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まち・ひと・しごと創生総合戦略とは?地方創生の政策について解説

投稿日2020.9.2
最終更新日2020.09.02

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」とは、2014年9月から政府が進めてきた地方創生の政策です。

昨今都心への一極集中が問題視されています。
そのため地方創世政策に関心の高い方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は

  • まち・ひと・しごと創生総合戦略の概要
  • まち・ひと・しごと創生総合戦略の具体的な取り組み

について分かりやすく解説していきたいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、まち・ひと・しごと 創生総合戦略とは?


2008年をピークに我が国の人口は減少傾向にあり、その理由のひとつには出生率の高い地方から出生率の低い都心への人の移動が挙げられています。

  • 東京への人口集中を改善する
  • 地方を活性化させ少子化に歯止めを効かせる

これらの目的で生まれた政策が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」です。

地方創生という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、「創生」という言葉は新たに何かを生み出すという意味を持ちます。

地域ならではの強みを生かし、自律的かつ持続的な力強い地方を生み出すことが地方創生です。

2014年11月には「まち・ひと・しごと創生法」が施行し、2019年12月には長期ビジョンと第2期総合戦略が決定されました。

参考:まち・ひと・しごと創生総合戦略のページ 高知県

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中身を以下でくわしく見ていきましょう。

(1)デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションとは

  • “Digital”のD
  • “Transformation”のX(英語圏ではXと略される)

の頭文字を取って通称「DX」と呼ばれ、ITが浸透することで生活がより良くなることを意味する単語です。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で実施されているDXをいくつかご紹介します。

①キャッシュレス化

2019年10月から2020年6月まで実施された「キャッシュレス・ポイント還元事業」によってキャッシュレス化が一気に促進されました。

2020年9月からマイナンバーカードによるマイナポイントも始まり、キャッスレス化の流れをますます推し進めています。

キャッシュレス化の目的は「消費の活性化」であり、さまざまなキャンペーンや簡易的な支払い方法によって個人消費を切れ目なく促進しています。

参考:地域社会の再生と地方創生の推進 総務省

② Society 5.0(ソサエティ5.0)

Society5.0とは

  • 狩猟社会(Society 1.0)
  • 農耕社会(Society 2.0)
  • 工業社会(Society 3.0)
  • 情報社会(Society 4.0)

に続く、新しい社会の名称です。

Society5.0では、ほとんどのインフラがネットに繋がり(通称 IoT)、情報社会(Society 4.0)よりも現実世界とネットの世界がより密接になる社会です。

ロボットやAIの活躍による

  • 医療費の削減
  • 人手不足の解消
  • エネルギー問題の解決
  • 食品ロスの削減

なども期待されています。

引用:Society 5.0 内閣府

③ 5G(第5世代移動通信システム)

5G基地局の整備を地方と都市で隔たりなく進めることも「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の取り組みです。

5Gでは4Gよりも高速かつ大容量の多接続通信が可能になり、

  • 自動運転
  • 遠隔手術
  • 顔認証での支払い

などもできるようになります。

参考:5Gってなんだろう NTTドコモ

(2)感染症などの危機に強い地域経済の構築

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では感染症(2020年新型コロナウイルス)への緊急対応として

