出など、地方におけるデジタルライフラインやサイバーセキュリティを含むデジタル基盤の構築を支援し、生活環境の改善につなげる
- デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制・制度改革を大胆に進める
⑤「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上
- 地域で知恵を出し合い、地域自らが考え、行動を起こすための合意形成に努める取組を進める
- 地方と都市の間で、また地域の内外で人材をシェアする流れをつくる
この5本柱と併せて、具体的な政策として「新しい地方経済・生活環境創生交付金(新地方創生交付金)」の創設、「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の延⾧、「地方創生移住支援事業」にも取り組むとしています。
引用:総務省(PDF)
「地方創生2.0」に対する与野党の反応
与党内では、地方創生2.0に対し、従来のばらまき型支援から脱却し、地方自治体が主体的に成長戦略を策定できる仕組みづくりに期待する声がある一方、具体策がまだ不十分であるとの懸念も出ています。
東京一極集中の是正、新たな交付金制度やデジタル技術の活用による地方経済の活性化など理念自体は評価されるものの、実際に各自治体が独自の戦略を描くための人材や資源、運営体制に不安を示す声も存在します。
また、野党側では国の交付金制度が中央集権的な支援に終始し、地方の実情や多様性を十分に反映できるか疑問視する意見が強くあります。さらに、予算規模についても厳しい批判が上がっています。
例えば、立憲民主党の階猛・衆院議員は2月14日、衆議院・予算委員会において、地方創生の交付金が従来から倍増の2000億円が計上されていることについて「根拠がない」と指摘しています。
まとめ
石破政権が掲げる「地方創生2.0」は、従来の地方創生から脱却し、地域が自律的に成長戦略を描くための新たな枠組みを提案するものです。しかし、その一方で、具体的な実行策や各自治体の体制整備、さらには政策の効果測定に対する懸念が与野党間で分かれ、今後の審議や実効性が注目されるところです。
地方創生2.0の成功は、国と地方、そして民間の連携をどれだけ実効性ある政策に落とし込めるか、そして全国的な地域再興に寄与するかどうかが鍵となるでしょう。
