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企業の社会的責任(CSR)とは?日本及び世界のCSRへの取り組み

投稿日2021.3.16
最終更新日2021.03.16

「企業の社会的責任(CSR)」とは、企業が利益を追求するだけではなく、消費者や従業員、そして地域社会と環境のために社会貢献をしながら、長く愛される企業として繁栄していこうという経営理念を指します。

たとえば、何かの商品を買う時に売り上げの一部が寄付されていたり、環境に配慮された生産過程を踏んでいると購入する私たちも安心できますよね。

これからビジネスを行なっていく上でCSRへの理解は必要不可欠です。
今回は

  • 企業の社会的責任(CSR)の定義
  • トリプルボトムライン
  • 世界における企業の社会的責任(CSR)
  • ISO26000

について分かりやすく解説していきたいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、企業の社会的責任(CSR)とは

 Corporate Social Responsibility
企業の社会的責任(CSR)とは、あらゆるステークホルダー(消費者、投資家、従業員、社会全体)と環境に配慮しながら、持続可能な企業活動を行っていこうという経営理念です。

CSRはただの綺麗事ではなく経営戦略としても有効で、CSRをしっかりと意識して事業を運営していくことで、不祥事や人権侵害、環境破壊などネガティブな企業トラブルを未然に防げるだけでなく、消費者や投資家からの支持をより一層集めることができます。

ここでCSRの簡単な例(わかりやすくするために極端な例になっています)を挙げてみましょう。

ベビー用品を売るA社とB社がありました。
どちらの企業に好感を持つでしょうか?

A社

  • 知名度のある大手企業
  • 従業員を低待遇で働かせており、離職率が高い
  • 産休や育休も取れない企業文化が根づいている
  • 工場の衛生環境も不透明で、工場周辺の森林破壊が酷い

B社

  • 知名度の低い中小企業
  • 従業員を高待遇で働かせていて、仕事にやりがいを持つ人が多い
  • 子どもを持つ従業員への支援制度が充実している
  • 工場の衛生環境を公表し、植林や動植物の保護活動も行っている

おそらく大半の人がB社に好感を持つはずです。
子どものために買うものが誰かの人権を侵害していたり、環境破壊に繋がっている状況は好ましくないと考える人が多いためです。

労働環境や環境問題など、これらすべての条件が企業の社会的責任(CSR)に当てはまるものであり、消費者の多くがCSRを支持する傾向にあります。

つまり、企業の社会的責任(CSR)をひとつずつ実現していくことは多くの人に長く愛される企業を実現することに繋がるのです。

2、トリプルボトムライン

企業の社会的責任(CSR)を実践するためには「トリプルボトムライン」が大切です。

CSRって寄付や環境保全をやればいいんでしょ?と考えている人も多いと思いますが、CSRでは経済面、社会面、環境面のすべての責任を果たす必要があります(通称 トリプルボトムライン)。

トリプルボトムラインは1997年ジョン・エルキントンによって提唱され、企業は経済、社会、環境の3つの側面から経営を行うべきであるとされました。

この考え方は企業の社会的責任(CSR)を評価する際に用いられる「GRIガイドライン」にも反映され、世界共通の項目になっています。

それぞれ3つの側面をくわしく見ていきましょう。

(1)経済面

経済面では

  • 経済的な業績はあるか
  • 透明性かつ適切な会計処理がされているか
  • 持続可能な運営を行っているか
  • ステークホルダー(利害関係を持つ者)と良好な関係を築けているか

などが挙げられます。
具体的には

  • 社会に良い影響を与えられるだけの経済的な実績があるのか
  • 売上が会社の利益になるまでに不正がないか
  • 利益のために犠牲にしているステークホルダーとの関係はないか

などがチェックされます。

(2)社会面

社会面では

  • 不当な労働慣行がないか
  • 人権が守られているか(福利厚生も含む)
  • 製品に対して安全責任を果たしているか
  • 地域コミュニティと良い関係が築けているか

などが挙げられ、企業が存在することで社会(消費者、従業員、地域を含む)にプラスな影響を与えられているかがチェックされます。

(3)環境面

環境面では

  • 大気や水質を汚染していないか
  • エネルギーの使用量はどれくらいか
  • 廃棄物をどの程度出しているか
  • 環境にどのように配慮しているか

などが挙げられています。

参考:経営におけるサスティナビリティの診断:基礎的検討 サステナビリティ診断グループ

3、世界における企業の社会的責任(CSR)

企業の社会的責任(CSR)
世界では企業の社会的責任(CSR)はどのように果たされているのでしょうか?