  • 感染拡大の防止
  • 雇用の維持と事業の継続
  • 経済活動の回復
  • 強靭な経済構造の構築

などの4つの柱を設置しました。

参考:まち・ひと・しごと創生基本方針2020 首相官邸

それぞれの柱を見ていきましょう。

① 感染拡大の防止

感染拡大の防止では

  • ワクチンの開発
  • 治療薬の開発
  • 医療用マスクの医療機関への配布

など医療ベースの対策に加えて、

  • 医療従事者と介護・障がい従事者への慰労金
  • 医療機関と介護・障がい施設の感染拡大防止のための支援金

などの名目で給付される「緊急包括支援交付金」が取り組みとして挙げられます。

参考:医療・介護・障害福祉に従事される方々への新型コロナ緊急包括支援交付金関連情報 厚生労働省

② 雇用の維持と事業の継続

新型コロナウイルスの感染拡大により事業者及び労働者には甚大な悪影響が及んでいます。
具体的には感染を防止するための休業要請などにより

  • 事業が継続できない
  • 仕事が無くなってしまった

という現状があるようです。
この状況を打開するため、雇用の維持と事業継続の面では

  • 持続化給付金
  • 雇用調整助成金
  • 家賃支援給付金
  • 特別定額給付金

などの助成金、給付金での支援が決定し、特別定額給付金は国民全員に給付されることになっています。

③ 経済活動の回復

経済活動の回復のためにそれぞれの自治体が地域ならではの事業を行っています。
たとえば愛知県の清須市では

  • 地域の商店街が利用できる商品券の配布
  • 休業協力者応援補助金交付事業
  • 就労支援対策事業

などの対策が実施されました。

参考:新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した事業 愛知県清須市

④ 強靭な経済構造の構築

コロナ禍でも力強い経済構造の構築を目指し

  • キャッシュレス化
  • 行政IT化
  • 防災IT化

など非接触型の社会整備が実施されています。
コロナのような感染症のリスクにも対応したスーパーシティの実現を目指しているとも言えます。

ちなみに、スーパーシティとは、スマートシティとも呼ばれる最先端都市で、行政手続や医療、教育、交通など基本的なインフラがすべて機械化された都市のことを指します。

参考:「スーパーシティ構想」について 内閣府地方創生推進事務局

(3)地方への移住定着

地方から都市部への移住は

  • 人手不足
  • 少子化(人口減少)

の解決の糸口となります。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で掲げられている移住政策を見ていきましょう。

①東京圏への一極集中の是正

大学や大企業が東京に集中していることもあり、多くの若者が進学と就職を機に東京へ移動します。

また、東京の待機児童数は2018年の時点で5,414人にのぼり、全国でもトップクラスの待機児童数を記録しました。

  • 勤務時間の長さ
  • 住宅の狭さ

でも東京は上位にランクインし、これらの条件が出産には不向きな環境の形成に繋がっている可能性もあります。

このような環境が改善されないままだと、さらに少子化を加速させることにもなります。
そのため東京一極集中の是正が求められています。

参考:「東京一極集中是正」による少子化対策の妥当性を問う 日本総研

②過疎化対策

地方への移住を促すには、地方ならではの魅力が必要になってきます。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では

  • 地域おこし協力隊
  • 移住交流情報ガーデン
  • ふるさとワーキングホリデー

など、より多くの若者と地方が出会うマッチング活動を実施しています。
また、地方自治体に対する

  • 過疎対策事業債(かそたいさくじぎょうさい)
  • 過疎地域等自立活性化推進交付金

などの経済的支援も行っています。

(4)出産子育て支援|人口減少対策

若い世代に地域の魅力をアピールするためには

  • 結婚支援
  • 妊娠、出産への支援
  • 仕事と子育ての両立

などの支援も充実させる必要があります。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の出産子育て支援の取り組みを見ていきましょう。

① 子育て世代包括支援センター

子育て支援包括支援センターとは、出産から育児までを一貫してサポートする窓口のことで、フィンランドの「ネウボラ」という機関がモデルです。

子どもを持つ親に対して、出産から育児まで切れ目のないサポートを地域が一丸となって提供します。

②三世代同居、近居の支援

祖父母に育児や家事の手助けをしてほしいと望む親は 78.7%にのぼり、三世代同居に注目が集まっています。

三世代同居とは祖父母、父母(両親)、子どもが同じ住宅に暮らすことです。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では

  • リフォーム工事の支援
  • 所得税の税額控除

などを実施し、三世代が住みやすい環境づくりを目指しています。

参考:三世代同居・近居の環境の整備について 内閣府

③ 放課後児童クラブ、放課後子供教室

小学校就学後に仕事を辞める親が多い現状を考慮し(通称 小1の壁)「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では

