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政治ドットコム政治用語「トランプ2.0」とは何か? 主な政策と日本への影響についてわかりやすく解説

「トランプ2.0」とは何か? 主な政策と日本への影響についてわかりやすく解説

投稿日2025.2.25
最終更新日2025.02.25

アメリカのドナルド・トランプ氏が2025年1月20日、4年ぶりに大統領に返り咲きました。第二次トランプ政権は「トランプ2.0」とも呼ばれ、その政策に世界中が注目しています。

「トランプ2.0」では、第一次政権で実行した「アメリカ・ファースト」を引き継ぐとともに、バイデン前政権時代からの大幅な方針転換を打ち出しています。その上で、国内外の環境変化を踏まえ、より強硬かつ迅速な政策が実行されるのではないか、と指摘されています。

それでは、現時点のトランプ2.0では具体的にどのような政策が実行されており、また実行が予想されているのでしょうか。以下、主要な政策についてまとめました。

1.トランプ2.0の主な政策

トランプ2.0では、次のような政策が軸となっています。

トランプ2.0の経済政策について

主な経済政策は以下の通りです。

  • 「減税」

トランプ大統領は1期目に法人税率の引き下げ(35%から21%)などを中心とした税制改革の法律、いわゆる「トランプ減税」を成立させました。2期目には、期限付きだったこの減税策を撤廃して、恒久的な減税の実現を目指しています。また、さらなる法人税率の引き下げも実施するとしています。これにより、国際競争力の強化などを目指しています。

  • 「関税措置の導入」

トランプ大統領は、国ごとに相互関税を適用するとしており、2月4日には中国からの輸入品ついて10%の追加関税を課す措置を発動しました。これに対して中国は、アメリカから輸入される石炭や液化天然ガスなどに追加関税を課す対抗措置を発表するなど、すでに影響が生まれています。

また2月10日には、アメリカに輸入される鉄鋼製品やアルミニウムに25%の追加関税を課すと発表するなど、関税措置の導入を進めています。こうしたトランプ大統領の政策は「貿易不均衡是正」の取り組みの一環で、市場の開放や貿易赤字の削減を狙っていると考えられています。

トランプ2.0のエネルギー・環境政策について

  • 化石燃料の増産へ

バイデン前政権から大きく転換し、トランプ大統領は国際的な気候変動対策よりも化石燃料開発を優先しています。「掘って掘って掘りまくれ」と訴え、現時点ですでに高水準となっているアメリカの石油・ガス生産を最大化する計画を進めています。これにより、エネルギー価格や電気料金の引き下げを目指しています。

さらに、「エネルギー非常事態の宣言」(バイデン前政権でエネルギーが不安定化したとして、あらゆる資源を活用するとした)、「バイデン前大統領の電気自動車比率目標を撤回」、「液化天然ガスの新たな輸出許可の審査再開」、「アラスカの液化天然ガスの開発」などの大統領令にも署名しました。

これらによって、環境問題に対する国際協調の流れが後退し、米国内外でエネルギー政策を巡る緊張が高まる恐れがあります。

トランプ2.0の移民・治安対策について

  • 不法移民への対策強化へ

トランプ大統領は、中南米などからメキシコとの国境を越えて入国している不法移民を問題視。不法移民が急増したことで、治安が悪化していると主張しています。

こちらもバイデン前政権から大きく政策転換し、「史上最大の強制送還作戦」を実施すると意気込んでいます。

これらの政策により、アメリカ国内はもちろん、国際的な人の移動や、労働需給といった経済にも影響を及ぼす可能性があります。

トランプ2.0の安全保障と外交政策について

  • 国益を最大化した外交

トランプ大統領は、国益を最大化させることを第一に考えた外交を展開すると考えられています。

バイデン政権とは異なり、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナへの支援については、消極的な姿勢を示しています。早期の戦闘終結の実現に動き出すとみられ、ロシアにとって追い風となりそうです。

また、トランプ大統領は政権の要職に対中強硬派を起用するなど、中国を「最大の脅威」と位置付けています。ロシアとウクライナの問題が解決したのち、中国への対応が注目されています。

そして、EUに関しては、対EU関税を示唆。EU側は「輸入自動車の関税を検討する余地がある」と関税引き下げの可能性をほのめかすなど、貿易に関する交渉・協議が予想されています。中東に関しては、イスラエル支援は変わらず、その上でイスラエルとハマスの戦闘をはじめとした、中東で起きている紛争への対応が求められています。

2.トランプ2.0の日本への影響について

トランプ大統領による、バイデン前大統領からの政策転換は、同盟国である日本にどんな影響があるのでしょうか。

トランプ2.0の経済への影響

最近注目されているのは関税です。とりわけ、トランプ大統領が「自動車関税」について25%程度と、現行の2.5%から10倍程度引き上げると発表したことが、大きな話題となっています。

もしその通りに実施された場合、アメリカに自動車を大量に輸出している日本にとっては経済的に大打撃となります。日本が対象国とならないように、または対象国となった場合でも影響が限りなく小さくなるように、日本政府に対して、アメリカ政府と粘り強く交渉するように求める声が上がっています。

また、こうした一連の関税措置が世界経済の不確実性を増し、円相場にも影響を及ぼすことで、為替変動リスクも高まる可能性があります。

トランプ2.0の安全保障・外交への影響

トランプ大統領は、防衛費負担の見直しを求める傾向があるため、日米安全保障条約に基づく在日米軍の負担増や、防衛費の拡大要求が予想されます。

実際、防衛費を巡っては、NATO加盟国にGDP比5%への引き上げを要求しています。日本においては、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)と併せ、さらなる増額を求められる可能性もあります。

日本政府は自国の防衛力の強化や同盟関係の再構築を迫られることになり、外交面でも戦略的な柔軟性が求められそうです。

トランプ2.0の国際政治・地域情勢への影響

トランプ2.0の対中・対イラン・北朝鮮政策が強硬化した場合、アジア太平洋地域の安全保障環境は不安定になります。日本は国際情勢の変動を注視し、早期の対応策や多国間連携を強化することで、自国の経済・安全保障に悪影響を及ぼさないように、備える必要があります。

3.まとめ

「トランプ2.0」では、第一次政権を踏まえ、より迅速かつ強硬な「アメリカ・ファースト」政策を展開すると予想されます。

経済面では高関税・減税策、移民対策、エネルギー政策の転換などが行われ、外交面では対外政策の先鋭化に注目が集まるでしょう。これらの政策は、日本を含む同盟国などにも大きな影響を及ぼすため、各国は経済、外交、安全保障の各面で戦略の再検討が求められます。

今後、日本はトランプ2.0の動きを踏まえ、日米同盟の新たな形の模索が必要となるだけでなく、国際秩序の変動にも注意を払う必要があるでしょう。日本にとって、厳しい要求と不透明なリスクが伴う一方で、戦略的なパートナーシップを再構築する機会でもあり、柔軟な対応が求められます。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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