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不妊治療とは?治療の流れや費用・助成金について解説

投稿日2021.3.8
最終更新日2023.05.02

不妊治療とは、子どもを望む夫婦が妊娠できるようにサポートする治療法です。

2022年4月から、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることとなりました。その背景の一つとして、少子化対策が挙げられます。

本記事では、以下の内容について解説します。

  • 不妊とは
  • 不妊治療とは
  • 不妊治療に対する政府の取り組み
  • 今後の不妊治療に対する取り組み

本記事がお役に立てば幸いです。

1、不妊治療とは

不妊治療
不妊治療とは、不妊を改善するための治療です。

  • 不妊について
  • 不妊治療の現状
  • 不妊治療の流れ
  • 不妊治療にかかる費用

について解説していきます。

(1)そもそも不妊とは

そもそも、不妊とはどのような状態なのでしょうか?
不妊の現状や原因について解説します。

①不妊の現状

不妊とは、子どもを希望している夫婦が性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態です。

日本産科婦人科学会では一定期間を1年と定義しています。

2020年3月に厚生労働省から発表された資料によると、不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は18.2%(子どものいない夫婦では28.2%)でした。

5.5組に1組の夫婦が不妊に対して何かしらの行動を取っていることがわかりました。
また、35%の夫婦が不妊を心配したことがあるというデータも出ています。
不妊治療

画像出典: データで見る不妊治療と仕事の両立 不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック 厚生労働省

②不妊の原因

不妊の原因にはさまざまな理由がありますが、その理由の1つに年齢が挙げられています。

2018年1月に厚生労働省から発表された資料によると、女性がもっとも妊娠しやすい年齢は20歳前後であると言われています。

そして30代後半以降は妊娠が難しくなり、45歳を過ぎると妊娠の可能性がほぼなくなるとも言われ、男性も35歳頃から精子の質が低下するとのことです。

参考:第1 不妊に関する現状 「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査 厚生労働省

以下のグラフは、日本産婦人科医会が発表している年齢別の不妊率です。
不妊治療
画像出典:5.不妊の原因と検査 公益社団法人 日本産婦人科医会

(2)不妊治療の現状

2018年1月に厚生労働省が発表しているデータによると

  • 生殖補助医療による出生児数:2006年約2万人⇨2014年約4.7万人に増加
  • 総出生児に占める生殖補助医療出生児の割合:2016年の1.79%⇨2014年には4.71%に増加

不妊の検査や治療を行う夫婦の増加とともに、体外受精や顕微授精で生まれた子ども(生殖補助医療出生児)も増えていることがわかります。

不妊治療画像出典:2 不妊治療の現状  「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査 厚生労働省

(3)不妊治療の流れ

不妊治療は、夫婦で病院を受診し、検査を受けてから治療を行います。

一般的な女性の検査は以下の通りです。

  • 内診、経膣超音波検査(けいちつちょうおんぱけんさ)
  • 子宮卵管造影検査(しきゅうらんかんぞうえいけんさ)
  • 血液検査(ホルモン検査等)

また、その他の検査には

  • 腹腔鏡検査(ふくくうきょうけんさ)
  • 子宮鏡検査(しきゅうこうけんさ)
  • MRI検査

などがあります。

また一般的な男性の検査は、精液検査です。
精液検査で疾患が疑われる場合は泌尿器科的検査を受けます。

これらの検査により不妊の原因を探り、薬物療法や手術療法で治療を実施します。
不妊の原因が見つからない、治療の効果がない場合は、受精を補助する治療も受けられます。

参考:(2)不妊治療の方法 「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査 厚生労働省

(4)不妊治療にかかる費用

不妊治療には保険が適用されるものと、適用されないものがあります。

一般的な不妊治療とされる

  • 排卵誘発剤などの薬物療法
  • 卵管疎通障害に対する卵管通気法、卵管形成術
  • 精管機能障害に対する精管形成術

は保険適用範囲内です。

一方、以下のような生殖補助医療は保険適用外です。

  • 人工授精
  • 体外受精
  • 顕微授精

それぞれの平均費用は

  • 人工授精 1回1万円
  • 体外受精 1回30万円
  • 顕微授精 1回40万円

となり、保険が適用されない不妊治療には、高額な治療費がかかることもあります。

参考:不妊治療の患者数・治療の種類等について 厚生労働省

2、不妊治療に対する政府の取り組み

前述の通り、保険適用外の不妊治療は場合によっては高額です。
結婚生活費や将来の子どもの学費など、さまざまな支出の不安を抱える夫婦にとって負担になるかもしれません。

