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タックスヘイブンとは?メリットやデメリット・パナマ文書を解説

投稿日2020.7.28
最終更新日2020.07.28

「タックスヘイブン」とは税の楽園とも呼ばれ、税金がかからない国や地域を指します。
2015年のパナマ文書の流出で各界の著名人がタックスヘイブンを利用していることが判明し、スキャンダルにもなりましたよね。

ちなみに「タックスヘイブンは違法か?」といわれれば、違法ではありません。
今回は、世界から注目を集めるタックスヘイブンについて分かりやすく簡単に解説していきたいと思います。

本記事がお役に立てば幸いです。

1、タックスヘイブンとは


タックスヘイブンは「税の楽園」と呼ばれることが多いものの、英語ではTax Havenと表記され、Heaven(天国)ではなくHaven(避難所)なので直訳は「税の避難所」という意味になり、日本語では租税回避地、低課税地域とも言われます。

タックスヘイブンに明確な定義はなく

  • 課税率が非常に低い
  • 外国籍の個人または法人に対して税の優遇を設けている
  • 富裕層と外資企業を低課税によって誘致することで経済を維持している

などが特徴して挙げられます。
タックスヘイブンはどこにあるのかというと、

  • イギリス領のバージン諸島、ケイマン諸島、ジャージー島
  • オランダ
  • ルクセンブルク
  • アメリカのデラウェア州
  • パナマ
  • コスタリカ
  • スイス

などさまざまな国に点在し、そこでは主に以下の4つの税優遇を受けることができます。

  • 無税、所得税がない、租税条約(税金に関する他国との取り決め)を締結していない(通称 タックスパラダイス)租税条約
  • 特定の事業を行う企業に税の優遇措置を行っている(通称 タックスリゾート)
  • 国外の所得に課税をしない(通称 タックスシェルター)
  • 租税条約を締結しつつ、税率が非常に低く、配当に対して源泉課税がされない

これらの条件を見てもあまりピンと来ない人もいるかもしれませんが、タックスヘイブンを利用すれば税負担をかなり軽減することが可能で、タックスヘイブンの外で稼いだお金についても税の優遇措置を適用することができます。

そもそも「税金」とは国を維持するために欠かせないものですが、タックスヘイブンでは戦略的に税金を安くすることで裕福層を呼び込み、地域経済を活性化させる目的があります。

実際にタックスヘイブンに移住する富裕層は多いものの、タックスヘイブンを利用するほとんどの人がタックスヘイブンを「経由」することによって税金を安く納めています。

タックスヘイブンを経由して節税するまでの流れを解説しましょう。
タックスヘイブンで税優遇を受けるために最も一般的な方法は、会社の子会社をタックスヘイブンに設立する方法です。

法人税は会社の利益に対して税率がかかりますが、タックスヘイブンに子会社を持ち、その子会社に売上を全て移動させてしまえば法人税の節税を行うことができます。

こうした子会社のことを「ペーパーカンパニー」といい、実際にiPhoneで有名なアップルやグーグルもタックスヘイブンにペーパーカンパニーを持っていることが判明しています。

参考:米グーグル、17年に租税回避地バミューダに230億ドル移転 ロイター

Apple、タックスヘイブンをジャージーに変更 TechCrunch Japan

2、タックスヘイブンのメリットとデメリット

大企業や裕福層に重宝されているタックスヘイブンですが、2016年の伊勢志摩サミットではタックスヘイブンへの対策が話し合われるなど、国際的に批判を集めているテーマでもあります。

一体、タックスヘイブンの何が悪いのか?
タックスヘイブンのメリットとデメリットを見ていきましょう。

(1)メリット

タックスヘイブンのメリットには

  • 税金を抑えることができる
  • 会社を簡単かつスピーディーに設立できる
  • 資産や個人情報が秘匿される

などがあり、やはり最大のメリットは税金を抑えられることでしょう。
また、タックスヘイブンで人気の節税には法人税が挙げられますが、最近では相続税にも注目が集まっています。

相続税をタックスヘイブンで節税するためには

  • タックスヘイブンに移住する
  • タックスヘイブンに会社を設立する
  • タックスヘイブンの会社を経由して贈与を行う

3つの方法があり、それぞれに注意点があります。

移住では贈与者も相続人もタックスヘイブンに10年以上住まなければいけない「10年ルール」を守る必要があり、出国時に1億円以上の有価証券などを保有していると含み益に対して所得税がかかります。

