『隣の空き家、雑草もすごいし、どうにかしてくれないかな、、、』
『あの家、ゴミがあふれてるけど誰か住んでるのかな、、、』
ふと目にした空き家にこんな疑問を持ったことはありませんか。
しかも、年々空き家が増加しているようにも感じませんか?
今回は日本で深刻化している「空き家問題」について解説していきたいと思います。
1、空き家問題とは?
画像出典:国土交通省 空き家の分類
空き家とは一般的に「1年以上使われていない家のこと」です。
- 何の目的で空き家になっているのか
- 人が出入りしているのか
- 電気/ガス/水道は使われているか
- 不動産登記と住民票はどうなっているのか
- 物件はきちんと管理されているのか
- 所有者は利用している実績があるのか
などの判断基準で自治体によって区別されます。
空き家の種類は4つの種類に分けられ、
- 二次的住宅
- 賃貸用住宅
- 売却用住宅
- その他の住宅
それぞれの内訳は以下の通りです。
まず、「二次的住宅」とは別荘やセカンドハウスを含む、普段住んでいる家とは別で使っている家のことで、仕事が遅くなった時に寝泊まりしている家もこれに含まれます。
長期休暇や週末に利用する人がほとんどなので空き家でも利用目的のある家になります。
次に、空き家総数の約半分の52.4%を占める「賃貸用住宅」は、賃貸のために貸されている家のことで、入居者がいない賃貸は空き家と見なされます。
「売却用住宅」は賃貸ではなく売り出されている住宅のことで、中古物件だけではなく新築の売却用住宅も空き家に含まれます。
「空き家=人が住んでいない所有者不明の家」のようなイメージがあるものの、実際には別荘や賃貸用の物件が含まれていることがわかりますよね。
ただし、問題なのは最後の「その他の住宅」です。
上記の3種類のどれにも当てはまらないもので、入院・転勤で住人が長期的に家を空けるケース、建築中の住宅も当てはまりますが、所有者が不明でなぜ空き家になっているのが分からない場合も「その他の住宅」に含まれます。
つまり私たちがイメージしている「空き家」は大半が「その他の住宅」に分類されます。
そして空き家総数の38.8%を占める「その他の住宅」は近年増加傾向にあり、空き家問題の中核となっているのです。
あまり身近に感じられない方は隣の家がもし空き家だったら、、、と考えるとわかりやすいかもしれません。
もしその空き家が古い場合、自然災害により倒壊してしまったり、ねずみやゴキブリが大量に発生し自宅に移動してくるというような衛生面でのリスクも考えられます。
画像出典:空き家の現状と課題
空き家問題は近隣住民を困らせる多くの問題をはらんでいるのです。
2、日本の現状
平成30年(2018年)の総務省統計局の調査によると、日本の空き家率は13.6%と過去最高を記録し、その数はなんと846万戸です。
空き家は昭和38年(1963)から増加傾向にあります。
画像出典:平成 30 年住宅・土地統計調査
3、空き家問題の原因
空き家問題の原因を詳しく見ていきましょう。
(1)少子高齢化
まず、空き家問題の原因には少子高齢化が挙げられます。
現在の日本は超高齢化社会です。
高齢者の数が圧倒的に多いので高齢者の住居の数も自然と多くなります。
その高齢者のほとんどが介護施設に入居、または死去して、今まで住んでいた家を放置することで空き家が増えていくのです。
さらに人口減少により家の総数に対して入居者が少なく、家が余っていることも空き家の増加原因として考えられています。
(2)所有者が問題を抱えている
空き家は所有者も使わないし、周りにも迷惑がかかる可能性があります。
それならさっさと壊したらいいんじゃないの?と思いますよね。
空き家が増加してしまっている背景には、空き家の管理を任されてしまった娘・息子世代の抱える複雑な問題もあります。
空き家の所有者の問題には、
- 家族の思い出があるから簡単に壊せない
- 兄弟の間で揉めていて結論がまとまらない
- 亡くなる前に口頭で壊さないでほしいと頼まれた
など感情的な問題と、
- 売りたくても買い手が見つからない
- どこに売ればいいのかわからない
- 手続きが面倒
などの手間の問題も挙げられます。
また、空き家を壊すと住宅用地に係る固定資産税特例措置という制度が受けられなくなり固定資産税が上がる(土地を持っているだけでも固定資産税がかかってしまう)ことも「壊したくても壊せない」空き家問題に繋がっています。
4、空き家問題解決策
ではここからは空き家問題の解決策を見ていきましょう。
(1)空き家問題対策特別措置法とは
空き家の存在によって周辺の市場価値が下がってしまうことはよくあります。
家の下見に行って隣がひどい空き家だったら買いたくはないですよね。
「空き家とはいえ勝手に掃除はできないし、人が住んでないから苦情もいえない」こういった理由で困っている人々を助けるために、国は2014年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を定めました。