実はCSRは地域ごとに特徴があり、異なる発展を遂げており、アメリカ、ヨーロッパ、日本のそれぞれのCSRの姿をご紹介したいと思います。

(1)アメリカ

性的被害を告発する「#Metoo」や人種差別撤廃を訴える「Black Lives Matter」など、アメリカは歴史的に見ても人権問題に国民の関心が高く、さまざまな運動を経験しています。

その文化的背景からアメリカの企業の社会的責任(CSR)は、財政面を見て投資先を決めるのではなく、企業が倫理的に正しい事をしているかで投資先を決める社会的責任投資(SRI)の色合いが濃く表れています。

これらの倫理的な問題は人権、人種、環境、財政など多岐に渡り、法律でしっかりとCSRの枠組みが決められていることも特徴です。

また、アメリカのCSRで特に重要視されやすいのは株主との関係で、CSRは株主の利益を増加させるひとつの手段であり、戦略と考えられています。

アメリカでは「問題にきちんと対処しているか」という企業の活動が投資の基準になるため、企業が行うCSRは社会に大々的に発信され(明示的)、ステークホルダー(消費者、投資家など)が関心を寄せる問題も幅広いため、事業とは関係のないジャンルの社会貢献活動にも取り組みます。

(2)ヨーロッパ

アメリカと対極的なのがヨーロッパのCSRです。

ヨーロッパではアメリカのように賛同者を集めるためのCSRは人気がなく、企業が行うCSRは大々的には宣伝されません(非明示的)。

アメリカのCSRは先の利益を考えながら行動する一方で、ヨーロッパではCSRを行うこと自体に価値を置きます。
つまり、株主へのアピールではなく各ステークホルダーの満足度がCSRの存在意義に直結します。

「企業が存在できるのは社会があるからこそ、CSRで社会をさらに発展させ、社会に投資し、社会問題も解決しよう」という包括的な考え方がヨーロッパのCSRの特徴です。

(3)日本

消費者や投資家に大々的にCSRを伝えず、CSRで副次的な利益を得ようとしない日本のCSRはアメリカよりもヨーロッパに似ています。

ただし、日本ならではの問題もあり、大企業ではCSRが経営理念として浸透しているものの、中小企業ではCSRに馴染みがありません。

「CSR」という言葉に対する反発も強く、枠組みが決められていないため

  • やる必要があるのか
  • どこまでやればいいのか
  • 何のためにやるのか

という現場の混乱も増加している傾向にあります。
また、日本のCSRは環境保護の要素が強く、労働環境や従業員の待遇改善についてはあまり実践されていない現状もあります。

2002年に環境省が行った調査では個人投資家の関心が

  • 環境保護
  • 消費者への配慮
  • サービスの安全性

に集まり、従業員の権利や労働環境、差別の撤廃には他国に比べて10%以上低い回答になったというデータもあります。

日本で従業員の権利のためのCSRが活発化しないのは、こうした投資家の関心の低さが直結しているのかもしれません。

参考:CSR白書2018―世界のCSRの多様性 東京財団政策研究所

特集 企業の社会的責任(CSR)日本総研

4、ISO26000について

ISO26000とは、ISO(国際標準化機構)が2010年に発行した世界的なCSRの規格(標準)です。
この規格の特徴には

  • 対象を企業だけではなく公的機関や非営利団体まで拡大していること
  • 第3者による評価(または認証)を目的としない自主的な手引きであること

などが挙げられ、環境のISO14001、品質のISO9001など他の管理規格よりも企業への要求は緩く、取り決めというよりはCSRを実施するためのガイドラインのような役割を果たしています。

他の項目と違ってCSRは枠組みを決めることが難しいものの、このような国際規格が発行されることで普及をより効率的に行うことができます。

また、このISO26000の発行には途上国を含むさまざまなステークホルダーが参加し、

  • 組織統治
  • 人権
  • 労働慣行
  • 環境
  • 公正な事業慣行
  • 消費者課題
  • コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

など、7つの中核主題が決められました。

まとめ

今回は「企業の社会的責任(CSR)」について解説しました。
各国でCSRに対する考え方が根本から異なるのはとても興味深い一方で、日本がCSRで遅れを取っている事実も否めません。

CSR=環境保護、途上国支援、寄付、ボランティアなどのイメージが強いものの、本来のCSRは全てのステークホルダー(消費者、投資家、従業員、地域、社会)に企業が責任を果たす必要がある、ということをしっかりと認識し、私たちの日々の投資(購入)に役立てていきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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