そこで

  • 不妊治療に取り組む夫婦への治療費支援
  • 不妊治療と仕事を両立させるための施策
  • 不妊治療に関する検討会

など、不妊治療に対する政府の取り組みを解説していきます。

(1)不妊治療に取り組む夫婦への治療費支援

不妊治療の経済的支援として挙げられるのは『特定不妊治療費支援事業』です。
この事業では、保険が適用されない体外受精と顕微授精の治療費の負担を軽減します。

体外受精と顕微授精をまとめて『特定不妊治療』と呼びます。
不妊治療費の助成には、以下の2種類に分けることができます。

  • 国が行うもの
  • 自治体が行うもの

国による不妊治療費の支援

国が実施している『特定不妊治療費支援事業』の内容は以下の通りです。

  • 特定不妊治療の1回の治療につき15万円までを助成
  • 凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円

初回の治療に限り30万円まで助成金が出ます。
ただし、凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除きます。

また、精子を精巣または精巣上体から採取するための手術を行った場合は、1回の治療につき15万円まで助成金が出ます。

こちらも初回の治療に限り30万円まで助成金が出ますが、凍結杯移植(採卵を伴わないもの)は除きます。

助成を受けるためには、助成対象者の条件に当てはまる必要があります。

助成対象者の条件

  • 特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦

  • 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦

  • 所得制限:730万円(夫婦合算の所得ベース)

引用:不妊に悩む方への特定治療支援事業 厚生労働省

新型コロナウィルスの影響で所得制限に変更があります。

最新の情報は厚生労働省のホームページをご確認ください。

参考:厚生労働省

自治体による不妊治療費の支援

さまざまな自治体で特定不妊治療費の助成が行われており、その助成内容は自治体によって異なります。
居住する自治体の助成内容を知りたい場合は、「自治体名 特定不妊治療費助成」で検索してみてください。

ここでは「東京都」の特定不妊治療費助成をご紹介します。
東京都では治療のステージをAからFに分け、助成金の上限を設定しています。

対象者の条件も国の助成事業とは異なります。
以下は東京都が行う特定不妊治療費助成の対象者の条件です。

  • 特定不妊治療(体外受精・顕微授精)以外の治療法によっては、妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師が診断したこと
  • 指定医療機関で特定不妊治療を受けたこと(1回の治療の初日から終了まで指定されていることが条件です)
  • 申請日の前年(1月から5月までの申請日については前々年)の夫婦の合算の所得額が以下のとおりであること
  • 平成31年3月31日以前:730万円未満
  • 平成31年4月1日以降:905万円未満

また、東京都では事実婚の夫婦も対象者に含まれます。

参考:東京都特定不妊治療費助成の概要 東京都福祉保健局

(2)不妊治療と仕事を両立させるための施策

厚生労働省の調べによると、不妊治療の経験または予定がある労働者の中で以下のような割合になっています。

  • 仕事と治療を両立をしている人:53.2%
  • 両立ができなかった人:34.7%

不妊治療画像出典:不妊治療と仕事の両立サポートブック 厚生労働省

両立ができない理由には、以下のような要素が挙げられました。

  • 精神面で負担が大きい
  • 通院回数が多い
  • 体調、体力面で負担が大きい

また不妊治療を行う従業員に対する支援を行っている企業は、3割のみという結果も出ています。

  • 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル
  • 不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック
  • 不妊治療連絡カード

厚生労働省では、上記のような制度により不妊治療を受けやすい職場環境づくりを目指しています(2020年11月時点の情報に基づく)。

参考:不妊治療と仕事の両立サポートブック 厚生労働省

(3)不妊治療に関する検討会

厚生労働省では、2006年10月18日から『特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的な運用に関する検討会』の開催をはじめとし、以下のポイントについて議論を行いました。

  • 全国の特定不妊治療を実施する医療機関の設備や人員、実績差の把握
  • 不妊治療の成果や治療後についての調査
  • 助成対象の範囲の明確化

検討会は4回開催され

  • 実施責任者の要件
  • 病院の設備基準

などが細かく定められました。

参考:特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的な運用に関する検討会報告書 厚生労働省

3、今後の不妊治療に対する取り組み

政府では不妊治療の保険適用範囲の拡大を含む不妊治療の助成制度の拡充を進めています。

不妊治療の経済的な負担等を軽減することで、出産へのハードルを下げ、少子化に対処する狙いがあります。

厚生労働省は2022年の診療報酬に合わせて、保険の適用範囲の拡大を目指す方針を発表しました。
共働き夫婦の増加やライフスタイルの多様化に伴い、所得制限の緩和や事実婚についての議論もあり、今後のさらなる制度の充実化に期待が高まっています。

参考:不妊治療への保険適用 再来年度拡大へ検討進める方針 厚労省 NHK

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まとめ

今回は不妊治療についての解説しました。

「不妊に悩む夫婦は少数派なのでは」「不妊治療は保険が効かないらしい」などさまざまな不安を持つ方も少なくないと思います。

しかし、不妊治療に取り組む夫婦は意外と多く、国をあげて助成金等のサポートが進められている状況です。

今後、より支援の輪が広がり、不妊治療に取り組む方々の悩みが解決するよう期待していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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