  • 放課後児童クラブ
  • 放課後子供教室

などが整備されました。
地域での仕事と育児の両立を狙っています。

参考:まち・ひと・しごと創生基本方針2020 首相官邸

「少子化社会対策大綱」と連携した結婚・妊娠・出産・子育ての各段階に対応した総合的な少子化対策の推進 内閣府

2、政府の具体的な取り組み


さまざまな取り組みを実施している「まち・ひと・しごと創生総合戦略」ですが、コロナ禍で身近になったテレワークも政策のひとつです。

具体的な取り組みをさらに見ていきましょう。

(1)地方創生推進交付金

地方創生推進交付金とは、地域再興のために必要な事業費が国から交付されるお金のことを指します。

  • 結婚、出産、育児に希望が持てる環境整備
  • 移住、定住を促進する事業
  • 地域社会を担う人材育成と確保の事業
  • 観光の振興、農林水産業の振興、その他の振興事業
  • 地域再生のために必要な事業

などが交付対象となっていて、5Gの情報通信基盤の早期整備費用も交付対象です。

参考:地方創生推進交付金について 宮城県

地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証等について 農林水産技術会議

(2)新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金とは、コロナ対策に追われる地方自治体を支援する政策で、交付を受けるためには地域に密着した計画書を提出する必要があります。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では交付金によって

  • コロナに強い社会環境整備
  • 新たな暮らしのスタイルの確立
  • 新たな付加価値を生み出す消費・投資の促進

を実現し、感染症の克服と危機に強い地域経済の構築を目指しています。

(3)地方定住のために

地方定住を促進させるためには都市部の人口集中の原因になっている

  • 学業
  • 仕事

の両面を解決する必要があります。
それぞれの取り組みを見ていきましょう。

①サテライトキャンパス

サテライトキャンパスとは、大学から離れた場所にあるキャンパスのことです。
サテライトとは衛星の意味を持つ英語名の“satellite”に由来し、本部(または本体)から離れて位置するものという意味で使われる単語です。

サテライトキャンパスを地方に誘致(設置)することで、都市部への若者の流出を防ぎ、新たな地方拠点を開発することを目指します。

また、大学に関係する研究所等が設置されることでベンチャー企業の創出を狙うこともできます。

参考:東京圏の大学の地方サテライトキャンパス等に関する調査研究報告書 一般財団法人 日本開発構想研究所

②サテライトオフィス

サテライトオフィスとは、企業から離れた場所に設置されたオフィスのことです。

テレワークや在宅勤務と混同されやすい言葉ではありますが、テレワークとは会社以外の場所で行う仕事を指し、在宅勤務とは自宅での仕事を意味します。

サテライトオフィスがあれば通勤時間を削減し、従業員の生活圏が必ずしも都心である必要性がなくなり、地方に移ることで地域活性化にも繋がります。

参考:サテライトオフィス 総務省

③テレワーク

コロナ禍で身近な存在となったテレワークには

  • 自宅利用型テレワーク
  • モバイルワーク
  • 施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)

の3つの種類があり

  • 親の介護をしなければならない人
  • 妊娠している女性
  • 子どもを持つ親
  • 高齢者を含む体に不自由がある人

など、さまざまなニーズに応えることが可能です。
同時にこれらのニーズを解決することは

  • 少子高齢化の抑制
  • 地方の労働人口の増加

にも繋がる可能性があります。

参考:テレワークとは 一般社団法人日本テレワーク協会

(4)少子化社会対策大綱

少子化社会対策大綱とは、2020年5月に決定した政策のひとつです。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」ではこの大綱に基づき少子化対策を行っています。

  • 結婚、子育て世代が将来の展望を描ける環境づくり
  • 多様化する子育て家庭におけるニーズへの対応
  • 地域に応じたきめ細かな取り組みの推進
  • 結婚、出産、子育てに温かい社会の実現
  • 科学技術の成果といった新たなリソースの積極的な活用

などの5つの基本軸が策定され、「希望出生率1.8」を目標としています。

参考:まち・ひと・しごと創生基本方針2020 首相官邸

まとめ

今回は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」について解説しました。
コロナ禍で満員電車や人口密集に不安を感じ、都市部から地方への移住を考えた人も多いのではないでしょうか。

学業や仕事の姿が変われば、私たちの生活も一変するかもしれません。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で実現する新たな社会の姿に期待が高まります。