会社の設立では、資産をすべて会社に移してしまうことで相続税を逃れることができますが、会社が持つ株式には相続税がかかります。

最後に会社を経由して贈与を行う方法ですが、タックスヘイブンでは法人から個人への贈与には税金がかからないことが多いため、会社を経由することで税金を抑えることができます。

ただし、贈与された相手には所得税がかかります(しかし、この所得税についても一時所得として計算されるため税金を抑えることができます)。

(2)デメリット

タックスヘイブンのデメリットには

  • 違法性はないがグレーゾーンに近い
  • 信頼性が失われる可能性がある
  • 反社会的勢力のマネーロンダリングに使われている

などがあります。

タックスヘイブンの違法性については、その国の法律に基づいて課税が行われているため違法ではないと考えられていますが、国際的に見ても取り締まりは年々強化されています。

2016年京都で開かれたOECD(経済協力開発機構)租税委員会では、各国に対して口座情報を開示するように要求し、その要求に答えなかった国は「悪質」と判断され、ブラックリスト化されることが決まりました。

参考:悪質なタックスヘイブンに包囲網 OECD租税委が開幕 日本経済新聞

なぜ、違法ではないタックスヘイブンの利用が取り締まられているのかというと、タックスヘイブンがテロや麻薬など反社会的勢力のマネーロンダリングの拠点として利用されている背景があるからです。

マネーロンダリングとは犯罪で稼いだお金の足を洗う資金洗浄を指し、複数の口座で送金を繰り返したり、株や債権、美術品などを買うことでお金の出所を分からなくする手段です。

タックスヘイブンの特徴として個人情報が徹底的に秘匿されることが挙げられますが、これはお金の流れを知られたくない人物にはぴったりのメリットとなります。

また、タックスヘイブンの大きなデメリットには社会的な信頼を失う可能性があることも挙げられます。

税金とはその国や地域の利用料のようなもので、医療、道路、警察、福祉、消防などさまざまな公的サービスが税金によって維持されています。その税金から逃れるということはある種、国や地域への裏切りと考える人が多いのです。

また、あからさまなタックスヘイブンでの脱法行為は「タックスヘイブン対策税制」が適用され、追加課税が要求される場合もあります。

参考:タックスヘイブン対策税制の規制強化について みずほ銀行

3、パナマ文書


世界の人々にタックスヘイブンの存在を知らしめた「パナマ文書」についてご紹介します。

タックスヘイブンで知られるパナマにある法律事務所モサック・フォセンカから顧客名簿が流出し、政治家や大手企業、芸能人の名前が含まれていたことでスキャンダルとなりました。

タックスヘイブンを利用することは違法ではありません。
ただし、タックスヘイブンを使って故意的に脱法行為を行うことは犯罪です。

また、市民が納税している一方で富裕層が税金を逃れれば不平等が生じます。

実際にタックスヘイブンが格差を広げるとして、「21世紀の資本」の著者でもあるトマ・ピケティを含めた多くの学者が、タックスヘイブンに経済的な正当性はないとした公開書簡に賛同を寄せています。

参考:タックスヘイブンの時代に終焉を:ピケティ氏らによる公開書簡 オックスファムジャパン

タックスヘイブンでは倫理的な線引きが非常に難しいものの、世界的にビジネスを広げたい人にとって税金を抑えられるタックスヘイブンの存在は重宝されます。

しかし、パナマ文書に挙げられた超裕福層がグレーな方法で税負担を逃れることは社会システムを維持するためにも推奨されることではないでしょう。

まとめ

今回は「タックスヘイブン」について解説しました。

グローバル化が進み、ビジネスの手法も資産運用の方法も世界を舞台にさまざまな選択肢があります。
タックスヘイブンもその1つの選択肢でしかありません。

ただし、超裕福層の税金逃れが加速すれば庶民の暮らしは一層厳しくなるかもしれません。

タックスヘイブンの問題においては「国とは何か」「税金とは何のためにあるのか」という基本的な理屈に立ち戻る必要がありそうです。