この法律によって、空き家は「空き家」と「特定空家」の2種類に分けられ、特定空家に指定され続けると罰金または固定資産税の増額が課されます。
「そういえば、誰も住んでいない実家を放置していて雑草がひどくなっているかも、、、」、このようにうっかり空き家を放置し続けていると、自治体から注意を受ける可能性もあるということです。
空き家と特定空家の違いを「空家等対策の推進に関する特別措置法」から読み解いてみましょう。
空き家
「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。
特定空家
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
つまり、空き家と特定空家の違いは、
- 倒壊の恐れがないか
- 保安上危険ではないか
- 衛生的に有害ではないか
- 地域の景観を損なっていないか
- 地域の生活環境を乱していないか
という部分がポイントになります。
空き家を持っている人はぜひチェックしてみてくださいね。
(2)リフォームして活用
空き家問題が解決しない背景には中古物件を買う人の少なさも原因として挙げられます。
たとえば、空き家を賃貸として貸したいと思っていても、築年数の古い物件には住んでくれる人を見つけることが難しいかもしれません。
一方で、綺麗にリフォームすれば維持費が大変だった空き家も新しい不動産収入源として活用できます。
また、マイホームとしてリフォームすれば新築よりも費用を抑えることもできます。
それぞれの自治体から空き家リフォームの補助金が出ている場合もあるので、「リフォームってお金がかかりそう」と思う人も補助金を利用すれば負担は軽減できます。
経済的な理由でリフォームになかなか踏み切れない人にとってはうれしい制度ですよね。
たとえば、神奈川県海老名市では「空き家活用促進リフォーム助成金」という補助金があり、10万円以上(税抜き)の工事に対し2分の1助成(千円未満切捨て) 上限50万円を受け取ることができます(令和2年度の情報に基づく)。
参考:海老名市 令和2年度「空き家活用促進リフォーム助成金」について
(3)売却する
もうこれ以上管理したくない!リフォームも面倒だし、そもそも所有したくない!という人には売却がおすすめです。
空き家を売却するには、そのまま売るか、更地にして売るかの2つの選択肢があります。
空き家のまま「中古戸建」「古家付土地」として売るメリットは、解体の手間と費用がかかりにくいこと。
とにかく早く売ってしまいたいという人にはおすすめの選択肢です。
ただし、家がそのまま残るので一部の古民家好きを除いて、買い手が見つかりにくい、販売価格が低くなるというデメリットもあります。
①中古戸建と古家付土地の違いとは
両者に明確な境界線はなく、一般的に中古戸建は新しい買い手がそのまま使うことを前提に売ること、古家付土地は買い手が家に住まないことを前提に売ることになります。
中古戸建の方が販売価格は高くなるものの、売り手は瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)を負うことになります。
②瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは
中古戸建では人が住む前提で売ることになるので住居に対する責任が発生します。
売却後に見つけることができなかった家の傷、欠陥が見つかった場合に売り手が負う責任が瑕疵担保責任です。
5、空き家は訴訟リスクを抱えている
空き家を長く放置すれば、自然災害で隣の家に倒れてしまったり、害虫を近所に拡散してしまったり、思わぬトラブルの原因になります(トラブル数は意外と多く、2014年10月までに401の自治体が空き家条例を制定しているほどです)。
空き家のせいで近隣住民に迷惑をかけた場合は、空き家の所有者が責任を負わなければなりません。
これは民法717条でも定められています。
1.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2.前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3.前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
引用:民法717条
民法717条2項で決められている通り、倒壊・害虫だけではなく、庭の木や竹が伸びてしまい、それによって相手に損害を与えた場合にも責任は問われてしまいます。
まとめ
相続した空き家をそのままにしていませんか?
思い出があるから簡単には壊せないし、売りたくない気持ちもありますよね。
しかし、管理をしないまま放置してしまうと自治体から注意を受けたり、最悪の場合、税金の増額や罰金も受けてしまいます。
また、近所とのトラブルの原因にもなりかねません。
大切な空き家だからこそ、リフォームや売却で適切な管理を考えていきましょう。
また、近隣の空き家に困っている人はまずは自治体に相談してみましょう。