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独立行政法人とは?仕組みや課題について簡単解説

投稿日2020.5.21
最終更新日2020.05.21

独立行政法人とは行政から独立して国家の事業を請け負う法人を指します。そもそも法人とは社会的な活動を行う組織のことで、法律によってその権利能力が与えられている必要があります。

上記を言い換えれば「主体性が認められている」ということになりますので、個人と同じように売買ができたり、訴訟が可能ともいえます。

より簡単に表現すると人のような振る舞いができる組織が法律における法人です。
それでは今回は独立行政法人について詳しく見ていきましょう。

1、独立行政法人とは


独立行政法人とは中央省庁から独立して業務を行う法人のことです。
下記3つの条件に該当する業務においては、国から独立し、法人格を与えたものを独立行政法人と呼んでいます。

  • 国民生活及び社会経済の観点から必須な業務
  • 必ずしも国が直接行う必要がない業務
  • 民営化すると監視や介入ができない業務

重要度が高い業務であっても、国が直接的に関与する必要がなければ、新たな公的機関に法人格を付与しその業務を委託します。

(1)具体的に何をする法人か

独立行政法人は読んで字のごとく行政から独立した法人ではありますが、引き続き行政の一端を担いつつ公共性をもって国家の事業を行います。

抽象的な業務内容としては国民生活の安定と社会や経済の発展を目的としています。

具体的な活動分野は多岐に渡り、

  • 文化や歴史
  • 統計
  • 郵便
  • 金融
  • 教育

などが挙げられます。

例えば国立大学や造幣局、国立病院機構なども独立行政法人なんですよ。
調べてみると意外に身近な存在であることがわかります。

(2)制度の目的

制度の目的としては4つあります

  • 業務の質の向上や活性化
  • 効率の向上
  • 自主的な運営
  • 透明性の向上

総務省によると、独立行政法人の業務運営は主務大臣が与える目標に基づいて行われます。主務大臣というのは各中央省庁の大臣のこと。

その担当閣僚の設定した目標をもって、独立行政法人は自主性あるいは自律性の下に行を実施し、その後大臣からフィードバックを受けて業務の改善や組織そのものの見直しを進めていきます。

(3)独立行政法人通則法について

独立行政法人通則法とは、独立行政法人やその制度の基本事項や業務の範囲などを定めた基本法のような法律のことです。

今回は2015年に改正された内容について深掘りします。

改正の主な中身は大きく分けて3つあります。

  • 業務の特性ごとに法人を分類
  • 効率的な目標設定と評価精度の設計
  • 業務改善方法の拡大

順番に確認しましょう。

①業務の特性ごとに法人を分類

それぞれの業務の特性を踏まえて効率的なマネジメントを実現するために、独立行政法人を3つに分類します。具体的な内容は後述します。

②効率的な目標設定と評価精度の設計

これまでは、その法人の部会や評価委員会がフィードバックを行っていましたが、政策の効率化のため、主務大臣を主な評価者とすることになりました。

目標の指示と業績評価を行い、第三者機関として独立行政法人評価精度委員会が設置されています。

③業務改善方法の拡大

改正以前は法人の違法行為に対して主務大臣が是正の要求しかできませんでしたが、会計監査人などの調査権限を強化し、役職員の再就職を規制するなど、モラルや効率の低下を防ぐ仕組みが導入されました。

また、是正の要求だけでなく、措置に関しても整備が行われ主務大臣の権限は強まっています。

(4)独立行政法人3つの種類

独立行政法人においても各業務の特性に応じて適切な管理を行うため、以下の3つに分類されました。

  • 中期目標管理法人
  • 国立研究開発法人
  • 行政執行法人

①中期目標管理法人

中期目標管理法人とは3年から5年ほどの中期的な目標に基づき、良質な国民向けサービスの提供を目的とする法人をいいます。管轄先の省庁の大臣が策定する目標に基づいて法人側も中期計画を作ります。

年度計画を大臣に提出し、公表することが義務付けられています。

②国立研究開発法人

国立研究開発法人も中期的な目標に沿って業務が行われますが、5年から7年ほどの期間のため、やや長め。具体的な内容は科学技術に関する試験や研究、開発などになっています。

加えて、運営の目的は日本の科学技術の水準の向上やそれに伴う国民経済の発展などが掲げられているため、中期目標管理法人とはかなり性質が異なる法人となっています。

③行政執行法人

行政執行法人とは、より強い国の関与が必要な公共性の高い事務作業を行う法人のことです。
国の行政事務と密接に関係していることもあり、他の独立行政法人と違って行政執行法人は職員の立場は国家公務員となっています。

2、独立行政法人の仕組み

ここからは独立行政法人の仕組みについて説明していきます独立行政法人ができる以前、中央省庁は下記のように多くの仕事を抱えていました。

  • 企画立案
  • 業務実施
  • 特殊法人などの業務

しかし、独立行政法人制度の導入によって、実施部門は完全に委託でき、特殊法人も一部独立行政法人となり、お役所の負担が軽減したのに加えて業務効率化も実現できました。

前述の通り主務大臣が目標の管理と評価を行いますが、独立行政法人は下記を徹底し、自主的かつ自律的に業務の運営に励みます。

  • 業務ごとの目標管理と反省
  • 民営化や廃止を考慮した業務と組織の見直し
  • 企業的経営手法による業務と財務運営
  • 主務大臣の過剰な関与の廃止
  • 適材適所の役員人事(民間登用も含む)
  • 情報開示の撤退

