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国葬とは?国民葬との違いや実施する必要性と問題点をわかりやすく解説

投稿日2022.9.26
最終更新日2022.09.26

国葬とは、どのような葬儀なのでしょうか。

2022年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が選挙演説中に銃撃され、亡くなる事件が起こりました。安倍元首相のこれまでの国家への功績を称して、2022年9月27日に国葬が行われる予定です。

今回は、あまり聞き慣れない「国葬」に焦点を当て、

  • 国葬の概要
  • 国葬にかかる費用
  • 現代における国葬の問題点

についてご紹介します。

本記事が、「国葬とはどのようなものか知りたい」という方のお役に立てば幸いです。

1、国葬とは

国葬とは、通常の葬儀とは異なり、国家の権威によっておこなわれ、政治的な側面を持つ葬儀です。

まずは、国葬の概要として、

  • 国葬の定義
  • 国民葬や合同葬との違い
  • 日本で過去に国葬された人物

について解説します。

(1)国葬の定義

国葬とは、国家が喪主となって国家に大きく貢献した功績のある者を称え、死を悼む葬儀のことです。すべての費用が国費によって行われます。

そもそも国葬は、戦前の明治憲法下において、天皇の勅令である「国葬令」(1926年公布)に基づいて行われていました。

しかし、国葬令は、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律第1条の規定により、日本国憲法に適合しないとして1947年に失効しています。

2022年現在では、国葬を行うことや費用を国費から支出することなど、国葬に関する事項については、法的根拠がないとされています。

なお、国葬令のなかで、国葬が行われる日は国民は喪に服すことが明記されていました。国葬が行われる日については、学校や官公庁は休日扱いとなっていたのです。

現在においては、国葬令が失効となったことからも、国葬が行われるに際して国民の休日とする規定はありません。

(2)国民葬や合同葬との違い

国葬とよく似た葬儀の形式として、国民葬があります。国葬と国民葬の定義はほとんど同じものですが、費用の負担の面で異なります。

前項で説明したように、国葬では葬儀のすべての費用を国が負担しますが、国民葬では一部の費用については遺族が負担するのです。

また、国葬と混同されやすいのが、合同葬です。合同葬は、企業と遺族による葬儀なので、国家による葬儀である喪主とは大きく形式が異なります。

政治家のなかでは、特に総理大臣経験者の葬儀として、内閣と所属していた政党による合同葬が行われることがあります。直近では、2020年に中曽根康弘元内閣総理大臣の内閣・自由民主党合同葬儀が行われました。

(3)日本で過去に国葬された人物

内閣総理大臣経験者で、国葬された人物は次の5人です。

  • 伊藤博文(1909年)
  • 山縣有朋(1922年)
  • 松方正義(1924年)
  • 西園寺公望(1940年)
  • 吉田茂(1967年)

上記に加えて、2022年9月に安倍晋三氏の国葬が予定されています。

2、国葬にはどれくらいの費用がかかるか

国葬は国費によって行われますが、費用はどれくらいかかるのでしょうか。

本章では、

  • 国葬の費用の相場
  • 国葬の費用には含まれるのか

について解説します。

(1)国葬の費用の相場

これまで説明してきたように、国葬は国費で行われる葬儀ですが、費用の相場はどれくらいなのでしょうか。

1967年に行われた吉田茂氏の国葬でかかった費用は、当時のお金の価値で1810万円です。

1967年の1万円の価値を現在のお金の価値で換算するには、以下の計算式で求めます(昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか? – 日本銀行)。

2022年の消費者物価指数(または企業物価指数) ÷ 1967年の消費者物価指数(または企業物価指数)

消費者物価指数については、2020年を100として、2021年で99.7、1967年で26.1となります。

102.3÷26.1=3.81倍

以上より、吉田茂氏の国葬の費用は、現在のお金の価値で6896万1000円です。

なお、2020年に行われた中曽根康弘氏の合同葬の費用は1億9000万円かかり、このうち9643万円が政府によって負担されました(中曽根氏合同葬 1億近い国費は妥当か – 東京新聞)。

2022年9月に予定されている安倍晋三氏の国葬にあたっても、中曽根氏の合同葬と同様に、およそ2億円の費用がかかるのではと言われています。

費用は、2022年度の予備費より全額支出することが明らかになっています(9月27日の安倍晋三元首相「国葬」“予備費から支出” 官房長官 – NHK政治マガジン)。

(2)国葬の費用には何が含まれるのか

国葬の費用における内訳には、以下のようなものが挙げられます。

  • 会場費
  • 人件費(警備費や救護費など)
  • 準備費(会議費や通信費など)
  • 機材費
  • 予備費

3、現代における国葬の問題点

今回予定されている安倍晋三氏の国葬が行われることに対して、反対の意見も多数上がっています。「1、―(1)国葬の定義」でも説明したように、そもそも現代においては、国葬について規定した法律はありません。

法的根拠がないということを前提とすると、現代における国葬の問題点としては、以下の2つのポイントが考えられます。

  • 全額国費とする必要があるのか
  • 弔意を国民に強制するのではないか

(1)全額国費とする必要があるのか

今回の安倍晋三氏の国葬を行う法的根拠について、政府は内閣府設置法第4条3項33号を示しています。これは、「国葬」を同号に明記されている「国の儀式」として閣議決定すれば、国葬を実施することが可能であるという見解です。

一方で、内閣府設置法は、「内閣府の行う所掌事務を定めたものにすぎない」という見解があります。

以上のことからも、国葬の費用を全額国費とすることについても、現在は法的根拠がないため、国費とする必要性について議論されています。

(2)弔意を国民に強制するのではないか

安倍晋三氏の国葬を行う理由として、政府は以下の点を挙げています。

  • 歴代内閣総理大臣で在職期間が最長であること
  • 内閣総理大臣として内政と外交で大きな実績を残したこと

また、安倍氏は死去後に、これまでの功績を称えて「大勲位菊花章頸飾」と「大勲位菊花大綬章」という最高位勲章を授与しました。

以上の点は、本来の国葬の対象者に当てはまると考えられます。

ですが、国葬の法的根拠がない現代においては、特定の政治家を称えるために国葬を行うことは、国民に広く弔意を強制するのではないかと考える意見もあります。

国葬が、国民に対して、特定の個人に弔意を事実上強制する契機になるとすれば、憲法第19条(思想・良心の自由)に大きく関わると考えられるでしょう。

一方、政府としては、今回の安倍晋三氏の国葬では、国民に対して弔意の表明は求めないとしています。

国葬に関するQ&A

Q1.なぜ国葬が行われる?

2022年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が選挙演説中に銃撃され、亡くなる事件が起こりました。安倍元首相のこれまでの国家への功績を称して、2022年9月27日に国葬が行われる予定です。

Q2.国葬の費用はいくらくらい?

1967年に行われた吉田茂氏の国葬でかかった費用は、当時のお金の価値で1810万円です。
現在のお金の価値で6896万1000円です。

Q3.国葬とは?

国葬とは、国家が喪主となって国家に大きく貢献した功績のある者を称え、死を悼む葬儀のことです。すべての費用が国費によって行われます。

まとめ

今回は、「国葬」について解説しました。

元々、国葬については法律で定められていましたが、現在は法的根拠がないとされています。

2022年9月には、1967年以来55年ぶりに国葬が行われる予定です。今回予定されている国葬は、そもそも法的根拠がないことからも、さまざまな指摘がされています。

国葬は、政治に大きく関わるものである一方で、現在の民主主義においては慎重に判断される必要があると考えられるでしょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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