主務大臣の権限が強すぎると感じたかもしれませんが、政府の第三者期間として大臣の目標査定や業績評価をチェックする独立行政法人評価制度委員会があります。

これによって独立行政法人は透明性を確保しつつ、自主的に効率的な業務を行うことができます。

3、独立行政法人と混同しやすい特殊法人


先ほど『特殊法人』というワードが出てききました。こちらは独立行政法人と間違えやすいのでしっかりと理解しておきたいところです。

特殊法人とは、政府が必要とする事業を代わりに行う法人のことをいいます。国が行う業務のうち、企業的な経営をした方が効率が良くなるものの場合は、独立した法人として自主的な経営を行わせようとするのが特殊法人の考え方です。

既存の行政機関が担当しても制度上の制約があり非常に非効率なので、特殊法人にすることで柔軟に業務をこなせるのが大きなメリット。

独立行政法人との違いは国からの保護が充実している点です。場合によっては税金の免除や政府の財政投融資などによる資金調達が可能になります。

それゆえに事業計画は国会の承認が必須であり、事業が失敗しても簡単に撤退できなかったりと国の干渉を受けながらでないと運営ができません。

4、独立行政法人の具体例

では独立行政法人の具体例を見ていきましょう。

(1)国立化学博物館

国立科学博物館は自然史や科学技術士に関する博物館であり、国内で唯一の総合科学博物館です。日本だけでなくアジアをカバーする科学博物館として活動しており、具体的には以下の通り。

  • 調査研究
  • 標本資料の収集と保管
  • 展示や学習支援

上野にある本館に加えて、隣接している地球間や、筑波の研究施設、港区金白台の附属自然教育園など幅広く業務を展開しています。

博物館を設置して研究を行いつつ資料を提供することによって、自然科学や社会教育の水準を向上させることを目的としているのです。

(2)統計センター

統計センターは日本における重要な統計を作成する役割を担う組織です。

例えば総務省統計局が所管する国勢調査や消費者物価指数に加えて、各都道府県や地方公共団体の委託を受けて統計を作成する場合もあります。

その他にも細かい業務は多くあり、さまざまな相手に統計を提供するなどしています。総務省や各府省だけでなく、学会や国際機関、研究者、私たち統計利用者など幅広い分野で活躍しているのが統計センターです。

正確な技術と統計の信頼性を確保し、豊かな社会を実現するための情報インフラ整備と国民生活の向上に寄与することを目的に運営されています。

5、今後の課題

独立行政法人制度における課題を見ていきましょう。

(1)天下り問題

独立行政法人の大きな課題の1つが天下り問題です。かつて特殊法人の天下りが問題となって行政改革によって一部が独立行政法人へ移行されましたが、根本的な構造が変わっていないため問題解決には未だに至っていません。

官僚、つまり上級国家公務員が定年退職後に独立行政法人の理事などのポストに就くケースは少なくありません。
加えて、事務方トップと言われている事務次官の座を取れず、退官せざるを得なかった役人が天下りして以前と同じ収入を得ていることもあるようです。

数年働くだけで超高額の退職金も支払われるシステムにもなっており、それらの財源は国民の税金であることから長きにわたって問題視されています。

(2)運営費や目的積立金の問題

もう1つ、独立行政法人が抱える問題が財務会計の問題です。具体的に述べるなら運営費交付金と目的積立金の2つが挙げられるでしょう。

以前、国立博物館では利益をあげているのにもかかわらず、入場料の値上げが決まり問題になりました。公的機関が国民生活の向上や科学水準の発展を目的にしているのにもかかわらず、営利目的であるかのような対応を行ったため当然といえるでしょう。

肝心な値上げの理由はノルマが高くなったためです。国立博物館の収入は国からの運営交付金と入場料などの自己収入の2つからなります。

当時は自己収入というノルマが3億円ほど引き上げられ、かつ運営交付金も毎年1億円ずつ削減となってしまったため、止むを得ず入場料の値上げを決断しました。

現実的な判断とも考えられますが「寄付ではいけなかったのか」などの批判もあり、国民に負担を強いるのは独立行政法人のあり方や公共性の観点から見て問題であるため、今後も大きな課題として残ってしまうでしょう。

また経営努力によって生じた余剰金である目的積立金は、中期計画で定めた目標を実現するために使うのが本来の目的ですが、使用を認められない場合があります。

財務省は前年度の利益を下回った際に使用を認めておらず、職員が努力するインセンティブを低下させてしまうため、こちらも大きな課題となっています。

まとめ

独立行政法人は国から独立し主体性を持って国民の必要とする業務を実施する組織です。ふと耳にすると難しそうな単語ですが、仕組みはシンプルで、あなたの周りにも意外とあるでしょう。

国立大学や国立病院、統計センターなど私たち国民に欠かせない組織は多くありますが、一方で天下りや財務会計などの問題をどう解決していくかが課題となっています。